3500/伯爵と妖精
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6?00/伯爵と妖精
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6666/空色勾玉
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9000/空色勾玉
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31000/伯爵と妖精
---Thanks 3,500 hits !------------------------------------------ 二人して熱におかされた後、リディアが夢の国へ歩いていくのを見送っても、エドガーは何となく寝付けないでいた。 枕にしていたクッションを背もたれの代わりにしてそっと上体を起こす。 脇のテーブルに置いてある水差しで喉を潤し、読みかけの本を取り、ついでに滅多に使わない引き出しからこれまた滅多に使わない眼鏡を取り出した。 別段目が悪いという訳ではないが、視力を進んで落としたいとも思わないので、これは単なる予防だ。 もっとも気が向いた時にしかかけないので、予防になっているかどうかは甚だ疑問だが。 クッションに完全に背中を預けて本を読む体勢に落ち着くと、リディアが小さく声を漏らして腰のあたりにすり寄ってきた。 暖を求めての無意識の行動だろうけれど、無防備な姿に口許がほころぶ。片手で柔らかな髪を撫でながら、エドガーは器用に読書を始めた。 静寂に満ちた室内では本のページを捲る微かな音がやけに大きく響く。 リディアを起こしてしまうのではないかとちらりと横目で彼女を伺いながらまたページを捲ると、リディアがもぞりと身じろぎした。 緩慢な動作で瞼をこすり、そのままゆるゆると覚醒していく。 ああ起こしてしまった、思うが、申し訳なさよりも嬉しさが勝っている自分の内心に苦笑する。 髪を撫でていた手を肩に滑らせて、寝惚け眼のリディアに顔を近づける。静かな部屋に遠慮をするようにそっと囁きを落とした。 「ごめん、起こしちゃった?」 「ううん、大丈夫………」 眠たそうに首を振った彼女の視線が自分の顔でふと止まる。そのまま不思議そうに首を傾げる素振りをするので、エドガーもそれに倣って軽く首を傾けた。 「どうかした?」 「ん…眼鏡、かけるのね」 物珍しそうに手を伸ばしてフレームの縁を軽く撫でていく指先を捕まえて、キスを贈る。 「ああ、滅多にかけないけどね。キスの邪魔になるから」 にやりと誘うように笑うと、顔を赤くすると思っていたリディアはどうしたことか嫌なことを思いだしたとでも言うように顔をしかめた。 「…そのキスのお相手はどこのどなたかしら…」 「この状況で、そういうこと言う?」 「エドガーなんて、キスくらい誰とでもするじゃない。婚約する前も、後も、結婚してからだって」 拗ねたように睨んでくるリディアは可愛いと思うけれど、その疑いは心外だと思う。 結婚する前、いや婚約する前くらいから恋人に贈るようなキスはリディアにしかしていない。他の女性にはする気が起きなかったというのが本当のところだ。 まあ確かに社交辞令のキスは何度か交わしたかもしれないが。…しかしそれにしたってリディアにはばれないようにしていたのに、何で知って居るんだろう。 「良いのよ、もう。慣れちゃったもの」 と言いつつ枕に顔を埋めるように顔を背けるリディアに、エドガーは本と眼鏡を取ってデスクに置いた。 「リディア」 覆い被さるようにリディアの両脇に手をついて、頭にキスを落とした。なかなかこちらを向こうとしないリディアの耳たぶや首筋をくすぐって、堪えきれずにくすくす笑い出したリディアの顔を上に向かせる。 額や頬を撫でて、その跡をたどるようにキスを落としていく。さらさらの金髪に優しく手がかかる感触を感じながら、視線を合わせて微笑んだ。 「確かにキスは好きだけれど、他の女性としたいとは思わないよ」 リディアが甘すぎるから。 囁いて、今度は甘い唇に自分のそれを触れさせる。ライトなキスを何度も繰り返すと、華奢な両腕が遠慮がちに背中にまわってきた。 「……女性に、『僕には君だけ』とか言うのは、たらしの常套句だって、聞いた、わよ」 キスの合間に途切れ途切れに聞こえる言葉に、エドガーは思わず低く呻いた。 「………一体、誰が君にそんなことを次々と吹き込んでいくんだろうね」 なかなか甘い態度を返してくれないリディアと、言われた台詞の内容に憮然としたエドガーにリディアは面白そうに微笑んだ。 「みんな心配してくれているみたい」 「いらない心配だよ」 「そうかしら」 口の減らないリディアを抱き込んで、横向きに寝転がる。同じベッドで、お互い裸も同然で密着して、こんな風に軽口がたたけるようになるとは。 