空港からお兄ちゃんの車でハイウェイをすっ飛ばして久しぶりの我が家に着いた。
玄関のドアを開ければ飛び込んでくる大きな物体。横でタイガがひっと息をのんだのがわかった時にはわたしは玄関先でしりもちをついていた。
「ロビン、熱烈な歓迎ありがと!」
「わおん!」
ちぎれるんじゃないかと思うくらいにしっぽを振って、頭を撫でようとする掌をぺろぺろと舐めるからくすぐったくてしょうがない。
「…っは、早くロビンそっちに連れて、って…くれっ!!」
「まだロビンにお尻噛まれたの根に持ってるの?ロビンだって謝ってんのにねー」
「わふ!」
タイガはロビンがお尻に甘噛みしたのが今でも忘れられないみたいで、中学生になった今でもタイガはでかい図体して犬が怖いらしい。
仕方ないのでロビンを連れて自分の部屋に向かうと、主なものは日本に持っていってしまったから部屋の中は小ざっぱりとしている。
半年ほど見ていないだけで自分の部屋じゃないみたいだ。けれども基本は変わっていない。
「懐かしいなあ、このベッド」
部屋の大部分を占めていると言っても過言ではないくらいのキングサイズのベッドで、ここを離れるまでわたしとタイガとタツヤが一緒に寝ていた。
わたしが両親が死んだショックで精神が不安定になって声も出なくなって眠れない夜が続いた時、ずっと2人はわたしと一緒にいてくれた。
ずっと手を繋いでくれたタイガと、頭を撫でてくれたタツヤ。あの時はどうしようもなく2人に甘えていた。
2人のおかげで今はこんなに元気に過ごしているし、2人と征くんのおかげで改めて両親にも顔向け出来た。
タイガとタツヤ、もちろんお兄ちゃんとアレックス、じいちゃんや征くん、みんなみんな幸せになって欲しい。そのためにわたしは頑張って生きて恩返しがしたい。
「、荷物ここに置いとくよ」
「ありがと、タツヤ。ごめんね、ここまで荷物持ってきてもらっちゃって」
「こんな重いもの女の子のに持たせられないだろ」
「………………」
なんだこの尋常じゃないカッコよさと紳士さはっっ!!!
背も高くなったし、腕だって首だって太くたくましくなってきた感じするし、声だって前よりかすれて低くなってるし、
前まで髪が微妙に長かった所為で女の子に間違えられてよくナンパされていたのに、今は、なんというか…
「タツヤ、男みたい…」
「いや、俺生まれた時から男だけど…」
「そーじゃなくて!なんか知らない人みたい…」
タツヤは部屋のドアを閉めて、ゆっくりとした歩調でこちらに近づいてくる。
「さびしい?」
「え?」
「俺は、さびしかったよ」
視界がタツヤに埋め尽くされる。心臓の鼓動と体温との間に兄弟の証として露店で買ったタイガとおそろいのリングが頬にあたって冷たい。
「わたしも、さびしかったよ」
ぎゅーっと渾身の力を込めてみたけど、タツヤに痛がる様子はなく何のダメージも与えられなかったみたい。
ただ密着度が増したのか心臓の音が鮮明に聞こえてくる。少し、速い、かな?
「「ーっっ!!風呂だっ、風呂に入るぞ、お!?」
アレックスがノックも無しに思いきりドア開けると、わたしの頭上でタツヤがわかりやすくため息を吐いていた。
「悪かったなあ、邪魔しちゃってよー!」
「別に」
「タツヤ、もういいの?何か言いかけてたんじゃ…」
「ああ、また今度な。それより風呂入ってきなよ」
「あ、うん」
タツヤは何が言いたかったんだろうか。
タツヤはわたしから離れてドア付近でニヤニヤするアレックスを軽くたしなめて部屋を出ていく時に、一瞬だけこちらを見てきれいに笑うもんだから、わたしはもう何も言えなかった。
前は美人さんだ美人さんだ思ってたけど、今は超絶カッコよくなっちゃったわたしの幼馴染は相変わらずミステリアスです。
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