蜜雨

先生だからと言って、必ずしも道徳心だとか道理だとか、義理やはたまた人情なんかを持っているわけではないのだ。 先に生まれただけの、たかだか人間を尊敬すべきだとは思わない。 世の不条理だとかピタゴラスの定理、更級日記、apple、水兵リーベ、そしてセックス(は関係ないか)を知っていようが知っていまいが、人間は人間、薔薇は薔薇だ。 つまり、である、先生と生徒が恋をして結婚して子供ができたとしても、なんら問題なんてないのである。 だいたいにして、こんなデフレだとか不況だとかボーナスなしだとか言っている懐がお寒い世の中で、お金のこと以外に人間が頓着するものなんてないだろう。 一先生と一生徒が付き合ってキスしてセックスし合ったりしても、世間はよくある事だと流してくれるはずだ、さらっと。 社会的しがらみも、立場とか年齢とかいうわだかまりも、全部全部こじつけだ。本質的には逃げと同じ、とんだヘタレだ。いっそのこと屁垂れてしまえ(…つまんな)。

「いい加減に、してくれませんか」
「先生は私のこと好きなのに、どうして我慢するの?先生こそいい加減にしてよ」
「先程から何回も言っているはずです、私は「ねえ先生、私のおっぱい触れる?触れないでしょ?そんな先生が私に偉そうなこと言わないでよ」

我ながらかなり無茶苦茶なことを言っているのは承知している(しかも下品だし、最低なのも)。でも、先生のまるで教科書を読んでいるような整然とした反論を聞くのにはもう飽きた。 いっそのこと空気を吸えなくしてやろうか、それとも舌を切ってやろうか(私は先生の事を雀か何かと勘違いしている節は、ない)、それともキスしてやろうか。

さっ…!」

キスしてやった。でも一つ問題がある。私も喋れないことだ(頭の悪い発言ばっかりしている気がする)。

「意気地なし。ちょっとは悪い男になりなさいよ」
「……私は貴女を愛してもいいんでしょうか?」
「それを私に聞くわけ?教育委員会にでも聞いたら?それともPTA?」
「…絶望してもいいですか?」
「どうぞご自由に。」

優しくしてはやらない。どれだけ私が先生を口説くのに時間を費やしたと思っているのかしら。



未絶望(糸色    望)






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