バターケーキ溶ける
シャレになんねーくらいの暑さがここのところずっと続き(馬鹿なオレでも聞いた時がある地球温暖化ってやつか?)、オレたち人類はみんなとろけてお陀仏しちまいそうだった。
だが今もちゃんとオレは自分の肉体が保たれていることにやっぱり人間ってこんな簡単に溶けねーんだなあって思ったりもした。
オレに関わらずみんなそうだ(今つけている時代遅れのブラウン管テレビから流れるニュースでもこの夏の暑さで溶けた人間が発見されたなんて報道もされちゃいねーし、チャンネルを変えて生放送中の27時間テレビを見てもやっぱりさ●まさんは溶けちゃいなかった)。
先々月の六月に真夏日を観測して、オレは今年初のクーラーをつけようと思ったらどこからか水が垂れてきて(クーラーの水漏れトラブルってアリか?)、オレは今の今までずっと扇風機だけの暑苦しい生活をしていた。
この間遊びにきた泉に「こんなクソあっちぃ部屋いれっか!オレ帰るわ。」とキレられ、しまいにはにまでも「良郎の部屋にクーラー付くまで禁欲生活だからよろしく」と見捨てられてしまった。
それ以来ホントには一度もオレの部屋に来なくなった。の家に行ってもの家には親がいるからつんぐほぐれつあっはんうっふんいやーんにゃんにゃんちょめちょめはさすがにできない。
今すぐクーラーを買おうと思っても、お金とは切実なもので、そんな簡単にクーラーが買えるまでの金はすぐ集まらないしましてや降ってもきやしない(まあ当たり前だ)。
そのためオレはここ一ヶ月くらいマジに禁欲生活を強いられている。
そしてオレはこの間やっと念願のクーラーを買い、今日の午前中に業者さんが取り付けにきた。オレはいそいそとにケータイで連絡して一ヶ月半ぶりくらいに遊びに来てくれることになった。
禁断症状っつーかオレはもうそわそわそわそわ落ち着かなくって、ごろごろしてたらタンスの角に小指をぶつけてある意味悶えていた。
そんなオレをよそにぴんぽーんと救いの音がした。、っ!
「よーしーろー、喜べっアイス買ってきたよー」
「ーっっ!!」
の声を聞いて喜び勇んで玄関に向かって走ったら(走るほどの広くも距離もないが、まあ今すぐに飛びつきたいって言う意味の表現だ)、この間実家から送られてきた非常食用のカップラーメンの段ボールにつまずいて転んだ。
は微動だにせず、半ばオレがこうなることを予想していたように情けない姿のオレを無表情で見下ろした。
「・・・良郎、しばらく相手しないうちに忠犬ハチ公みたいになったね」
は新品のクーラーから来る冷たい風を満足そうに受け止めて、冷たい畳を一通りゴロゴロして、疲れたのか何なのか仰向けになって寝っ転ぶと肩があらわになっているワンピースの下のデニムが見えた。
がスカートだったら丸見えだったのに!と心の中で叫び、舌打ちを実際にするとがオレの悔しさなんて全く知らずにぽけっとした顔で起き上がった。
そのまま鼻歌を歌いながら(なぜかミスチルのイノセントワールド←スペルが分からない)袋をあさり、声を上げた。
「あっ!あのコンビニの店員短いスプーン入れてるしー!!」
パナップって短いスプーンだと最終的に手がべたべたになるよな・・・。相変わらずは夏でもガリガリくんやスイカバーとかではなくパナップだ。
冬でも夏でも、はアイスと言ったらパナップだった。かと言ってオレに買ってくるのがパナップってわけでもなく、普通にガリガリくんやスイカバーだ。
そんなの配慮を嬉しく感じ、オレもと同じくコンビニの袋をあさってガリガリくん(なし味)をぺりぺりと開けた。
はぶつぶつ文句を言いながらパナップ(いちご味)のフタを開ける。と途端に人が変わったみたいにぱあと笑顔を咲かせた。
「わーい、スマイル出たー!これで14回連続!」
ぺろぺろとパナップのフタをなめるはなんつーかはっきり言ってエロい。とてつもなくエロい、やべー。直視で・き・ね・え!
赤い舌をおしみなくて出して丹念に舐め終えるとコンビニの袋にそれをポイっと捨てた。(おおおおおおおおおオオレ!のなめたフタをなめたいなんてそんな変態のシンズイみたいなやましい気持ちこれっぽっちも・・すいませんウソつきましたちょ、ちょっとは思いました、浜田良郎(今年17)の夏の告白・・・っ!)
さっきまで怒ってたなんて想像もできないくらいの無邪気な笑みで、オレまでつられて笑ってしまった。
それにはムッとした顔でプイ、とオレから背を向けてしまった。やべー怒らせちまったかな、そんなの反応も可愛くてしようがないけど!(あれもしかしてオレ末期?)
