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作品ID:610
こちらの作品は、「感想希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約3818文字 読了時間約2分 原稿用紙約5枚
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「『塔の姫』 ~アルデガン外伝0~」を読み始めました。
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『塔の姫』 ~アルデガン外伝0~
作品紹介
僕にとって文章で書いた2作目のお話だった『封魔の城塞アルデガン』は、執筆から丸10年を迎えたこの2017年現在も延々と外伝という名の続編や前編、前日談や後日談を書き連ねる一大シリーズに化けています。これはその本編から千年の昔、同じ大陸のずっと西にあった森の中の小国に生まれた姫君のお話です。
時まさに魔法文明の絶頂期、やがて大陸の形さえ変わるほどの大戦争へとなだれ込み人類が文明水準を大きく後退させるに至るその少し前、隣国にいつ併呑されてもおかしくない小国に生まれた姫の行く末を父王が案じたことからお話は始まります。
千年昔のいわば始まりの詩だからと、古文が赤点だったくせに無理やりな擬古調かつ詩歌めいた書き方になっております。ブロックごとの文字数を偏執的に統一していますので、可能でしたら等幅フォントでご覧ください(汗)
『封魔の城塞アルデガン』本編 →
http://www.fya.jp/~sousakupower/novel_writer02.php?goto=detail&n_id=1950&address=10020
時まさに魔法文明の絶頂期、やがて大陸の形さえ変わるほどの大戦争へとなだれ込み人類が文明水準を大きく後退させるに至るその少し前、隣国にいつ併呑されてもおかしくない小国に生まれた姫の行く末を父王が案じたことからお話は始まります。
千年昔のいわば始まりの詩だからと、古文が赤点だったくせに無理やりな擬古調かつ詩歌めいた書き方になっております。ブロックごとの文字数を偏執的に統一していますので、可能でしたら等幅フォントでご覧ください(汗)
『封魔の城塞アルデガン』本編 →
http://www.fya.jp/~sousakupower/novel_writer02.php?goto=detail&n_id=1950&address=10020
そは遠き昔の遠き世界
絶頂迎えし魔導の技が
力を得たる多くの者に
邪心招きし悪しき時代
高さ競いし黒鉄の塔
魔力に歪みし昏き空
地より漏れし雷光の
あがく龍さながらに
天に描くよじれし弧
大陸の西のとある森
緑豊かな小さき国に
一人の姫が生を受け
父王いたく嘆きたり
野心隠さぬ隣国の王の
贄となるため生れしか
王子の妃にと命あらば
拒む術などありはせぬ
新たな国へと目移らば
その命とて危うからん
ああ呪わしき我が無力
姫も国も守れぬこの身
では姫君を秘するまで
進言せしは宮廷魔術師
幸い姫君の守り星は森
未聞の術さえ施せよう
銀の塔を森の奥に建て
姫君をそこに匿われよ
守護の呪文を紡ぐゆえ
真の名もまた隠されよ
姫君の身に守りの術式
森の加護を織り込めば
森で危難に会おうとも
その身を塔へ戻せよう
塔に戻らばもはや姫に
仇なす術はありはせぬ
