昼休み半ば、俺に客だとクラスメイトに言われてドアを見れば、一際小さい存在を見つけた。
他のクラスメイトがあれが例の…とぼやいていて、好奇の目を向けている。
彼女は校内一の身長の低さでちょっとした有名人だった。あの愛くるしさは愛玩動物を髣髴とさせる。
見るのだけならば千歩譲って許してやる。声をかけようとする輩が出てくる前に俺が彼女に近づけば彼らは少しだけ大人しくなった。
「征くん!」
「、学校で会うのなんて初めてじゃないか?」
「クラス遠いもんね。ちょっとだけ迷ったし…」
情けなく眉をハの字にしてしわを寄せたの眉間を、人差指でぐりぐりと押すとすぐさまそこを手で覆って拗ねたてしまったのか恨めしげに睨まれた。
まったく、かわいいなあ。そんな目で見ても男を煽るだけなのに。ほら、俺はかわいい子ほど虐めたいから。
「それで、何か用事かい?」
「あ、うん。辞書貸してほしくて…」
はアメリカでの生活が長い所為か、こちらの友だちはまだ少ない。
クラスにはもう持ち前の明るさと人懐っこさで馴染めただろうが、他のクラスになるとまだ俺以外に友だちはいないようだ。
そうでなかったらわざわざ一番遠いこのクラスまで来ることはないだろう、迷子にまでなって。
「今度から気をつけなよ」
「ありがとう!あ、今日征くん一人でごはん?辞書のお礼にうちでどう?」
「うーん…そうだね。今日は親も遅くなるって言ってたしごちそうになろうかな」
「やったあ!今日のごはん頑張って作るから!じゃ、部活終わったら家に来てねー!!」
手を大きく左右に振りながら、小走りに走っていく姿はやはり小動物のように可愛らしかった。
くるくると表情が絶えず変わるは見ていて面白い。ああ、やっぱりあの子欲しいなあ。
狂気じみた子どものように俺はいつもに向かって口にする良心的な言葉の裏に心の中でどろどろとした黒いものをぶちまけていた。
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