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作品ID:1309
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第二章「ゴスラー市」:第8話「Eランク」

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第2章.第8話「Eランク」



 既に正午に近い時間だが、アントンたち四人と別れた後、西の森に入っていく。

 西の森はベッカルト村の森に比べ、下生えの草が多くて歩きにくい。

 見通しも悪く、五月の正午に近いこの時間でもかなり薄暗い。森の中なので三角法での位置を特定することが難しい。

 迷わないよう木に目印を付けながら、森の奥に慎重に進んでいく。



 三十分も進むと人が入った形跡が全く見当たらなくなる。

 獣道らしいものもなく、完全な原生林だ。



 更に三十分、ようやくクエスト対象の薬草を見つけた。

 草原と違い迷いやすく、何度も来られないだろうから、ここでは根こそぎ採取しておく。帰り道に更に二種類、対象となる薬草を見つけたのでこれも採取する。



 俺は森の中を歩きながら、この森の中の採取がなぜEランク相当なのか、わかった気がした。

 まず、迷わずに歩くだけでも大変だ。更に雑草の中をそれと見分けがつかない薬草を探しながら歩くのはものすごく骨が折れる。更に魔物や獣に警戒する必要があり、俺も鑑定がなければ到底見つけることはできなかっただろう。



 ちょっと遅いが、昼食を取ることにした。手近な倒木に腰をかけ、弁当を広げる。

 俺は下を向いて森の中を歩くというシチュエーションから、中学時代のキャンプを思い出していた。



(キャンプファイア準備で、薪を取りに行った時も下生えの草をかき分けながら、森を歩いたよな)



 疲れた体でそんなことを考えながら、食事をしていた。

 多分、少し気を抜いていたのだろう。

 後ろでガサと音がして振り返ると灰色の大きな狼が一頭いた。



 距離は約十m。

 狼の大きさは大型犬より一回り大きく、歯を剥き出しにして威嚇してくる。



 灰色狼(グレイウルフ):

  最も生息数の多い灰色の狼。

   HP400, DR15,防御力20,獲得経験値35(10S)

   牙(AR80,SR35)、爪(AR50,SR35)



 弁当の匂いに誘われてやってきたようだ。

 幸いなことに一頭だけしかおらず、群れに囲まれたわけではなかった。だが、危機的な状況には変わりがない。



 俺は弁当を放り出し、座っていた倒木を盾に剣を地面に突き刺す。

 ファイアボールを最大出力で撃つため、呪文を唱え始める。



 狼は弁当に気を取られながらもこちらの様子を窺っている。

 目を逸らすと襲って気そうだったので、こちらも睨みつけながら呪文を唱えていく。



 一分程掛かったが、ようやくマナを集めきり、ファイアボールを狼に向かって放つ。

 赤い炎の玉が狼の顔に向かって飛んでいく。

 狼は回避しようと左に飛ぶが、避けきれず右前足に命中。狼がひるんでいるうちに決着を付けるため、俺は剣を引抜き狼に向かっていった。



 剣を突き出すように構えながら、一気に距離を詰める。

 剣をできるだけコンパクトに突き出すが、なかなか当らない。右前足にダメージを与えたとはいえ、以前戦った野犬よりかなり俊敏だ。



 周りに群れがいるかもしれない今の状況では、長期戦は不利になる。

 俺は突きを中心に次々と攻撃を繰り出していった。



 狼も俺の技量が大したことがないと判ったのか、一時の逃げ腰から攻撃に移行し始めてきた。狼の爪や牙で俺の脚や腕に傷が徐々に増えていく。



 俺は久しぶりに行う本格的な戦闘に時間感覚がなくなり、どのくらい戦っているのだろうと頭の隅でぼんやり考えていた。

 狼も攻め疲れたのか、それとも右前足のダメージからか、徐々に動きが落ちてきている。

 俺はこれをチャンスと見て、一気に決着を付けるべく、狼の頭に向かって上段から、斬り下ろした。

 力が入ったのと必要STRに達していないことが崇り、剣が狼に当たった瞬間、俺は大きくバランスを崩して転倒してしまう。

 俺は拙いと思ったが、狼の方がギャンと悲鳴を上げていた。そして、後ろに下がってうずくまり、動かなくなった。

 血が流れてはいないのが気になるが、剣が鈍器のように感じになり、かなりのダメージを与えたようだ。

 俺はこれが狼の罠ではないかと少し不安に思いながら、慎重に接近していく。

 剣のレンジに入ったところで、止めの一撃を狼の頭に打ち込んだ。

 幸い、狼の反撃はなく、なんとか勝利をものにしたようだ。

 俺は大きくため息を吐き、今回は止めの一撃だったから良かったものの剣の大振りには気をつけないといけないと反省する。



 戦闘の音や血の匂いで他の狼たちが寄ってこないかと周りを警戒するが、やはり他の狼はいないようで、いわゆるはぐれの一匹狼だったようだ。

 死んでいる狼を見ながら、狼はDランク相当の討伐対象なのでFランクの俺ではクエスト達成にならないと少し落胆するが、毛皮は買い取り対象だったはずなので、素早く剥いでいく。

