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作品ID:1306
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第二章「ゴスラー市」:第6話「ランクアップ」

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第2章.第6話「ランクアップ」



 午後四時過ぎ、初日の報酬を懐に意気揚々とギルドを出ていく。



 まだ時間が早いので革のグローブを買うため、防具屋に寄ることにした。

 この世界に来て毎日棒や剣を振っているとはいえ、今日ほど剣を振り続けたことはなかった。そのせいで手の皮が剥けそうになり、急遽買い揃えることにした。

 防具屋はギルドの近くにあり、革のグローブも置いてある。薬草の採取に指先を使うことが多いので、牛か鹿の皮のような柔らかめの革のグローブを銀貨五枚で買い、ドラゴン亭に帰った。

 今日は剣での草刈と慣れない草むら歩きで結構疲れている。宿の主人のマルティンに湯を頼み、腕と足のマッサージをした後、夕食をとる。

 ギルドを出るとき、明日分のクエストも見ておいたので、明日は朝一から仕事に取り掛かれるだろう。今日は早めに床につき、ゆっくりと休むことにした。



 一夜明け、ギルドでクエストの受付を済ますと、東の草原に向かう。

 やることは今日も昨日と同様に草むらでの薬草探しだ。

 昨日は素手で剣を振っていた所為で手の皮がむけそうだったが、今日は革のグローブのおかげでかなり楽だった。

 天気もよく、町に近いこともあり、魔物や野獣に襲われることなく、順調に薬草採取をこなしていく。昨日と同じように見つけた薬草の位置を携帯を使って記録するのも忘れない。



 今日は昨日より少し早い午後三時にギルドに到着した。今日も昨日と同じように掲示板と受付を往復し、六件のクエストを達成した。

 儲けは銀貨十八枚。この調子なら十日ほどでFランクになれそうだ。



 そう一人悦に入り、明日のクエストを確認していると、事務所の奥から誰かが出てきた。

 白髪の初老の男性で目付きはかなり鋭い。

 最初に目に入ったとき、会社に入った時に会った工場の職人さんを思い出した。

 そして、その男が、「ちょっといいかな」と言って、俺の前に立つ。



「儂はこのギルドのギルド長のキルヒナーというものだ。二日で十一のクエスト達成した新人君で間違いないかな」と世間話をするように話しかけてきた。



 彼の口調は厳しそうな感じが少しあるが、俺に対して威圧感を出しているわけではない。俺はギルド長というお偉いさんが出てきたことに少し警戒しながら、「はい。そうですが、何の用でしょう?」と用件を尋ねる。



 彼は俺が警戒していることに気付いたようで、「いや、特に用はないのだがね。興味があったので話をしてみたかっただけじゃよ」と笑みを浮かべながら軽く手を振っている。

 俺がどう答えたらいいのか悩んでいると、「冒険者になるには少し遅いようだが、君は今までどんな仕事をしていたんだね」と俺の過去を探ってきた。



 警戒が先にたっている俺は「答えないといけないのでしょうか」とつっけんどんな受け答えをしてしまう。

 彼は更に笑いながら、「いや、個人的な興味なので言いたくなければ言わなくてもいい。ギルド長として聞いているわけではないからの」と俺の警戒感を解こうとしている。



 俺は“変な経歴がないか確認しに来たわけだ。設定通りの話で問題ないな”と思い、「いえ、教えたくないわけではないんですが、名前以外の記憶を失くしているので話せないんです。すいません」と少し寂しそうに目を伏せる。



