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作品ID:331
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約2855文字 読了時間約2分 原稿用紙約4枚
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夢現
作品紹介
夢と
現と
その狭間
えーっと…、すみません。ありえない出来です。
連載をしたかったんだけど、ネタが出なかったので短編一本upしました。
現と
その狭間
えーっと…、すみません。ありえない出来です。
連載をしたかったんだけど、ネタが出なかったので短編一本upしました。
寒い。そして、暗い。
目の前に広がるのはただの闇。自分の足元なんか、疾うに見ようとするのをやめている。なにも見えない。どれだけ見ようとしたところで、目に映るのは闇ばかり。一寸の光も見出せない、暗く、沈んだ場所。
そんな場所に俺―零斗―と彼女はいた。
すぐ隣にいるはずの彼女に呼びかけようとしても、喉が引きつって声が出ない。彼女も同じなのか、息の音ひとつも聞こえない。ただただ何も出来ずに隣り合って立つ二人。手を伸ばせば相手の温度を感じる。その手を握れば握り返してくれる。そんなに近くにいるのに、表情を窺がうことはおろか、気配を感じることすらできない。
それでもこの場所に恐怖はなかった。気付いたらここにいて、彼女も一緒だった。特に何があるわけでもなし、恐怖心を抱くことはない。ただ不思議だった。自分たちが何故ここにいるのか。ここは何処なのか。闇で定かではないが、周りにはなにも無いように思えた。8畳くらいの倉庫の中は殺風景で、壁はコンクリート独特の空気を醸し出している。よく冷えた空気が、動きのない部屋で巡ることなく、足元に蟠っていた。やがてはこの空気も淀んで重くなるのだろうか。
不意に、その動かない筈の空気が動いた。ぎぃ、と軋んで部屋の正面にあった扉が開く。
人だ…。
そうは思ったけれど、やはり声が出ない。扉の前に背の高い男が立っている。暗闇で顔を知ることは叶わないが、とにかく人だった。人を見たのは久しぶりだったかも知れないし、そうでなかったかも知れない。なにしろ、どれぐらいの時間ここにいたのか分からないのだから。
「元気だったかい?」
男が言葉をかける。静かで落ち着いた声だった。答えを返せずにいると、男は尚も話し続ける。
「どうもまだ頭がはっきりしていないようだね」
くすっ、と軽やかに笑う。
「うん、じゃあ目覚めさせてあげようか」
何を、と思う間もなく男が二人に向かって両手を差し出した。
「二人の中、どちらかの命を奪うといったら、どちらを選ぶ?」
―何を言うんだ、この男は。馬鹿なことを…。
呆れた零斗に男は歩み寄る。そして、静かに囁いた。
「可愛い自分と、他人の彼女。最後に決めるのは、君だ」
身体を電流が駆け抜けた。足に力が入らない。こんなに静かなのに、人の理性をふっとばし、思考を打ちのめす。何なんだ、こいつは―。
「さあ、どっちかな?」
ここで答えに詰まったのが、失敗だった。たしかに自分は可愛い。だけど彼女は。俺は。自分は。君は。
「零斗が悩むくらいならわたしがいくよ」
「美っ…!?」
「よし、成立だ」
男が彼女―美月―を引きよせた。当の美月は悲しそうに目を伏せている。
「それでは、おひらきに―」
男がにや、と笑う。そして手に持ったナイフで、美月の首を―。
「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」
「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」
零斗は自分の悲鳴で目が覚めた。
外から小鳥の声が聞こえる。朝の光が射し込む部屋は白く照らされ、積み重なった雑誌や漫画を汚い部屋から浮き立たせる。一階のキッチンからは、朝ならではの忙し気な音が聞こえた。
いつもの朝。
「夢か…」
なんという夢だ。こんな気持ちのいい朝にそぐわない。何考えてんだ俺。
「零斗ー! 遅刻するよー!」
下から母の忙しい声が聞こえた。どうも寝坊したらしい。「今行く!」と言いながらも朝ご飯を食べる気にはなれなかった。さっさと身支度をすませ、早々に家を出る。母は今更、何も言わなかった。
外の空気は澄んでいて寝起きには嬉しい。でもそれを味わう余裕はなく、とにかく先を急いだ。
「間に合ったー!」
教室に飛び込むと一斉に好奇の目が向けられた。
「ギリギリ」
「学習ってもんを知らんのかね」
