蜜雨

ゆっくりと景色に雪崩れ込む雪と、溶ける息。じんわりと染み出す血。
誤魔化すように死体を斬り捨て、自分の血と区別をつけなくする。どうせ見た目は同じ血なのだから。
咳き込んで、また血を忌々しげに吐き出す。舌打ちをして刀をぱちんと鞘におさめて歩き出した。
あられもない闇と雪の紛争が始まった。またもうひとたび地面を踏みしめて自分の血を戒めた。
毒づきながら壁づたいに歩き、それもやがて止まった。壁に背中を預けてずるずると座り込んだ。
血と酸素が足りてないような気がして、逃がさないようにこれ以上呼吸をしていられなかった。
「俺もよわっちくなっちまったようでィ」
「総悟」

「また、今日も生きたんだね。」
おめでとうでも言いにきたかのように、彼女はゆるく微笑んだ。(死ぬ間際のようなあたたかさだ)
そのまま人を見下すように突っ立って、目をつむった。ビー玉のような瞳は瞼の陰に落とされ、見えなくなった。
これ以上顔を上げてる気力も活力もなく、ただ項垂れた。



すべからくおわる(総悟)






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