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作品ID:1299
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第一章「ベッカルト村」:第12話「ゴブリン殲滅」

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第12話「ゴブリン殲滅」



 最終的な打ち合わせなども含め、すべての準備が終わったのは太陽が西に傾き始めたころだった。

 俺はゴブリンをおびき寄せるため、生の肉を持ち、森に入っていく。



 森の中を二時間近く歩くと森の奥からゴブリンらしき鳴き声というか叫び声が聞こえてきた。

 どうやら、こちらに向かっているようだ。

 持っていた生肉を投げ捨て、三十メートルくらい離れた大木の陰に隠れてゴブリンたちが近寄ってくるのを待つ。



 数分後、五匹のゴブリンが生肉を見つけ、奪い合うようにして貪り始める。

 他のゴブリンたちは鳴き声などの気配を感じるが、まだ見えるところには来ていない。



 俺はできるだけ気付かれないように静かに呪文を唱え、一匹のゴブリンの頭にファイアボールを撃ち込み、即座に身を隠す。



 前回の野犬への攻撃でファイアボールはオーバーキルだったので、出力を落としている。

 何度か実験した結果、通常の魔力消費量を一〇〇%のダメージとした時、半分の魔力でも七〇%くらいの威力があることが判った。更に魔力を落とすと発動までの時間も短縮できることも判ってきた。

