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さよならメモリー

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

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目次 次の話

 思い出を、瓶のなかに入った水に例えた男がいた。

 以前通っていた学校の教師だった。なんでも代々教師の家系らしく、俺の曾曾祖父さんは、黒板にチョークというもので手書きして授業を行っていたんだぞ、とよく言った。そんな昔のことどうでもいいよ、今はこうして電子機器、それでいいじゃないか、とクラスメートはよく言った。

 その教師が、ある授業のはじめの時間に、そういう例え話をしたのだ。



 楽しい思い出は水で、俺たちは水を入れるための瓶をひとつ持っている、と。



「瓶にはどんどん水がたまっていって、やがていっぱいになる。楽しい思い出で、いっぱいだ。」

 その教師のしゃがれ声を頭の中で再生する。年齢は50歳ほどだったが、はっきりと喋り、よく笑う男だった。

「だが瓶がいっぱいになって、新しい思い出の水は入れられなくなった。じゃあそんなとき、どうする?」

 教師はそこで一番教壇との距離が近い席に座っていた男子生徒に指をむけた。急に指された男子生徒はしどろもどろになったが、やがて小さな声で言った。

「瓶の中身を、流す?」

 その男子生徒は、これは正答ではないだろうという言い方をしていた。人間の間では、”楽しい思い出を流す”というのは、あまり良い言葉ではないらしい。

 しかし教師は笑って、「そうだ、捨てるんだ」と堂々と言った。

「入らなくなったら、中の水を減らして新しい水を入れるしかねえんだ。古い水を捨てて、日々入れ替えていかないといけない。」

 クラスの人たちは、その答えが意外だという表情をしていた。僕も予想外だった。もちろん捨てなければならないことではなく、そんなことを言う人がいたことが、だ。



「そうしないと、俺たちは生きていけないんだ。」

 なぜだか力強く響くその言葉を聞きながら、僕は内心で、そうだそのとおりだ、と応えた。

 別にその話はその後の授業となんの関わりもないただの雑談のようなものだったが、僕はよく記憶している。





  実際僕にとって、その言葉はそのとおりなのだ。

  なぜなら僕は毎日、自らで思い出を取捨選択しながら生きている。



 削除と保存をくりかえし、たくさんの水を流しながら、今日を歩いているのだ。

後書き


作者:柑子
投稿日:2012/11/09 17:06
更新日:2012/11/11 13:17
『さよならメモリー』の著作権は、すべて作者 柑子様に属します。

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