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作品ID:159
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約3585文字 読了時間約2分 原稿用紙約5枚
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こちらの作品には、暴力的・グロテスクな表現・内容が含まれています。15歳以下の方、また苦手な方はお戻り下さい。
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / R-15 /
あるせかいのおはなし(仮)
作品紹介
唐突に頭に浮かんだ物を文章にしてみました。
どんなものに仕上がったのか……感想をいただければ嬉しいです。
年齢制限はどこからR15なのか分からなかったので一応つけておきました。
つけなくてもいいんじゃない?という場合は外します。
どんなものに仕上がったのか……感想をいただければ嬉しいです。
年齢制限はどこからR15なのか分からなかったので一応つけておきました。
つけなくてもいいんじゃない?という場合は外します。
――あしがおもい
――からだが、おもい
――ああ、せかいがはいいろ。
「おはよー」
「……はよ」
いつもと変わらない朝。
気だるい身体を引きずるようにして起き、重い足を無理矢理前に動かして毎日同じことを繰り返す学校、変わり映えのない話をするクラスメイト達の群れへと身体を押しこむ。
灰色の世界。
ニンゲンの顔がわからない、とトモダチに零したことがある。はづき、という名前だったはず。ひらがなではづき。
人の見分けがつかないんだ、と。
灰色の人影で、多少太ってるとか痩せてるとか、背が高いとか低いとか。その程度ならわかるけど、顔の区別がつかない、って。
『そんなわけないでしょ』、と一笑に付された。
君ノ顔モ分カラナイノニ、声ダケガ辛ウジテ分カルクライナノニ――。
「きりーつ。れーい、着席ー」
誰だかわからない、無機質な声が鼓膜をたたく。
あれ、今日の日直ははづきだったはず。
あれ、あれ、あれ、あれ、どうして。
「……わから、ない」
「どしたの?」
「……声が……ううん、何でもない」
「そ?」
いまかいわしたひとだはだれ?
はづきだよね?
うそだ。うそだ。うそだうそだうそだうそだありえない。
どうして。なんとか声だけは聞こえてたのに。
灰色の世界で唯一色をもったものが音だったのに。
――ああ、世界が灰色だ。
ズキン、と足が痛んだ気がした。
そしてその日から、食事をしても味がなく、砂をかむような、拷問のような食事になった。気付いたのは夕飯。朝は食べなかったから気付かなかった。
声も、食べ物も、世界も――色を失っていった。
ずっとずっと身体が重かった。
重い重い足を引きずって今日も灰色の世界を学校に向かって歩く。
時々、ゆっくりと進む私を追い抜いていく人たちがいて、たぶん同じ学校の生徒だと、ぼんやり思う。
ここは基本的に学生が登下校に使う以外、通る人がほとんどない、珍しい道。
けど、今日は学生の流れに逆らってくる人がいた。
ちょうど、私の隣を通っていった。
「――アシが重いのね」
小さく、呟いて。
雑音のように聞き流していたけど。
どうでもいいことだったから。
ただの『オト』だったから。
いつものように学校に着いて、クラスに入って、自分の席に座る。
いつもと変わらない行動を取って、へたり込むように鞄を引っかける。
「おはよー……ってどうしたの、それ!」
「おはよ。……何が?」
「足。血ぃ出てる」
「……え?」
言われて、自分の足を見てみると、両足とも、太腿を一周するような形で、何重にも何重にも傷が重なっていた。
上手く切れなくて無理やり引っ掻いたような、そんな傷。
――灰色の世界に、それは酷く鮮烈に、赤く、紅く、不吉なまでに美しく映えていた。
その日、病院に連れて行かれ、軽く治療をされて、家で寝た。
ゆめで、あかくあかく塗り潰された視界が、次の日起きてもまだ、目に焼き付いていた。
アカい夢を見た日の朝、すれ違ったおばあさんに「灰色の世界は色づくわ」と言われ、ここでようやく、少しおかしいと思った。
どうして、私が灰色の世界を見ていると知っているのだろう。
どうして、足が重いと思っていると知っているのだろう。
――きがついて、疑問に思った時はもう遅かったのかもしれない。
「ど、どうしたの!?」
はづきに、恐怖の叫び声を上げられた。
クラスのみんなが気付いて、悲鳴を上げた。
はづきの視線を追うと、私の足。
昨日と同じ、傷の場所。
そこが、今にも千切れそうに血を滝のように流していた。
肉がえぐれ、血が滴り、白い、赤とのコントラストが目に痛いほど白い骨が覗いて。
筋肉の繊維や神経。鮮烈なほど鮮やかに、私の眼に映った。
……あれ?どうして、私は気付かなかったんだろう?
