「花びら、ついてるよ」
すっと肩に何か触れる気配がして、横を向けば小さい手が視界を横切り、花びらを僕に見せてから窓から花びらを風に乗せて僕の隣の席に座った。
一応前の黒板に貼ってある座席表を見ておいて、自分の周りの席の人の名前は把握している。
「…さん?ですよね?ありがとうございます」
「いいえぇ。えっと、黒子くん、で合ってる?」
「はい。黒子テツヤです」
「わたしは。隣の席だし、これからよろしくね」
小さな体と大人しそうな外見とは裏腹に人懐っこそうなやわらかい笑顔を浮かべてはきはきと喋る彼女とは早くも仲良くなれそうだ。
さんは机の上にあらかじめ用意されてた資料に一通り目を通して、再度僕に話しかけてきてくれた。
「黒子くんはなんか部活入るの?」
「はい、バスケットボール部に…」
「そっか。ここのバスケ部ずっと全国制覇してるもんね」
「さんは?」
「あー…わたしは家の手伝いあるから部活は入らないことにしてるんだ」
少し苦笑したさんを見て僕が口を開く前に彼女が口を開いた。
「ところで、その敬語は初対面だから使ってるの?」
「あ、いえ。癖です」
「敬語が癖って礼儀正しすぎでしょ!」
「そうでしょうか?」
話題をすり替えられてしまった。家の手伝いって一体何をしているのだろうか。
そんな表現をされると気になってしまう。
その答えを聞く前に担任の教師が入ってきて、すぐさま体育館へと移動してしまったので結局聞けずじまいであった。
<<