あれから就業時間や業務内容、担当部署、お給料について話し合おうとするとそんな決まりはないとまたも真島に一蹴された。むしろ全てが決めてくれと言われ(給料もが望むだけ払うと言われ震えが止まらなかった)、早くも不安に駆られるが無理やり自由な社風なのだと自分を納得させた。他の従業員もただ真島についてきただけで、細かい決まりなどは気にしていなかった。それでもこんなにも慕われている社長はすごいが、よくこんなあやふやな基盤で会社が成り立ったなと思う。そう思っていたら、新設したばかりのまだまだ歴史の浅い会社であった。しかし最低限の法律は遵守し、みんなと気持ちよく働きたい。まずは自分がその辺りの整備を始めるべきだろうか。
そんなこんなで無事真島建設に内定をもらったは今日が初出勤である。
「諸君!おはよう」
「おはようございます」
「声が小さーい!!」
「おはようございます!!」
「よっしゃ、今日は新入社員を紹介するでえ!」
真島が声を上げると、建物の影からこそこそと出てきたのは小柄な女の子だった。顔の造りは小学生か中学生くらいだが、その見た目にそぐわない身体つきに女に飢えた野獣どもは釘付けだ。制服にしては少々短めの膝上丈のタイトスカートから伸びる白い脚と、丸みを帯びた女性らしいお尻、何よりかっちりとしたベストを苦しそうに押し上げる胸元は童顔の彼女を色々と危うい存在へと昇華させていた。今にもはち切れそうなベストのボタンを野郎どもは自らの手で一つ一つ丁寧に外して胸元を解放させてやりたい衝動に駆られる。
「社長!なんで私こんな格好…っはずかしい…!!」
おまけに耳まで赤らめ、黒目がちの瞳は涙目だ。丈の短いスカートを懸命に下へ下げようとする手のなんと意地らしいことか。今までキャバ嬢やホステスなど、男慣れした水商売の女ばかりにかまけていた男どもはの純朴さに初日から胸を打たれていた。もちろん真島もの加虐心を掻き立てられる小動物的な可愛さは気に入っていた。
「ヒヒッ、ワシの趣味や。気に入らんか?」
「え?!ぇと、そっ、そうじゃなくて…ぅう」
思いの外真島の自分勝手な理由には戸惑う。肩に手を回され、顔を覗き込まれるといよいよ茹で蛸のように顔を真っ赤にし、涙が頬を伝った。両手でその涙を拭うと自然と腕で胸を挟み込む形となり、いよいよの豊満な胸に耐えきれずボタンが弾け飛んだ。それも、ベストとシャツの両方ともだ。その隙間からちらりと白い布地に水色のレースの下着が挨拶していた。その瞬間、真島組の時が止まった。
「き…きゃああああああ!!!」
逸早く事態に気がついたが胸元を抑え、物陰に隠れようと近くにいた真島の胸に飛び込んだ。真島もその柔らかく甘い匂いのするを反射的に抱きしめていた。
「なんや、そんな下着見えたくらいで騒「きゃあああああああ!!!」ぶふっ!」
「おっ親父ぃ!!」
腕の中のの溢れ出た涙を親指でスッと拭って慰めてやろうと口を開いたが、またもは自分から飛びついたにもかかわらず思いの外距離が近い真島に驚き、叫びながら平手打ちをぶちかまして今度こそ事務所の裏に隠れてしまった。横薙ぎに倒れた真島に、の下着の細部までしっかりと記憶している若衆はなんと声を掛ければいいのかわからないでいた。
「あ、あの…っ」
その静寂を破ったのは他でもないだった。相変わらず胸元をおさえ、事務所の裏から顔だけを出す。
「不束者ですが今日からよろしくお願い致します…っ!!」
嫁入りか!!!とノリの良い真島組は一斉に突っ込んだ。