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作品ID:1295
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第一章「ベッカルト村」:第9話「出産の立会い」

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第9話「出産の立会い」



 村長の家では、村長と村長の息子のイザークが迎えてくれて、妻のフリーダのところに案内される。すでに薬師のヤネットが来ており、フリーダの容態を見ていた。

 俺はヤネットに「俺は治癒師だが、出産に立ち会ったことがない」と言ってから、



「あなたの方が経験も豊かだし、俺が口出すことはないだろう。もちろん、手伝うことがあれば何でも手伝うよ。なんでも指示してほしい」



と彼女の顔を立てておく。



 彼女も昨日のベルティの件でこちらの腕を見ているので、顔を立ててもらったことに気をよくしていた。

 彼女は村長に向かって、「治癒師殿が来てくれたんなら、何も心配は要らないよ。今晩くらいに生まれそうだから、準備しておきな」と言ってから、フリーダの世話に専念していった。



 俺はこの世界の医療技術を知らない。ベルティのケガの治療を見た限り、殺菌とか衛生とかの観念はあまりないようだ。



「今何か手伝うことが無ければ、今の内に準備をやっておくよ。まず湯冷ましの水を作っておくよ」



 彼女は少し怪訝そうな顔をし、「湯冷ましの水って何に使うんだい。あたしのとこじゃそんなもの使わないよ」と首を傾げている。



 俺は自分もよくわからないがと前置きした後で、「なぜだか判らないけど、生まれた赤ん坊を洗うのにきれいな水として湯冷ましを使った方がいいと思ったんだ。治癒師としての知識かもしれない」と芝居を打っておいた。



 記憶を失っている設定なので無理やりな感はあるが、治癒魔法とセットで頭の中にあると言えば納得してもらえるのではないか。

 ここまで来たら強引に話を進めていく。



「うーん。確か……汲み置きの水は病の元が入っている……だから、湯冷ましを用意しておいて、沸かした湯を冷ますのに使う。それから……へその緒を切る道具も熱湯に潜らせてから冷ましておく……なんとなく覚えているのはそのくらいかな。全部俺がやっておくから、それでいいかい」



 彼女は不思議そうに俺を見るが、やってもやらなくても問題ないならとでも思ったのか、



「へぇぇ、そうなのかい。そんな話は聞いたことがないねぇ。まあ、治癒師の知識ならやった方がいいね。そっちは任せたよ」



「了解。こっちで準備しておくよ。他になにかやっておくことはないかい」



 彼女は少し考えた後、「とりあえず、あんたにやってもらうことはないね。準備が終わったら休んでおきな」と気を使ってくれた。



「手をきれいに洗っておくのも大事だって思い出したよ。ヤネットさんも早めに手をきれいにしておいてくれよ」



 俺の不確かな記憶では、発展途上国の出産時の死亡原因に感染症があったはずだ。産褥熱と言ったような気がする。

 この世界の産婆に殺菌や衛生の知識は無さそうだから、治癒師の常識みたいな話として伝え、できるだけ細菌による病気を防ぐことにした。



 大きな鍋で湯を沸かし、埃が入らないようふたをして冷ましておく。ヤネットのハサミを借り、煮沸消毒もしておいた。



 準備が終わり、村長の家で待機することになった。夕食をご馳走になり、食卓のところで待たしてもらう。

 午後九時頃、ヤネットから陣痛が始まったとの連絡を受ける。湯を沸かしておくよう村の女の人に指示を出し、フリーダのところに向かった。



 不安そうな俺を見て、ヤネットが「この子は三回目のお産だからそんなに時間はかからないよ」と余裕の笑みを浮かべながら、俺に説明してくれた。



 そして、「準備は大丈夫かい」と言われたので、「ああ、村長の奥さんに湯を沸かすよう頼んでおいた。赤ん坊を包む布もここに用意してある」と伝える。



 準備ができていることを確認をした彼女はこれからが本番とばかりに「後は任せな。治癒師以外の男供は邪魔になるだけだから出ていきな」と言って、村長、イザークなどの男たちを追い出していく。