痴話げんかのような言い合いが楽しくて、けれどなかなかこちらの言い分を認めてくれない彼女に焦れったくも思う。 「それとも、君は僕が浮気をしているとでも思うの?」 緩く首を振って、口元に笑みを湛えている癖にやけに真剣な眼差しで、リディアはエドガーを真っ直ぐに見つめた。 「あなたは、浮気の意識なしに浮気をする人だと思うわ」 言われて、なるほどと思う。多分、今感じている自分とリディアのずれは、そのまま二人の価値観のずれなのだろう。 どこからが浮気、という認識はエドガーとリディアでは違う。考え方の違い、重なりきれない意識が浮き彫りになっていくようだった。 でも、そんなことは当たり前だ。二人は違う人間なのだから。肝心なのはもっと別なところにある。 「………ねえリディア」 低い声で囁くと、少し揺れた金緑の瞳が見返してきた。自分の言ったことに不安を煽られてしまったのだろうか。 「愛してる」 微笑んできっぱりと囁くと、リディアは少し驚いたような顔をした後に満面の笑みを浮かべた。 腕を懸命に伸ばしてしがみついてくる彼女を愛おしく思うままに抱きしめて、カモミールの香りを胸に吸い込む。 「ここは、あたしだけの居場所にしてね」 リディアの全てを自分のものにしてしまいたいと思っている自分と比べてひどく控えめな態度を取るリディアを、強く抱きしめて、囁く。 「全部君の居場所だよ。体も心も、君だけにあげる」 「大げさだわ」 「本気だよ」 腕を緩めてほんの少し距離を取ると、リディアは優しい表情で照れたように笑っていた。 その顔が恥ずかしそうに俯いてしまう前に頬に手を添えて、ゆっくりとなぞる。 「愛してる。リディア、僕の妖精…僕の奥さん」 「愛して、るわ。エドガー」 意志の強そうなかんばせに朱色の花を咲かせる彼女が、心の底から綺麗だと思った。 +++ おまけ。 「『あたしの旦那さまv』とか言ってくれても良かったのに」 「む、無理に決まってるでしょそんな恥ずかしい台詞…!」 +++ 記念すべき初キリ番、3500を踏んでくださった方に捧げますv リク内容はぴんく色シチュの新婚さんエドリディでした(><) 新婚さんにしてはリディアが何だか強いのですが。 個人的におまけの二人の台詞がいちばん「らしい」と思います。 では、申告ありがとうございました! キリ番を踏んでくださった方のみお持ち帰り可ですが、著作権は放棄していませんのでよろしくお願いします。
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---Thanks 6,?00 hits !------------------------------------------ 朝露が光るまだ早い時間に、妖精博士でありアシェンバート伯爵夫人であるリディアは広大な庭にハーブを摘みに出ていた。 エドガーに見つかれば、女性が体を冷やすなんて、とまたうるさいので大して寒くもないが羽織ってきたショールが落ちないように前をかき合わせた。 適当な位置にかごを降ろして、手頃な葉っぱを見繕う。俯いてはらりと落ちてきたキャラメル色―――朝の澄んだ空気の中で光を反射させる鉄錆色は、そんな綺麗な形容をしても遜色ないように思えてくる―――をかき上げてふと視線を上げると、大きな鳥の羽が目に入った。遠目に黒と白の色が目に入って、思わずはっとして駆け寄った。 しかし近くで見たそれは単に泥で汚れただけの薄灰色の羽根で、リディアは期待した分よけいに落胆した気分になってしまった。 そっと羽根を拾い上げて泥を払う。ほんの僅かな間だったけれど、自分と、そして今では正式な夫になったエドガーとの子どもだった小さな妖精の面影を感じて、懐かしくて切なくなった。 「元気かしら…」 吐息を付いて、空を見上げる。まさかそこら辺を飛んでいるなんて思わないけれど、たまには自分たちを思い出して、こっそりとでも覗きに来てくれていれば良いと思った。 「リディア、どうかした?」 私室の窓からぼんやりと暗くなった外を見ていたところに声をかけられて、リディアは自分がぼーっとしていたことに気付いた。 朝にあの羽根を見た時から一つのことがずっと頭から消えない。赤くなりそうな頬をぺしぺしと叩いて、何でもないわ、と笑い返した。 が、当たり前だがそんなことで誤魔化されてくれるエドガーではない。シャワー上がりのガウン姿で近づいてきて、ためらいもせずにリディアの髪に長い指を差し込む。 両手で頭を抱え込まれて、目をそらせなくなる。甘い甘い灰紫の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめてきて、心配げに首を傾げて息が触れるほどに顔を近づけてきた。 「今日は朝からずっとぼんやりしている。熱があるわけではなさそうだし…何か心配事でも?」 「そういうわけじゃ…」 気恥ずかしくてどうにか顔を背けようとするけれど、やんわりと押しとどめられてこめかみや瞼にキスを落とされる。 