蜜雨

「シズちゃーん、パン食べるー?」

気の抜けた声が飛んできた。だ。
静雄はその名の通り、静かに一人で屋上で煙草をふかしていた。時間的には現在授業中であるにも関わらずだ。そしてまたもその授業中に、堂々とパンを購買から買ってきたらしいが、いくつかのパンを引っ提げてやってきたのである。そう、静雄が年中無休で会いたくない奴不動の一位を獲得し続ける臨也を連れて。

「ねえ、。いつも思うんだけど、なんで俺がシズちゃんと仲良くパン食べなきゃいけないわけ?」
「えー、イザが勝手にあたしについてくるだけじゃん。んで、その時によくシズに会うだけでしょ」

パンに齧り付きながらのんびりと喋るを挟んで黒と金は座っていた。いつもならばここで喧嘩の一つや二つ起りそうなものなのだが、今日は傍にが居るため起こりそうで起らない。本来であれば今頃と二人でパンを食べていたはずが、どっかのひよこが屋上に居た為それは叶わなかった。臨也のイライラは増すばかりである。それは静雄とて同じなのだが。

「っは、ようは手前が死ねばいいだけじゃねーのかよ、いーざーやーくぅーん?」
「やだなーシズちゃん、もう少しその短絡的な思考を改めればいいと思うよ、どっかそのあたりの地獄とやらで」
「こらこらこらー、シズシズせっかくイザイザが買ってくれたパンを潰さないの、まだ一口も食べてないでしょーが。イザイザもそのきらきらの笑顔やめたらー?」

きっとこの二人を止められる者は世界中でただ一人、しかいないだろう。少なくとも、この学園の人間はそう思っていた。このよく分からない言動と雰囲気がこの二人を抑えつけているのだろうか。理由はよくわからないが、二人はに頭が上がらなかった。いや、勝っているには勝っているのだ。口でも力でも、はこの二人に敵わない。ただ、のやることなすこと、すべて許してしまうのだ。惚れた弱みかわからないが、二人はとにかくに甘かった。

「臨也が買ったパンなんて喰ってられっか!」
「ひどいや、パンには何の罪もないのにっ…ああぁ~焼きそばパンがぁあ!」
「あーあ、酷いことすんね、シズちゃん。、だからこんな奴にパン買う必要ないって言っただろ」
「いや、きっとあれだよ、しーずんは俗に言うツンデレというものなんだきっと。そんで、イザとシズのことBLっていうんだよ」
「どっからその情報仕入れてきたの?」
「え、漫研で話してるのを聞いただけ」
「………ぶっ潰す」
「今だけはシズちゃんに手を貸すよ」

静雄はコンクリートを軽く凹ませてから立ち上がり、ドアへと向かった。その静雄に続いて臨也も立ち上がって、静雄によって蹴破られたドアを通り抜ける。はそれを声も出さずにただ見守っていた。二人の突拍子のない行動よりも、なぜかいきなり意気投合している二人を見てはてなマークを飛ばしている。しかし、それに答えてくれる者はいなかった。



さよなら人類(臨也・静雄)






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