小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説鍛錬室

   小説投稿室へ
運営方針(感想&評価について)

読了ボタンへ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

作品ID:606

こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。

文字数約1473文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚


読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「心鏡」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(233)・読中(3)・読止(0)・一般PV数(779)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)

ふしじろ もひと ■ある住民 ■白銀 


小説の属性:一般小説 / 未選択 / 批評希望 / 初級者 / 年齢制限なし /

心鏡

作品紹介

鏡に映る自分と会話をする、そんな話です。


 朝、少年は台所で朝御飯の支度をしている母親の声で目覚めた。いつの間にか目覚まし時計のスイッチは切られているが、これはいつものことである。

 半覚醒の少年は一階に降りると洗面台に向かった。鏡を見れば、半開きの目の自分が映っている。何てことない、いつものことだと少年は蛇口を捻り水を出す。春先のこの季節であっても、水道の水は指先で触れても痛いほど冷たい。少年はまず洗顔のために身を屈め、目をつむり両手で水を掬おうとしたその時

「相変わらず、不甲斐ない顔をしてるな」

 と、何処からともなく声が聞こえた。その声は気のせいか自分の声に似ている。少年は不思議には思ったが、幾分寝ぼけているため目を閉じたまま体を起こすが、直ぐにまた身を屈めた。

「おーい、聞こえてるか俺。こっちだよ、こっち」

 信じられない事に、その声は正面から聞こえてくる。少年はまさかと思い目を開き、体を起こすと、どういうわけだか右手を挙げて笑っている自分が目の前にいた。

「やっと気付いたか。どうした、俺。口が開いたままだぞ」

 今、少年の前の鏡に映っているのは紛れもない、自分だ。しかし、その動きは自分の動きとシンクロしていない。むしろ独立している。少年がだらしなく口を半開きにしたまま蛇口を閉めると

「お前は...、俺...、なのか...」

「そうだよ、見れば分かるだろ。でもな、俺は言うなれば、お前自身の本音さ」

 目の前にいる自分と会話するというのは、それなりに奇妙なもので、俺という一人称が同じ人間を示しながら多用されている。

「す、すげえ...。お前、本当に俺なのか。すげえよ」

 少年の眠気は何処へやら、興奮した様子で鏡の自分に食い入るように尋ねる。

「じゃあさ、お前が俺ならさ、俺の相談とか聞いてくれよ。俺、こういうのに憧れてたんだよ。自分自身と自分の悩みを話すっていうのに」

「構わないぜ、何せ、俺はお前だからな」

 少年は、興奮冷めやらぬままに尋ねる。

「俺さ、好きな子がいるんだけどさ、どうしたらいい」

 少年は、自分の答えに期待を抱いた。
 
「そんなの決まってんだろ。告白しろよ」

 鏡の自分の答えは、あまりにも簡単でかつ大胆だった。

「えっ、アドバイスとかくれないの。俺なんだからさ」

「お前、何か勘違いしてないか。最初に言ったけど、俺はお前何だぞ。お前が考えてる本当のことを具現化したのが、俺なんだよ。だから、俺が言うことは全部お前、俺自身が考えてることなんだぞ」

「えっ、じゃあ俺は告白しちゃえって考えてるのか」

「そういうことだな」

 そう言うと、鏡の自分は屈託のない笑顔で少年に微笑んだ。少年は、初めて見る自分の晴々しい笑顔に心底驚いた。自分はこんな風に笑えるのかと。

「ま、それが成功するかは、俺にはわかんねえけどな」

 これが本当の自分なのか、少年は自分の知らない自分を目の当たりにした。

「貴史、何してるの、遅刻するわよ」

洗面所に行ったきり戻って来ない息子を心配した母がリビングから声をかけた。

「分かった、今行くよ」

 少年は、リビングの方に顔を向けてそう言った。そうして顔を再び鏡に戻すと、自分と同じく鏡に向き直る自分が映っていた。

 少年は顔を洗う前に少し笑ってみせた。ぎこちなさはあるものの、なかなかいい顔をしているように思えた。


後書き

未設定


作者 さち
投稿日:2017/01/11 23:42:03
更新日:2017/01/11 23:42:03
『心鏡』の著作権は、すべて作者 さち様に属します。
HP『

読了ボタン

button design:白銀さん Thanks!

読了:小説を読み終えた場合クリックしてください。
読中:小説を読んでいる途中の状態です。小説を開いた場合自動で設定されるため、誤って「読了」「読止」押してしまい、戻したい場合クリックしてください。
読止:小説を最後まで読むのを諦めた場合クリックしてください。
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。

自己評価


感想&批評

作品ID:606
「心鏡」へ

小説の冒頭へ
作品紹介へ
感想&批評へ
作者の住民票へ

ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS