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作品ID:373
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約4640文字 読了時間約3分 原稿用紙約6枚
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星空の向こう側へ
作品紹介
とあるゲームを参考にして作ったものです。
自分的にまだまだな部分が多いです。
自分的にまだまだな部分が多いです。
「いよいよ…おしまいになったわね」
「…そうだね」
「思い残すことは?」
「別に…。僕はもう満足かな?」
「なら良かったわ。私も付き合ったことがあった」
「ごめんね。こんな最後で」
「死する時は皆同じ。集団自殺の願望があった訳じゃないけど。これはこれでハッピーエンドよ。私には」
「…みこは、強いね」
「取り乱すのが普通。私は、常に生命の危機に曝されて慣れてただけ」
「…でも、強いよ」
「悠一に、言われると嬉しいわ。素直にね」
僕たちは、島の浜辺に寝転がって星を見ていた。
今日で、一週間。最後の、日。この星――地球に、前代未聞の巨大惑星がぶつかるまで、推定時間まで、後一時間。今日から一週間前。アメリカのとある衛星に厄介な物が移りこんだというニュースが世界中に駆け回った。そして世界を絶望の淵に叩き落したのだ。巨大惑星が、地球の衛星軌道上にぶつかるコースで進んでいると。最初、誰もが嘘だと思っていたようだ。無論、僕も。だけど、アメリカ大統領が、急遽世界に向けて演説会を開いた。
「これは、人類…いや、地球全ての生きる生命体に対する神からの試練であるっ! 人類は、確固たる意思でこの事態に立ち向かわなければならないっ!!」
そういえば、大統領はどっかの宗教の人間だったな、と僕はその時呆然と思ったものだ。あまりに現実離れしすぎていて、実感がなかった。だけど、周りは大騒ぎだ。人間っていうのは、自分の範疇の超える出来事が起こるとパニックを起こすんだなって思った。不謹慎だけど、滑稽で、馬鹿馬鹿しくて、大笑いしてしまった。その後父さん達に凄く怒鳴られた。
こんな状況でよく他者を怒鳴れる力があったもんである。信じるを得ない。だって、あのアメリカ大統領が世界滅亡宣言とかいう宣言を出したんだ。嘘だと思う人間が普通いない。それからは世界中大騒ぎ。テレビをつければ胡散臭い奴等がこれは回避できるとかそんな詭弁を言いまくり、人々の不安を加速させて。国のトップだけを集めてシェルターの中でこの未曾有の大災害をやり過ごそうとしていることに暴動を起こす民衆。それを殺しまくる警官たち。ほんと、人間社会の秩序はこの一週間、無いといっても過言ではなかった。
幸い、僕たちの島にはそんな物騒なことは起こらなかった。まあ、辺境の島だったから、良かった。この時ほど、僕はこの島に感謝したことはなかった。父さんは何とか立ち直って、会社に言ったし、僕も学校に行った。案の定、誰もいなかったけど。一人を除いて。
それが今、隣で微笑んで星を見上げている女の子。白いお気に入りだという夏用のワンピース。麦藁帽子に、病的に白い肌。お人形のような顔立ち。とても愛らしい表情…というのは後になって知ったこと。
彼女にあったのは、その世界破滅宣言のあった当日。学校の一つしかない教室、誰も投稿していない場所で。彼女は、億劫そうに窓からみえる海を見て、溜め息を吐いていた。不思議と、僕は彼女のそんな様子に、見惚れてしまった。彼女は僕に気付くと、こう言っていた。
「貴方も、死ぬのが怖い?」
と。
僕は少し考えてこう答えた。
「人間、誰でも最後は死ぬじゃない? だったら別に怖くはない、かな。単に死ぬって感覚が分かんないだけだろうけど」
「そう…。死ぬって言うのは、簡単に言えば眠ることよ」
「眠ること?」
彼女は、クスリと微笑んでこう言った。その言葉が、今でも僕の胸には残っている。
「そう。安らかに、夢を見るの。楽しい、目覚めない夢を。永遠の夢を。この世界にある、唯一の永遠」
「……」
その微笑には、悲しみと――一種の達観した何かが浮かんでいた。それから僕たちは少し話した。彼女には、心残りがあるらしい。曰く。
「恋人が欲しいの」
「恋人? それって普通欲しいとか言わないと思うよ?」
「仕方ないじゃない。もう、時間なんてないんだから」
「それもそうか」
僕たちは笑いあった。彼女は東雲みこ、と名乗った。僕は唐澤悠一と名乗り返した。その後、しばらく誰もいない教室で僕らは雑談をした。みこはどうやらこの島の病院でずっと入院していて、この騒ぎに乗っかって脱走してきた。何でも、不治の病で近い未来に死ぬことが決まっていたんだそうだ。彼女は笑ってそう言った。さっきと同じ、深い悲しみと、何かを浮かべて。だから、別に死ぬことに今更抵抗などないと説明された。
みこは、終焉まで一週間限定でお付き合いしてみない? と提案してきた。つまり恋人ごっこをしようといいたいようだ。僕はいいよ、と答えた。あまり、教室でも見かけない顔だったし、少し彼女に興味が湧いたから。
「あら?悠一、私が相手でいいの? 彼女、いないのかしら?」
「いないよ。僕、女子とはあんまり話さなかったから」
「なら、何故了解したの?」
「みこが可愛いから」
「っ!」
正直に言うとみこの顔が真っ赤になった。その後、小さく「……馬鹿」と言ったのが可愛かった。僕も恥ずかしくなって、照れ隠しにみこの頭をぽむぽむと撫でたらみこに辞書の角で殴られた。病弱にしては力が強くて痛かった。
これが、僕らの出会い。一週間だけの、恋人ごっこ。僕にはそれが嬉しくて、出会って早々遊びに出かけることにした。そもそも学校には誰もいなかった。何でか学校は開いていたけれど。みんな、混乱してメチャメチャになってたみたいだった。この島には遊べる所なんてない。
みこは、海に行きたいと言った。ちょうど、みこは軽装だったから、僕は人のあまりいない浜辺に案内した。苦笑しながら彼女は、親が血眼で自分を捜しているだろう、と言っていた。でも捕まらない。家出じゃなく、病院出。なんて言いながら波打ち際で僕にパシャパシャ水をかけて来た。僕も年甲斐もなく笑いながら水をかけ返す。疲れたからちょっと休憩。僕が近くの店まで行ってジュースを買いに行くことにした。心配したら、案の定店員さんはいなかった。仕方ないのでお金だけおいてジュースを貰ってきてしまった。まあお金置いてあるし万引きにはならないだろう。
お昼も一緒に買ってきて、みこのいた場所まで帰った。彼女はざざーん…と鳴っている海を眺めて、遠い目をしていた。僕が声を掛けたら反応してくれた。中身を見せると露骨に嫌な顔をした。
「菓子パンは嫌いなの。甘いから」
「女の子なのに甘いもの嫌いなの?」
「悠一、それは偏見よ。女の子だから甘いものを好むというのはおかしいわ」
「そうなの?」
「そうよ。私は、ずっと入院していたからかもしれないけれど…」
「ふぅ?ん…」
僕はじゃあ、とカレーパンを渡した。みこも、「これならいいわよ」と言って齧り付いた。そして悲鳴を上げた。
「辛い! 痛い!! 何よこれ!?」
「…? え? 普通のカレーパンだよ?」
「辛すぎるわ! 舌が痛いじゃない!」
「え?」
パッケージを見ると、激辛の文字が躍っていた。よく見ないで渡してしまったらしい。というかこんなもの買っちゃったんだ、僕。みこはジュースを一気飲みして咽ていた。