彼が納得するまで離してくれないのは判りきっているから、リディアはそうそうに諦めて、柔らかな口づけを瞼に受けて目を閉じたまま、エドガーの腕に手を伸ばす。 ガウンの袖を緩く握って、そのまま広い胸に凭れるように体を寄せた。 心配事と言うほどのものではないけれど、ティルのことを想い出してからずっと気を取られていることが一つあった。けれどそれを、彼の顔を見ながら言える自信がないので、胸に顔を埋めるようにしてエドガーの視線から絶対に赤くなっている顔を隠してしまう。 「あの、ね。ええと、変な意味にとらないで欲しいんだけど…」 「うん、何?」 体を寄せれば、背中に腕を回して更に体を寄せてくるのがエドガーだ。徐々になくなっていく二人の間の空間に、取る体勢を間違えたかしらとリディアは思った。 そんなことを思いながら、リディアは更に自分の首を絞めるも同然の発言をした。 「赤ちゃんが早くできるコツとか、あるの?」 多分半ば無意識に、柔らかなキャラメル色の髪を撫でていたエドガーの手がぴたりと止まる。 体を離してまじまじとリディアの顔を覗き込んだと思ったら、妙に淡々とした声音で、感慨深げに呟いた。 「リディアから誘ってくれる日が来るなんて」 「な、そんなこと言ってないじゃない!」 「だって、赤んぼうが欲しいんだったら、することは一つしかないじゃないか」 言って、ふわりとリディアを抱き上げる。器用に寝室への扉を開けて、リディアを抱えたままベッドの縁に腰を下ろした。 エドガーの言うことは正しい。確かにその通りだ。確かにその通りなんだけど、そんなんじゃない。 言った後で自分の発言の恥ずかしさに気付いて、沸騰しそうな頭でぐるぐると言い訳を綴ってみても、全然言葉にならなかった。 エドガーの膝の上に乗せられたまま、彼が愛おしげに背中を撫で、唇で顔の縁を辿る感触にパニックを起こしそうになる。 「エ、エドガー、だから、そういう意味、じゃ…!」 力の入らない手で申し訳程度に抵抗をしてもまったく意味がない。けれどエドガーは、リディアのあまりの狼狽ぶりに可哀想になったのか、くすりと吐息を漏らして華奢な体をやんわりと抱きしめ直した。 宥めるように髪の間に指を差し入れて、癖のない長い髪を梳いていく。 「出来やすい時期とかはあるみたいだけれど、コツって言うとどうなのかな。色々と試してみればその内わかるかもしれないけど」 悪戯げに流し目をくれるエドガーが明らかに楽しんでいるのを見て、きっと睨む。もう、羞恥心で倒れそうだ。 エドガーは珍しく軽く声を立てて笑い、熱を持って真っ赤になっているリディアの頬に口づける。 「でも、急にどうしたんだ? 今まではそんなに欲しがる素振りはなかったのに」 「家族が増えたら嬉しいとは、ずっと思ってたわ」 エドガーが聞く体勢に入ってくれたことにほっとして、少し体の力を抜く。出来れば膝からも降りたいのだが、腰に腕を回されているので動けない。 「朝にね、庭に羽根が落ちているのを見たの。最初コウノトリの羽根に見えて…結局は違ったんだけど、あの子を思い出しちゃって」 「ああ、ティルだね」 「…ちゃんと覚えてた?」 「忘れる訳ないじゃないか。僕たちの最初の子どもだ」 エドガーなら覚えているだろうと思っていたけれど、実際に本人の口からティルの名前を聞くと何だか嬉しくなって微笑んだ。 思うだけで胸が温かくなる存在がいるということを、彼と共有出来るのが嬉しい。ティルは本当の子どもではないけれど、それでもこんな強い影響力を持っている。 だから実際に子どもが出来たらどんな気分なのだろうと、ふと思ってしまったのだ。 不意にエドガーが耳元で囁く。さらさらした金髪がリディアの頬をくすぐった。 「それで、赤んぼうが、欲しくなった?」 「………」 静かに、でも弾んだ声音で問いかけられて、先の展開が見えたリディアはせめてもの抵抗にと黙り込んだ。口に出しても出さなくても、リディアの答えは決まっている。 「他ならない君の願いなんだから、全力を持って叶えなくちゃね」 言っている内容は非常にいかがわしいのに、その表情は無邪気な少年そのもので、リディアは思わず笑みを零す。 優しく口づけてくるエドガーの肩に腕を回して、自分からその唇をぺろりと舐めた。それを合図に吐息を深く混ぜ合わせる。 抱きしめてくる腕の力が強くなるに連れて息づかいも荒くなる。いつベッドに押し倒されたのかも意識できないまま、甘い夜に溺れていった。 いつかティルと出会えた奇跡のように、自分の中に尊い命が芽生えることを、強く強く願いながら。 +++ 何番のキリリクだったかメモるのを忘れてしまいまして…す、すみません…! エミさんのリクで、ティルのことを思い出して赤ちゃんが欲しいなーという感じになっているエドリディのお話でした! やはり裏まではいきませんでした。夜のお話、というのは裏という意味だったのでしょうか…もしそうならば申し訳ないです(><) エミさんのみお持ち帰りどうぞーリクをありがとうございましたv
