蜜雨

「英雄は臆病者がなるのよ」

書類から目を離さずには言った。
誰かに向けた言葉とは思えないくらいに小さな呟きだったが、確かに俺に訴えるものがあった。
しかし俺は敢えてその言葉に何の反応も示さずに、と同様書類から目を離さなかった。
同じ空間に二人きりでいるのにも関わらず、まるでお互いの存在を干渉していなかった。

は強かった。だから死んだ。俺は生きた。臆病者だったから。

そうしては俺を英雄と謳った。



死体なき殺人(リヴァイ)






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