 ギルとの狩猟経験が物を言い、三十分ほどで毛皮を剥ぎ取ることができた。

 念のため、討伐証明部位の上の牙も二本取っておき、できるだけ早く森を出る。

 大した怪我ではなかったので忘れていたが、森を出るまでは自分に治癒魔法をかけることを失念しているほど余裕を失っていたようだ。



 毛皮からも血の匂いがしているが、さすがに街道まで出てくる魔物はおらず、無事、街に戻ることができた。

 ギルドに入ると薬草採取クエストを3回完了させ、持っていた狼の毛皮を買い取ってもらう。



 狼の毛皮は右前足部分がないものの十Sで売れ、採取クエストと合わせて三十五Sの儲けだったが、狼にズボンとシャツを破られたのでほとんど儲けは出なかった。



 二の腕と太もも部分の防具も必要だとちょっと反省していると、アントン達が帰ってきた。

 破れたシャツを見て心配してくれたようだが、ギルド内ではできるだけ接触しないように言っておいたので、声を掛けずにカウンターに向かっていく。



 掲示板を見ながらアントンたちの成果を聞いていると注意事項どおり今日は一種類だけ採取して帰ってきたようだ。これで何とかなるだろう。

 俺がお節介をしてもどうにもならないかもしれないし、自己満足と言われるかもしれないが、人生の先輩としてちょっとだけ手助けできたことに満足している。



 宿に帰る前に服屋で革のズボンとシャツを購入。今着ているズボンと服は直してもらえるそうだ。

 購入と修理で八〇S。儲けが出ないどころか大赤字だった。



 翌日から西の森で集中的に採取クエストを行っていく。

 採取系は平均一日五件クリア。報酬は一日平均三〇S。これはDランク並の稼ぎに当る。

 森の中では何度か魔物に遭遇したが、奇襲さえ受けなければ魔法を駆使して倒すことができている。

 十日後、無事Eランクに昇格。レベルはランクアップ前にレベル三に上がっていた。



  高山(タカヤマ) 大河(タイガ) 年齢23 LV3

   STR214, VIT187, AGI208, DEX260, INT3143, MEN968, CHA185, LUC175

   HP266, MP968, AR0, SR0, DR0, SKL170, MAG24, PL22, EXP5754

   スキル:両手剣8、回避6、軽装鎧3、共通語5、隠密2、探知2、追跡2、

       罠2、体術1、植物知識3、水中行動4、

       上位古代語(上級ルーン)50

   魔法:治癒魔法3(治癒1)、火属性3(ファイアボール)



 冒険者になって十八日目でEランクになった。俺には特に感慨はなかったが、受付嬢が興奮気味にゴスラーでは最速だと言っていた。

 それよりもこのおかげで手持ちの資金も四G近くに増え、大きな買い物をしなければ、十分に食べていけるほどになっていることが嬉しい。



 折角Eランクに昇格したのだからと、コツコツ貯めたDランク相当の討伐証明部位でクエスト達成をしようと考えた。

 受付嬢に聞くと討伐クエストは事後受託できず、今まで持っていた意味はなかったのかと落胆した。

 受付で話を聞いた感じでは、薬草などの採取クエストは誰かに取ってきてもらおうが、買い取ろうが薬草を手に入ることがクエストの目的なので事後でも問題ないが、討伐は倒すことが目的であり、部位だけ持ってこられても達成したことにならないそうだ。

 確かに近隣の魔物の討伐が必要なのに、いつのどこのものか判らない討伐証明部位を持ってこられても達成にならないのは理解できる。

 だが、魔物に偶然出会った時に何のメリットもないことに納得できなかったので、その点について聞いてみると、クエスト達成にはならないものの討伐証明部位の買い取りは行っているとのことで、ちょっとだけほっとした。



 それから、アントンたちとの交流も二回実施した。

 そのせいか、アントンたちは周りから俺の舎弟扱いになっていた。

 四人もようやくFランクに昇格し、日々の稼ぎも十S程度と少し余裕が出てきたようだ。

 レベルも二に上がったようだが、戦闘の経験は無いといっていた。



 頼んであった噂話についてはあまり面白そうな話はなく、王国西部で暴れ回っていた盗賊団が急にいなくなったという話や来年が国王の即位三十五周年と建国四百周年にあたり、半年後の新年には大々的なイベントがありそうだとの話くらいしかなかった。

 後は守備隊の悪口と物価が少しずつ上がっていることへの愚痴がほとんどだが、一つだけ面白い噂話があった。



 Dランクの依頼を受けることができるようになったが、当面Eランクの採取依頼を受けるつもりだ。

 今の自分の実力ではゴブリンなど足の遅い魔物であれば群れでも対抗できるが、足の速い狼の群れの場合、機動力を生かされると勝ち目がない。

 討伐クエストはできればパーティを組んで受けたいと思っているが、俺の素性をどう説明するかが問題で臨時パーティに参加するくらいしかないと考えている。

 だから、当分ソロでの活動になると思う。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/10 22:13
更新日:2012/12/10 22:13
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1309
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