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作品ID:36
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1517文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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小説の属性:一般小説 / 未選択 / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
絶対に、今が、幸せ!
作品紹介
主人公である”私”にどんな感情を抱かれましたでしょうか。
拙い作品ですがご感想いただけましたら嬉しいです!
よろしくお願い致します。
拙い作品ですがご感想いただけましたら嬉しいです!
よろしくお願い致します。
はちきれるほどに肉がついた頬に、生クリームたっぷりの洋菓子を詰め込む女。それを見て、目の前のコーヒーを口に含む気が削がれた。ああいう女に限って、どうして痩せないんだろうと愚痴をこぼす。笑止千万。食べてばかりで、その癖、動くのを億劫がっていることが原因であるのが明確なのに、何故気づくことが出来ないのだろう。
駅前に出来たオープンカフェは、女性グループやカップルで溢れていた。その中で一人、文庫本を片手に気だるくカフェタイムを楽しむ自分に酔いたかったのに、件(くだん)のデブ女のせいで台無しだ。なんとなくむかっ腹が立ったので、上から下まで無遠慮に観察する。栄養が行き届いているのか、艶やかな髪とコラーゲンたっぷりの白い肌は一見美しい。でも、顎からだらしなく垂れ下がった肉、半袖から剥きだしになったハムのような腕。見苦しい。寸胴の上半身を支えている椅子が気の毒だ。ああ、醜い……、思わず呟き、バッグからミラーを出して自分の顔を見た。うん、キレイ、完璧。もう一度、白ブタ女を見ながら、あの子もああいう目にあえば変われるのだろうかとふと思う。
馬鹿にされていた。それは薄っすら分かっていたけれど、道化役が自分には一番似合っていると思っていたし、皆もそんな私を愛してくれていた。そう思っていた。例えばカラオケに行き、高らかに歌い、バキュームのように食べる太った女を、あんなに楽しそうに、嬉しそうに、見てくれていたじゃないか。アイコって本当にかわいいよねえと口々に言う仲間たちの言葉が、私の存在価値の証だったと思う。この頃着ていた十八号の服は今は全て廃棄してしまったけれど、自分ではそれなりにお洒落でかわいいと思っていた。ほら、芸能人の柳原可奈子みたいな感じだ。彼女はお洒落でチャーミングでしょう? いつも、自分を彼女に重ね、ファッションを真似たりしていた。柳原可奈子を意識しはじめたのは、デブでもかわいいよなあって、ユウジが褒めていたからだ。
ユウジに好意を寄せていた。もちろん、自分には叶わない恋だと分かってはいたけれど、でも、アイコといると癒されるよなあなんて言われると天にも昇ったような気持ちになったものだ。料理の腕を駆使して、仲間達に焼き菓子を差し入れしたのも、ユウジに食べて欲しかったから。そんな健気な自分に酔っていたのかもしれないけれど。
あれは梅雨があけ、気温が一気に上昇した日だった。サークルの部室にある冷房で涼もうとドアノブに手を掛けたとき、声が聞こえた。なんだ、皆考えることは一緒だなあと苦笑する。彼らは暑さに対する文句を言っていた。その中で、漏れ聞こえた、ユウジの、声。
「アイコの近くってさあ、デブ特有の臭いがしねえ? 夏、ヤバイよ」
やっぱり、女はスレンダーで美しいのが一番なのだ。コーヒーを一口含み、もう一度ミラーを覗く。綺麗だわ。あの時、ユウジの言葉で奈落の底に転げ落ちたけれど、豹変した私に言い寄ってきたユウジを振った時は爽快だった。美しい自分を手に入れた今、あの暴言を吐いた男に感謝の念すら抱く。
