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作品ID:306
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1464文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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「桜の下で?満開?」を読み始めました。
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桜の下で?満開?
作品紹介
桜の下でのその後、ですね。
十五歳の誕生日の日。
私は、京都にいた。
満開の桜の下、何故か隣には議長がいる。
「……元学級長。現議長。そして班長」
「なんだい。その長ったらしい名前は」
のんびり試食を食べながら銀閣寺の前の坂道を降りていく。もうすぐ哲学の道だ。
議長は、私より十センチばかり背が高い。首を痛くして見上げるのは歴史的建造物だけと決めているので、顔を見上げるようなことはない。決してない。
「あ、八つ橋。――はい、抹茶味」
試食を持ってきて、私に渡す議長。
「……議長!」
「わっ! 何だよ! 大声出すなっつーの! ……で、何?」
私は、素直にもらった抹茶味の八つ橋を食べながら、足を速めた。ちょうど吹いてきた、春の、M市とは違う昔からのものを語らず伝えてくれるような優しい風が短い髪をなびかせ、きれいに放射状に広げて通り過ぎて言った。
議長は、歩幅を少し広げただけで私に合わせてついてきた。
残り四人の班員は、さっさと走ってお土産を物色しに行っていて、他の班の人は嵐山方面に行ったのか、伏見稲荷に行ったのか、はたまた二条城か。京都市内で一回も出会うこともなく行動している。
「……さっきから、何。私をえずけしようとでもしてるの?」
「何が?」
とぼけるな!
「試食ばっかり持ってきて! それとも何? 太らせようとしてるの?」
「いや……お前は太ったほうがいいと思うよ。やせすぎだから。腕とか、触ったら折れそうで怖いよ」
「いいでしょ、別に。そんなの気にするような仲じゃないし」
ホー、ホケキョ。
ウグイスが近くで鳴いた。いつの間にか哲学の道に出ていて、桜の下で行く当てもなく、哲学の道に沿って歩き出した。
「おい、あんまりそっちに行くなよ。他のやつらと完全にはぐれたら大変だから」
さっきあれだけ言ってたのに、さっとわたしの腕をつかんで引き戻す。
そばに川が流れていて、散った桜の花びらがさらさらと音を立てて流れていく。
居心地の悪い、知っているようで知らない町。
京都は、けっこうビルが建っていて、普通の都会だった。ただそこに、ぽつぽつとお寺や昔の建物が建っているだけの。
金閣は感動したけど、銀閣はあんまり。「これが?」って感じだった。
そんな京都で、手をつかまれたままぼんやりと立っていた私に、上から桜の花びらと、
「……だってさあ、お前、誕生日なんだろっ?」
議長の声が降ってきた。
びっくり。
……知ってたんだ。
「でも、わざわざプレゼントを買うような仲じゃないし」
たぶん、ニヤニヤしながら言ってる。見ない見ない。
私は、少し黙っていた。
ふと、班員のことを思い出した。
もしや、この展開を予想していたのでは……。
いや、あちらが仕組んだ、と言ったほうがいいだろう。
どこかで隠れてこの事態を面白おかしく見ているに違いない。
そして私は、その仕組まれた筋書きに便乗した。
あくまで思いは自分のものだから。
「……じゃあ、わざわざプレゼントを買わなきゃいけない仲にしてあげようか?」
「え?」
強風が吹き、セーラー服の袖やスカートを揺らし、髪を舞い立たせ、ほてった顔を隠していく。
きゅ、っと握られた手に力をこめた。
それでも、大切なものを持つように、やわらかく、しっかりとつかむ。
髪をおさえ、顔をしっかりと出す。
私は、しっかりと議長を見上げた。
私は、京都にいた。
満開の桜の下、何故か隣には議長がいる。
「……元学級長。現議長。そして班長」
「なんだい。その長ったらしい名前は」
のんびり試食を食べながら銀閣寺の前の坂道を降りていく。もうすぐ哲学の道だ。
議長は、私より十センチばかり背が高い。首を痛くして見上げるのは歴史的建造物だけと決めているので、顔を見上げるようなことはない。決してない。
「あ、八つ橋。――はい、抹茶味」
試食を持ってきて、私に渡す議長。
「……議長!」
「わっ! 何だよ! 大声出すなっつーの! ……で、何?」
私は、素直にもらった抹茶味の八つ橋を食べながら、足を速めた。ちょうど吹いてきた、春の、M市とは違う昔からのものを語らず伝えてくれるような優しい風が短い髪をなびかせ、きれいに放射状に広げて通り過ぎて言った。
議長は、歩幅を少し広げただけで私に合わせてついてきた。
残り四人の班員は、さっさと走ってお土産を物色しに行っていて、他の班の人は嵐山方面に行ったのか、伏見稲荷に行ったのか、はたまた二条城か。京都市内で一回も出会うこともなく行動している。
「……さっきから、何。私をえずけしようとでもしてるの?」
「何が?」
とぼけるな!
「試食ばっかり持ってきて! それとも何? 太らせようとしてるの?」
「いや……お前は太ったほうがいいと思うよ。やせすぎだから。腕とか、触ったら折れそうで怖いよ」
「いいでしょ、別に。そんなの気にするような仲じゃないし」
ホー、ホケキョ。
ウグイスが近くで鳴いた。いつの間にか哲学の道に出ていて、桜の下で行く当てもなく、哲学の道に沿って歩き出した。
「おい、あんまりそっちに行くなよ。他のやつらと完全にはぐれたら大変だから」
さっきあれだけ言ってたのに、さっとわたしの腕をつかんで引き戻す。
そばに川が流れていて、散った桜の花びらがさらさらと音を立てて流れていく。
居心地の悪い、知っているようで知らない町。
京都は、けっこうビルが建っていて、普通の都会だった。ただそこに、ぽつぽつとお寺や昔の建物が建っているだけの。
金閣は感動したけど、銀閣はあんまり。「これが?」って感じだった。
そんな京都で、手をつかまれたままぼんやりと立っていた私に、上から桜の花びらと、
「……だってさあ、お前、誕生日なんだろっ?」
議長の声が降ってきた。
びっくり。
……知ってたんだ。
「でも、わざわざプレゼントを買うような仲じゃないし」
たぶん、ニヤニヤしながら言ってる。見ない見ない。
私は、少し黙っていた。
ふと、班員のことを思い出した。
もしや、この展開を予想していたのでは……。
いや、あちらが仕組んだ、と言ったほうがいいだろう。
どこかで隠れてこの事態を面白おかしく見ているに違いない。
そして私は、その仕組まれた筋書きに便乗した。
あくまで思いは自分のものだから。
「……じゃあ、わざわざプレゼントを買わなきゃいけない仲にしてあげようか?」
「え?」
強風が吹き、セーラー服の袖やスカートを揺らし、髪を舞い立たせ、ほてった顔を隠していく。
きゅ、っと握られた手に力をこめた。
それでも、大切なものを持つように、やわらかく、しっかりとつかむ。
髪をおさえ、顔をしっかりと出す。
私は、しっかりと議長を見上げた。
後書き
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