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作品ID:181

こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約2776文字 読了時間約2分 原稿用紙約4枚


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小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

トラウマティック/モラトリアム

作品紹介

こんばんは、二つ目です



一個嫌いになると

どんどん嫌いになる人間です

でもそれは ネガティブなことしか生み出さない

一個好きになったら 全部好きになれたらいいなと思います



感想とか批評はつけづらいと思いますので

贅沢は言いません^^





よろしくお願いいたします。






トラウマティック/モラトリアム























 今朝 真っ先に匂った花がアドニスで

 それは悪趣味にも 前を歩く人の抱える花束の中に紛れ込んでいたらしい

 その香りに耐えられず おれはすぐさま来た道を戻ったんだ

 あの匂いが嫌い キャンディとぬるいミルクの混ざったようなあれ

 ねえ そんな花束もらっても おれは全然嬉しくないよ



 キャンディと言えば おれにとってはオレンジで 

 それは幼稚舎のころ

 目の青い年長の女の子のキャンディがおれの口に押し込まれたから



 それ以来オレンジに取り憑かれていたおれは

 中学の頃 時計じかけのオレンジを見たんだ 

 ひどい映画だった

 あれ以来オレンジもキャンディも嫌いになった

 特に アレックスが嫌だった

 アレックスっていうのは 時計じかけの主人公で

 極めて暴力的 卑猥 下品



 ところが

 心の表面では拒絶したはずなのに 

 あの吊り上った唇 それがおれの中に入り込んできて 

 追い出しても 追い出しても 

 粘性の強い火砕流みたくおれの内臓を焼いて流れた

 

 おれはいつしか

 アレックスのようなつけまつげを付けてみたくなった





 その少しあと

 高校の頃の彼女にまつげをつけてもらった

 すると可愛かったはずのその子は

 何かの発作じゃないかというほどに笑いこけ しばらく起き上がれなくなったのだった

 その子も 睫毛も それきりだ



 嫌いなものが増えていく中

 おれは映画をよく見た



 でもある日 

 ふと字幕を読むのが面倒になって 

 それから 吹き替えばかりを見るようになって

 すると不思議にも好きな映画がなくなった

 だから それから邦画しか見てないんだ 

 裕次郎はかっこいいけど でも彼はおれの目指すものではなかった



 つけまつげは一度きりで アレックスもあれっきりだ

 



 行く先を塞がれたからケータイを取り出して 

 ハラショー って彼女に電話したら

 何も言わないまま通話は切られた

 そっか あの子とは昨晩けんか別れをしたんだった

 花の名前の食い違いで 致命的なやつを 



 彼女はアドニスを知らなかった

 アドニスを指して違う名を口にした

「これはアドニス!」

「ちがう そんな花はない!」

「違わない! この匂い、オレンジキャンディとぬるいミルクの混ざった匂い」

「オレンジキャンディ 高校の時の彼女 付け睫毛 吹き替え映画 それとアドニス

 ぜんぶ ぜんぶ おれの嫌いなものだ

 間違えようがない!」 

 そうさ、アドニスこそが真正のおれの嫌悪対象なんだ

 でも残念なことに 

 考えてみれば おれはアドニスを見たことがなかった



 最初にアドニスを教えてくれたのは

 そうだね 大学の教授だった

 

 教授の部屋は 植物に満ち満ちていて 

 特に オレンジ・ミルク・キャンディの匂いが強かった

 その香りの名を知らないおれは 鼻に皺を寄せて

 何の匂いです? 教授 と尋ねた

 彼はやけに気取った声で アドニスさ君 と答えた

 その言い方と もちろんアドニスの香りとが気に入らなかったので

 当然 おれは教授が嫌いになった



 あれも嫌だしこれも嫌だ 

 そんなことばかり言っていたら

 今 ついに行く道がなくなってしまった

 これは全てアドニスの仕業に違いない

 そろそろアドニスという花について 知ってみてもいいのかもしれない



 だけどそういえば

 大学の去り際 気取った教授の課したレポートのため

 とある本の頁をめくり 真っ先に指を切った 

 それ以来 おれは本が嫌いになったんだった



 ほらだめだ こっちもあっちもだめ 

 閉じ塞がって塗り固められてる





 でもね

 昔はこんなんじゃなかったんだ

 例えば青い目の女の子にキャンディを押し込まれたあのころ 

 陽に透けた虹彩が なんてきれいなんだろうと 

 口に甘いものを感じながらみとれていた

 例えばアレックスに出会ったあのころ

 無茶なスラングを使って つけまつげをつけた自分に いたく感動した

 異国の言葉を聞き 冗長な母語を聞かない自分

 全てに 力があって 手だてがあって 行きたい場所があった



 でも 今 

 自分探しの適齢期はとうに過ぎてしまった 

 この歳でがむしゃら辺境を目指してみたって 単なる笑いものさ





 どぷんと音をたてて 陽が地平線に沈んでも

 朝と全く同じ場所にいた

 ふと

 ちらちら輝くケータイのディスプレイに気づいた

 それは 昨晩 けんか別れした子からの留守電だった

 





「気になったからアドニスについて調べたよ

 所詮ネットだからどこまでホントか知らないけど

 どうせあんたはそんなことしないんだろうと思って 

 

 あのね アドニスっていうのは 昔の人の名前 

 血を流して死んだ男の名前



 その時落ちた血が花になって それがあんたの言うアドニス

 アドニスの種は長い毛を持っていて風に乗る そうして数を増やす

 だからアドニスは 風に由来する

 多年草で春に咲いて―― 

 だから あんたの言うアドニスは私の言うアネモネ

 何でも知っているような口をきくの もうやめたほうがいい





 ああ、そういえば

 アドニスっていうカクテルもあって

 それはオレンジの皮が入るけど 

 ワインがベースでミルクは入らない

 どうせあんた好きなんだから 今度飲んでみたらいい

 私はワイン嫌いだから 隣でミルクセーキでも飲んでます



                                それじゃまた どっかで」















 声が途絶えたそのあとは 

 ケータイの向こうにあいた真っ暗な巨穴のようだった

 そのままそれを痛いほどに耳に押し当てる

 無音のようでいて 激しい轟音があった

 そこは可能性の水源だった





 昔 誰かがうたっていた

 何にもないってことは何でもアリってこと



 今なら言える 素直にね

 おれはアレックスが好きだった



 ミルクに オレンジ つけまつげ

 本に 字幕に 気取った教授

 そしてアドニス

 

 今なら分かる気がする 彼らのこと 





 耳元で

 轟々と静寂がうなっている

 うるさいほどに











後書き

未設定


作者 るい
投稿日:2010/02/27 02:46:43
更新日:2010/02/27 02:46:43
『トラウマティック/モラトリアム』の著作権は、すべて作者 るい様に属します。
HP『未設定

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