蜜雨

夜に納戸でパソコンをやっていると、「佳主馬、またそんなとこでパソコンやってると目ぇ悪くなるよー?」案の定というかが来た。
「わかってるよ」耳につけていたヘッドフォンを外しながら振り向く。僕のいつも通りの返事にはため息を吐いた。(これも、いつも通り)いつもと変わらぬ押し問答は、既にただの挨拶みたいなものになっていた。はどうだかわからないけど、僕はこの夜の恒例行事をいつも楽しみにしていた。(そんなの子供っぽいんだけど、心地良くていつの間にかが来るのを待っている自分がいた)
は歩みを進め、しゃがんで僕の肩に手を乗せた。パソコン画面を何やら興味津々に覗き込んでいる。骨に生白い皮が張付いただけな位に細い線を描く腕と脚が、キャミソールとショートパンツから突き出ていた。風呂上りなのかほのかな熱気と生乾きの湿っぽい肌が僕の肌を刺激する。(うわ、)なんでこう、中学生男子に無防備なのか。まだ僕を小学生みたいに扱う。平静を装っているけど、これでも一端の男だし、ポーカーフェイスに自信もあるけど、このまま間違いを犯さない自信はない。クールだ無口だ生意気だ言われているけど、常に情けないくらいに葛藤を繰り返してる僕。自分に幻滅。



やさしい夜(佳主馬)






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