※??年後?
※頭のネジゆるゆるでお読みください
目が覚めるとそこには俺の妄想が広がっていた。
眼前には先輩が安らかに眠っていて、俺はその先輩を腕枕していて、なんなら俺と先輩は服を着ていなくて、もしかするともしかしなくてもこれ事後じゃねえか。そもそも現在俺は絶賛先輩に片思い中なわけであって、無理矢理先輩をモノにするなんて度胸は持ち合わせてなんかない。というか俺童貞なんですけど。先輩でよからぬ妄想をして、何回も脳内で犯したことはあっても童貞を捨てた覚えはない。
「ん……一也? 起きたの?」
一也?身動ぎをする先輩は寝ぼけ眼で俺の名前を呼んだ。いや、俺の名前は確かに御幸一也だ。しかし悲しいが、先輩は俺を一也などと呼ばない。これは都合のいい夢か?
「おはよ」
ちゅ。軽く戯れるように唇が触れ合う。思考が停止した。ファーストキスも終えてないチェリーなめんなよ。
「あははっ一也の一也君朝から元気になってるんだけど」
爽やかに笑いながら俺の足に挟まっていた先輩の太ももが俺のムスコを擦り、膝でぐりぐりと強めの刺激を与えれば、元から朝勃ちしていた俺のムスコはみるみる元気になった。つか先輩エロくね?やっぱこれ夢だな。しかも相当俺の願望が混ざった夢。
「どうしたの? これくらいで降参? でも朝ごはんはちゃあんと作ってもらうからね。昨日ダメって言ったのに、何回もするんだもん」
俺はダメと訴える先輩にどんなことをしたんだ。覚えていない自分が憎い。毎日丁寧に出汁を取ったお味噌汁作るんで詳しく教えて下さい。
「さっきからだんまりだけど、どうしたの?」
先輩は無言のまま固まる俺の額に手を当て、そのまま慈しむように髪を梳いてきた。その刺激が心地良くて延々として欲しいくらいだった。
「ん? 一也なんか髪長くない? 昨日切ったばっかじゃ……」
髪を撫でつけていた手が後頭部や首筋を通ると、確認するように何回も往復した。
「あの、先輩……くすぐったいです……」
「先輩って……いつの話してるの?」
「は?」
「え?」
間。
「ほんっとごめん!! ごめんね!!!」
あれから先輩に俺は高校生の御幸一也だと説明し(そしてそれを馬鹿にせずきちんと信じてくれた)、ベッドの上で土下座する勢いで今までの行いに頭を下げていた。どういうわけか未来に来てしまった俺だが、そんなことよりもぶかぶかのTシャツ(多分俺の)に、丸見えの太ももと胸元、所々に刻まれているキスマーク、そして何より左手の薬指にキラリと光るシルバーリングに釘付けだった。先輩の名字が御幸になっていて、朝隣で無防備に寝ていて、俺のことを一也と呼び、エロいことをしてるなんて、そういうことだろ――未来では結婚してるんだろ、俺と先輩は。やべ、俺ニヤついてないか。
「とりあえず朝ごはんでも食べながら、今後のことを考えよう!」
視線が一点に集中しないようにだけ注意して目の前の先輩を目に焼き付けていると、先輩がベッドから降りて俺の手を引っ張った。あ、まずい。
「先輩待っ――!!」
先輩に手を引かれて抵抗なんて出来ない俺は、なんとか隠していた完勃ちのもうひとりの俺を晒すこととなった。死にてぇ。
「ご、ごめん……私が朝から変なことしたから……」
「い、いやそんな先輩の所為じゃ……」
むしろさっきのあれはご褒美です。人生最高の朝を迎えられました。なんて気持ち悪いことは言えないので、言葉を濁すほかなかった。どう声を掛けたら先輩の罪悪感を拭えるかなんて、先輩に見られているにもかかわらず天井を向いたままのブツが視界に映っている俺には考える余裕すらない。
「あの……そ、の……えっと……」
お互い何も言えないまま気まず過ぎる空気が流れる中、どう足掻いても萎えてくれないもうひとりの俺をチラリと見た先輩が口を開いた。割とハキハキ物を言うあおあば先輩にしては珍しくまごついている。
「一也、くん、が良ければなんだけど、……す、する?」
は?
