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作品ID:75
こちらの作品は、「批評希望」で、ジャンルは「ライトノベル」です。
文字数約1699文字 読了時間約1分 原稿用紙約3枚
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小説の属性:ライトノベル / コメディー / 批評希望 / 中級者 / 年齢制限なし /
当たって砕けろ?
作品紹介
2008年夏に書いた作品です。
400字詰め原稿用紙5枚以内、「プラネタリウム」「最終電車」「夏のメリークリスマス」という3つのキーワードを盛り込む、という制限の中で書いた、いわゆるお題小説です。
400字詰め原稿用紙5枚以内、「プラネタリウム」「最終電車」「夏のメリークリスマス」という3つのキーワードを盛り込む、という制限の中で書いた、いわゆるお題小説です。
地球温暖化が進んだことで、季節感が失われて久しい。異常気象が続いたお陰で環境が変化し、季節は半年ほどズレてしまった。絶滅した生物も多い。
そのお陰で、十二月半ばだと言うのに気温は三十度を超えている。冷房が効いていなければ、室温は四十度を上回っていたかもしれない。
プラネタリウムの光を、恵介(ケイスケ)は見上げる。異常気象のせいで、落ち着いて夜空を眺めることも難しくなってしまった。昼は猛暑かと思えば、夜は雲が空を覆って寒波になることも珍しくない。
本当なら見えるはずの星空を、バーチャルでしか見られないのは残念だ。
「綺麗……」
隣で少女が呟いた。艶やかな黒髪に、長い睫毛と澄んだ瞳。清楚可憐という言葉がぴったりくるような、美少女が恵介の隣にいる。隣のクラスの安積(アヅミ)だ。学年中でも人気があるのは間違いない。
意を決してデートに誘ったが、今のところは上手く行っている。このままイけるんじゃないかと期待感も膨らむ。
「俺と付き合ってもらえませんか?」
プラネタリウムを出て、帰り道の駅で、恵介は勝負に出た。ドーンとぶつかって。
「……ごめんなさい」
ガシャーン、パラパラ。
「ダメっすか」
「ええ」
安積はわずかに苦笑いを浮かべて答えた。
「馬鹿な……」
なまじ期待感があったためにショックが大きい。恵介はその場で崩れ落ちそうになった。
「……私、遺伝子異常なんです」
安積は、声を落として呟いた。
普通の人ならそう簡単には口にしたがらない事情を、彼女は当たり前のことのように口にしていた。
環境の変化によって、人類にも影響が出た。それが遺伝子異常だ。オゾン層の破壊や環境の悪化によって生じた様々な悪影響が原因と言われているが、実際のところは定かではない。ただ、実質的に治療が不可能な病であることだけははっきりしている。最先端の遺伝子治療を用いても、遺伝子異常を取り除くことはできなかった。
現状では、打つ手が無い。
「他言無用ですよ?」
安積は人差し指を立てて口に当てた。その表情には、あまり悲壮感は見えない。
不治の病である遺伝子異常は、治療方法がまだない。進行速度やその経過も人によって様々で、下手をすると明日死んでしまうかもしれない病だ。
「そんなこと、俺は気にしない!」
恵介は力強く言った。例えいつ死ぬか判らない病に侵されていても、恵介が安積に惚れている事実は変わらない。
「いえ、私にはもう婚約相手がいますから」
安積の言葉に、再び玉砕。
彼女の話によると、安積を治療するために頑張っている婚約者がいるらしい。遺伝子異常の治療を目指しているというだけで、並の頭脳の持ち主ではない。意思の強さという点でも、今の恵介に勝ち目はないだろう。
電車が到着し、安積は一礼して乗り込んだ。恵介は呆然とそれを見送って、その結果、電車に乗り損ねた。
気付いた時には終電だった。
「当たって砕けちまったなぁ……」
終電に揺られながら、恵介は一人ぼやいた。
安積に告白する者は多いが、成功者はいなかった。理由は解ったが、恵介とてそう簡単に引き下がることはできない。
軽い気持ちで誘ったわけでもなければ、惚れっぽいわけでもない。自分で思っていたよりも本気だった。
「おー、佐久間(サクマ)、粉微塵だったそうだなー」
「うっせぇ」
翌日、恵介は学校で早速冷やかされた。
「俺は諦めんぞ」