どうして、歩いてる間、誰も何も言わなかったんだろう?
どうして、クラスの皆は最初、気づかなかったんだろう?
こんなにも、すさまじい有様なのに。
ホームルームのために来た先生が、驚きの声を上げて、すぐ携帯を取り出して救急車を呼んでいた。
そんなことも傷の痛みも遠く、特に痛みなんてほとんど感じないくらいで。
全てが灰色の世界に塗り潰されていくのを感じた。
けど、傷だけが妙に鮮烈に赤く、その時はすれ違った不思議な人のことも忘れていた。
大騒ぎになったクラスを、額縁の外から眺めるような感覚で傍観する。
ふ、と側に寄ってきた女子が、耳元で囁いた。
「はいいろのせかいから、おもいあしから、解放してあげるわ――」
唐突に、世界に色が戻った。
ざあっと音を立てる勢いで。目に痛いほど、色が飛び込んできた。
唐突に、人の顔がわかるようになった。
ああ、こういう顔をしていたんだ、とクラスの子達を見て思う。
唐突に、音が正常に戻った。
綺麗な音。クリアな音。
唐突に、身体が軽くなった。
凄い。今なら空も飛べそうな――
……あ、れ
そら
とんで
「ぁぁぁぁぁぁっ!」
否定。
違う。
落ちてる――!?
重い衝撃が息を詰まらせる。
次に耳に届いたのはとさり、と自分が落ちたとは思えないほど軽い音。
担架で運ばれる最中、私はどうやら落ちたらしい。階段を下りている途中だったらしい。
そんなこともわからないほど、意識がおかしくなっていた。
「お、おい足が――っ!」
救急隊員のひとのこえ。
どうしたの?
あしが、どうかしたの?
「いきなりどうして……!」
「早く! 急げばまだ間に合うっ」
「気を確かに! 落ち着いて!」
どうしたの?
わたしは落ち着いてるよ。
ふとずらした視線の先。
見覚えのある靴をはいた、太腿から切り落とされたかのような両足。
「……え?」
乱雑に、ノコギリで切られたかのようなそれ。
わたしの、あし――?