「そっそのっやましい気持ちないからね?! そもそも私の所為で一也君の元気になっちゃったし、それに一也君なら私も協力出来るかなってっああもうごめん最低だ私未成年相手に何言ってんだろやっぱり今のなしっ忘れて!!」
捲し立てるような弁解をするだけして蹲ってしまった先輩のつむじを、俺は呆けた顔で眺めていた。
つまり、先輩は自分の所為で元気になったもうひとりの俺を責任もって面倒見てくれると言ったのだ。それって先輩にキスしてなんなら舌も絡め放題だったり、可愛らしい胸を揉んだり、髪の毛に鼻を埋めて頭皮のにおいを嗅いだり、汗だくの脇を舐めたり、足の指を一本一本咥えたりするのも許されるってことだろうか。あれ俺もしかして気持ち悪い?いや、今更だろ。つか俺と結婚した先輩なら、絶対それ以上のこと未来の俺にやられたことあるはずだ。
「……先輩は知ってるかわからないですけど……」
いまだ足を抱えてしゃがむ先輩の細くて白い手首を、ベッドへ誘うように優しく引っ張り上げる。
「俺はチャンスがあればとことん貪欲に突き進みますよ」
なんて、カッコよく決めたはいいものの、童貞の俺が果たして(多分相当未来の俺にしつこく抱き潰されている)先輩を満足させられるのだろうか。今先輩をベッドに組み敷いているこの状況で、既にもう心臓が口から飛び出そうになってるのに。
練習と同じ球を本番で投げられる投手が強いという意味が嫌でもわかる。俺が思うまま触れてしまったら先輩が壊れてしまうのではないか、あまりにも手つきが変態過ぎて幻滅されないか――いつもしているイメトレ(という名の妄想)はまったく意味をなさず、目の前の先輩相手にどうコトを進めればいいのか完全に迷走していた。
「一也君、だいじょうぶだよ。一也君の好きにしていいんだからね」
俺の緊張が伝わったのか、先輩は俺を安心させるようにやわらかく微笑む。カーテンの隙間から漏れる朝日に照らされて女神に見えた。今から俺がその神域を踏み躙るのだと考えると、罪悪感よりも大きくむくむくと育った興奮が緊張と入り混じる。薄汚い欲望にまみれた俺の浅黒く日に焼けた掌が、先輩の純白の手首を拘束具のように自由を奪っていた。それだけで自分がどれだけ必死なのか窺い知れる。
「先輩……」
「名前で呼んで……?」
「……先輩……っ」
それが合図のようにお互い距離を詰め、唇を寄せ合った。俺の妄想以上に先輩のぬくもりは心地よくて、一生このまま包まれていたいと思う反面、凶暴な血流が容赦なく俺の中心に集まって弾け飛びそうになった。っぶねー、直接触ってもないのにキスだけでいきなり射精とかなんなくてよかった。マジでよかった。
「っは、……ん」
「先輩……」
「ふふっ……やっぱり高校生の一也君も一也なんだね」
とろりと目尻を下げて笑う先輩は、俺の湿り気を帯びた唇を指の腹で辿るように撫でた。その感触にどうしてもヒリついた熱が纏わりつく。確かに今俺が抱こうとしているのは未来の先輩であって、俺が好きになった先輩ではないかもしれない。もし未来の俺がこんな状況を見たら間違いなく俺は殺されるだろう。この先輩は未来の俺のモンだ。頭では理解している。けれども先輩が俺越しに未来の俺を見詰めていることに、どうしようもなく嫉妬してしまうのだ。
「先輩が未来の俺のモンだとしても、今先輩の目の前にいるのは俺です」
「かずっ……ン、っ、ふ……!」
先輩が何か言う前に噛みつくように唇を重ね、舌を捕えた。勢いに押された先輩は酸素を求め、切ない声を零しながらも、短くて真っ赤な舌を精一杯伸ばして俺の舌と絡めあう。ぴちゃ、くちゅと興奮せざるを得ない卑猥な水音がシーツの衣擦れの音と共に俺の耳にこだまする。
「はっ……ぁ、はあ……ご、めんね……」
俺が激しく求めた所為で息が弾んで苦しそうに眉を寄せる先輩が身を起こし、しっとりと汗ばむ俺の首筋に強く吸いつく。
「一也君も、今だけは私の一也君になって?」
俺に伝わったヒリつく熱は、沸々と滾る欲望へと変わっていった。
「先輩……もっと、いいですか……?」
「ぅ、ん……一也君に触ってもらうのきもち……」
砂糖たっぷりの甘い声に脳みそが耳から溶け出そうになる。先輩がきゅっと俺の指の間に指を絡めて小さな力で握れば、先刻までわずかに残っていた罪悪感も掻き消え、興奮しか湧きあがらなかった。その興奮に身を委ねれば、あとはひたすらに快楽を求めて落ちるだけである。
「あッ、く……ん、ぁ、っはぅ」
Tシャツをがばりと捲り上げ、小ぶりで慎ましい先輩の胸のふにふにと吸いつく感触を楽しみながら、まずは頂きの周りを舌を尖らせて舐める。それからぺろぺろと駄犬のように唾液を含ませて頂点を舐めまわして唇で食めば、熱を孕んだ声をあげ、厭らしく体をしならせる。エッッロ。たまんねー。かわいい。めちゃめちゃにかわいい。こんなんかわいすぎて頭おかしくなるわ。
「先輩かわいい……」
「んっ、ん……ひゃ……ぅ」
思わず気が緩んで普段は隠している心の声が漏れてしまったが、俺に与えられる快楽に夢中になっている先輩はそれどころではないらしい。っはー、かわいいかよ。尊い。語彙力失う。
