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作品ID:220

こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約5170文字 読了時間約3分 原稿用紙約7枚


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小説の属性:一般小説 / 未選択 / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

私に気付いて

作品紹介

この小説は事故で死んじゃった少女が、霊力のある少年と協力する物語です。



ごく普通の生活を送っていた少女は下校中、交通事故に巻き込まれる。

少女は死んだことを認めず、人々に話しかけ続けるが、ついには自分が霊だと認める。

愕然とした少女を助けたのは生身の少年だった―――。


「じゃあまた明日ね!」



友人たちに別れを告げ、少女は急いで夕暮れの学校を後にする。

今日はこの後、少女の弟の誕生会で早く帰らねばならないのだ。

人がまばらなグラウンドを突っ切り、門を出る。

道を行く人々が邪魔になるほど、急いで少女は家に向かう。

あの交差点を抜ければ家……と、いう時。

明滅していた信号に気付かず、わたり始めた少女を大きな影が襲う。

見上げたのと手に持った鞄が落ちるのは同時で。

あたりにクラクションが響き渡るのと少女の体がはねたのも同時だった。



「きゃあああ!」



少女ではなくあたりにいた人たちが一斉に叫び始める。

大きなトラックは少女の体を通り過ぎ、電柱にぶつかり停止した。

ぐったりとした少女に、かけよる人たち。

けれどみな絶望的な目を少女に向ける。



もう……二人とも手遅れだった―――。



6月14日、あたしがこの世から消えた日。

そして弟が生まれた日……。



????



「あれ?」



あたしは目をあけ、あたりを見回す。

あたりには何故か黒い服を着た人たちがたくさんいて、あたしはそんな人たちの隅にいた。

目隠しをされて、急に知らないところに連れてこられたみたいにあたしは茫然としていた。



あたし、何をしていたの―――。



「分からないよ!」



わけが分からないあたしは、大きな棺の前に集まる人たちに向かって叫んだ。

皆知ってる人たち。

お母さんたちまでいる。



どうして泣いてるの?

あたしはここだよ―――?



必死に訴えるけど皆振り向いてさえくれない。



どうして、どうして?!

誰か応えてよ……!



「あ、輝!!!」



あたしは棺に顔を伏せおお泣きする輝を見つけ叫んだ。

輝なら気づいてくれる。

きっと……こんなの冗談に決まってるよね?



「輝、輝!!」



輝に駆け寄り、肩をゆするが当の輝はびくともしない。

……触れられない―――?



「姉ちゃん……なんでなんだよお!」



棺に拳をぶつけ泣きじゃくる輝。

あんなに強気だった輝が泣いている。

あたしの写真の前で、棺の上で。



これは……もしかしてあたしの―――。



「今日はお悔やみ申し上げます」



ハッとして声がした方を見ると、入口あたりにお坊さんが立っていた。

数珠を持ち、礼をしながらあたしたちに近づいてくる。

いや、正式にはあたしの遺体に……。



「弟さん、かな? 悲しいだろうけど泣いちゃいけない」



「んで、なんで泣いちゃだめなんだよ!!」



「輝……!」



優しく肩をたたいたお坊さんにつかみかかる輝の顔は怒りに満ちていた。

涙でぐしょぐしょになっているのに怒っている。

……こいつは強がりだったっけ。

いつもいつも強がりばかり―――。



「お姉さんが悲しむからだよ。事故で死んで彼女もきっと悲しいだろうから……」



「!! 嘘……やっぱりあたし―――」



お坊さんの言葉であたしはふらりとその場に倒れた。



夕暮れの交差点。

クラクションの音。

大きなトラック。

ガソリンのにおい……。

全部全部オボエテル―――。



「あたし、どうしたらいいの?」



問いかけるが答えなんて返ってこない。

誰もあたしのことなんて見えないんだから……。

急にむなしさが芽生え、あたしは起き上がり駆け出していた。



外に出ても参列者がたくさんいる。

それってあたしがどんな人柄か分かるのに、あたしはそんなこと気にもとめずに走り続ける。

あのときのまま。

血だらけの制服。

道行く人はみんな気づかない。



あ た し は し ん だ―――。



ならどうしてここにいるの!?

死んだら天国に行くんでしょ!?