そして唐突に、担架で空中に浮かんでいる私にもわかるくらい、大きな横揺れが来た。
足がない私には、到底抵抗できないほど、大きな揺れ。
足が落ちたから担架の上で固定されていた私でもそうなのだから、救急隊員の人たちなどひとたまりもないだろう。
担架ごと、私は投げ出された。
担架と私の重さ、重力。何がどう作用したのか私にはわからないけど、妙な放物線を描いて、私はガラスを突き破った。
階段を降り切った辺りには、大きな窓がある。それを突き破って、二階の高さから、私は落ちた。
一瞬のような、一時間のような、時間を経て、私は右肩から地面に叩きつけられた。
骨が砕ける鈍い音と、血肉がはじける軽い音。
息が詰まって、視界が赤く紅く、染まった。夢のように、深紅の世界になった。
「――ね? 灰色でもないし、足も重くないでしょう……?」
何度も姿を変え、声だけは同じのまま耳に届いていたあの不気味な声。
ここでようやく、私はそれが、誰の声かわかった。
――はづきのこえだ
学校中が、騒然としたような音が、認識された気がした、ところで私の視界は赤から黒に切り替わり、意識もテレビの電源を引っこ抜いた時みたいに、途切れた。
――プヅン――と機械的な音が頭に響いた、気がした。
「朝よ、起きなさい!」
……あれ、何か、変な夢――
いつものように起こされて、遅刻しそうになるのに慌てながら学校へひた走る。
ふ、とすれ違った人影が「――身体、軽い?」と呟いた気がした。
――からだが、おもい
――ああ、せかいがはいいろ。
「おはよー」
「……はよ」
いつもと変わらない朝。
気だるい身体を引きずるようにして起き、重い足を無理矢理前に動かして毎日同じことを繰り返す学校、変わり映えのない話をするクラスメイト達の群れへと身体を押しこむ。
灰色の世界。
ニンゲンの顔がわからない、とトモダチに零したことがある。はづき、という名前だったはず。ひらがなではづき。
人の見分けがつかないんだ、と。
灰色の人影で、多少太ってるとか痩せてるとか、背が高いとか低いとか。その程度ならわかるけど、顔の区別がつかない、って。
『そんなわけないでしょ』、と一笑に付された。
君ノ顔モ分カラナイノニ、声ダケガ辛ウジテ分カルクライナノニ――。
「きりーつ。れーい、着席ー」
誰だかわからない、無機質な声が鼓膜をたたく。
あれ、今日の日直ははづきだったはず。
あれ、あれ、あれ、あれ、どうして。
「……わから、ない」
「どしたの?」
「……声が……ううん、何でもない」
「そ?」
いまかいわしたひとだはだれ?
はづきだよね?
うそだ。うそだ。うそだうそだうそだうそだありえない。
どうして。なんとか声だけは聞こえてたのに。
灰色の世界で唯一色をもったものが音だったのに。
――ああ、世界が灰色だ。
ズキン、と足が痛んだ気がした。
そしてその日から、食事をしても味がなく、砂をかむような、拷問のような食事になった。気付いたのは夕飯。朝は食べなかったから気付かなかった。
声も、食べ物も、世界も――色を失っていった。
ずっとずっと身体が重かった。
重い重い足を引きずって今日も灰色の世界を学校に向かって歩く。
時々、ゆっくりと進む私を追い抜いていく人たちがいて、たぶん同じ学校の生徒だと、ぼんやり思う。
ここは基本的に学生が登下校に使う以外、通る人がほとんどない、珍しい道。
けど、今日は学生の流れに逆らってくる人がいた。
ちょうど、私の隣を通っていった。
「――アシが重いのね」
小さく、呟いて。
雑音のように聞き流していたけど。
どうでもいいことだったから。
ただの『オト』だったから。
いつものように学校に着いて、クラスに入って、自分の席に座る。
いつもと変わらない行動を取って、へたり込むように鞄を引っかける。
「おはよー……ってどうしたの、それ!」
「おはよ。……何が?」
「足。血ぃ出てる」
「……え?」
言われて、自分の足を見てみると、両足とも、太腿を一周するような形で、何重にも何重にも傷が重なっていた。
上手く切れなくて無理やり引っ掻いたような、そんな傷。
――灰色の世界に、それは酷く鮮烈に、赤く、紅く、不吉なまでに美しく映えていた。
その日、病院に連れて行かれ、軽く治療をされて、家で寝た。
ゆめで、あかくあかく塗り潰された視界が、次の日起きてもまだ、目に焼き付いていた。
アカい夢を見た日の朝、すれ違ったおばあさんに「灰色の世界は色づくわ」と言われ、ここでようやく、少しおかしいと思った。
どうして、私が灰色の世界を見ていると知っているのだろう。
どうして、足が重いと思っていると知っているのだろう。
――きがついて、疑問に思った時はもう遅かったのかもしれない。
「ど、どうしたの!?」
はづきに、恐怖の叫び声を上げられた。
クラスのみんなが気付いて、悲鳴を上げた。
はづきの視線を追うと、私の足。
昨日と同じ、傷の場所。
そこが、今にも千切れそうに血を滝のように流していた。
肉がえぐれ、血が滴り、白い、赤とのコントラストが目に痛いほど白い骨が覗いて。
筋肉の繊維や神経。鮮烈なほど鮮やかに、私の眼に映った。
……あれ?どうして、私は気付かなかったんだろう?