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---Thanks 6,666 hits !------------------------------------------ のどかな昼下がり。 適度にとばりで遮られた光にあたりながら、稚羽矢は微妙に拗ねた表情でほけーっとした空気を満喫していた。 膝の上で丸まった猫の温度が心地よい。習慣化した動作で喉を撫でると、上機嫌に喉をゴロゴロ鳴らしてふに〜と鳴いた。 すっかり懐いた灰色の猫の機嫌とは裏腹に、稚羽矢はやはり微妙に拗ねた目で一点を見つめている。 さっきからずっとずっと見ているのに、こちらを振り向いてくれない狭也のことを。 むーっと頬をむくませてみるけれど、狭也が構っている相手が相手だけに不満は口に出せない。 稚羽矢が膝に乗せている猫と同じくらいの大きさの赤子を、狭也はずっと胸に抱いているのだから。 「狭也」 「なあに?」 呼びかけても振り向いてくれない狭也に、ますます稚羽矢はむくれそうになるが、次の瞬間に狭也が浮かべた笑顔に毒気を抜かれる。 「あ、ほら見て稚羽矢、笑ったわ」 ゆっくりと両腕に抱きしめた赤子を揺らしながら、頬を寄せて良い子ね、と囁きながら穏やかに笑う。 ぼんやりとその横顔に見とれていると、狭也はふと視線を上げて今し方赤子に向けた笑みとまったく同じ、心底幸せそうな笑顔で稚羽矢を見た。 「ややって不思議。ねえ稚羽矢、ずっと見ていても飽きないの」 ふふ、と無邪気でいて底知れない包容力を感じさせる笑みで笑う狭也に稚羽矢もつい、うんと頷いて微笑み返す。 「稚羽矢ももっと近くにいらっしゃいな。こっちの方が暖かいわ」 やっと狭也が構ってくれそうな雰囲気に稚羽矢の心が少し浮き立つ。無抵抗な猫を腕に抱き直して狭也の隣にいざり寄り、促されるままに我が子を覗き込んだ。 頬がふっくらとしてくりくりした瞳を忙しくなく動かしている様を見ると、これが生まれたての時に見た赤ら顔の小さな生き物と同じものだとはとても思えない。 こんな僅かな時の間にこうも変わるものなのかと、稚羽矢は稚羽矢で妙な感慨に包まれる。 狭也に寄り添うようにして赤子を覗き込み、じいっと見つめていると、狭也が吐息だけで笑みを零して稚羽矢の肩にもたれかかってきた。 猫を膝に降ろした稚羽矢が自然な動作で受け入れ支えると、狭也が手を貸して、と稚羽矢を見上げてくる。 空いている手を狭也に取られ、赤子の小さな、本当に小さな手のひらを突くように触れると、思いがけない素早さできゅっと握りかえしてくる。 目を見開いて思わず反射的に手を引くが、予想に反して赤子の手は離れない。面白くなって、ぶらぶらと小さな手を揺らすように指を動かすと、きゃっと甲高い声を上げて赤子が笑った。 「笑った」 「稚羽矢もやっと笑ったわ」 え、と狭也を見遣ると少し困ったようにくすりと笑った。そのまま赤子の額に唇を寄せて、あなたの父上は困った人ね、と呟いた。 ぱちぱちと瞬きをしてその光景を見ていた稚羽矢は、ああ、気付いてくれていたんだとぼんやり思う。 膝と、腕から肩にかかる優しい温もりがじんわり体の内側に染みていく。狭也の頭に頬を寄せるようにして赤子の顔を覗き込むと、小さな瞳が確かに稚羽矢を捉えて、うーと不明瞭な声を上げる。 掴まれたままの指をまた少し揺らしてやると、それだけで楽しそうな声を上げる赤子の様がとても透明に澄んで見えて、ああ愛おしいなと柔らかく笑んだ。 「狭也」 「なあに?」 狭也はこちらを見ない。けれど無防備に預けられた体から伝わる熱はとても心地よくて安らかで、稚羽矢は上機嫌ににっこり笑って狭也のこめかみに口づけた。 +++ 紫さんのリクより「ちーさやでややに嫉妬する稚羽矢」でしたv が、出来上がってみると赤ちゃんに嫉妬と言うよりは狭也に構って貰えなくて無言でむくれる稚羽矢というか…お、同じ事ですよね…!(笑) なにげに灰色のにゃんこをレギュラー入りさせようと目論んでいます。稚羽矢は常に猫とか小鳥とかと戯れていればよいですよ…! あと馬と。 こんなんでよろしければ、紫さんのみお持ち帰りどうぞ! キリ番踏んでくださってありがとうございましたーvv