競争相手がいると考えればいい。恵介は考え方をシフトした。安積の婚約者よりも早く、彼女を治療して見せればまだ望みはある。それだけ本気だということを見せればいい。
「無理だと思うなぁ」
隣で笑う友を無言でぶん殴り、恵介は窓から空を見上げた。
きっと、今年の夏のクリスマスプレゼントは人生のライバルなのだ。
「うおっ、まぶしっ!」
直射日光を目に受けて、恵介は盛大に転んだ。無意味に机を薙ぎ倒した恵介がクラス全員からたこ殴りにあったのは言うまでも無い。
―終―
そのお陰で、十二月半ばだと言うのに気温は三十度を超えている。冷房が効いていなければ、室温は四十度を上回っていたかもしれない。
プラネタリウムの光を、恵介(ケイスケ)は見上げる。異常気象のせいで、落ち着いて夜空を眺めることも難しくなってしまった。昼は猛暑かと思えば、夜は雲が空を覆って寒波になることも珍しくない。
本当なら見えるはずの星空を、バーチャルでしか見られないのは残念だ。
「綺麗……」
隣で少女が呟いた。艶やかな黒髪に、長い睫毛と澄んだ瞳。清楚可憐という言葉がぴったりくるような、美少女が恵介の隣にいる。隣のクラスの安積(アヅミ)だ。学年中でも人気があるのは間違いない。
意を決してデートに誘ったが、今のところは上手く行っている。このままイけるんじゃないかと期待感も膨らむ。
「俺と付き合ってもらえませんか?」
プラネタリウムを出て、帰り道の駅で、恵介は勝負に出た。ドーンとぶつかって。
「……ごめんなさい」
ガシャーン、パラパラ。
「ダメっすか」
「ええ」
安積はわずかに苦笑いを浮かべて答えた。
「馬鹿な……」
なまじ期待感があったためにショックが大きい。恵介はその場で崩れ落ちそうになった。
「……私、遺伝子異常なんです」
安積は、声を落として呟いた。
普通の人ならそう簡単には口にしたがらない事情を、彼女は当たり前のことのように口にしていた。
環境の変化によって、人類にも影響が出た。それが遺伝子異常だ。オゾン層の破壊や環境の悪化によって生じた様々な悪影響が原因と言われているが、実際のところは定かではない。ただ、実質的に治療が不可能な病であることだけははっきりしている。最先端の遺伝子治療を用いても、遺伝子異常を取り除くことはできなかった。
現状では、打つ手が無い。
「他言無用ですよ?」
安積は人差し指を立てて口に当てた。その表情には、あまり悲壮感は見えない。
不治の病である遺伝子異常は、治療方法がまだない。進行速度やその経過も人によって様々で、下手をすると明日死んでしまうかもしれない病だ。
「そんなこと、俺は気にしない!」
恵介は力強く言った。例えいつ死ぬか判らない病に侵されていても、恵介が安積に惚れている事実は変わらない。
「いえ、私にはもう婚約相手がいますから」
安積の言葉に、再び玉砕。
彼女の話によると、安積を治療するために頑張っている婚約者がいるらしい。遺伝子異常の治療を目指しているというだけで、並の頭脳の持ち主ではない。意思の強さという点でも、今の恵介に勝ち目はないだろう。
電車が到着し、安積は一礼して乗り込んだ。恵介は呆然とそれを見送って、その結果、電車に乗り損ねた。
気付いた時には終電だった。
「当たって砕けちまったなぁ……」
終電に揺られながら、恵介は一人ぼやいた。
安積に告白する者は多いが、成功者はいなかった。理由は解ったが、恵介とてそう簡単に引き下がることはできない。
軽い気持ちで誘ったわけでもなければ、惚れっぽいわけでもない。自分で思っていたよりも本気だった。
「おー、佐久間(サクマ)、粉微塵だったそうだなー」
「うっせぇ」
翌日、恵介は学校で早速冷やかされた。
「俺は諦めんぞ」
競争相手がいると考えればいい。恵介は考え方をシフトした。安積の婚約者よりも早く、彼女を治療して見せればまだ望みはある。それだけ本気だということを見せればいい。
「無理だと思うなぁ」
隣で笑う友を無言でぶん殴り、恵介は窓から空を見上げた。
きっと、今年の夏のクリスマスプレゼントは人生のライバルなのだ。
「うおっ、まぶしっ!」
直射日光を目に受けて、恵介は盛大に転んだ。無意味に机を薙ぎ倒した恵介がクラス全員からたこ殴りにあったのは言うまでも無い。
―終―
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