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作品ID:608
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1483文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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恋の花
作品紹介
何の手入れもしていないプランターから、出てくるこの芽は何の芽なのか。
社会人二年目の春、清々しい程澄み切った空に、俺はベランダに出た。
俺はこの部屋に高校生の時から住んでいる。両親いわく
「何事も自分の力でやりなさい。その為には早いうちから
社会に出るための術を身に付けなさい」
とのことなので、俺はこの部屋でもう九年も生活していることになる。
俺がこの部屋に初めて来たとき、何も無い筈のこの部屋には唯一ベランダに、土の入ったプランターが置かれていた。後になって分かったのだが、前の住人が忘れていった物らしく、当時ガーデニングの趣味の無かった俺は、残念ながら今でも無いのだが、捨てるのが面倒だったのでそのまま放置しておくことにした。プランターにはただ土が入っているだけで何も植えられておらず、俺はそれをただベランダに置いておくことにした。
高校生の時である。学校から帰ると、ベランダに置きっぱなしにしていたプランターから植物らしき芽が突然出ていたのだ。俺は何もしていなかったのに、それは突如現れた。
それから、その芽は、何もせずともどんどん成長していき、ついには蕾が出来るまでに成長していた。俺はこの事をクラスの奴に話していたのだけれど、話す相手が悪かったのか男共は誰一人として興味を示してくれなかった。唯一、この話をして仲良くなった女の子だけが俺の話を聞いてくれていた。いつしか俺は、あの子とこの話をすることが楽しくなっていた。
けれども、その蕾は花を咲かすことは無かった。色褪せることなく、どこか名残惜しそうに蕾は垂れてしまった。俺は、その事もあの子に話した。
「花が咲かなかったのは残念ね。もし、花が咲いたら私にも見せて欲しかったのに」
彼女はそう笑顔で言ってくれた。その時の笑顔は今でも覚えている。
それから俺とプランターの奇妙な関係は続いた。これまでプランターは幾度となく、芽を出した。けれども、それは一度も花を咲かせることは無かった。
大学の頃、特別仲のいい女友達が出来たとき、プランターは一段と大きな蕾をつけていた。勿論、俺は世話などしていないし、ベランダに放置したままだ。
その蕾は後少し、後一歩のとこまできたのだが、その蕾も花を咲かせることは無く、悲しそうに垂れてしまった。毎回毎回、垂れる蕾は必ず綺麗だった。いつかまた何とかすれば咲くのでないかと考えられる程に。
俺はある日を境に、蕾が俺に似ていると考え始めた。何もせずとも芽を出し、後一歩のとこまで成長し、終わりを迎える。そんな雰囲気が俺に似ていた。
俺は毎朝コンビニに寄って、お握りとコーヒーを買って出勤している。毎日会社のある日には通っているので、その時間帯にシフトに入っているバイトの女の子を毎日見る。結構可愛い。
ある日、いつものようにお握りと缶コーヒーを持ってレジに会計に行くと、いつものようにその女の子がレジの担当だった。朝の時間であるが、何故かこのコンビニはいつも空いている。
お金を払い商品を受け取ったその後、
「今日も、お仕事頑張ってくださいね」
とマニュアルには無いであろう言葉を貰った。その上、笑顔で言われたものだから、俺は嬉しかった。
その笑顔は高校の時のあの子の笑顔に似ていた。
その日、俺が帰宅すると、ベランダのプランターに新しい芽が出ているのに気が付いた。
俺はこの芽が何の芽なのか、少し分かった気がした。
俺はこの部屋に高校生の時から住んでいる。両親いわく
「何事も自分の力でやりなさい。その為には早いうちから
社会に出るための術を身に付けなさい」
とのことなので、俺はこの部屋でもう九年も生活していることになる。
俺がこの部屋に初めて来たとき、何も無い筈のこの部屋には唯一ベランダに、土の入ったプランターが置かれていた。後になって分かったのだが、前の住人が忘れていった物らしく、当時ガーデニングの趣味の無かった俺は、残念ながら今でも無いのだが、捨てるのが面倒だったのでそのまま放置しておくことにした。プランターにはただ土が入っているだけで何も植えられておらず、俺はそれをただベランダに置いておくことにした。
高校生の時である。学校から帰ると、ベランダに置きっぱなしにしていたプランターから植物らしき芽が突然出ていたのだ。俺は何もしていなかったのに、それは突如現れた。
それから、その芽は、何もせずともどんどん成長していき、ついには蕾が出来るまでに成長していた。俺はこの事をクラスの奴に話していたのだけれど、話す相手が悪かったのか男共は誰一人として興味を示してくれなかった。唯一、この話をして仲良くなった女の子だけが俺の話を聞いてくれていた。いつしか俺は、あの子とこの話をすることが楽しくなっていた。
けれども、その蕾は花を咲かすことは無かった。色褪せることなく、どこか名残惜しそうに蕾は垂れてしまった。俺は、その事もあの子に話した。
「花が咲かなかったのは残念ね。もし、花が咲いたら私にも見せて欲しかったのに」
彼女はそう笑顔で言ってくれた。その時の笑顔は今でも覚えている。
それから俺とプランターの奇妙な関係は続いた。これまでプランターは幾度となく、芽を出した。けれども、それは一度も花を咲かせることは無かった。
大学の頃、特別仲のいい女友達が出来たとき、プランターは一段と大きな蕾をつけていた。勿論、俺は世話などしていないし、ベランダに放置したままだ。
その蕾は後少し、後一歩のとこまできたのだが、その蕾も花を咲かせることは無く、悲しそうに垂れてしまった。毎回毎回、垂れる蕾は必ず綺麗だった。いつかまた何とかすれば咲くのでないかと考えられる程に。
俺はある日を境に、蕾が俺に似ていると考え始めた。何もせずとも芽を出し、後一歩のとこまで成長し、終わりを迎える。そんな雰囲気が俺に似ていた。
俺は毎朝コンビニに寄って、お握りとコーヒーを買って出勤している。毎日会社のある日には通っているので、その時間帯にシフトに入っているバイトの女の子を毎日見る。結構可愛い。
ある日、いつものようにお握りと缶コーヒーを持ってレジに会計に行くと、いつものようにその女の子がレジの担当だった。朝の時間であるが、何故かこのコンビニはいつも空いている。
お金を払い商品を受け取ったその後、
「今日も、お仕事頑張ってくださいね」
とマニュアルには無いであろう言葉を貰った。その上、笑顔で言われたものだから、俺は嬉しかった。
その笑顔は高校の時のあの子の笑顔に似ていた。
その日、俺が帰宅すると、ベランダのプランターに新しい芽が出ているのに気が付いた。
俺はこの芽が何の芽なのか、少し分かった気がした。
後書き
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