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作品ID:560
こちらの作品は、「お気軽感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1138文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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■遠藤 敬之 ■白銀 ■a10 ワーディルト
小説の属性:一般小説 / 未選択 / お気軽感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし /
約束
作品紹介
映画を見た後の、余韻に浸って書いたもの。
いろいろと怖い話だったなあ。
いろいろと怖い話だったなあ。
その日は土砂降りの雨で、家を一歩出ただけで冷たい風がまとわりついてくるような気温だった。極力家から出たくないような日だったけれど、残念ながら私の家は国境の向こう側で、泊まっているホテルさえ、今はどこにあるかわからない。
傘もささずに飛び出す。元々そんなものはもっていなかった。こんなところでのんきに傘なんて開いていたら、きっとすぐに射抜かれてしまうだろう。
ほら、こんな濡れ鼠にさえ、三途の河を渡らせようとする者がいる。
飛来した細い鉄の矢を避けると、物陰に身を潜めた。後ろで爆発が起きる。あれが体に刺さっていたら、私の体はもうどこがどこだかわからなくなっているだろう。
道を一本渡るだけでこのありさまだ。
「ひどいもんですね。」
私に答える人はいない。
いとしい我が家から遠く離れたこの地で、一人ぼっちで震えてる。
死と隣り合わせの状況が怖いから? 雨に濡れて寒いから?
それとも、ここに来るまでずっと考えていた、最悪のシナリオが頭から離れないから?
最後の一つであってほしい。そうだったら、まだ頑張れる。私の想像なんて、行動でいくらでも変えられる。
物陰から出て、壁伝いに走る。今すぐこの地を抜けるか、味方を見つけなくてはいけない。河のほとりで追い剥ぎをやっているばあさまが手を振るのを、黙って見ている場合ではないのだ。
首にかけた預かりものをお守りみたいに握って、必死に走る。体力には自信があるつもりだけど、すぐに息があがってしまった。やけに雨が冷たく感じる。
次の一歩を踏み出したとき、私はその場に倒れこんだ。
走っていたはずなのに、移動した距離はわずかだった。疑問に思って立ち上がろうとしても、体が言うことをきかない。さっきの爆発で、どこかやってしまったのだろうか?
視界も狭まってきた。そこでようやく、私は体調が悪いことに気が付いた。意識が朦朧としている。ばあさまがにっと笑う。
その時、視界の端で何かが光った。
預かりものだ。転んだ時に鎖が千切れてしまったのだろう。私はそろりと手を伸ばした。ぎりぎり届かない。
自分が死にそうだということよりも、預かり物を手放してしまいそうなことが恐ろしかった。
傍から見れば実に滑稽に見えただろう。
手を伸ばして、それでも届かなくて、私は匍匐前進をどうにか繰り返して預かりものを掴んだ。安っぽい金メッキのロケット。中に何か入っているようだけれど、これを預かってから二年間、中身を見ようとは思わなかった。
手に掴んだだけで満足してしまったのだろう。私の意識はすっと遠のいた。
なんて幸せ者だろう。私を心配する誰かが、肩を叩いた幻想を見た。
傘もささずに飛び出す。元々そんなものはもっていなかった。こんなところでのんきに傘なんて開いていたら、きっとすぐに射抜かれてしまうだろう。
ほら、こんな濡れ鼠にさえ、三途の河を渡らせようとする者がいる。
飛来した細い鉄の矢を避けると、物陰に身を潜めた。後ろで爆発が起きる。あれが体に刺さっていたら、私の体はもうどこがどこだかわからなくなっているだろう。
道を一本渡るだけでこのありさまだ。
「ひどいもんですね。」
私に答える人はいない。
いとしい我が家から遠く離れたこの地で、一人ぼっちで震えてる。
死と隣り合わせの状況が怖いから? 雨に濡れて寒いから?
それとも、ここに来るまでずっと考えていた、最悪のシナリオが頭から離れないから?
最後の一つであってほしい。そうだったら、まだ頑張れる。私の想像なんて、行動でいくらでも変えられる。
物陰から出て、壁伝いに走る。今すぐこの地を抜けるか、味方を見つけなくてはいけない。河のほとりで追い剥ぎをやっているばあさまが手を振るのを、黙って見ている場合ではないのだ。
首にかけた預かりものをお守りみたいに握って、必死に走る。体力には自信があるつもりだけど、すぐに息があがってしまった。やけに雨が冷たく感じる。
次の一歩を踏み出したとき、私はその場に倒れこんだ。
走っていたはずなのに、移動した距離はわずかだった。疑問に思って立ち上がろうとしても、体が言うことをきかない。さっきの爆発で、どこかやってしまったのだろうか?
視界も狭まってきた。そこでようやく、私は体調が悪いことに気が付いた。意識が朦朧としている。ばあさまがにっと笑う。
その時、視界の端で何かが光った。
預かりものだ。転んだ時に鎖が千切れてしまったのだろう。私はそろりと手を伸ばした。ぎりぎり届かない。
自分が死にそうだということよりも、預かり物を手放してしまいそうなことが恐ろしかった。
傍から見れば実に滑稽に見えただろう。
手を伸ばして、それでも届かなくて、私は匍匐前進をどうにか繰り返して預かりものを掴んだ。安っぽい金メッキのロケット。中に何か入っているようだけれど、これを預かってから二年間、中身を見ようとは思わなかった。
手に掴んだだけで満足してしまったのだろう。私の意識はすっと遠のいた。
なんて幸せ者だろう。私を心配する誰かが、肩を叩いた幻想を見た。
後書き
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