「間に合ったって言えんのか」
「尤も。ね、美月」
友人に話を振られた美月は黙って頷いた。その動作にあわせて長い髪がさらりとゆれる。
美月はモテる。どれだけ告白されたかしらないけど、とにかくモテる。長い髪に大きな目、小さな口。正直いって、俺もよく落とせたと思う。
「ほらほら、授業始まるよ」
「先生っ」
いつの間にか先生が入ってきていた。生徒が五月蝿くても注意しない。このへんが高校のゆるいところだ。
起立。礼。…。
…ああ、やばい。全然頭に入ってこない。どうも俺の頭の中は今日の夢のことでいっぱいらしい。
あのおかしく、怖い、よく解らない夢。何故美月がああなる?なにがあったんだろうか。なにかの暗示?メッセージ?虫の知らせ?解らないけど、薄気味悪い。もうみたくない。考えたくないけど気が付くとかんがえている。ああ、いやだ…。もう…。
「零斗」
門のところで美月が待っていた。
「美月。待った?」
「ううん。全然」
「よし、じゃあ行こうか」
俺は笑う。顔は引き攣っていないだろうか。なにしろ、今日の授業なんか聞いていなかった。なんにも覚えてない。ああ、今日の6時間はなんだったんだ。あの夢のせいだ。あの悪夢。ちくしょう。まあ、美月本人に言うつもりはないけど。
それから俺らは他愛もない会話をしながら帰路についた。二人になると美月の笑顔が輝く。美しくて、可愛くて、楽しかった。
それでね…。えー? マジ? 雪ったらさ。まあまあ…。うん、そうなの。そうだったんだ?……
「あ、ここでお別れだね」
30分くらい歩いた頃、分かれ道にさしかかった。俺は右に、美月は左に曲がる。
「ああ、じゃあ明日」
「うん、じゃあね」
それぞれ別の方向へ曲がろうとしたとき、二人の前に黒い車が停まった。窓ガラスが降り、運転席の男が顔を出す。
「…なんスか」
咄嗟に美月を後ろに庇い、声を鋭くして問う。
「君らを探していた者だよ」
男は笑って後部座席を顎で示す。
「零斗」
美月が震える声で名を呼ぶ。それに首を横に振って答えた。
「逆らっちゃいけねぇ」
なんかやばい。逆らっちゃいけないんだ、こういうときは。
「さあ、乗りや」
驚愕だった。連れて行かれた場所は、あの倉庫。あの悪夢。暗示。メッセージ。虫の知らせ。
「此処何処?」
美月が泣きそうになっている。けど今はそれどころじゃない。この倉庫ということは、もしかして。
「元気だったかい?」
やっぱり。眩暈がした。美月はもう言葉がない。
「さあ、唐突だが」
来た。
「二人の中、どちらかの命を奪うと言ったら、どちらを選ぶ?」
俺がすることは、もうただ一つ。
もう迷わない。
彼女を救う。
この命に代えてでも。
目の前に広がるのはただの闇。自分の足元なんか、疾うに見ようとするのをやめている。なにも見えない。どれだけ見ようとしたところで、目に映るのは闇ばかり。一寸の光も見出せない、暗く、沈んだ場所。
そんな場所に俺―零斗―と彼女はいた。
すぐ隣にいるはずの彼女に呼びかけようとしても、喉が引きつって声が出ない。彼女も同じなのか、息の音ひとつも聞こえない。ただただ何も出来ずに隣り合って立つ二人。手を伸ばせば相手の温度を感じる。その手を握れば握り返してくれる。そんなに近くにいるのに、表情を窺がうことはおろか、気配を感じることすらできない。
それでもこの場所に恐怖はなかった。気付いたらここにいて、彼女も一緒だった。特に何があるわけでもなし、恐怖心を抱くことはない。ただ不思議だった。自分たちが何故ここにいるのか。ここは何処なのか。闇で定かではないが、周りにはなにも無いように思えた。8畳くらいの倉庫の中は殺風景で、壁はコンクリート独特の空気を醸し出している。よく冷えた空気が、動きのない部屋で巡ることなく、足元に蟠っていた。やがてはこの空気も淀んで重くなるのだろうか。
不意に、その動かない筈の空気が動いた。ぎぃ、と軋んで部屋の正面にあった扉が開く。
人だ…。
そうは思ったけれど、やはり声が出ない。扉の前に背の高い男が立っている。暗闇で顔を知ることは叶わないが、とにかく人だった。人を見たのは久しぶりだったかも知れないし、そうでなかったかも知れない。なにしろ、どれぐらいの時間ここにいたのか分からないのだから。
「元気だったかい?」
男が言葉をかける。静かで落ち着いた声だった。答えを返せずにいると、男は尚も話し続ける。
「どうもまだ頭がはっきりしていないようだね」
くすっ、と軽やかに笑う。
「うん、じゃあ目覚めさせてあげようか」
何を、と思う間もなく男が二人に向かって両手を差し出した。
「二人の中、どちらかの命を奪うといったら、どちらを選ぶ?」