一緒に遊んでいた仲間達は、いつの間にか、少しずつ私の前から消えていった。仲間達は自分より劣っている友人を蔑むのが気持ちよかったのだろうが、もはや上のランクになった私を敬遠するようになったのだろう。女達は痩せてはいたがブスばかりだし、男達もはっきり言ってウダツのあがらない奴らばかりだった。全く持って、今の私には釣り合わない。
白ブタ女は既にケーキをたいらげ、一緒にいる女友達と談笑している。高らかに笑い声を上げる彼女達を見て、ああ、なんて楽しそうなんだろうと、ふと思った。
駅前に出来たオープンカフェは、女性グループやカップルで溢れていた。その中で一人、文庫本を片手に気だるくカフェタイムを楽しむ自分に酔いたかったのに、件(くだん)のデブ女のせいで台無しだ。なんとなくむかっ腹が立ったので、上から下まで無遠慮に観察する。栄養が行き届いているのか、艶やかな髪とコラーゲンたっぷりの白い肌は一見美しい。でも、顎からだらしなく垂れ下がった肉、半袖から剥きだしになったハムのような腕。見苦しい。寸胴の上半身を支えている椅子が気の毒だ。ああ、醜い……、思わず呟き、バッグからミラーを出して自分の顔を見た。うん、キレイ、完璧。もう一度、白ブタ女を見ながら、あの子もああいう目にあえば変われるのだろうかとふと思う。
馬鹿にされていた。それは薄っすら分かっていたけれど、道化役が自分には一番似合っていると思っていたし、皆もそんな私を愛してくれていた。そう思っていた。例えばカラオケに行き、高らかに歌い、バキュームのように食べる太った女を、あんなに楽しそうに、嬉しそうに、見てくれていたじゃないか。アイコって本当にかわいいよねえと口々に言う仲間たちの言葉が、私の存在価値の証だったと思う。この頃着ていた十八号の服は今は全て廃棄してしまったけれど、自分ではそれなりにお洒落でかわいいと思っていた。ほら、芸能人の柳原可奈子みたいな感じだ。彼女はお洒落でチャーミングでしょう? いつも、自分を彼女に重ね、ファッションを真似たりしていた。柳原可奈子を意識しはじめたのは、デブでもかわいいよなあって、ユウジが褒めていたからだ。
ユウジに好意を寄せていた。もちろん、自分には叶わない恋だと分かってはいたけれど、でも、アイコといると癒されるよなあなんて言われると天にも昇ったような気持ちになったものだ。料理の腕を駆使して、仲間達に焼き菓子を差し入れしたのも、ユウジに食べて欲しかったから。そんな健気な自分に酔っていたのかもしれないけれど。
あれは梅雨があけ、気温が一気に上昇した日だった。サークルの部室にある冷房で涼もうとドアノブに手を掛けたとき、声が聞こえた。なんだ、皆考えることは一緒だなあと苦笑する。彼らは暑さに対する文句を言っていた。その中で、漏れ聞こえた、ユウジの、声。
「アイコの近くってさあ、デブ特有の臭いがしねえ? 夏、ヤバイよ」
やっぱり、女はスレンダーで美しいのが一番なのだ。コーヒーを一口含み、もう一度ミラーを覗く。綺麗だわ。あの時、ユウジの言葉で奈落の底に転げ落ちたけれど、豹変した私に言い寄ってきたユウジを振った時は爽快だった。美しい自分を手に入れた今、あの暴言を吐いた男に感謝の念すら抱く。
一緒に遊んでいた仲間達は、いつの間にか、少しずつ私の前から消えていった。仲間達は自分より劣っている友人を蔑むのが気持ちよかったのだろうが、もはや上のランクになった私を敬遠するようになったのだろう。女達は痩せてはいたがブスばかりだし、男達もはっきり言ってウダツのあがらない奴らばかりだった。全く持って、今の私には釣り合わない。
白ブタ女は既にケーキをたいらげ、一緒にいる女友達と談笑している。高らかに笑い声を上げる彼女達を見て、ああ、なんて楽しそうなんだろうと、ふと思った。
後書き
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