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作品ID:420

こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約3104文字 読了時間約2分 原稿用紙約4枚


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こちらの作品には、暴力的・グロテスクな表現・内容が含まれています。15歳以下の方、また苦手な方はお戻り下さい。

小説の属性:一般小説 / 未選択 / お気軽感想希望 / 初級者 / R-15 /

誓いの指輪

作品紹介

神のために戦う天使の兄と人を愛した堕天使の弟の悲しき兄弟の話。



真実とは何か?

何を守ればいいのか?

二人の違いはそれだけだった。


「兄様。神様は僕等を愛してくれるんだよね。」

「そうだよ。だから私達は神様のために生きるんだよ。」

「なら約束しようよ。神様のために生きるって。」

「いいね。じゃあこのお揃いの指輪に誓おう。」

「うん。」

『私達は一生神様の天使でいます。』



そう誓ったのに。

幼い日の約束などお前は忘れてしまったのか?

「大丈夫ですか?顔色があまりよろしくないようですが。」

部下の一人がそう声をかける。

私は微笑を作り、答える。

「大丈夫。少し疲れているだけだ。」

あれから何年もたった。

子供のころの指輪はもう指には入らない。

だが指輪はちゃんと私の髪止めとしてここにある。

たくさんの事が変わった。

今の私は天使軍の二百の兵を任されている上級天使だ。

今から堕天使討伐のため地上に向かっている。

そして弟は・・・



「久しぶりですね。兄様。」

変わってしまった弟。

白かった羽は黒く染まり美しかった長髪は短く切られてしまった。

弟は罪に堕ちた。

愛に堕ちた。

堕天使になってしまった。

「弟よ。改心する気はないか?」

「改心?なぜです?僕は今とても幸せなのですよ。愛しい人間逹が進化していくのが楽しくてしょうがない。」

「しかし、それは間違った進化だ。人はそれを使い罪を犯した。」

「それは一時的な物です。いつか人は正しい道を知ることができるでしょう。」

弟とその仲間逹は人を愛した。

愛するあまり人に神の秘密を教えてしまった。

人はそれを使い罪へと堕ちて行く。

他を憎み、物を奪い、人を殺す。

それが通常になってしまった。

「私はお前が改心しなければ、堕天使のお前と闘う事になるのだぞ。」

「それが兄様の仕事ですからね。」

感情のこもってない声で言う弟の表情には罪悪感も後悔もなかった。

私はそれが憎かった。

もし悪いと少しでも思っていれば弟を許す事ができたのに。

「お前は指輪の誓いを忘れてしまったのか!!」

「そんな物にはしがみついていられないのです。」

そんな物?

弟にとってはあの誓いはその程度の物だったのか。

信じてたのに。

私はあの誓いのために今まで生きてきた。

努力して精一杯生きてきた。

なのにその相手にとってはそんな物程度だったのだ。

許せるわけがない。

「神の名においてお前を排除する!!」

「僕は守ります!!僕の愛しい者逹を!!」



白い羽。長い髪。

どちらも僕が捨てた物。

「弟よ。改心する気はないか?」

あぁ兄様。

そんな苦しいそうな顔でこっちを見ないで。

僕はもう戻れないんだ。

「お前は指輪の誓いを忘れてしまったのか!!」

兄様が指輪を見せた時僕の心が痛んだ。

忘れるわけがない。

でもそう言ってはいけない。

僕のために、人間のために、そして何よりその誓いのために、僕は無感情の仮面を被り続けた。

この仮面はいつまでもつだろうか。

お願いだからその時までもってくれ。

兄様の心に憎しみの炎を絶さぬように。

兄様。もっと僕を憎んで。

心にある汚い物全部僕にぶつけて。



私は剣を抜く。

弟も同じように剣を抜く。

次の瞬間、二つの剣は火花を散らす。

弟の剣の腕は私が一番知っている。

「お前なら今の私の地位ぐらい簡単に取れただろに!!」

「そんな物に興味ありません。」

間合いをとってはぶつかり合う。

その繰り返し。

「なぜだ!なぜだ!」

私は叫ぶ。

なぜ人など愛した。

あのような不完全な生き物を。

なぜ神への忠誠心を捨てた。

天からの愛を拒んだ。

なぜ私を裏切った。

あんなに信じていたのに。

「兄様は知らなくていいのです。」

「教えろ!罪に堕ちたわけを!!」

あの無表情に一瞬だけ苦痛が見えた。

「兄様には理解できない。」

どういう意味だ?

共に生まれ、育った私達がわかりあえぬのなら誰が弟を理解できるのだ。

どこでこんなに変わってしまったのか。

昔はすべて理解できたのに。

「どうしてこうなってしまったのだ!!」



お願い。お願いだから。

ひび割れた仮面よ。

もう少し待ってくれ。

もう少しで僕の望みは叶う。

ぶつかり合う剣の音。

それが僕の望みへのカウントダウン。

舞う度に首にかけてる物が見えそうになる。

だめだ。これは見せちゃいけない。

見せたら兄様の心が揺れてしまう。

「なぜだ!なぜだ!」

その理由は今の兄様に言ってもわからないよ。

死ぬほど人を愛した事のない者に、忠誠という薬で心が麻痺した者には、この感情は理解できないんだ。

「どうしてこうなってしまったのだ!!」

それは僕にもわからないよ。

ただ僕は守ろうとしたんだ。

兄様は神への忠誠を。

僕は・・・愛を守りたかった。

「運命だとしか言えません。」



運命。

神への忠誠を捨てたくせに神の決めた運命のせいにするのか。

「ふざけるな!」

ますます強くぶつかる剣。

飛び散る刃の破片。

増える切り傷逹。

そんな一歩の隙ができた。

「これで終りだ!!」

私は剣を振り上げる。

それを見た弟の顔に表れたのは恐怖ではなかった。

微笑だった。

最初は罠かと思ったが違った。

弟は何もしなかった。

ただ私の剣に切られた。

破れた服の間から見えたのは血だけではなかった。

「そっそれは・・・」



あぁ。これだ。

待っていたのはこの瞬間だ。

僕はつい笑ってしまった。

これで僕の望みは叶う。

兄様の剣が僕を切り裂く。

気が遠くなるほどの鋭い痛み。

これだ。これでいいんだ。

隠していた物が兄様の目に映る。

そうだよ。

これが僕だよ。

兄様の弟の僕だよ。

それが僕の大切な宝物。

僕の生きてきた理由。



私の目に映ったのは指輪だった。

小さくなった指輪を紐に通して持っている弟だった。

「なぜ・・・?」

そんな物と言った誓いの証を大事に持っている?

破った約束をそんな風に持っている?

裏切ったはずなのになぜ揃いの指輪を持っている?

「なぜって僕が兄様との大切な思い出を捨てるわけないでしょう。」

小さな声。

呼吸も乱れてる。

それでも弟はしゃべった。

「僕は儚く美しいあの人逹を愛してしまいました。どんな事でもやってあげたくなりました。それが兄様との約束を破る事になると知りませんでしたから。」

弱々しくなる声。

溢れでる血。

「知った時僕は罰を受けたくなりました。そして大好きな兄様に排除されるという罰を僕は望みました。」

「そんなの自分勝手だ!」

「そうですね。でも僕は愛を捨てる事も兄様を憎む事もできませんでした。どちらもせずにすむのはこれだけだったんです。」

冷たくなる弟の体。

私の瞳から涙が落ちた。

「泣かないでください。僕は今、幸せですから・・・」

弟の目が閉じる。二度と開かない。

「あ゛ぁ゛ー!!!」

なぜ弟はそれしか

選べなかったんだ!?

なにが弟を追い詰めたんだ!?

・・・人間。そうだ。

人間がいたから弟は愛した。

なら人間が悪い。人間が憎い。

憎い!憎い!

「人など滅してしまおう!!」

羽が黒く染まる。人を愛しても、人を憎んでもそれは罪なのか。

私は二つの指輪を握りしめて歩き出した。

罪へと堕ちていった。

私も背こう。

人など生み出した神に。

後書き

未設定


作者 猫貝幸仔
投稿日:2011/10/29 14:37:49
更新日:2011/10/29 14:37:49
『誓いの指輪』の著作権は、すべて作者 猫貝幸仔様に属します。
HP『未設定

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