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---Thanks 9,000 hits !------------------------------------------ ぱたぱたと軽い音を立てて、外に面した廊下を走っていると、欄干が途切れたところに見慣れた姿を見つけた。 穏やかな空気をまとって、麗しい眼差しを景色に溶け込ませているのは、彼が敬愛してやまない父王だ。昼間になんて滅多に見ることができないその姿に思わず嬉しくなって、ぱっと顔を輝かせる。 「ちちうえ!」 けれど感情そのままに飛びつくには照れが勝って、走る速度を少しずつ落とした。ぶつかる手前で足を止めると、眼差しをいっそう緩めた父王はゆるりと首をかしげて、優しく手のひらを差し出す。 「どうした? そんな所にいないでこちらへおいで」 「はい!」 ぽんぽんといつものように自分の膝を示す父に少しくすぐったく思いながらも意気揚々と頷いて、膝の上に腰を下ろす。ふわりと草の匂いがして、気持ちよさに思い切り息を吸い込んだ。 「なにを見ていらっしゃったのですか?」 「空を。雲が丸く浮いて、穏やかだろう? 気持ちがよくてぼんやりしていた」 父も母も、何もせずにぼんやりする時間が好きだ。空を愛で、大地を愛で、豊葦原を見つめている。 自分の頭越しに父王が空を見上げる気配を感じて、穏やかな気持ちを壊してしまったのではないかと、恐る恐る振り返った。 「…おじゃまでしたか?」 間近で見る父はとても綺麗で、それがくすりと笑んだものだから、彼にはまるでそこで光が弾けたように見えた。 「そんなことはない。あなたの顔が見られてとても嬉しい」 その声がとても柔らかくて優しくて、嬉しさに頬を染めながら、なんだかむずがゆくて意味もなくすわっている膝をぺしぺしたたく。朝に母の膝に座っていたこともあって、手触りの違いにあれ、と思った。 「ちちうえのお膝はかたいのですね、押してもびくともしません。ははうえや乳母のお膝はもっとやわらかいんですよ」 「女人の身体は柔らかいものだそうだよ…あなたの頬も柔らかいな」 いたずら気に言って、ふにふにと頬をつつかれる。そうされること自体は別に不快でもなんともないが、言われた内容に愕然とした。 「わたしは、にょにん、なのですか?」 目を真ん丸く開いた自分の顔が、同じく目を瞠った父王の瞳に映る。が、次の瞬間、父王は声を立てて笑い出した。 「童も柔らかいものだそうだよ」 くすくすと笑って頭をなでられる。左右に振り分けて結っただけの髪がかすかに揺れた。 「…大きくなればちちうえのように、たくましくなれますか?」 「あなたなら、わたしなどよりもっと」 笑みを含んで、しかし穏やかに紡がれる言葉に胸が弾む。父が断言してもらえれば、何がなんでも絶対に叶う気がしてくる。 「ほんとうに?」 「もちろん」 念を押した声にしっかりと頷かれて、とても嬉しくなった。ぺたぺた膝を触っていると、身じろぎを繰り返したせいでずり落ちかけていた体を抱えなおされた。 「母上の膝の方が気持ち良いだろう?」 確かに。あの柔らかさと気持ちよさは誰の膝も敵わないと思う。 「ええと…でも、ちちうえのお膝もすきです。ははうえのお膝にいるとほっとして眠たくなりますが、ちちうえのお膝にいると元気になれる気がします。あ、でも…」 「ん?」 「乳母のお膝は少しそわそわします。ははうえよりもかたくて」 「そうなのか?」 父王が知らなかったことを自分が知っていたということで、驚きながらなんとなく誇らしくなってしまった。気持ち胸を張って頷く。 「さわってみると、わかると思います」 「そうか…それでは残念だがわたしにはわからないままだろうな。みだりに女人に触れると狭也が怒るから」 呟くように言われた言葉にまたまた愕然として目を見開いた。どきどきして汗が出て、さあっと顔が青ざめていく。 「さわってはいけないのですか!? ど、どうしよう…」 一気に涙目になった彼に驚いたように、父王は、え、と呟いて、落ち着かせるように肩を手のひらで包んでぽんぽんと叩いた。 「あなたは大丈夫だ。たくさん触れておきなさい」 ぽんぽんとゆっくりとした手つきで宥められながら、言っている意味がよくわからなくてきょとんとした。 「…では、ちちうえはなぜいけないのですか?」 「さあ、なぜだろう」 「ははうえも、にょにん、ですよね?」 「もちろん。狭也は特別だよ」 ますます意味がわからない。顔中でわからないと表現して父王を見上げると、彼は相変わらず穏やかな顔をしていた。微笑んで、何度も優しく撫でてくれる。 「人には温もりがある。それはとても優しいものだ。あなたは優しくされるのが好きではないか?」 「すきです。うれしい」 「だから、たくさん触れるといい。あなたにも温もりがある。触れた相手を嬉しくさせる」 父王の言葉を胸の中で何度か繰り返すと、なんとなくじわじわと暖かいものが自分の中で広がっていくようだった。おずおずと見上げて、ぺたり、と父王の腕に触る。 「…いまも?」 「今も」 ぎゅっと抱きかかえられて、とてもとても嬉しくなった。にこにこと笑って、足をばたつかせる。大きな声を出すのは行儀が悪いと窘められていたから、それは我慢する。 「そして、狭也は特別なんだ。狭也に触れると波にさらわれるような気分になる。狭也以外では起こり得ない。この感覚を知ってしまったから、きっとわたしは他の女人に触れてはいけないのだろう」 「なみ…ですか?」 