姫君を軸に結界巡らせ
国に忘却の幻術施さん
王があえて望まぬ限り
我が民以外の奴ばらに
無人の荒野と映るよう
荒れた森と見えるよう
老魔術師の忠言容れて
赤子は森の塔へ移され
国民の命運負いにけり
民にも秘されし塔の姫
姫さえ知らぬその秘密
日陰に芽吹きし種一つ
かくて塔にて育ちたる
黄金の髪と緑の目もつ
森人一族の秘めたる宝
年月を経て開くは大輪
豊かな髪は背にうねり
紅玉とまがう小さき唇
侍従と僅かな侍女達と
時折きたる父王の他に
語る相手もなけれども
耳は梢を渡る風を聴き
瞳は樹木の彩りを映す
樹木に語らい花を愛で
緑を映せし銀の塔での
日々を疑うこともなし
されど病に伏せりし王
はや訪れる事能わざり
父の許へと願いし姫は
登城禁じる王命受けて
初めて疑う己が身の上
なぜこの塔を出られぬや
なぜこの森を出られぬや
何故我は気づけざりしか
かくもこの世の狭きこと
晩春の宵の薄闇に紛れ
侍従や侍女の目を盗み
ついに抜け出す銀の塔
されど森の中の湖畔に
淡き花びら渦巻く中に
佇みたるは魔性の乙女
黒き衣の背に流されし
身の丈ほどの髪は雪白
大きな碧眼のその深さ
底知れぬその眼差しに
畏怖を覚えし姫の身は
白銀の塔へと転移せり
あれは始祖たる吸血鬼
出会いし者を転化させ
人外の身に堕とすもの
戦慄収まらぬ塔の姫に
語りかけしは魔性の声
塔の守りと森の加護
重ねて堅き守護の術
我が力とて及ばねど
定めを変える力なし
道の交わる者だけが
我と出会う理なれば
いずれ時も心も移り
宿命の刻こそ訪れん
告げる乙女の低き声に
見上げる深き眼差しに
畏れの中にありつつも
心惹かれし所以は何ぞ
かの碧眼に宿りし光は
時越えし者の叡智の印
遥かな旅路で映じたる
数多のものの遠き残像
花散らす風に雪白の髪
なびかせ薄らぐその姿
追いし瞳に宿りし色は
憧れと羨望に他ならず
ああ籠の鳥の身ぞ哀し
父君の許すら行けぬ我
何故この身に許されぬ
魔性の者すら持つ自由
思い悩みし姫をよそに
季節は移ろい迎えし夏
弟と名乗りし王子訪れ
父王の訃報告げにけり
塔の窓に取りすがり
嘆く姫を見上げる瞳
同じ緑の目に燃ゆる
義憤の念ぞ激しけり
今際の際に父上は語りし
姉上を秘してありしこと
国民の守護の人柱となし
銀の塔に閉じ込めしこと
驚かれたるも無理はなし
日陰の身強いる不憫さに
せめての安らぎ願うゆえ
父上は真実を秘し給うた
されどいかなる故あれど
許されざるはこの仕打ち
そのかんばせの陰りこそ
安穏と暮らせし我らが罪
姉上一人に犠牲を強いて
もはや暮らすは許されじ
この国を継ぎし者として
かの暴虐の仇敵に挑まん
無謀なことを言い給うな
父上をかくも悩ませし敵
勝てる筈などありませぬ
されど新王の決意は固し
正面きって勝てずとも
奇襲によらば勝機あり
長きにわたり結界の中
国ごと潜みし我らゆえ
必ずや災いの影はらい
この牢獄より解き放ち
お返しするが我が責務
王のみが知る真の御名
姉上の守護の要なれば
未だ告げるは能わねど
暗雲晴れしその日こそ
尊き御名にて呼び申す
踵を返し立ち去る王に
白き腕差しのべれども
惑う思いは千々に乱れ
言葉の形をなさざりき
いましばしとの王の声
去りぎわのその一言が
姫の惑いをかき立てり
留めんとの声封じけり
破壊と死招く魔の光
遂に夜空へ駆け上る
己が沈黙のその結果
悔いつつ祈る塔の姫
だが朗報なきままに
夏は無情に翔り去り
姫の煩悶掻き立てつ
蒼穹の色ぞ移りゆく
ある夜地穿つ破滅の雷
天空焦がす紅蓮の大火