―何を言うんだ、この男は。馬鹿なことを…。
呆れた零斗に男は歩み寄る。そして、静かに囁いた。
「可愛い自分と、他人の彼女。最後に決めるのは、君だ」
身体を電流が駆け抜けた。足に力が入らない。こんなに静かなのに、人の理性をふっとばし、思考を打ちのめす。何なんだ、こいつは―。
「さあ、どっちかな?」
ここで答えに詰まったのが、失敗だった。たしかに自分は可愛い。だけど彼女は。俺は。自分は。君は。
「零斗が悩むくらいならわたしがいくよ」
「美っ…!?」
「よし、成立だ」
男が彼女―美月―を引きよせた。当の美月は悲しそうに目を伏せている。
「それでは、おひらきに―」
男がにや、と笑う。そして手に持ったナイフで、美月の首を―。
「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」
「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!」
零斗は自分の悲鳴で目が覚めた。
外から小鳥の声が聞こえる。朝の光が射し込む部屋は白く照らされ、積み重なった雑誌や漫画を汚い部屋から浮き立たせる。一階のキッチンからは、朝ならではの忙し気な音が聞こえた。
いつもの朝。
「夢か…」
なんという夢だ。こんな気持ちのいい朝にそぐわない。何考えてんだ俺。
「零斗ー! 遅刻するよー!」
下から母の忙しい声が聞こえた。どうも寝坊したらしい。「今行く!」と言いながらも朝ご飯を食べる気にはなれなかった。さっさと身支度をすませ、早々に家を出る。母は今更、何も言わなかった。
外の空気は澄んでいて寝起きには嬉しい。でもそれを味わう余裕はなく、とにかく先を急いだ。
「間に合ったー!」
教室に飛び込むと一斉に好奇の目が向けられた。
「ギリギリ」
「学習ってもんを知らんのかね」
「間に合ったって言えんのか」
「尤も。ね、美月」
友人に話を振られた美月は黙って頷いた。その動作にあわせて長い髪がさらりとゆれる。
美月はモテる。どれだけ告白されたかしらないけど、とにかくモテる。長い髪に大きな目、小さな口。正直いって、俺もよく落とせたと思う。
「ほらほら、授業始まるよ」
「先生っ」
いつの間にか先生が入ってきていた。生徒が五月蝿くても注意しない。このへんが高校のゆるいところだ。
起立。礼。…。
…ああ、やばい。全然頭に入ってこない。どうも俺の頭の中は今日の夢のことでいっぱいらしい。
あのおかしく、怖い、よく解らない夢。何故美月がああなる?なにがあったんだろうか。なにかの暗示?メッセージ?虫の知らせ?解らないけど、薄気味悪い。もうみたくない。考えたくないけど気が付くとかんがえている。ああ、いやだ…。もう…。
「零斗」
門のところで美月が待っていた。
「美月。待った?」
「ううん。全然」
「よし、じゃあ行こうか」
俺は笑う。顔は引き攣っていないだろうか。なにしろ、今日の授業なんか聞いていなかった。なんにも覚えてない。ああ、今日の6時間はなんだったんだ。あの夢のせいだ。あの悪夢。ちくしょう。まあ、美月本人に言うつもりはないけど。
それから俺らは他愛もない会話をしながら帰路についた。二人になると美月の笑顔が輝く。美しくて、可愛くて、楽しかった。
それでね…。えー? マジ? 雪ったらさ。まあまあ…。うん、そうなの。そうだったんだ?……
「あ、ここでお別れだね」
30分くらい歩いた頃、分かれ道にさしかかった。俺は右に、美月は左に曲がる。
「ああ、じゃあ明日」
「うん、じゃあね」
それぞれ別の方向へ曲がろうとしたとき、二人の前に黒い車が停まった。窓ガラスが降り、運転席の男が顔を出す。
「…なんスか」
咄嗟に美月を後ろに庇い、声を鋭くして問う。
「君らを探していた者だよ」
男は笑って後部座席を顎で示す。
「零斗」
美月が震える声で名を呼ぶ。それに首を横に振って答えた。
「逆らっちゃいけねぇ」
なんかやばい。逆らっちゃいけないんだ、こういうときは。
「さあ、乗りや」
驚愕だった。連れて行かれた場所は、あの倉庫。あの悪夢。暗示。メッセージ。虫の知らせ。
「此処何処?」
美月が泣きそうになっている。けど今はそれどころじゃない。この倉庫ということは、もしかして。
「元気だったかい?」
やっぱり。眩暈がした。美月はもう言葉がない。
「さあ、唐突だが」
来た。
「二人の中、どちらかの命を奪うと言ったら、どちらを選ぶ?」
俺がすることは、もうただ一つ。
もう迷わない。
彼女を救う。
この命に代えてでも。
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