蜜雨

「あんたよくあんな変なのに付き合おうと思ったね」
「そう?わたしバスケをああいう考え方でしたことないからおもしろくってさ」
「ふぅん。そんなもん?」

あたしの友だちはちょっと変だ。
チビでやけに運動神経良くて、おまけに帰国子女で頭も良くて(夏休み前の中間テストでトップ20入りしてたのにはびっくりした)、でもそんなの微塵も感じさせないくらいにしっかりしてるようで抜けてて天然入ってるし、イイ奴には変わりないんだけどなんか不思議な生き物に見えてくる。
こちらが聞かなければ何も言わないし、面倒見がいいと思ったら面倒臭がりだったり、見た目はちっちゃくてかわいいのに口悪かったりするし肝が据わってるというか度胸はあるし、頭良いくせにたまに思い出したように日本語が不自由になるし、からかいやすくて人懐っこいからみんなから好かれてはいるんだろうけどという女は本当に変だ。
今日だって緑間とかいう変な男に絡まれて小さい小さい連呼されたにもかかわらず、人事を尽くすのに協力してるし、理由を聞けばおもしろいからという気の抜けた答えが返ってくる始末だ。
そして本当に律儀に休み時間のたびに今日のラッキーアイテムらしいボードゲーム(将棋)を片手に無愛想な緑が教室に入ってくるもんだから、やっぱり小さい子と一緒にいると運気が上がるということをまじで信じて人事を尽くそうとしているみたいだった。
しかもは友だちに習ったことがあるらしく将棋を指せるみたいで、休み時間ずっとあの緑と向かい合っててろくに話ができなかった。
何気にあんな気難しそうな男と仲良くなってるあたり、類は友を呼ぶということなのかもしれない。

「ところであんた球技大会何するの?」

やっと休み時間も終わりあの人事尽くし男が帰って、この時間は球技大会の種目決めでみんな少しざわついていた。
だからあたしは今日は風邪で休みだというの隣の黒子くんの席に座ってこうやって雑談しているわけだ。

「卓球!あっちでメジャーじゃなかったからあんまやったことないんだよねっ」
「いや…ふつー得意なの選ぶだろ…なんでほぼやったことない競技選ぶかな…」

やっぱ変だ。

「そーゆー池ちゃんは?」
「うーん…入ってる部活の競技には参加できないからなぁ…」

人数の多いサッカーと野球は3人までその部の人間を入れてもいいことになっているが、その他のバレーとバスケと卓球はその部の人間は参加していけないことになっている。
クラスにその部の選手が集まっていると、実力に差が出て不公平になってしまうからだ。ということで、あたしはバレーには参加できない。かと言っての選んだ卓球も苦手だ。
ちなみにサッカーと野球は男子のみで、バスケと卓球も女子のみだ。バレーはサッカーと野球に参加しない男子でチームを作り、女子はバレーとバスケで1チームずつ作って、卓球は4人の選手による4シングル1ダブルスの団体戦で行うらしい。

「やっぱここはバスケかなぁ」
「池ちゃんはバレー参加できないからね」
も卓球じゃなくてバスケとかバレーにすればいいのに…あっ身長を気にしてのことか!」
「失礼な!バレーはともかくとして、バスケは人並みにできるつもりだよ!」

こいつ何気にスポーツテストの評価A段階だからその言葉もバカにはならないが、どちらも身長が物を言う競技だからがバスケとかバレーとかやっているのが想像できない。
意気揚々と黒板に書かれた卓球の文字の下にとチョークを走らせてるの小さい背中を見ながら、あたしはそんなことをぼうっと考えていた。


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