侍女の悲泣聞かずとも
疑い得ざる王城の滅び
侍従が退路へと導けど
なおも破れぬ守護の術
無情にも姫を連れ戻す
獄舎と化したる銀の塔
この結果をば恐れつつ
弟の言になぜ迷いしや
ただ一瞬の解放の夢に
惑いし罪へのこれが罰
戻りし侍従や侍女達に
覚悟にじませ告げる姫
落ち延び給えそなた達
我と共に死ぬは許さぬ
我が身の自由に心惑い
王を止めざる我のため
滅せし者ぞいかばかり
免れ得ざるこの身の咎
民導くことも叶わぬ身
王族の責務果たせぬ今
そなた達に託す他なし
王族として最後に命ず
見つかる限りの民草を
引きいし旅の守りにと
扉の守りの魔晶石托し
気丈に侍従ら送り出す
振り返りつつ去る後姿
見送りし姫は念じたり
秋の風より浮き出ずる
初霜のごとき人影の白
見上げる深く碧き目を
見下ろす瞳に揺ぎなし
思いを秘めし面差しに
魔性の乙女も応じたり
我が正体を知りながら
呼び寄せしとは珍しや
ならばしばし耳傾けん
我に告げんとする言葉
ああ魔性でありながら
賢者の相を併せし者よ
御身は全てを覚えしか
この世に起きし事々を
否と答えし黒衣の乙女
我が記憶に留めたるは
己が道行きに交わりし
僅かな数にすぎぬもの
たどる旅路の長さゆえ
見えしものも多かれど
定めに抗うすべなき身
知り得ぬ事もまた多し
その声のいと柔らかく
仄かな寂寥帯びたれば
胸に迫りし万感の念に
解きほぐされし姫の心
自らの境遇語りし後
慰謝と共に続けたり
御身もまた虜囚なら
理に抗えぬ身なれば
思い託すに足る者よ
敵の手に落ちたれば
嬲り殺しの他なき身
贄となるは厭わねど
されど僅か半年の前
あれは今年の春盛り
森の側にて摘みし花
瞼に浮かぶ鮮やかさ
かの花の色のみならず
陽光浴びたる地も森も
眩しきばかりの蒼穹も
はや夢幻かと思うのみ
あの時の我は何ひとつ
憂いの影も知らざりき
罪深きことと思いつつ
無垢への未練断ち難し
数多の思いに支えられ
無垢でいられし有難さ
今はただただ口惜しき
無垢でありし愚かしさ
数多の者の逝きし今
御身に見え語れしは
我が僥倖に他ならず
無常を渡りし旅人よ
散る他なき思いをば
御身に托し散華せん
骸は地下に封じ給え
塵に還るが我が願い
定かならざる未来ゆえ
無に還るかは判ぜねど
我が忘れることはなし
汝の告げたるその思い
守り破れし戸を潜り
歩み入りたる白き影
姫も階下に降り来り
死の抱擁に身を委す
幻術破れし銀の墓所
早くも訪れたる者は
詣でる者の筈もなく
敵たる黒髪の民の王
見い出す者をば悉く
剣の錆にさせながら
目にしたるは銀の塔
あれぞ宝の蔵ならむ
見出す品々荒しつつ
残る地下室暴くため
扉を破り踏み込めば
麗わしの骸見出せり
やよ小癪なる民の姫
咎を怖れ果てようと
見逃す余と思いしか
刻みて野に晒すまで
言い捨て踵返せども
背より絡みし白き腕
声出す事も能わずに
牙の贄となり果てし
そは遠き昔の遠き世界
人と魔織りなす昏迷の
翳濃き雲間に垣間見ゆ
うたかたのごとき物語
絶頂迎えし魔導の技が
力を得たる多くの者に
邪心招きし悪しき時代
高さ競いし黒鉄の塔
魔力に歪みし昏き空
地より漏れし雷光の
あがく龍さながらに
天に描くよじれし弧
大陸の西のとある森
緑豊かな小さき国に
一人の姫が生を受け
父王いたく嘆きたり
野心隠さぬ隣国の王の
贄となるため生れしか
王子の妃にと命あらば
拒む術などありはせぬ
新たな国へと目移らば
その命とて危うからん
ああ呪わしき我が無力
姫も国も守れぬこの身