こんなの……辛いだけだよ。



「おいお前」



ぐすぐすと、路地裏で泣いてるとふと声がする。

けれど見えるはずなんてないんだからあたしは当然無視をする。

だけど髪をつかまれてハッとする。

生きているかを錯覚させる、その感触。



「あんた……見えるの?」



恐る恐る、その少年を見上げる。

端正な顔立ちに、金色っぽい髪。

だけど遊び人、だなんて印象はうけなくて。

むしろ、何故か優しい印象を受けた。



「ああ一応」



そう言い、髪から手を離し隣に座る少年。

この子、同じ年くらいかな……もしかしたら同じ幽霊かも。



「俺は死んでねぇぞ、言っとくけど」



「え?!」



思ってたことをあてられ、あたしは少年をみつめる。

心が読めるんだ……。



「俺さ、教会の息子で見えるんだよねそういう系」



じゃらっと十字架のネックレスを胸から出して見せる少年。

キラキラと反射するネックレスは今のあたしにとったら眩しいだけの存在。



「そう……名前は?」



「怜央だ。レオって呼んでくれ」



「レオか、いい名前だね。あたしの名前は妃奈」



よろしく、と言い笑うとレオも笑った。

きっと皆が見とれるほどの笑顔。

でもあたしは……ドキドキしてはいけない。



だって死んでるから。



「おー、可愛い名前じゃん」



「あ、ありがと」



名前なんて褒められたことのなかったあたしは素直にお礼を言うけど恥ずかしくて俯いてしまう。

実は男の子と喋るのもあんまりなかったり。



「んで、なんで泣いてたの?」



「……皆に気付いてほしいの、あたしはここだよって……」



「でもさそれって皆が驚くじゃん、驚かしたいわけ?」



レオの意外な冷たい言葉にあたしは言葉に詰まる。

けれどすぐにきっと顔をあげこう言った。



「違うの、記憶から消されそうで怖いの……」



つー……っと頬を伝う涙。

あたし、輝とおんなじじゃん……。



「大丈夫だろ、人は簡単に忘れたりはしねぇよ」



「そんなの……分かんないじゃん」



ぐしっと涙を拭いて呟く。

忘れるか忘れないか、なんて言いきれないじゃん。



それが不安なんだけどさ……。



「じゃ、気づいてもらいに行くか? 協力するぜ」



「えっ?」



気づいてもらいに……?

それに協力?

今あったばかりなのに、いいのかな……。



「気にすんな、お前もいつまでもそのまんまじゃダメだろ」



腕を掴まれ立たされる。

こうして並べてみると、レオって身長高い……。

一体いくつだろ。



「ありがとね、本当に……ありがとう」



「お前みたいな奴見てるとさ、放っておけねぇんだよね」



あたしの手を引き、歩き出すレオ。

……こうしてると生きていたころを思い出す。

さっきまで冷たかった世界がレオのおかげで温かく感じることができる。



不思議……。



「っと、ここがおまえんち?」



いつの間にか、家についていてレオはあたしにそう聞いた。

さっきは気づかなかったけど、自分の家でお葬式をしていたらしい。

今はもう後片付けの段階に入っていて、お母さんたちは中で休んでるのか姿は見えない。



「意外に広いんだな、まあいいや。入ろうぜ」



「ちょ、待って!」



ずかずかと家に向かうレオをあたしは引きとめた。

止められたことに少し不機嫌になったレオはこちらを振り向き、首をかしげた。



「なんだよ?」



「その……気づいてもらうってどうするの?」



「そりゃ……要はやってみりゃ分かるってことだ。まずは家に入ろうぜ」



少々強引なレオに引っ張られ、あたしは懐かしくも感じてしまう家に入った。

人が入ってきたのに気づかないほど、家の中はてんやわんやだった。



申し訳ないな、なんだか……。



「すいません、ご親族の方はどこですか?」



手近にいた、あたしのクラスメイトにレオはお母さんたちの場所を聞くと礼を言って奥に進んでいく。

リビング…なのかな。



あたしの予想は当たっていて、リビングの扉をあけるとびっくりした顔の家族がいた。



「あの、ここは立ち入り禁止で……」



お母さんが泣きはらした目を見られないように、俯きがちにレオにそういう。

しかしレオは構わず、リビングの中心に向かっていく。

あたしはただ身を任せるだけだった。



本当は泣きたくてずっと耐えていただけなんだけど……。

もう話せない家族、輝にプレゼントさえも渡せない―――。



「なんだ君は、早く出て行ってくれないか」



お母さんと一緒でげっそりしたお父さんが言う。

いつもは厳しい声も今は弱々しい。



「ほら、妃奈。神経を集中させて」



「そ、そんなこと言ったって……」



あたしの名前を聞いた輝がキッチンから飛んでくる。

あたしはそれを横目に見ると目を閉じゆっくりと、集中させていく。

一番苦手だった集中。

今はそれがすんなりとできる。



あ、暖かい……。

レオとつないだ手から暖かいものが溢れていく気がした。

あたしはゆっくりと目をあけた。

そこには驚いた顔のお母さんや輝。

特に輝は驚きのあまりすごい顔をしていた。



「ね、姉ちゃん!?」



「え、嘘。あたし―――」



「それは霊力の一種で、数分だけ姿を現すことができる。伝えるなら今だぞ」



強く頷き、背中を押すレオ。

あたしはただただびっくりするけど、もっと驚いてるのはきっと皆。



伝えなきゃ……。



「み、皆……あたし死んじゃったけど絶対に忘れないでよ?!」



泣かないって決めたのに涙腺が弱いのか涙があふれてくる。

皆の顔が歪んでいく。



「ひ、輝……これプレゼントだよ。なんか自分の、命日に渡すって変だけど」



ポケットから、小さな袋を輝の手に握らせる。

触れられる、それがどんなに幸せなことかあたしは今身をもって知った。



「ね、姉ちゃん……」



輝は何をいっていいのか分からないらしく、ただあたしに抱きついた。

小刻みに震える肩から泣いてるのが分かる。



「お母さん……今までありがとう。あたし感謝してるからね?」



「妃奈……もういっちゃうの?」



お母さんが震える手をあたしに差し出す。

あたしはそれに自身の手を添え、もう片方の手で輝の頭をなでる。

視線は、お父さんに。



「もうすぐ消えると思う、でも……お父さん? もう少し優しくしてほしかったな」



あはっと笑うとお父さんも泣きながら笑った。

それにつられてみんな笑う。



家族団らんとはいかないけど、これが最後の触れあい。

でももう満足だから。



こうやって伝えられてプレゼントも渡せたから。

そしてレオとも出会えた。



全部全部忘れないよ……。



「レオ……ありがとう」



あたしはそう言い目を閉じる。



体から力がなくなるのが分かった。

あたしの意識が途切れたのは、それから少ししてからだった―――。



???



少女の命日から数年後、少女の墓にすっかり大人になった輝とレオはいた。

二人は手を合わせ、何年たっても花が絶えない墓を拝む。

輝だけは、あのときのプレゼント、チョーカーを首にまいている。

レオは十字架のネックレス。



「あのときから……何年経つんすかね」



低い声でレオに尋ねる輝。

レオは目をあけ、瀬川妃奈と書かれた墓石をみつめる。



「さあな。でもあいつも嬉しいだろうよ。今も花が絶えない」



色とりどりの花は、ちょっぴり周りと浮いていた。



「姉ちゃんは……本当に優しかったから」



「だろうな、ちょっとの間だけだったけど……」



「もしかして惚れたんすか?」



ははっと輝が冗談をかますと、レオはそれには答えず、バケツを持って背を向ける。

まるでそれは聞くな、と言いたげなそんな感じだった。



「霊が見えるって辛いことだな」



ただそれだけを言い残し、レオはその場を後にする。

輝は見えなくなるまでその姿をみつめ、再び姉の墓石をみつめる。



「姉ちゃん、また生まれ変わったら……レオさんと付き合ってね。お似合いだよ」



ざあっと吹く風は姉の返事のようにも聞こえた。

輝はただ、気づかないふりをしていつまでも手を合わせていた……―――。

後書き

未設定


作者 愛羅
投稿日:2010/04/25 01:26:27
更新日:2010/04/25 01:26:27
『私に気付いて』の著作権は、すべて作者 愛羅様に属します。
HP『未設定

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