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作品ID:634
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「一般小説」です。
文字数約1218文字 読了時間約1分 原稿用紙約2枚
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小説の属性:一般小説 / 現代ドラマ / 批評希望 / 中級者 / 年齢制限なし /
夜が長い子
作品紹介
例によって「授業の課題」シリーズです。今回は言葉というより技法がお題でした。
目が覚めると部屋の中はまだ暗闇で満ちていて、夜明けはまだまだ遠くにいるようだった。目覚ましも鳴ってはいない。学校の日にこんなに早く起きられればいいものを、どうして休みの日に限ってこんなに朝早く目が覚めるのだろう?
私はベッドの上にむっくりと起きあがった。もうひと眠りするには意識がはっきりしすぎている。
仕方がないから、布団をけりとばしてベッドから足を降ろす。ぶらぶらと揺らしてスリッパを探す。それらしきものを一度蹴飛ばして、ベッドの上を移動しながらちゃんと両足に履いた。
さいきんめっきり寒くなってきたから、靴下かスリッパがないと悲しくなる。
手探りでクローゼットのところまで行くと、音を立てないようにそっと開けた。
私はワンピースが好きだからたくさんクローゼットに掛かっている。何枚か洗濯物をのばすようにパンパンとさわって、さわり心地のいいガーゼのワンピースをハンガーから外した。ボタンを何か所か外して、頭からすっぽりと着る。掛け違えないように注意してボタンをはめるとすぐに着替えは終わってしまって、もうやることもなくなってしまった。
ベッドに腰かけてぼうっとしていると、部屋の上のほうから規則正しい音が降り落ちてくるのが聞こえる。
今何時くらいなんだろう。お母さんが起きてくるのがだいたい六時だから、それよりは前だと思うけど。
部屋の外から音は聞こえない。そのかわり、隣の部屋から物音が聞こえた。妹が起きたらしい。
ちょうどいいから話し相手になってもらおう。
ドアを開けると、朝のギラギラした光が肩にあたって、そこばかり温めはじめた。
あれ。夜だったのはわたしの部屋だけ?
そのとき、隣の部屋のドアが開いた。
「うわっ。」
妹の声にそちらを見る。
「おはよう、早いじゃん。」
「おはよう。ねえ、今何時?」
「七時ちょっと前。」
「そうなの?」
妹はわたしをドアの前からずらして、私の部屋の中を見た。
「もうお姉ちゃん、カーテン閉めるのやめなよ。薄暗かったら何もできないでしょ。」
私は「ちゃんと着替えられたもん。」と反論したけれど、妹はさっさと階段を降りて行ってしまった。スズランのいい匂いが残る。友達と遊びにでも行くのかな。
そっか。今日はお休みなんだから目覚ましは鳴らないし、お母さんだって早く起きなくていいんだ。
私は一歩一歩階段を降りる。もうすぐ段差が終わるってところでちょうどお母さんの部屋のドアが開く音がして、びっくりして足を滑らせた。踏み外した残り三段を滑り落ちる音を聞いて、お母さんが駆け寄ってきた。
「ちょっと、大丈夫なの?」
「うん。三段だけだったから。」
お母さんは私を起こして、階段の手すりに手を置いてくれた。それから、ため息を一つ。
「もうちょっと気をつけなさいよ。もうほとんど見えてないんだから。」
私はざらざらした壁紙を触りながら、「はあい。」と返事をした。
私はベッドの上にむっくりと起きあがった。もうひと眠りするには意識がはっきりしすぎている。
仕方がないから、布団をけりとばしてベッドから足を降ろす。ぶらぶらと揺らしてスリッパを探す。それらしきものを一度蹴飛ばして、ベッドの上を移動しながらちゃんと両足に履いた。
さいきんめっきり寒くなってきたから、靴下かスリッパがないと悲しくなる。
手探りでクローゼットのところまで行くと、音を立てないようにそっと開けた。
私はワンピースが好きだからたくさんクローゼットに掛かっている。何枚か洗濯物をのばすようにパンパンとさわって、さわり心地のいいガーゼのワンピースをハンガーから外した。ボタンを何か所か外して、頭からすっぽりと着る。掛け違えないように注意してボタンをはめるとすぐに着替えは終わってしまって、もうやることもなくなってしまった。
ベッドに腰かけてぼうっとしていると、部屋の上のほうから規則正しい音が降り落ちてくるのが聞こえる。
今何時くらいなんだろう。お母さんが起きてくるのがだいたい六時だから、それよりは前だと思うけど。
部屋の外から音は聞こえない。そのかわり、隣の部屋から物音が聞こえた。妹が起きたらしい。
ちょうどいいから話し相手になってもらおう。
ドアを開けると、朝のギラギラした光が肩にあたって、そこばかり温めはじめた。
あれ。夜だったのはわたしの部屋だけ?
そのとき、隣の部屋のドアが開いた。
「うわっ。」
妹の声にそちらを見る。
「おはよう、早いじゃん。」
「おはよう。ねえ、今何時?」
「七時ちょっと前。」
「そうなの?」
妹はわたしをドアの前からずらして、私の部屋の中を見た。
「もうお姉ちゃん、カーテン閉めるのやめなよ。薄暗かったら何もできないでしょ。」
私は「ちゃんと着替えられたもん。」と反論したけれど、妹はさっさと階段を降りて行ってしまった。スズランのいい匂いが残る。友達と遊びにでも行くのかな。
そっか。今日はお休みなんだから目覚ましは鳴らないし、お母さんだって早く起きなくていいんだ。
私は一歩一歩階段を降りる。もうすぐ段差が終わるってところでちょうどお母さんの部屋のドアが開く音がして、びっくりして足を滑らせた。踏み外した残り三段を滑り落ちる音を聞いて、お母さんが駆け寄ってきた。
「ちょっと、大丈夫なの?」
「うん。三段だけだったから。」
お母さんは私を起こして、階段の手すりに手を置いてくれた。それから、ため息を一つ。
「もうちょっと気をつけなさいよ。もうほとんど見えてないんだから。」
私はざらざらした壁紙を触りながら、「はあい。」と返事をした。
後書き
「信用できない語り手」という技法になぞらえて、ワンシーンを書いています。うそではないよ、言ってないだけだよってスタンスが好きですね。もちろんうそをつく語り手もいるわけですが。
授業ではあまりにも狙った通りの反応しか得られずさみしい思いをしました。反省。
授業ではあまりにも狙った通りの反応しか得られずさみしい思いをしました。反省。
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