では姫君を秘するまで
進言せしは宮廷魔術師
幸い姫君の守り星は森
未聞の術さえ施せよう
銀の塔を森の奥に建て
姫君をそこに匿われよ
守護の呪文を紡ぐゆえ
真の名もまた隠されよ
姫君の身に守りの術式
森の加護を織り込めば
森で危難に会おうとも
その身を塔へ戻せよう
塔に戻らばもはや姫に
仇なす術はありはせぬ
姫君を軸に結界巡らせ
国に忘却の幻術施さん
王があえて望まぬ限り
我が民以外の奴ばらに
無人の荒野と映るよう
荒れた森と見えるよう
老魔術師の忠言容れて
赤子は森の塔へ移され
国民の命運負いにけり
民にも秘されし塔の姫
姫さえ知らぬその秘密
日陰に芽吹きし種一つ
かくて塔にて育ちたる
黄金の髪と緑の目もつ
森人一族の秘めたる宝
年月を経て開くは大輪
豊かな髪は背にうねり
紅玉とまがう小さき唇
侍従と僅かな侍女達と
時折きたる父王の他に
語る相手もなけれども
耳は梢を渡る風を聴き
瞳は樹木の彩りを映す
樹木に語らい花を愛で
緑を映せし銀の塔での
日々を疑うこともなし
されど病に伏せりし王
はや訪れる事能わざり
父の許へと願いし姫は
登城禁じる王命受けて
初めて疑う己が身の上
なぜこの塔を出られぬや
なぜこの森を出られぬや
何故我は気づけざりしか
かくもこの世の狭きこと
晩春の宵の薄闇に紛れ
侍従や侍女の目を盗み
ついに抜け出す銀の塔
されど森の中の湖畔に
淡き花びら渦巻く中に
佇みたるは魔性の乙女
黒き衣の背に流されし
身の丈ほどの髪は雪白
大きな碧眼のその深さ
底知れぬその眼差しに
畏怖を覚えし姫の身は
白銀の塔へと転移せり
あれは始祖たる吸血鬼
出会いし者を転化させ
人外の身に堕とすもの
戦慄収まらぬ塔の姫に
語りかけしは魔性の声
塔の守りと森の加護
重ねて堅き守護の術
我が力とて及ばねど
定めを変える力なし
道の交わる者だけが
我と出会う理なれば
いずれ時も心も移り
宿命の刻こそ訪れん
告げる乙女の低き声に
見上げる深き眼差しに
畏れの中にありつつも
心惹かれし所以は何ぞ
かの碧眼に宿りし光は
時越えし者の叡智の印
遥かな旅路で映じたる
数多のものの遠き残像
花散らす風に雪白の髪
なびかせ薄らぐその姿
追いし瞳に宿りし色は
憧れと羨望に他ならず
ああ籠の鳥の身ぞ哀し
父君の許すら行けぬ我
何故この身に許されぬ
魔性の者すら持つ自由
思い悩みし姫をよそに
季節は移ろい迎えし夏
弟と名乗りし王子訪れ
父王の訃報告げにけり
塔の窓に取りすがり
嘆く姫を見上げる瞳
同じ緑の目に燃ゆる
義憤の念ぞ激しけり
今際の際に父上は語りし
姉上を秘してありしこと
国民の守護の人柱となし
銀の塔に閉じ込めしこと
驚かれたるも無理はなし
日陰の身強いる不憫さに
せめての安らぎ願うゆえ
父上は真実を秘し給うた
されどいかなる故あれど
許されざるはこの仕打ち
そのかんばせの陰りこそ
安穏と暮らせし我らが罪
姉上一人に犠牲を強いて
もはや暮らすは許されじ
この国を継ぎし者として
かの暴虐の仇敵に挑まん
無謀なことを言い給うな
父上をかくも悩ませし敵
勝てる筈などありませぬ
されど新王の決意は固し
正面きって勝てずとも
奇襲によらば勝機あり
長きにわたり結界の中
国ごと潜みし我らゆえ
必ずや災いの影はらい
この牢獄より解き放ち
お返しするが我が責務
王のみが知る真の御名
姉上の守護の要なれば
未だ告げるは能わねど
暗雲晴れしその日こそ
尊き御名にて呼び申す
踵を返し立ち去る王に
白き腕差しのべれども
惑う思いは千々に乱れ
