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作品ID:475
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約746文字 読了時間約1分 原稿用紙約1枚
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武士と女将
作品紹介
重三郎は料亭で久方ぶりの飯を食う。
料亭の女将を見れば、太夫かと見間違える。女将は女将なりに重三郎に答えた。――その回答とは一体?
高校生の頃に書いた作品です。
現在と書き方は少々違います。
江戸時代の雰囲気を少しでも磨こう。そう思い、執筆した作品です。
料亭の女将を見れば、太夫かと見間違える。女将は女将なりに重三郎に答えた。――その回答とは一体?
高校生の頃に書いた作品です。
現在と書き方は少々違います。
江戸時代の雰囲気を少しでも磨こう。そう思い、執筆した作品です。
「頂戴する」
重三郎は合掌して箸に手を付けた。箸を持ち替え、脂が香ばしい秋刀魚を前に震えた。女将は様子を見て、「お上がりよ」と満足そうに微笑む。彼は頷き、豊満に肉汁がこぼれ落ちてくる白身を掬って顔一杯に頬張る。
「うまい」
咀嚼して有無を言わせず嚥下する。重三郎は女将を忘れて貪りついた。無理もない。彼は数日何も食べてはいないはずだ。それが脂身がたんと載った秋刀魚があれば、食せずにはいられないのだろう。
女将はそれを大層気に入ったらしく、
「お前さんよく食べるねぇ。惚れそうだよ」
半分呆れ、半分得心があるような顔を見せた。頬にはほんのりと朱がさし、染みとおるような紅色の唇を歪めている。重三郎は一息ついてから、ようやく女将が美しく見えた。年は見る限り三十路の女盛りで、色は白く均質に並んでいる歯が魅力である。恐らく、宿場町で一番の女盛りだろう。この様な女が、女将を抱えていることに疑問を感じる。
――太夫では無いか。
そう食事中に何度も訊ねたことがある。しかし体よくいなされ、
『上手いねぇ、お客さん。あたしは生まれてから女将さ』
逆に重三郎は違いないと思った。女将の家は孫の代まで女将である。武士の家は末代まで武士のように。彼は無造作に骨を噛み砕き、膝立で身を起こした。刀を手元に引き寄せ、机に銀一丁を置く。
「女将、勘定はここに置く」
「お前さん、もう行くのかい? それにお金多いよ」
重三郎は暖簾に手をかけ、不敵に微笑む。
「良いのさ。介錯してくれた礼だ。取っておけ。……女将、馳走になった」
「素直じゃないねぇ。……またおいで、重三郎様」
重三郎は顔を綻ばせた女将に送られ、料亭を出た。
その後、彼の行方は露にしれない。
終
重三郎は合掌して箸に手を付けた。箸を持ち替え、脂が香ばしい秋刀魚を前に震えた。女将は様子を見て、「お上がりよ」と満足そうに微笑む。彼は頷き、豊満に肉汁がこぼれ落ちてくる白身を掬って顔一杯に頬張る。
「うまい」
咀嚼して有無を言わせず嚥下する。重三郎は女将を忘れて貪りついた。無理もない。彼は数日何も食べてはいないはずだ。それが脂身がたんと載った秋刀魚があれば、食せずにはいられないのだろう。
女将はそれを大層気に入ったらしく、
「お前さんよく食べるねぇ。惚れそうだよ」
半分呆れ、半分得心があるような顔を見せた。頬にはほんのりと朱がさし、染みとおるような紅色の唇を歪めている。重三郎は一息ついてから、ようやく女将が美しく見えた。年は見る限り三十路の女盛りで、色は白く均質に並んでいる歯が魅力である。恐らく、宿場町で一番の女盛りだろう。この様な女が、女将を抱えていることに疑問を感じる。
――太夫では無いか。
そう食事中に何度も訊ねたことがある。しかし体よくいなされ、
『上手いねぇ、お客さん。あたしは生まれてから女将さ』
逆に重三郎は違いないと思った。女将の家は孫の代まで女将である。武士の家は末代まで武士のように。彼は無造作に骨を噛み砕き、膝立で身を起こした。刀を手元に引き寄せ、机に銀一丁を置く。
「女将、勘定はここに置く」
「お前さん、もう行くのかい? それにお金多いよ」
重三郎は暖簾に手をかけ、不敵に微笑む。
「良いのさ。介錯してくれた礼だ。取っておけ。……女将、馳走になった」
「素直じゃないねぇ。……またおいで、重三郎様」
重三郎は顔を綻ばせた女将に送られ、料亭を出た。
その後、彼の行方は露にしれない。
終
後書き
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