 静まり返った村長の家の中で、フリーダの痛みに耐える声が響いている。

 俺はやることもなく、ただひたすら、フリーダの様子を見続けた。



 陣痛が始まってから数時間後、俺は何もせずその場にいただけだが、無事に元気な男の子が生まれてきた。

 ヤネットがフリーダに「良くやった」と褒め、助手と俺は「おめでとう」と声をかける。

 きれいな布にくるまれた赤ん坊をヤネットから受け取ると、心の底からうれしそうな顔でフリーダは赤ん坊を抱いている。



 結局、俺は手を握ってやるだけで何もしていない。

 ただ「早く何事もなく終わってくれ」と祈ることだけだった。

 それでもフリーダは治癒師がいるだけでも心強いといってくれたので、少しは役に立ったのだろう。命に係ることで感謝されると言うのは面映いものだ。



 しかし、初めての出産の立会が人の嫁さんというのも奇異な気がする。

 今回は安産だったとヤネットは言うが、見ている男の俺は本当に大丈夫なのだろうかと何度も鑑定で確認していた。

 日本では一時期、夫が出産に立ち会うことが流行ったみたいだが、この姿を見ると子供を作りたくなくなる夫が出てきたという話が本当に思えてしまう。

 女性が苦しんでいるのに、横にいるだけで何もできない自分が歯がゆく、無力感に包まれていくというのは判る気がする。

 人の嫁さんの出産だが、俺は今までで一番気疲れした気がしていた。これは気のせいではないと思う。





 手伝いの女性に呼ばれた村長とイザークが入ってきたので、俺は部屋の外に出て、近くのいすに座りこむ。すぐにヤネットが出てきて、「お疲れだったね。まだ、油断できないから、朝までここにいておくれ」と疲れも見せず、水を飲んでいる。



「お疲れ様。ここに座っているから何かあったらいつでも呼んでほしい」とは言ったものの、俺はいすに座ったまますぐに寝てしまった。



 幸い、何事も起こらず、朝を迎える。

 村長たちに挨拶をしてギルの家に帰ろうとすると、村長と家族が次々と礼を言ってきた。



「俺は何もしていませんから、礼ならヤネットさんにしてください。俺は帰りますけど、フリーダさんにもう一度おめでとうと伝えてください」



 そういって、帰ろうとするが、イザークが手を握りながら、「ギルから話は聞いている。後で礼をギルの家に届けさせるよ。本当にありがとう」と更に礼を言ってくる。



 村長の家から何か貰えるようだが、今はゆっくり寝たい。

 ギルの家に帰り、昼まで休ませてもらう。

 ギルはすでに狩りに行っているようで不在だった。

 昼頃、イザークが革のブーツ、革のマント、革製の鎧を持ってやってきた。



「妻と子が本当に世話になった。これは俺と親父からの心ばかりのお礼だ。受け取ってくれ」



 イザークは持ってきたものを渡してくる。



 その荷物を見て、俺は驚き、「これ全部ですか。そんなに役に立ってないけど、いいんですか」



「フリーダは二度の出産の失敗でかなり心細かったようなんだ。タイガさんがいてくれたおかげで安心できたといっていた。ヤネットばあさんも、フリーダにとってタイガさんの存在が大きかったと言っていたよ」



 役に立てたのならと遠慮なく、ブーツ、マント、鎧を受け取る。



 ギルが帰ってくるまで時間があるので、小川まで行き、洗濯をすることにした。

 この世界に来てから、下着を替えていないので無茶苦茶気になっていた。下着の着替えがないから、今晩は下着なしで過ごそう。



 洗濯が終わった頃、ギルが帰ってきたのでブーツ他について報告する。そして鎧の付け方を教えてもらった。これで外見だけは一端の冒険者っぽい感じになった。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/06 20:34
更新日:2012/12/06 20:34
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1295
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