数えるほどしか見たことがない、怖いくらいに大きく広がる水たまりを思い浮かべる。けれどそれと母がどうやって結びつくのかがわからない。 「あなたにはまだわからないと思う。わたしも知ったのは大分経ってからだから」 考え込んだ自分の頭に、ぽん、と手のひらを置いて、抱きかかえていた腕を離した。 「さあ、そろそろ行きなさい。探しに来る頃だろう」 「え」 「わたしも剣の稽古を抜け出しては怒られていた」 廊下を走る、という無作法なことをしていた理由はばればれだったらしい。悪いことをしているという自覚はあるので、思わずうなだれる。 「ごめんなさい…」 それにまた父王はくすりと笑って、そっと手のひらで促した。 「怒ってなどいない。さ、行きなさい。狭也の声がする」 耳を澄ましても彼にはわからなかったが、父王が言うのならそうなのだろうと、気合を入れて膝から降りた。怒らせると怖いのは、父よりも母の方だ。 「見つけた。また抜け出してしまったのね」 腰に手を当てて、もう、と息をつく母はそんなに怒ってはいないらしい。そのことにほっとして、ちょこんと小さな頭を下げた。 「ごめんなさい」 すると母の柔らかい手が頭に触れる。大きさも感触もぜんぜん違うけれど、父と同じように優しい手つきで撫でられることをくすぐったく思う。 「仕方がないわね、父上の子だもの。あの人もよく抜け出していたのよ」 苦笑しながら言う母親を見上げて、同じことを言ってる、と思った。口調はどこまでも優しくて、彼は心底ほっとした。差し伸べられた手を小さな手できゅっとつかむ。 「さ、おいで。科戸王も投げてしまったわ。今日はおしまい。久しぶりに母上とお話しましょう。次のお稽古の時にきちんと謝っておくのよ?」 母の手のひらを握るには自分の手はまだ小さすぎて、仕方なく指を3本くらい一気に握る。この手が父よりも逞しく、大きくなることなど本当にあるのだろうかと不思議に思う。 ゆっくりと歩き出した母の横をちょこちょこと歩きながら、転ばないように足元を気にかけつつ、懸命にその顔を見上げる。柔らかい、優しい母の顔。父が弾ける光なら、母は穏やかに包む光だと思う。 「ははうえ」 「なあに?」 「ちちうえが、ははうえに触れるとなみにさらわれると、おっしゃったんです。でも、わたしは触れてもなんともない」 歩調が乱れて、母の足が止まりそうになる。驚いたように彼を見た母は、少し頬が赤くなっているように見えた。 「父上がそんなことを?…稚羽矢ったら」 「ははうえ?」 照れくさそうな笑みを浮かべて、またゆっくりと歩き出す。肩から流れる細い布が風になびいて、つながれた彼の腕をくすぐった。 「そうね、あなたにはまだわからないかもしれないわね。父上がおっしゃったのは、恋しい人を想うということよ。数多いる人の中から自分だけのたった一人を見つけ出すの」 「えと…」 「心配しなくてもその内にわかるわ。あなたの背があたしを追い越す頃までには」 ふわりと笑む母の顔を見上げて、しっかりと頷いた。 「では、すぐに追い越します」 その言葉にますます母の笑みが深くなる。ふふ、と声を漏らして、幸せそうに頷いた。 「ええ、あなたがどんな人を好きになるのか、今からとても楽しみだわ」 +++ 9000を踏んでくださった桐さんのリクより、「ほのぼのなちーさや(子供と戯れるとか)」でした(><)子供の前でのろけるちーさんでした。 とても捏造したお子様が出張るお話になってしまい…こ、こういうのでよかったのかな…!よろしければお持ち帰りくださいな(><)リクありがとうございましたv
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---Thanks 31,000 hits !----------------------------------------- 深い海底へとどこまでも沈んでいきながら このまま溶けてしまうんじゃないかと そう 思った そこは不思議な場所だった。 湛えられた水は確かに塩辛くほろ苦いはずなのに、彼が舌先で舐め取るたびに、それは極上の甘露へと変わる。 恍惚を覚えるほどの甘さを呑み込むたびに喉が渇き、いくら舐めてももの足りず、この渇きをどうにか満たそうとすればするほど、身体は飢えた獣のようになる。 音を立てて、波に呑まれる。 心地よい水圧に押し潰されながら、広大な海に溺れていく。 息が出来ないことなど気にならなかった。思うままに肺を膨らまし、飢えよ満ちろと水をすする。 外側を包まれているだけでは物足りない。空気で満たされるべき肺に海水を送り込んで、血液の代わりに甘露が身体中を巡ればいいとすら思う。 それはきっと、想像を絶するほどのエクスタシーだ。文字通り、天国へまでも昇れるかもしれない。 それが幸せか不幸せかも考えず、彼はうっとりと目を細める。どこが上なのかも判らない深海で、波の動きにゆらゆらと揺れながら差し込む、淡い光の帯を見る。 鮮やかなエメラルドグリーンに差し込むのは、美しい黄金の光だ。彼の身体を横切るたびに、それを抱きしめようと緩慢に腕を伸ばす。 不可蝕の光を、揺るぎなく包み込み続ける大海の水を身体中で抱きしめて、背中を丸め、足をたたんだ。 羊水にくるまれた胎児のような格好になり、そっと瞳を閉じる。 心地よくて、優しい世界。温かくて、しあわせな世界。 ゆらりゆらりと波に揺られながら瞳を閉じると、自分と外界との境界線が曖昧になる。 あり得ないほどの一体感に、彼は顔を綻ばせて無邪気に笑った。 さあ溶けてしまおう。余すところ無く。溶けて、混ざって、一つになって。 もし再び存在を分かつことがあっても、互いの中に互いの一部が、ほんの少しでも残るといい。 抱きしめた大海が、柔らかく彼の腕を押し返すように少しずつ具体化し、彼に自身の形を教える。 彼よりも小さくて、華奢で、柔らかくて、とんでもなく良い香りがするその形。 さらさらとまとわりつくように触れる柔らかいものは彼女の髪。 手のひらにしっかりと収まってしまう丸い曲線は彼女の肩。 滑らかな曲線を描きながらしなやかに伸びていくのは彼女の背中、そして腰。 大海は彼の腕に収まるほどに小さくなり、彼はそれを抱き込んでますます彼女に身を寄せた。 幸せな夢から覚めるのが惜しい。彼女の海の中で漂い続けるのは、どれほど心地良いだろう。 だけど、と、醒めてきた理性が彼に囁く。 包まれているだけでは愛を交わすことは出来ない。微笑みあうのも、口説くのも、真っ赤な頬に口づけるのも、夢の中では成し遂げられない。 夢の余韻を振り切って、彼は身体に力を入れた。緩慢に瞼を上げ、何度か瞬きして焦点を合わせる。 暗い部屋の中でもはっきり見つけられる、彼女のあどけない寝顔を見つめて破顔した。 愛しい人。最愛の女性。やっと手に入れた彼女をこうして腕に抱いていられるなんて、これ以上ない幸福があるだろうか。 ぼんやりとした頭でただ今の幸せを想い、彼女が苦しがらない程度にまた抱き寄せて、カモミールの香りを放つ柔らかな髪に顔を埋めた。 もう夢なんて見なくていい。 ただずっと、彼女が僕の隣にいてくれればいい。 まだ遠い朝に向けて、明かりが灯されない寝室に二つの寝息が密やかに満ちた。 +++ 目を開けると、変わらずにおいしそうなキャラメル色の髪がそこにあった。部屋が明るくなった以外は夜中に目が覚めた時と何ら変わらない情景に、ふと目を閉じたのはほんの一瞬だったのではないかと錯覚する。 柔らかい手触りの髪をそっと撫でて、可愛らしいつむじをぼんやりとしたまま見下ろした。 優しく包んでくれる広大な海はもうどこにもないけれど、代わりにこんなに愛しく想う大切な人が腕の中にいる。 髪に隠れて半分しか見えないけれど、穏やかな寝息を立てる小さな顔が、吐息の音を聞けるほど近くにある。細い肢体を囲っている手をそっと滑らせれば、しっとりと吸い付くような感触を感じる。 広いベッドの上で互いに何も身につけずに、これでもかというくらいにくっついて、彼女の温もりがほんのひとかけらでもシーツに染みこませるのが惜しいと感じている自分に苦笑した。 薄い肩に散った髪を払ってやれば、赤い痕がいくつも覗いた。首筋はもちろん、白い二の腕や胸元にも赤い花は鮮やかに散り、彼はそれを見て唇で感じた柔肌の感触を思い出して目を細める。 今目の前にある状況すべてが昨夜の行為を暗に語り、実際に彼自身、目を閉じれば容易に思い出すことができるのに、しどけなくもあどけない姿で眠る彼女を抱いていても、燃えるような欲望は不思議なくらい感じない。 ただとくとくと響く命の振動を華奢な背中に当てた掌で感じながら、溢れて止まらない愛しさに浸るだけだ。 「―――リディア」 そっと、名前を呟く。 世界が淡い薔薇色に染まっていくようだった。 心が浮き足立って止まらない。音を立てないように静かに笑いながら、頬を寄せた髪に口づけた。 無理に起こすような真似はしたくないけれど、早く金緑の瞳を覗き込みたい。一日の始まりを灯す朝日の中で、彼女の瞳はどれほど神秘的に輝くだろう。 押し当てた唇を少しずつ下へと滑らせていく。可愛らしい唇に辿り着くのが先か、彼女が目を覚ますのが先か、と悪戯げに考えていたのだが。 前髪を払って穏やかに眠る彼女に残る、幾筋もの涙の跡を目の当たりして、思わず固まってしまった。 行為の最中に女性が涙を流すことなんて別に珍しくも何ともないと経験で判っている、判っているのだが、リディアと、そして自分の性格を判っているが故に彼は思わず冷や汗を掻きそうになった。 もしかして本気で嫌がっているのに気付かずに夢中になってしまったんじゃないかとか、痛みを堪えているのに気付いてあげられなかったんじゃないかとか、挙げ句の果てにはこのまま嫌われてしまったらどうしようというところまで思考が飛躍しかけるのを、なけなしの強気で懸命に押しとどめる。 