小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説鍛錬室

   小説投稿室へ
運営方針(感想&評価について)

読了ボタンへ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

作品ID:346

こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約3344文字 読了時間約2分 原稿用紙約5枚


読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「正しい退屈の潰し方」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(186)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(673)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

正しい退屈の潰し方

作品紹介







とある場所にいる、とある者の一例。








 窓の外は曇天だ。分厚い灰色の雲が、バケツを引っくり返したように土砂降りの雨を降らす。雨の降る音だけが、私の部屋に響いている。



「退屈だな…」



 私の部屋には私しかいない。当然だけど。自室だから。雨のせいで窓の外は灰色一色。今、外に出たら濡れ鼠だろうな…。出かけたいけど、土砂降りじゃ無理だ。



「ああ、本当に退屈…」



 誰もいない空間に私の声は消える。静かに、でも凄く速く。空間に溶けてなくなった。余りの暇さに私はベットの上でばたばた暴れ始めた。私の部屋ははっきり言って殺風景。背の低い衣装棚に、簡易ベット。それだけ。寝て、着替えるだけの部屋。そんなの自室という人はそう多くないだろう。



「あぁぁぁぁぁぁ!! 暇、暇、暇だぁぁぁぁぁ!!」



 叫んで暴れて。これくらいしかやることがない。宿題もない、家事も無い、出かける場所もない、出かけるお金は腐るほどあるけど。でも濡れるのは嫌。ああ、どうしよう…。と思案する。



 誰もいないことをいい事に、普段からのクセ――――その場をぐるぐる立ち回る奇行を始める私。他人から見れば単なる変人だろう。



「ああ、こうなったらお姉ちゃんでも叩きのめすか…」



 最終手段、私は自分の姉に喧嘩を吹っ掛けることにした。今、家にいるのは何人かの使用人と姉と私と、兄。兄は駄目だ。あの人は私を見るなり問答無用に襲い掛かってくる。押し倒す目的で。身内に欲情できる病気らしいから仕方ない。あんなのに関わってたら私の人生に関わる。



「…どうせ、寝てるだけだろうし。寝込みを襲い掛かった方が長続きするだろうな」



 私は自分の部屋を出た。襖を開けるとき、音を立てないように注意する。何せ、姉の部屋はすぐ隣だ。忍足で廊下を数歩進み、姉の部屋の襖をそっと開ける。



「…………すぅ………すぅ」



 案の定、姉は可愛らしい寝息を立てて寝ている。よし、チャンス到来。常日頃、積年の恨みをここで晴らす。と、思ったのに。



「……お嬢様? 何をなさっているのですか?」



「!」



 後ろから声を掛けられた。部屋の中を覗き込んでいたから、完全な不意打ち。慌てて振り返ると、使用人さんがいた。怪訝そうな顔で私を見ている。



「あ、お姉ちゃんに用事。何でもない」



「そうですか…。お休みになられているので、あまり刺激しないで下さいまし」



「分かった」



 本当は刺激しまくるつもりだ。暇を潰すには、姉との喧嘩が一番長続きする。兄は論外。襲われるなんて、真っ平ごめんだ。あんな欲情した兄など、発情期の猿以下だ。変態だ。汚らわしい、汚物そのものである。



「…にっしっし」



 それはさておき、相変わらず可愛い寝息を立てている我が姉は、私の思惑を知らずに暢気に眠っている。時々『…駄目に決まってんでしょお馬鹿…』とか『んー…。キスくらいなら…許してあげる…』とか寝言を言っている。大方、彼氏とデートしている夢でも見ているのだろう。何という可愛さ。我が姉ながらこの可愛さは異常だ。



「……」



 ぽきりぽきりと指を鳴らしながら、ゆっくりと近付く。抱き枕に熊のぬいぐるみなんて抱きついている姉は子供っぽい。いうとすぐに否定するけど。



「さて…」



 と、やろうとして気が変わった。姉を見ていると、幸せそうに眠っているのに私は何をやっているんだろう。という気持ちになった。暇なら使用人を呼んでゲームでも何でもすればいい。態々姉を叩き起こして喧嘩する必要もない。