「わっ、大丈夫?」
「げほっ…。だ、大丈夫よ」
「慌てて飲むから」
「悠一が妙な物食べさせるからよ!」
「僕のせい!?」
「貴方のせいよ!」
みこに怒られて、僕は小さくなる。みこは本当に感情の豊かな女の子だ。
みこは「もう帰るっ!!」と憤然と立ち上がる。僕は慌てて租借してすたすたと歩き出した彼女の後を追いかける。
「みこ、ごめんってば」
「許さないわ!」
「ごめんなさい」
「こんなんで一週間大丈夫なの!?」
「多分…」
「何でそこで大丈夫って言わないの悠一…」
ごすっと何処からか取り出した辞書の角でまた殴られた。痛い。僕はたまらず吹き出した。大笑いしてしまう。みこはさらに怒り出して辞書を振り上げ、僕は逃げ出した。みこが怒りながら追いかけてくる。浜辺を全力疾走。何してるんだろう、なんて思っていたっけ。
「ねえ、悠一」
「何?」
「私、本当に貴方を好きになったわ」
「な、何言ってるの!?」
「だって時間、ないじゃない」
突然の台詞に、僕は思わず上半身を上げた。みこは相変わらず星を見てる。でも、言葉は続く。
「恋人ごっこで始まったこれだけど…、私は悠一の恋人。彼女よ」
「…僕だって彼氏だよ?」
「当然じゃない。私の隣にいてもいいのは悠一だけよ」
「みこ…」
「ねえ、あれみて」
空に視線の行ったまま、みこは指指した。僕も見上げる。
「あれが私達に終焉を与えるもの。私達の、最後の風景よ」
「……大きいね」
「実際は精々数千キロの惑星よ」
「精々って…」
そこには、他の星星より明らかに巨大な星が、流れ星のように水平線の向こう目掛けて落ちていくのが見えた。みこは落ち着いて、言った。
「あんなものが最後の風景とはね。災厄の星ね」
「まあそうだろうね」
「悠一、キスしましょ」
「はぁ?! み、み、みみみみこ!? 何言ってんの!?」
「我が侭言わない、さっさとこっちに来なさい!」
「我が侭がみこでしょ!?」
「うるさい!」
みこは立ち上がると、僕の胸倉を掴み上げて自分の方に引き寄せた。ほんと、何て力だ。さすがみこ…。
「う…」
しかしそこまでしたはいいが、みこの眉がハの字になっている。顔も恥ずかしさで真っ赤になっていて、そしてギリギリと胸倉を掴む力が強くなっている。
「みこ、痛い」
「う、うるさいわ悠一っ! キスするの! 絶対するの!」
「分かった! 分かったよ、僕からするから! だから離して!」
「本当でしょうね…?」
みこがようやく手を離してくれた。何だか、僕の体が完全に宙に浮いていた気がする。
僕は、みこの肩を優しく掴んだ。それだけでびくっ! とみこの体が震える。
「…目は、閉じるべき?」
「当たり前。マナー違反」
と言われてしまったので、僕は目を閉じた。と見せかけて目を開ける。みこは完全に、ぎゅっと目を閉じている。うん、いまだ。よし、ロックオン完了。僕も再び目を閉じ、ゆっくり顔を近づける。
――――ちゅっ。
唇に、柔らかい感触が伝わる。何秒間か、息をしないままその状態が続いた。そして、ドン! とみこに突き飛ばされた。
「――っぷはぁ! い、何時までキスしてるの悠一! 息できなかったじゃない!」
みこはどうやら息を我慢していたらしい。羞恥と怒りで顔が真紅に染まっていた。それが星光しかないこの空間でもよく分かる。
「悠一、正座!」
「……はい」
それから、僕はしばらくみこの元でお説教を受ける羽目になった。
これで、世界が終わったというと、情けないけれど。僕はこれでもよかったと思うんだ。みこと、最後にキスできたし。みこも、最後の瞬間にこう言ってくれたんだ。
「悠一、大好き」
って。
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