 威力を落としたとはいえ、ファイアボールが命中したゴブリンは一気に火達磨になり、地面を転げまわっている。

 どうやら、この出力でも一撃で倒せるようだ。



 他の四匹は何が起こっているのか理解できていないようで不安そうにキョロキョロと回りを見回している。

 鼻のいいゴブリンたちも風が弱いためか、まだ俺には気付いていない。



 俺はもう一度ファイアボールを撃つチャンスがあると判断し、再度呪文を唱え、更にもう一匹が火達磨となる。

 だが、この一撃で射線がバレ、ゴブリンたちは俺を見つけたようだ。

 俺に気付いた三匹のゴブリンは俺に向かって一直線に突っ込んでくる。



 俺は作戦通り、村の方に向かって走り出した。



 ゴブリン三匹が叫びながら、短い足で俺を追ってくる。

 ゴブリンと俺では歩幅が違うので、五分もするとかなり引き離すことができる。

 ここで完全に引き離しては囮の意味がないので、一旦、立ち止まり、すぐに剣が使えるよう地面に突き刺しておき、再度ファイアボールを撃つ準備をする。



 魔力切れにならないで撃てる最後の一発だ。



 ゴブリン三匹は縦に並んで突っ込んでくる。

 先頭の一匹に向かい、ファイアボールを放つ。

 そのゴブリンはなんとか回避できたが、後ろの一匹に命中、最後尾の一匹を巻き込んで転倒している。

 先頭のゴブリンは後ろにはかまわず、俺の方に突っ込んできた。



 俺は剣を構え、突っ込んでくるゴブリンを迎撃する。

 今までホーンラビットや野犬が突っ込んできたことはあったが、人間型を相手にするのは初めてだ。

 冷静に見れば人間とはずいぶん違うのだが、人間を殺すような気になってしまい、わずかだが躊躇いを感じてしまった。



 この僅かな隙にゴブリンは持っている棍棒で俺に先制攻撃を掛けてきた。

 小さな体だが、目一杯振りかぶられた棍棒が俺の頭を狙って振り下ろされる。

 俺は躊躇した自分に怒りを感じながら、ゴブリンの一撃を回避することに専念した。

 だが、隙を突かれていたためか、体を捻っただけでは回避しきれず、棍棒が俺の左肩にガツンという衝撃と共に痛みが走った。

 俺は思わず「痛ッ! クソ!」と怒鳴りながら、何とか距離を取る。

 革鎧を着ていたおかげで骨折等の致命的なダメージは受けなかったが、かなりのダメージを食らってしまった。



 ゴブリンはにやりと笑いながら、再び棍棒を振り上げ俺に襲いかかってくる。

 俺は剣を正眼に構え、ゴブリンを待ち受けるが、同時に奴との間合いも慎重に測っていた。

 ゴブリンが間合いに入った瞬間、正眼に構えていた剣をすばやく水平に突き出す。リーチの差の関係で俺の繰り出す剣が、突っ込んでくる相手の腹に突き刺さっていく。

 ゴブリンも攻撃動作に入っていたため、棍棒を振り下ろしてくるが、腹に攻撃を受けたためか、ふらふらと勢いがなく、この一撃は容易に回避できた。



 俺は相手の腹に突き刺さった剣を強引に引抜き、そのまま「ウォォ!」と訳の判らない叫び声とともに首に向けて振り下ろした。

 ゴブリンの首から赤黒い血が吹出し、仰向けに倒れていく。

 この接近戦で体力を使い、肩で荒い息をしていると、最後尾にいたゴブリンが立ち上がり始めているのが見えた。



 俺は目の前で立ち上がった、このゴブリンへの対応を一瞬で考え、後続との距離はまだあると判断し、こいつを倒すことに決めた。



 今の戦闘に掛かった時間はおよそ一、二分。



 ゴブリンは同族との連携を考えないのか、棍棒を構え、突っ込んでくる。

 ここで気付いたのは、ゴブリンは完全に猪武者だということだ。

 頭に血が上ると、どのゴブリンも持っている棍棒を上段に振りかざして、まっすぐに突っ込んでくる。



 俺は冷静にゴブリンとの距離を測り、先ほどと同じように剣による突きのタイミングを待つ。

 一秒一秒が長く感じられる中、冷静に突きを放ち、ゴブリンの首に剣を突き立てる。

 ゴブリンはギャアという悲鳴を挙げ、首から血が盛大に吹出している。

 その血が俺に掛かるが、構ってはいられない。

 後続のゴブリンはおよそ十匹。さっきの肉を食べているのか全数には足りない。

 どちらにしても十匹の相手はできないので、当初の村に誘い出す計画に従い、俺は走り出していた。



 それから三十分ほど、ゴブリンたちの速度に合わせて走っていく。

 時々休憩し、体力を回復させているが、元々鍛えていたわけではないので、命懸けの鬼ごっこはかなりきつい。徐々に息が上がり始め、今では肩で息をするような感じになっている。