「やめた」



 もう少し、マシな方法で時間を潰そう。いくらでも手段はあるのだ。と、言っても思いつかない。ああ、暇だ…。



「……あ」



 あった。私が出かれないなら、呼び出せばいいんだ。どうせ、暇な奴がいる。早速私は居間に向かった。居間に電話があるためだ。到着し、すぐに受話器を持ち上げる。



『もしもし?』



「もしもし、私です」



『? ……ああ、お前。どうした?」



「暇、相手しろ」



『いきなり何だよ? というか何で命令形…?』



「拒否権は与えない。彼女が遊びたいといっている。さっさと来い」



『行きたくねえ…。お前の兄貴、めちゃめちゃ怖いだろうが!』



「兄なら来るまでに殺しておく」



『物騒この上ない…。頼むから穏便にな?』



「あんな人間、ゴミ以下のクズ野郎確定。別に将来の兄貴だからと味方しなくてもいい」



『普通にひでえ扱いだな…。分かった、5分で行く』



「分かった」



 やることは決まった。兄の排除。電話の相手は私の許婚。親同士の決めた結婚相手である。今時政略結婚とはよく言ったものだ。反発するのが普通なのだろうが、生憎私は彼を気に入っているので、今のとこは順調に交際している。



「さて。にいさぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!!」



 私はその場で大声で叫んだ。すぐに遠方からどたどたとこちらに走ってくる音が聞こえる。すごい速さでこちらに迫ってくるのが分かる。



「どうした愛妹よ! ついにこのボクとの結婚を――」



 襖を開けて飛び込んできた兄に、問答無用のドロップキックをぶちカマス。相変わらず私は兄に対しての攻撃速度が速いみたいだ。



「ぎゃぉう!?」



 まともに受け、受身すら取れずに兄は畳に沈む。が、まだ生きていた。ぴくぴくと死に掛けの蟲よろしく痙攣している。



「わ、我が愛しの妹よ…。これは、お前の愛だと言うのか…?」



「哀れみの哀だけどね?」



「くっ…妹よ…このボクは…」



「うるさい、師ね」



 どこっ! と容赦なく情けなく躊躇い無く兄の頭を踏み潰した。潰れはしないが畳に顔がめり込む。



「ぎゃおぅ!?」



「汚い悲鳴ね」



 冷たく言い放ち、玄関の方に向かった。兄は頭から煙を上げて死んだ。多分今度こそ死んだと思う。頼むから今日一日は復活されないで欲しい。









「よっ」



「遅い」



「ごめんごめん。来るまでにちょっと遅れた」



「何で濡れてる?」



 私の指摘どおり、彼はびしょ濡れだった。髪からぽたぽた雫が垂れている。



「悪ぃ。傘とかさすの面倒で、走ってきた」



 確かに彼は微かに息が荒い。はぁはぁと言っているのが微かに聞こえた。



「何で御曹司のクセに走ってくるの? バイクは?」



「うるせえ。バイクからこの間事故って修理中。仕方ねえだろ。親父からバイク禁止令だされたんだがら」



 彼はぶつぶつ文句を言いながら座った。私もそれに続いて正座する。



「んで、暇だから来たわけですが。俺は何をすればいい?」



「子作り」



「はぁ!?」



「冗談」



「冗談に聞こえないぞ! いい加減俺をからかって遊ぶな!」



「暇だからどこかに連れて行け」



「てめえスルーか!? そして命令形なのは何故!?」



「嬉しいでしょ? 彼女からでーとのお誘いですよ」



「話を聞け!」



「ちなみに私はこれでも結構恥ずかしい」



「何でそこだけ純情なんだお前…」



「だから速く連れて行け」



「……はい、了解しましたお嬢様」



「だーれーかー。おーそーわーれーるー」



「何で突然叫びだす!? 棒読みにも程がある!」



「たすけてー。だれかー」



「だから棒読みやめ――――」



「誰だぁ!? 愛妹に手を出す輩はぁぁぁぁ!!!!」



 兄貴、血眼で登場。目が完全にイっている。



「げっ、お兄さん…」



「貴様! また愛妹に手を出したな!? 毎度毎度! 懲りずに貴様は!」



「え? 俺の話を」



「問答無用ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!」









 日々是好日。今日も平和に私の暇つぶしは終わったのだった。

後書き

未設定


作者 Free Space
投稿日:2011/06/08 15:36:41
更新日:2011/06/08 15:36:41
『正しい退屈の潰し方』の著作権は、すべて作者 Free Space様に属します。
HP『未設定

読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!

読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

自己評価


感想&批評

作品ID:346
「正しい退屈の潰し方」へ

小説の冒頭へ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS