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作品ID:40
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1757文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
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指先魔法使い(1)
作品紹介
指を振るとそれぞれの一族の、それぞれの“モノ”にしてしまう。
そんな13の一族が競い合う国の、ある日のお話し。
オムニバス形式で紡いでいく、小さな物語の掌編ファンタジー
そんな13の一族が競い合う国の、ある日のお話し。
オムニバス形式で紡いでいく、小さな物語の掌編ファンタジー
1.ツォルニード・ピンズマー男爵の場合
この世界の成り立ちも、この国の成り立ちも誰も知りません。
ただ、とてもとても珍しい魔法の国で、そこには13の一族が互いに競い合って暮らしています。
かつて多い時に100を越す族数でしたが、便利さに欠いて消滅していき、今の13の一族が残ったと言うことでした。
さてさて今日の物語は、ピンズマー一族の若き貴公子、ツォルニード・ピンズマー男爵のお話。
ツォルニードピンズマー男爵は、巷ではニード男爵、またはピンズマー男爵と呼ばれていた。
短めのシルクハットにおかっぱの髪、そして赤よりなぜか派手に見えるご自慢の緑のオープンカーで、男爵は今日も颯爽と現れた。
「あら、ニード男爵。ご機嫌いかが?」
声を掛けたのは、レースで編んだドレスのマダム・スタンプシー。車から降りたピンズマー男爵は、マダム・スタンプシーの手を取った。
「ご機嫌麗しく、マダム・スタンプシー」
そっと手の甲に口づけ、顔を覗き込むようにウィンクしてきた男爵に、マダム・スタンプシーはうっとりしてしまった。
そんなマダムから踵を返して、車に向かって男爵が指を振った。
なんと彼が指を振る度に、車は前が縮んだかと思えば、後ろが折り畳まれたりとみるみるうちに小さくなっていく。最後には車の形をしたピンブローチになって、彼の手に飛び込んで来た。
うっとり見ていたマダム・スタンプシーも、彼を見つけて寄って来た若い女性達も、男爵の指さばきの後のお決まりの流し目に総崩れとなっていた。
「相変わらずお上手でらっしゃるわね」
「ほんっと、ピンズマー様の指さばき、惚れぼれしますわ」
ついでのついでに、帽子のつばを少し下げるポーズを取って、「失礼」と足早に去って行く。
なんとも飽きずにこうも毎日ワンパターンで派手なご登場である。
この国の爵位ある上流人は、大きな池のほとりの公園や、そのそばにあるリングルノの長老が所有する洋館が、だいたい毎日の社交場となっていた。
ニード男爵も、この時間は池のほとりでティータイムセットのお茶を、一人で楽しむのが日課だった。
手頃な木陰を探して、襟からまず取りはずしたのは、テーブルとイスの形をしたピンブローチ。手のひらに転がして、指を振る。むくむくむくっと、まるでパンが焼き上がっていくように、テラス仕様のテーブルと、籐仕立てのイスに早変わり。
次に取り出したピンブローチ目掛けて指を振ると、今度はティーカップとお茶の入ったティーポットが現れた。
「う?ん、この香り」
満足気に笑ってみせて、キュッとタイをしめ直すと、男爵にとっては穏やかなひとときが訪れる。
「優雅だ……」
そう呟いて、自己陶酔に近い夢見心地に入って行く。
だがその襟もとを見ると、もう一つ二つ、カップのピンブローチがあるようだ。彼は一人でお茶を楽しむのがこの時間の日課だが、それを知らない者の方が国の上流人には少ない。
彼目当てに近くを散歩しているご婦人も、また少なくはない。
そうでないにしろ、男爵の天性の色男ぶりが、近くを通るレディー達をみすみす見逃すようなことはなかった。
ちょうどそこの小道を、ミラーユ一族の看板娘が通り掛かった。
「これはこれはレディー・プティ。いかがですか? 私とお茶でも」
声を掛けると、すかさず予備のピンズに指を振って、カップを取り出した。当然その指さばきも口説くための演出だった。
しかし、
「いいえ、お気持ちだけ頂いておきますわ。先を急ぎますので失礼を」
お誘いを固辞してそそくさとレディー・プティは立ち去って行ってしまった。
あっけなく断られた男爵は、青ざめながらしばらく固まってしまっていた。いくら貴公子と異名高き男爵と言えど、空振りの日もたまにはあるだろう。
「ふふふ……ふふふふふふ……」
突然彼は笑い出した。振られたせいでおかしくなったのかとも思えるが、そうではないらしい。
この続きは、またの物語として語られることになるだろう。
この世界の成り立ちも、この国の成り立ちも誰も知りません。
ただ、とてもとても珍しい魔法の国で、そこには13の一族が互いに競い合って暮らしています。
かつて多い時に100を越す族数でしたが、便利さに欠いて消滅していき、今の13の一族が残ったと言うことでした。
さてさて今日の物語は、ピンズマー一族の若き貴公子、ツォルニード・ピンズマー男爵のお話。
ツォルニードピンズマー男爵は、巷ではニード男爵、またはピンズマー男爵と呼ばれていた。
短めのシルクハットにおかっぱの髪、そして赤よりなぜか派手に見えるご自慢の緑のオープンカーで、男爵は今日も颯爽と現れた。
「あら、ニード男爵。ご機嫌いかが?」
声を掛けたのは、レースで編んだドレスのマダム・スタンプシー。車から降りたピンズマー男爵は、マダム・スタンプシーの手を取った。
「ご機嫌麗しく、マダム・スタンプシー」
そっと手の甲に口づけ、顔を覗き込むようにウィンクしてきた男爵に、マダム・スタンプシーはうっとりしてしまった。
そんなマダムから踵を返して、車に向かって男爵が指を振った。
なんと彼が指を振る度に、車は前が縮んだかと思えば、後ろが折り畳まれたりとみるみるうちに小さくなっていく。最後には車の形をしたピンブローチになって、彼の手に飛び込んで来た。
うっとり見ていたマダム・スタンプシーも、彼を見つけて寄って来た若い女性達も、男爵の指さばきの後のお決まりの流し目に総崩れとなっていた。
「相変わらずお上手でらっしゃるわね」
「ほんっと、ピンズマー様の指さばき、惚れぼれしますわ」
ついでのついでに、帽子のつばを少し下げるポーズを取って、「失礼」と足早に去って行く。
なんとも飽きずにこうも毎日ワンパターンで派手なご登場である。
この国の爵位ある上流人は、大きな池のほとりの公園や、そのそばにあるリングルノの長老が所有する洋館が、だいたい毎日の社交場となっていた。
ニード男爵も、この時間は池のほとりでティータイムセットのお茶を、一人で楽しむのが日課だった。
手頃な木陰を探して、襟からまず取りはずしたのは、テーブルとイスの形をしたピンブローチ。手のひらに転がして、指を振る。むくむくむくっと、まるでパンが焼き上がっていくように、テラス仕様のテーブルと、籐仕立てのイスに早変わり。
次に取り出したピンブローチ目掛けて指を振ると、今度はティーカップとお茶の入ったティーポットが現れた。
「う?ん、この香り」
満足気に笑ってみせて、キュッとタイをしめ直すと、男爵にとっては穏やかなひとときが訪れる。
「優雅だ……」
そう呟いて、自己陶酔に近い夢見心地に入って行く。
だがその襟もとを見ると、もう一つ二つ、カップのピンブローチがあるようだ。彼は一人でお茶を楽しむのがこの時間の日課だが、それを知らない者の方が国の上流人には少ない。
彼目当てに近くを散歩しているご婦人も、また少なくはない。
そうでないにしろ、男爵の天性の色男ぶりが、近くを通るレディー達をみすみす見逃すようなことはなかった。
ちょうどそこの小道を、ミラーユ一族の看板娘が通り掛かった。
「これはこれはレディー・プティ。いかがですか? 私とお茶でも」
声を掛けると、すかさず予備のピンズに指を振って、カップを取り出した。当然その指さばきも口説くための演出だった。
しかし、
「いいえ、お気持ちだけ頂いておきますわ。先を急ぎますので失礼を」
お誘いを固辞してそそくさとレディー・プティは立ち去って行ってしまった。
あっけなく断られた男爵は、青ざめながらしばらく固まってしまっていた。いくら貴公子と異名高き男爵と言えど、空振りの日もたまにはあるだろう。
「ふふふ……ふふふふふふ……」
突然彼は笑い出した。振られたせいでおかしくなったのかとも思えるが、そうではないらしい。
この続きは、またの物語として語られることになるだろう。
後書き
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