どうして、歩いてる間、誰も何も言わなかったんだろう?
どうして、クラスの皆は最初、気づかなかったんだろう?
こんなにも、すさまじい有様なのに。
ホームルームのために来た先生が、驚きの声を上げて、すぐ携帯を取り出して救急車を呼んでいた。
そんなことも傷の痛みも遠く、特に痛みなんてほとんど感じないくらいで。
全てが灰色の世界に塗り潰されていくのを感じた。
けど、傷だけが妙に鮮烈に赤く、その時はすれ違った不思議な人のことも忘れていた。
大騒ぎになったクラスを、額縁の外から眺めるような感覚で傍観する。
ふ、と側に寄ってきた女子が、耳元で囁いた。
「はいいろのせかいから、おもいあしから、解放してあげるわ――」
唐突に、世界に色が戻った。
ざあっと音を立てる勢いで。目に痛いほど、色が飛び込んできた。
唐突に、人の顔がわかるようになった。
ああ、こういう顔をしていたんだ、とクラスの子達を見て思う。
唐突に、音が正常に戻った。
綺麗な音。クリアな音。
唐突に、身体が軽くなった。
凄い。今なら空も飛べそうな――
……あ、れ
そら
とんで
「ぁぁぁぁぁぁっ!」
否定。
違う。
落ちてる――!?
重い衝撃が息を詰まらせる。
次に耳に届いたのはとさり、と自分が落ちたとは思えないほど軽い音。
担架で運ばれる最中、私はどうやら落ちたらしい。階段を下りている途中だったらしい。
そんなこともわからないほど、意識がおかしくなっていた。
「お、おい足が――っ!」
救急隊員のひとのこえ。
どうしたの?
あしが、どうかしたの?
「いきなりどうして……!」
「早く! 急げばまだ間に合うっ」
「気を確かに! 落ち着いて!」
どうしたの?
わたしは落ち着いてるよ。
ふとずらした視線の先。
見覚えのある靴をはいた、太腿から切り落とされたかのような両足。
「……え?」
乱雑に、ノコギリで切られたかのようなそれ。
わたしの、あし――?
そして唐突に、担架で空中に浮かんでいる私にもわかるくらい、大きな横揺れが来た。
足がない私には、到底抵抗できないほど、大きな揺れ。
足が落ちたから担架の上で固定されていた私でもそうなのだから、救急隊員の人たちなどひとたまりもないだろう。
担架ごと、私は投げ出された。
担架と私の重さ、重力。何がどう作用したのか私にはわからないけど、妙な放物線を描いて、私はガラスを突き破った。
階段を降り切った辺りには、大きな窓がある。それを突き破って、二階の高さから、私は落ちた。
一瞬のような、一時間のような、時間を経て、私は右肩から地面に叩きつけられた。
骨が砕ける鈍い音と、血肉がはじける軽い音。
息が詰まって、視界が赤く紅く、染まった。夢のように、深紅の世界になった。
「――ね? 灰色でもないし、足も重くないでしょう……?」
何度も姿を変え、声だけは同じのまま耳に届いていたあの不気味な声。
ここでようやく、私はそれが、誰の声かわかった。
――はづきのこえだ
学校中が、騒然としたような音が、認識された気がした、ところで私の視界は赤から黒に切り替わり、意識もテレビの電源を引っこ抜いた時みたいに、途切れた。
――プヅン――と機械的な音が頭に響いた、気がした。
「朝よ、起きなさい!」
……あれ、何か、変な夢――
いつものように起こされて、遅刻しそうになるのに慌てながら学校へひた走る。
ふ、とすれ違った人影が「――身体、軽い?」と呟いた気がした。
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