 彼は「ふむ。そうか。それは悪かったな」というが、納得したという表情ではない。

 そして、「時間をとらせたな。では、がんばってくれたまえ」と言いながら、奥の自室に戻っていった。



 俺は、初日から飛ばしすぎて、ちょっと調子に乗りすぎたかもしれないなと反省した後、変に目を付けられないようもう少し慎重に行こうと考えていた。

 そして、明日からは草原でも剣の訓練をすることにし、一日三件くらいペースに落とし様子を見ようと思った。



 ギルドでの一件を考えながら、ドラゴン亭に帰る。今日は少し早めに食堂で食事を取っていると、十六,七歳くらいの若い三人組の男達が「ちょっといいか」と話しかけてきた。

 第一印象は、明らかに年下なのにタメ口だなと言うもので、ゴスラーに来るまでに聞いたフーゴの冒険者は肩肘を張っているという話を思い出していた。



 俺もあまり感情は見せず、「ああ。何か用か?」とだけ答えると、リーダーらしき若者が、「俺はEランクのデニスっていうんだ。こっちはバルド、こっちはエルヴィンだ。あんたが二日で十一件のクエストを達成したって噂を聞いたんだが、本当か?」と聞いてきた。



 俺は「そうだが、Fランクのクエストだぞ。そんなに大したことじゃないだろう」と、何のために話をしに来たのか相手の目的を掴みかねている。



 デニスという若い冒険者は「何でも採取系のクエストをすべて必要数だけ揃えてクリアしたそうだが、どんな手品を使ったんだ。普通、薬師でも一つや二つは間違うもんだが」と少し挑むような感じで話を進めていく。

 俺はこれ以上関わりたくないので、「俺は薬草に詳しいんだよ。その薬師の方がおかしいんじゃないか」と軽く流すと、「まあいい」と相手にも軽く流されてしまう。



「どうだ、俺たちのパーティに入らないか。俺たちはそこそこ名前も売れ始めているし、仲間がいた方が安心だろう」と俺を自らのパーティに勧誘してきた。



(パーティへの勧誘か。Eランクだから薬草に詳しい奴がいればそこそこ稼げるから誘いに来たのか。鑑定で見たわけじゃないが、それほど実力がありそうでもないし、面倒だな)



 そう思い、「悪いが俺はまだGランクなんで、Eランクとはパーティクエストはできない。それに俺は今のところソロでやっていくつもりだ」と適当な理由を付けてデニスの勧誘を断ることにした。

 確かEランクとGランクでパーティを組んではいけないと言うルールはなかったはずだ。



「そうか。あんたならすぐにFランクだろう。まあ、気が向いたらいつでも声をかけてくれ。」と言って、意外とあっさりと離れていく。

 今の話が周りにも聞こえていたようで、こちらをチラチラ見るやつもいる。

 少し居心地が悪くなったので、今日は早めに部屋に戻ることにした。





 翌日から、一日三件の依頼達成に切替え、半日ほど町の外で訓練を行う。

 素振りをするが、筋力が足りず、絶えずフラフラしている。それに我流の型なので端から見ると何をやっているのかわからない変なやつに見えるかもしれない。

 剣だけだと疲れるので魔法の訓練もしたいと思ったが、ファイアボールは必要以上に目立つし、乾燥している草原の草に火がついたら大変だと思い、自重することにした。



(風か水にしておけばよかったかな。格好良さだけで火を選んだのは失敗だったかも)



 俺は格好良さで火を選んだ軽率さを少し後悔している。



 三日ほどおとなしくしていたが、徐々にフラストレーションが溜まっていく。そして、どうして俺が気を使わなくちゃいけないのかと思い始め、一気にクエスト達成に走ることにした。

 この五日間でこの草原の植生はほぼ掴むことができている。俺はメモ帳にある薬草をすべて採取することにした。



 午後二時頃にギルドに戻ると、一気に三十件クリアする。知らない間に周りには人だかりができていた。

 いつもより早めにギルドに入ったが、一件につき五分くらい掛かるため、三時間くらい受付・達成を繰り返していた。このため、気が付くと普通の冒険者が帰ってくる午後四時を過ぎ、周りに人だかりができていたのだった。

 ともかくこれで五十件達成となったので、Fランクに昇格した。

 そして、今日一日の報酬はほぼ金貨一枚分。一日の報酬としてはCランクとほぼ同じだそうだ。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/09 14:45
更新日:2012/12/09 14:47
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1306
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