女性と一夜を伴にした後に何でこんなに情けなく狼狽えなくてはいけないのだろう。リディアが相手だとどうしてこうスムーズにいかないんだろうと想いながら、落ち着く為に目をつぶってゆっくりと呼吸をする。 暗がりの中で見たリディアの表情や、耳に残って離れない艶やかな声を思い出す。快感は分かち合えていたと確信できる、けれど。 彼が感じた充足感を、リディアも感じてくれていたのだろうか。 腕に抱え込んだ柔らかな肢体を身体で感じ、指通りのいいキャラメル色をもてあそびながら、悩ましげにリディアを見る。 すると淡く差し込んできた陽の光を眩しく感じたのか、彼女は小さく吐息を漏らして寝返りを打とうとした。あ、と思った時にはもう遅く、彼の腕に阻まれて動くことが出来なかったリディアは可愛らしい声で軽く呻いて、金緑の光を彼の前に現した。 出会った瞬間から彼を魅了して止まない神秘的な瞳がぼんやりと、自分を抱きしめて横たわる男性の姿を映す。 扇情的な灰紫に焦点を定め、彼自身もリディアの瞳の中に自分の姿を確認できた時、彼女は唐突にばちっと目を見開いた。 「リディ…」 「、や…!」 不安に駆られて腕の力を弱めていたエドガーを難なく振りほどき、リディアは彼に背を向ける。 肩胛骨が浮き上がる白い背中を強張らせて、彼から目を背けるようにシーツに顔を埋めてしまったリディアを前に、思わず呆然と固まってしまった。 しばし硬直した後、固まっている場合ではないと我に返る。そっと肩に手を乗せるとびくりと震えられて思わずめげそうになったが、優しく包み込むように手のひらで肩を抱き、怖がらせないように小さな声で呼びかける。 「リディア…?」 ああ、何て情けない声だろう。 自分でもそう思ったくらいだから、リディアにはことさら情けなく、頼りなさげに聞こえたのだろう。ぴくりと背中を震わせて、躊躇うような間があった後でおずおずとこちらを振り向いた。 上掛けをぎゅっと抱きしめて、身体はおろか顔の半分までもを隠してしまっているが、そこからそっと彼を伺う視線には拒絶の色はなくて、その事実に一気に身体から力が抜けた。 「リディア」 恥ずかしがっているだけだということが判って、顔中に微笑みが浮かぶ。ついさっき自分を落ち込ませた、彼から逃げ出そうとする仕草さえ愛おしく思えるから我ながら現金なものだ。 さりげなく細い身体に腕を回して彼女を囲い、ゆっくりとした動作で顔を近づけて額に口づける。頬を撫でて、顔を見せてくれるように促すと、ぱちぱちと瞬きをしたリディアは彼の望む通りにしてくれた。 シーツを握りしめる指の強さは変わらないけれど、顔に唇を触れさせるたびに彼女の身体から力が抜けていくのが判る。 「おはよう、リディア」 自分の身体に押しつけるようにしてきゅっと抱きしめると彼女は驚いたように息を呑んだが、微笑みが浮かぶのを抑えられない緩んだ顔でリディアを覗き込むと、少し戸惑うようにしながらも微笑み返してくれた。 はにかんだ笑みに惹かれてまた軽くキスを落とす。くすぐったそうに身を捩るのが可愛くて、じゃれつくように唇を寄せた。 「ちょっと、もう…」 くすくすと笑いながら軽く胸を押されて、素直に身体を離す。本当は腕も足も絡めて全身で彼女を感じたいところだけれど、二人の間に空間を作り、放たれる熱が混じり合う様を肌で感じるのも悪くない。 身体を離したことでよく見えるようになったリディアの顔はまだ赤らんでいたが、穏やかに笑ってくれていることにとてつもない安堵と、幸福を感じた。 吐息で笑いあいながら、顔に乱れかかった髪を払ってやると、その動きにあわせてそっとリディアが視線を上げる。 きらきらとひかる緑の瞳に、無防備に笑う自分を映して目を細めた。 「あの、エドガー」 「うん?」 「ええと…おはよう、ございます」 「うん」 目を合わせるのも恥ずかしいという風にもじもじと口ごもるものだから、可愛くて可愛くてたまらない。 破顔して唇の脇に口づけを落とし、驚いたように顔を上げるリディアの視線を絡め取る。 「おはよう、僕の妖精」 唇が触れあうほどの近さで囁いてから、頬を染めてそっと瞼をおろした愛しい人に愛してると呟いて、柔らかく啄むようなキスを贈った。 深い海底へとどこまでも沈んでいきながら この身体は宙を漂うように軽くて 一つになれなかった二つの身体を寄せ合わせて ただ肌をあわせる心地よさに酔いしれる さあ、溢れんばかりの愛情に身を浸し 幸福の海へと溺れていこう +++ 31,000のキリ番を踏んでくださった玲央奈さんに捧げますvらぶらぶしすぎだよ、のリクに応えられているのかいないのか…ううむ、実際的な絡みが少し少ないかなあと思いつつ、モンモンと悩む乙女エドガーをお楽しみください(爆) ではでは、落書帳31,000ヒットありがとうございましたv
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