小説鍛錬室
小説投稿室へ運営方針(感想&評価について)
投稿室MENU | 小説一覧 |
住民票一覧 |
ログイン | 住民登録 |
作品ID:460
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1096文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
読了ボタン
button design:白銀さん Thanks!※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
あなたの読了ステータス
(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「あのひと」を読み始めました。
読了ステータス(人数)
読了(273)・読中(2)・読止(1)・一般PV数(779)
読了した住民(一般ユーザは含まれません)
小説の属性:一般小説 / 未選択 / お気軽感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
あのひと
作品紹介
未設定
あの人に会った。
と、言っても、写真の中での話だ。直接会ったら、恥ずかしさで死んでしまうだろう。
懐かしくなってきた顔は、半年あっていないだけのはずだったのに、同じ市内の学校に通っているはずなのに、遠い昔の事のように、遠い。
こんなことを言うと、おそらく、同級生は笑う。自分は、おそらく、恥ずかしさで顔が上げられない。
しかし、一人だけ笑わない人がいるのだ。
「ほう。今頃卒業アルバムが届いたと」
「……そうなんです。こういうのって、たいてい寄せ書き用のページがあるじゃないですか」
「ほう」
「そこが、真っ白なんですよね。卒業前ならクラスのみんなで回しあって書けるのに」
「ほう」
別に、この人は木の上にいたとしても、ほとんど返事がほう、でも、ふくろうではない。れっきとした人間で、変な人だ。
スカートを履いているから、おそらく女だろう。髪が長いから、おそらく女だろう。青い瞳が宝石みたいに輝いているから、おそらくハーフだろう。
しかし、確証はない。男が鬘をかぶっていることも珍しくない世の中だ。
「……で、何だったかな。好きな人の写真を見て、言わなきゃいいのに思わず目立ちたくて誰かに言いたい衝動に駆られた君が、私に報告に来たといったところで、私のせいで話が卒業アルバムに反れたのだったね。はいと言えるな? いや言え」
「はい……いや、八割方あっていたので返事をしただけです」
「ほう……あくまでも反抗するか。男に二言はないな?」
「何でそうなるのか教えてほしいです」
「我が美学に君が引っかかったからだよ」
「もっとわかりやすくお願いします」
「黙れ、もしくはくたばれ」
この整った顔から吐かれる暴言は、どこかの小説の登場人物にも似ているような……。
うん。この人は狼かもな。
頷く自分に、木の上から不思議そうなオーラが降ってくる。
「何がどうした」
「時に、全十八巻で、主人公が異世界にトリップするような戦記物、知ってます?」
「別に金鼠の真似をしているわけじゃないさ。素だ」
「それはそれでひどいでしょ!」
む、と言葉に詰まった相手は、すぐに立ち直った。
「……しかし、君。このマニアックな会話を理解できる変人が、この学校の中に何人いるというのかね?」
「とりあえずここに二人」
ブイサインにも見える手を出して、にかっと笑ってみる。
相手は、微笑んだようだった。
予鈴が鳴った。
思わず校舎のほうを向いた二、三秒の間に、木の上から人影が消えていた。
彼女……いや、相手は、自分の話を笑わない。
巧妙に仕組まれた暴言によって、会話が反れてしまうから。
と、言っても、写真の中での話だ。直接会ったら、恥ずかしさで死んでしまうだろう。
懐かしくなってきた顔は、半年あっていないだけのはずだったのに、同じ市内の学校に通っているはずなのに、遠い昔の事のように、遠い。
こんなことを言うと、おそらく、同級生は笑う。自分は、おそらく、恥ずかしさで顔が上げられない。
しかし、一人だけ笑わない人がいるのだ。
「ほう。今頃卒業アルバムが届いたと」
「……そうなんです。こういうのって、たいてい寄せ書き用のページがあるじゃないですか」
「ほう」
「そこが、真っ白なんですよね。卒業前ならクラスのみんなで回しあって書けるのに」
「ほう」
別に、この人は木の上にいたとしても、ほとんど返事がほう、でも、ふくろうではない。れっきとした人間で、変な人だ。
スカートを履いているから、おそらく女だろう。髪が長いから、おそらく女だろう。青い瞳が宝石みたいに輝いているから、おそらくハーフだろう。
しかし、確証はない。男が鬘をかぶっていることも珍しくない世の中だ。
「……で、何だったかな。好きな人の写真を見て、言わなきゃいいのに思わず目立ちたくて誰かに言いたい衝動に駆られた君が、私に報告に来たといったところで、私のせいで話が卒業アルバムに反れたのだったね。はいと言えるな? いや言え」
「はい……いや、八割方あっていたので返事をしただけです」
「ほう……あくまでも反抗するか。男に二言はないな?」
「何でそうなるのか教えてほしいです」
「我が美学に君が引っかかったからだよ」
「もっとわかりやすくお願いします」
「黙れ、もしくはくたばれ」
この整った顔から吐かれる暴言は、どこかの小説の登場人物にも似ているような……。
うん。この人は狼かもな。
頷く自分に、木の上から不思議そうなオーラが降ってくる。
「何がどうした」
「時に、全十八巻で、主人公が異世界にトリップするような戦記物、知ってます?」
「別に金鼠の真似をしているわけじゃないさ。素だ」
「それはそれでひどいでしょ!」
む、と言葉に詰まった相手は、すぐに立ち直った。
「……しかし、君。このマニアックな会話を理解できる変人が、この学校の中に何人いるというのかね?」
「とりあえずここに二人」
ブイサインにも見える手を出して、にかっと笑ってみる。
相手は、微笑んだようだった。
予鈴が鳴った。
思わず校舎のほうを向いた二、三秒の間に、木の上から人影が消えていた。
彼女……いや、相手は、自分の話を笑わない。
巧妙に仕組まれた暴言によって、会話が反れてしまうから。
後書き
未設定
|
読了ボタン
button design:白銀さん Thanks!読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
自己評価
感想&批評
作品ID:460投稿室MENU | 小説一覧 |
住民票一覧 |
ログイン | 住民登録 |