言葉の形をなさざりき
いましばしとの王の声
去りぎわのその一言が
姫の惑いをかき立てり
留めんとの声封じけり
破壊と死招く魔の光
遂に夜空へ駆け上る
己が沈黙のその結果
悔いつつ祈る塔の姫
だが朗報なきままに
夏は無情に翔り去り
姫の煩悶掻き立てつ
蒼穹の色ぞ移りゆく
ある夜地穿つ破滅の雷
天空焦がす紅蓮の大火
侍女の悲泣聞かずとも
疑い得ざる王城の滅び
侍従が退路へと導けど
なおも破れぬ守護の術
無情にも姫を連れ戻す
獄舎と化したる銀の塔
この結果をば恐れつつ
弟の言になぜ迷いしや
ただ一瞬の解放の夢に
惑いし罪へのこれが罰
戻りし侍従や侍女達に
覚悟にじませ告げる姫
落ち延び給えそなた達
我と共に死ぬは許さぬ
我が身の自由に心惑い
王を止めざる我のため
滅せし者ぞいかばかり
免れ得ざるこの身の咎
民導くことも叶わぬ身
王族の責務果たせぬ今
そなた達に託す他なし
王族として最後に命ず
見つかる限りの民草を
引きいし旅の守りにと
扉の守りの魔晶石托し
気丈に侍従ら送り出す
振り返りつつ去る後姿
見送りし姫は念じたり
秋の風より浮き出ずる
初霜のごとき人影の白
見上げる深く碧き目を
見下ろす瞳に揺ぎなし
思いを秘めし面差しに
魔性の乙女も応じたり
我が正体を知りながら
呼び寄せしとは珍しや
ならばしばし耳傾けん
我に告げんとする言葉
ああ魔性でありながら
賢者の相を併せし者よ
御身は全てを覚えしか
この世に起きし事々を
否と答えし黒衣の乙女
我が記憶に留めたるは
己が道行きに交わりし
僅かな数にすぎぬもの
たどる旅路の長さゆえ
見えしものも多かれど
定めに抗うすべなき身
知り得ぬ事もまた多し
その声のいと柔らかく
仄かな寂寥帯びたれば
胸に迫りし万感の念に
解きほぐされし姫の心
自らの境遇語りし後
慰謝と共に続けたり
御身もまた虜囚なら
理に抗えぬ身なれば
思い託すに足る者よ
敵の手に落ちたれば
嬲り殺しの他なき身
贄となるは厭わねど
されど僅か半年の前
あれは今年の春盛り
森の側にて摘みし花
瞼に浮かぶ鮮やかさ
かの花の色のみならず
陽光浴びたる地も森も
眩しきばかりの蒼穹も
はや夢幻かと思うのみ
あの時の我は何ひとつ
憂いの影も知らざりき
罪深きことと思いつつ
無垢への未練断ち難し
数多の思いに支えられ
無垢でいられし有難さ
今はただただ口惜しき
無垢でありし愚かしさ
数多の者の逝きし今
御身に見え語れしは
我が僥倖に他ならず
無常を渡りし旅人よ
散る他なき思いをば
御身に托し散華せん
骸は地下に封じ給え
塵に還るが我が願い
定かならざる未来ゆえ
無に還るかは判ぜねど
我が忘れることはなし
汝の告げたるその思い
守り破れし戸を潜り
歩み入りたる白き影
姫も階下に降り来り
死の抱擁に身を委す
幻術破れし銀の墓所
早くも訪れたる者は
詣でる者の筈もなく
敵たる黒髪の民の王
見い出す者をば悉く
剣の錆にさせながら
目にしたるは銀の塔
あれぞ宝の蔵ならむ
見出す品々荒しつつ
残る地下室暴くため
扉を破り踏み込めば
麗わしの骸見出せり
やよ小癪なる民の姫
咎を怖れ果てようと
見逃す余と思いしか
刻みて野に晒すまで
言い捨て踵返せども
背より絡みし白き腕
声出す事も能わずに
牙の贄となり果てし
そは遠き昔の遠き世界
人と魔織りなす昏迷の
翳濃き雲間に垣間見ゆ
うたかたのごとき物語
後書き
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