「く、ぅ……んっ、ふ」
調子に乗った俺は流石に脇とかは舐めなかったが、先輩の胸だけでは我慢できず、薄く浮き出た肋骨を舌でなぞり、へそ周りをくるりと舌先で舐め上げた。こ、このくらいはセーフだろ?ドン引きされていないか気になった俺はちらりと先輩を見上げれば、先輩は気持ちいいのとくすぐったいのが半々といったような表情を枕に半分隠しながら、腰をびくびくと震わせていた。いちいち俺の挙動に細かく反応してくれる先輩を一分一秒も見逃さないようにガン見してしまうのはしょうがないと思う。
「濡れてる……」
「あっ、……ひッ、あぁ、……ん、っん」
イメトレだけは完璧の童貞の俺がちゃんと先輩を気持ちよくできているのか心配だったが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。
先輩の秘密の花園を指で優しく触れれば、ぬぷりと泥濘のナカに指が沈んだ。いつもこんな狭い未知の世界に俺のムスコが入っているのだと思うと、高揚感とは別に不思議な気持ちになる。そのまま奥まで指を滑り込ませたら、熱いうねうねにきゅうきゅうと締め付けられた。その締め付けを押し返すように先輩の腹側に向かって引っ掻けば、気持ちよかったのか先輩が可愛らしい声をあげながら、俺の指に応えるようにきゅんきゅんナカがうねる。
「かわい……」
「も、はずかし、から……いわな、で……ッ!」
羞恥に染まった頬に、快楽に濡れた瞳で睨まれてもただただ煽られるだけだ。きっとその真実に先輩は気づいていない。俺も、そして未来の俺も、この先その真実を先輩に告げることはないだろう。
「ちょ、一也くっ、そ、こっ……だ、めぇ……あッはぁあん?!」
しばらく先輩の反応を見ながらナカを弄って、とろとろの愛液が滴るくらい解していたが、俺はだんだんその愛液がただただ流れ落ちてシーツに染み込むのが勿体ないと思えてきた。だから思わず先輩の蜜を舌で掬い、そのまま蜜口の上にある花芯を扱いて最後にぢゅっと吸い尽くせば、鋭い嬌声が響き渡る。
「どうしてです? せっかく先輩気持ちよくなってんのに」
「だ、からって……そこま、で……っふ、しなくっ、て、ぁ、……いいよぉ……」
弱弱しい抵抗の言葉と共にぐいぐいと俺の頭をどかそうとするが、構わず更に溢れ出た大量の蜜をじゅるるるると啜り上げる。鼻に抜ける甘い声から、快楽に襲われた激しい声へと変わった。自分の股の間に顔を埋める俺の姿に、先輩もまた欲情しているのだと思うと、たまらない。今先輩は俺しか見えてなくて、その先輩を俺が気持ちよくしてる。未来の俺に対する優越感と、これ以上ないくらいの幸福感が一気にせり上がってきた。明日世界が滅んでもいいくらい俺は幸せだ。
「か、ずやくっ……も、挿れて……?」
恥ずかしそうに、けれども求めるように腰をくねらせ、足をもじもじさせる先輩に俺の興奮はピークを越えようとしていた。さあ、御幸一也、漢になれ。
「あ……れ……?」
うッッッそだろ????!!!!!!
つい今の今まで過去一でビンビンに元気だった俺の愚息どうしちまったの?!なんで縮こまっちゃってるワケ?!!つかこの空気どうすんだよ!!どうしてくれんだよ!!!もしかしてオナってる時毎回先輩に中出しする妄想したり、この間先輩の写真に精子ぶっ掛けて以来顔射にハマったり、先輩が中学の時セーラーだって聞いてからセーラー服姿の後輩先輩シチュでイケナイ放課後セックスしたのを申し訳ねえって思って萎んでんのか??!!!俺は先輩を頭ン中で汚し過ぎていっそ開き直って、最近ではおかずにして抜いた次の日であろうが、顔合わせて挨拶できるような鋼のメンタルになったんだよ!!!!だからお前も頑張れッッ頼むから俺の核弾頭しっかりしろッッ!!!!!!!俺が先輩で童貞卒業するって密かに心に決めてたの知ってんだろ!!!!!!!!!
「一也君、待ってるから」
俺は頭の整理が追い付かないまま、気づけば先輩の白磁のようなまろやかな肢体に抱きしめられていた。
瞬きをするように瞼が持ち上がると、俺はいつもの冷たい寮のベッドにいた。部屋は真っ暗で、時計の針が無機質に時を刻む音を鳴らしている。もちろん隣に先輩なんていないし、俺は童貞のままだ。信じたくはないが、何もかもが夢だったという現実を受け止めるしかなかった。鮮明に先輩の肌の触り心地や、甘ったるい声が鼓膜に残っていたとしても、それは全て自分が生み出した儚い夢。妄想し過ぎた結果、あんな夢を見て、余計にむなしさが増すだなんて完全に自業自得である。
じっとりと嫌な汗を含んだ服を着替え、トイレで小便を済ませて手を洗っていると、普段ろくに鏡なんて見ないのに、急に思い立ったようにふと顔をあげて鏡に映る自分を見た。なんの変哲もない、いつもの顔だ。いや、一か所だけいつもと違う――
「嘘……だろ……」
俺の首筋には先輩の唇のような赤い花が咲いていた。
ビューティフル・ドリーマー
(夢か現か幻か、この世のことはかりそめぞ)
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