蜜雨

「解剖して頂きたいのです」

千客万来。奇妙な患者が来た。
幼いころからそれはもう多種多様な患者を見てきた岸谷新羅だが、好き好んで解剖なんぞ頼む人間は向来いなかった。こちらから頼んで解剖したい人間ならいくらでもいるし、本人の意思とは関係なしに解剖をする時はあったが。

その発言の裏の裏の意味を少々男性的に妄想と欲望を交えて汲み取るならば、年の頃15、6の可憐な少女の清楚な身なりを引き裂いて、まだ未発達な体躯にメスを入れる――つまりはセックスをする、という言葉に取れなくは、ない。医者である前に一端の男である新羅は、その言葉の真意を測りかねていた。
第一声からアルマゲドン級の言葉をこの狭苦しい診察室に落として俯いてしまったのつむじを見下ろし、新羅はしばし口を開くことが出来なかった。



メメントモリによろしく(新羅)






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