紙コップと木のスプーンがぶつかり合う音がして、はそろそろパナップを食べ終わるところだった。いまだオレに背を向けて膝を曲げて猫背になってるオレのかわいいかわいい。
やわらかな曲線を描いてあらわになっている肩がオレは無性においしそうにみえて、口にアイスをくわえての肩を後ろから抱き締めた。
の少しとがった感じがする(けれどけして骨っぽくないのは皮だけではなく申し訳程度にの骨と皮を覆っている肉(と言ったらアレだが)があるからだ)骨がオレの胸板にあたる。
「・・・っ!」
「よ、しろ・・?そっか、ごめんずっと放置プレイだったからね・・・」
「そうだよもー!クーラー壊れてからオレ泉にも見捨てられるしよー!もマジで部屋に来なくなるし電話とかメールしても冷たくあしらわれるし・・・!」
「ごめんごめん、今日はなんでも言うこと聞くから許して良郎!」
今、今なんつった?なんでも言うこと聞く?はオレの心の中など知らずに苦笑してオレの腕にちっちゃい手を置いている。
意味わかって言ってんの?そういう意味でとっちゃうよだってオレずっと我慢してたしをおかずに頑張ってたし(あれ頑張る方向違う?いやいや他の女の裸見ないでだけを考えてやってたんだからセーフだ!オレは頑張った!)、何よりオレあんま我慢の利かない狼男だ。
きっとはもっと別の意味で言ったんだろうけど(って男心あんま理解してないし)、オレはヤりたい盛りだからあっちの想像にもちろん持ってっちゃうよ?いいの、?
「」
オレはくわえていたアイスをきちんと手で持って急に真剣な声での名前を呼んでフーって息を首筋に吹きかけたら、は肩をビクリと震わしてかしこまって「は、はいっ!なんでしょーか!」って言った。
あーもうかわいいなあ!オレはくすくすと笑ってアイスをががっと食って残った棒(最後思いっきり棒噛んで歯がジーンとする・・・ついでに頭もガンガン)を袋に入れて、押入れから紙袋を出してに差し出した。
はきょとんとした顔でオレを見上げて(無意識な上目遣いって腰にクんだけどチャン!)、不思議そうな顔のまま紙袋の中身を見た。
オレはニヤニヤしながらの反応を待つことにした。安の上は固まって、我に返ったかと思うとかーっと下から上に血液が流れて顔が真っ赤になった。
予想通りの反応にオレはさらににまにまにたにた笑みが止まらなくって、はそれを悔しそうに見つめながらどうしていいか困ったように視線をオレや紙袋などあちこちに泳がせた。
「着てくれるよな、(にんまり)」
「よ、よしろ、う!(目がマジだ!きらきらしてんもん、ごっつきらきらしてんもん!!)」
が風呂場で(オレの目の前で着替えてもいいのに・・・って言ったらオレのぐーぱんち飛ぶだろうなあ)着替えること4分39秒。
オレはそわそわしながら先程のと同じように仰向けになりながら雑誌を読んでいると、シャーっと仕切りの布(オレんちはボロアパートだから脱衣所のドアが無い。オレは無くてもいいのだががつけて!と必死に頼むからしょうがなくつけた。ほんと、なくていいのにこんな邪魔な仕切り)を開けるとがぴょこりと頬が微妙に赤い顔だけを出してオレを見た。
が目で出たくないと訴えるがそんなのに効き目があるわけもなく(ていうかむしろ逆効果。ちょっとうるんだ瞳で上目づかいその上頬を赤らめてるって何このシチュエーション!無意識でやってるもんだから余計に愛しい)、オレはにへらにへら笑いながら(あ、オレ絶対今の顔緩み過ぎて普段の顔の原型ないわきっと、溶けたみたいに)雑誌を腹んとこに置いてを手招きした。
もじもじしながら(ちょっと反抗的な目がまたイイ!警戒心が強い猫って感じで!の頭に猫耳が見えるよオレ)はミニスカ過ぎてパンツが見えそで見えないスカート(なんで女子高生のスカートってあんなみじけーのに見えねんだろ)を引っ張って隠そうと必死に無駄な抵抗をして、ご丁寧にポンポンまでも持ってオレに向かって歩いてくる。
オレの目の前でピタッと止まり、突っ立っていると仰向けのままのオレはを下から覗くようにして見ていた。
あれだ、電車にいる痴漢親父のような気持ちだ、今そのオヤジたちの気持ちが少なからず前よりかは理解できた。
この絶妙のアングルは記録に残しておくべきだ、うん。国宝級と言っても過言じゃねーぞ、いやマジでオレ馬鹿だけど国宝何もしらねーけど誰もが認めるぜこれは絶対。
日本の重要文化財でもいい、これは日本文化の極みだ。あれでもチアって欧米か?(誰かそこんとこ知ってたらぜひ教えてくれ・・・!)
風が来たら太ももから上が見えそで(まあ俗に言うパンチラ)、腹チラ果てはブラチラまでしてしまいそうだ。
「そうだ、、クーラー止めて扇風機つけよう」
「はぁ?(なにこいつそうだ京都行こう的なノリで言ってんの?)」
やっぱりオレはしばらく扇風機を使おうと思いました。それは、地球温暖化が少しでもやわられれげば(かんだ!)いいなあと思ったからです。地球以外でオレたちの愛を阻む者はいないから、その地球を救ってみせよう扇風機で!ついでにすさんだ日本人の心もうるおせればいいと思います。そんな浜田良郎(今年17)の夏だった!
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