 徐々に日が落ち、深い森はかなり薄暗くなってきている。



 俺は今までと同じようにゴブリンたちが追い付くのを待つため、休憩を兼ねて立ち止まっていた。



 その時、横から一匹のゴブリンが襲い掛かってきた。



 暗闇にまぎれ、回り込まれたようだ。

 ゴブリンは猪武者だと侮り、薄暗くなった森にも関わらず、俺は真後ろしか警戒していなかった。

 突然の急襲により、回避が間に合わない。

 俺は脇腹に棍棒の一撃を受け、激痛に顔をゆがめる。

 だが、襲い掛かってきたゴブリンも勢いが付き過ぎたのか、俺の斜め前で転倒していた。

 俺の目の前にゴブリンの無防備な背中が見えるが、他に回り込んでいるゴブリンがいないとも限らないので、そいつを無視して村の方に再び走り出した。



 脇腹の痛みを堪えながら、森の中を走り続ける。

 俺を追いかけるゴブリンの集団は計画通りに五十メートルくらい後ろを団子のように固まった状態で追いかけてきている。



 更に十分ほど走ると、ようやく村まで百メートルくらいのところまで来ることができた。



 この頃には辺りは闇に包まれ、足元がおぼつかなくなり始めていたため、転倒するのではないかとかなり焦っていた。

 村の明かりが見え、ようやく生きた心地がした。

 俺はもう一度後ろを振り返り、鑑定を使って確認すると、十二,三匹のゴブリンが俺の二十メートルくらい後ろにいることが確認できた。



 ゴブリンたちには俺が見えているのか、真直ぐ全速で走ってくる。



 ここまではうまくいっている。

 後は俺が自分たちの罠に掛からないよう注意しながら、ゴブリンを罠に誘導するだけだ。



 俺は最後の百メートルを走り、目印の松明の横を走り抜けた。

 ギルたちも既にゴブリンに気付いており、物影に隠れて罠にはまるのを待っているようだ。

 俺は彼らに目で成功だと合図をし、それを見たギルが攻撃の合図をしようとしている。



 俺は安心したのか、それとも疲労のためか、その直後に足がもつれ転倒してしまった。

 転倒し立ち上がれない俺を見たゴブリンたちは更に叫び声を上げながら突っ込んでくる。



 一瞬、空白の時間のような静けさが辺りを支配したかと思うと、ゴブリンたちは次々と罠に掛かっていく。

 それを見たギルたちが満を持して攻撃を開始した。



 俺の目の前には運良く罠に掛からなかったゴブリンがたどり着いたが、ギルの放った矢が胸に突き刺さり、その後のトニーの斧の一撃で瞬時に殺されていった。



 他のゴブリンたちは罠で何らかのダメージを受けているようで明らかに勢いがなく、動きもおかしい。

 村の男たちが武器を持って現れ、ゴブリンたちを次々と屠っていった。

 俺もアドレナリンの作用のためか、疲れを忘れて立ち上がり、生き残りのゴブリンの止めを刺すのを手伝っていく。

 どのくらい時間が経ったのだろうか。周りを見ると動いているゴブリンの姿はなく、念のため、鑑定で確認したが、既に生きているゴブリンはいなかった。



 俺はギルたちに「ギル、みんな。ここにいたゴブリンは全部殺し終わった」と声を掛け、更に「ケガをしたやつはいないか」と叫んでいた。

 近くにけが人がいなかったので、ゴブリンの死体は集めるよう村の男たちに指示を出す。



 薄暗くて判り辛いが、満面の笑みを浮かべているギルが近寄ってきて、「よくやってくれた」と肩を抱いてきた。

 そして「けが人は三人だ。腕を折ったのが一人と頭から血を出しているのが二人だ。治療できるようなら頼みたい」と少し済まなさそうに俺に頼んできた。



 俺は疲れ、そして魔力が不足気味だったが、「けが人のところに連れて行ってくれ」と言い、そして「この臭いゴブリンの血を何とかしたい」と言うと、彼だけでなく、トニーたちまで笑っていた。



 ギルはまだ少し笑いながら、「村長の家に行ってくれ。そこにけが人がいる」というと、真剣な表情に戻って、「俺は討ち漏らしたゴブリンが襲ってこないか警戒しておく」と言って森の方に向かっていった。



 村長の家に行くと、ギルが言っていたけが人が三人いたが、いずれも症状は軽そうで、一番重症の骨折していた男もヤネットの治療で添え木が当てられており、それほど酷くなさそうだった。

 頭を殴られた二人も骨にはダメージはなく、切り傷だけのようだ。

 俺の魔力も限界に近いので三人に簡単に治癒魔法を掛け、応急処置だけをしておいた。

 そして彼らに「明日魔力が復活したら、本格的に直すから今夜は我慢してほしい」と言ってへたり込んだ。

 魔力切れのため自分で動くことが億劫になるが、皮鎧と服を脱ぎ、村の女たちに体を拭い、ようやく人心地つくことができた。



 そんなことをしていると、ギルが村長に報告にやって来た。

 彼は「ゴブリンは十四匹倒している。今のところ近くに潜んでいる風でもなさそうだ」と報告しているが、俺は自分が倒した分を言っていなかったことに気付いて彼の補足をした。



「ここで倒した分以外に俺が五匹森の中で倒している。ギルと最初に見たとき二十匹くらいだったから、ほぼ全滅と考えていいんじゃないか」



 俺の一言で村長の家の中に女たちの歓声が広がっていく。

 だが、俺は戦闘と一時間くらいの追いかけっこのせいで疲れ切っていたので、女たちの歓声が響く家の中で知らない間に眠り込んでしまっていた。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/07 21:11
更新日:2012/12/07 21:11
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1299
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