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作品ID:1327
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第二章「ゴスラー市」:第22話「盗賊の財宝」

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第2章.第22話「盗賊の財宝」



 盗賊たちが根城にしている建物の裏には、さっきの荷馬車が馬も外されずにそのまま置いてある。その他にも小さな厩舎があり、馬が五頭いた。



 盗賊たちは、酒盛りを始めたようで大声で叫んでいる。

 俺はゆっくりと建物に近づき、中の様子を窺った。建物の中には誰もおらず、人の気配もない。

 彼らは建物の中ではなく、外の広場で焚き火を囲んで宴会をやっていた。



 鑑定で調べた限りでは、盗賊は見張りを含め十五人。

 先ほどのレベル三十五が頭目のようで、レベル二十五程度が先ほどと同じく八人、他はレベル十五から二十が五人、見張りだけが最年少の十七歳でレベル九とダントツに低い。

 それでも俺より高レベルだ。



 こう見るとかなりの規模の盗賊団のようだ。

 しかし、盗賊たちは完全に油断しており、宴会を続けていく。一時間も経つとかなりろれつも怪しくなり、ほとんど泥酔状態になっていた。



 俺はトリカブトを取り出し、根にナイフで傷を入れた上で石を縛り付け、砦の中においてある酒の壷に入れておく。

 一つの壷は二十分くらいで飲み干しているので、すぐにこの毒酒に手を出すはずだ。

 うまくすれば、毒の症状が出ても酔っ払っただけと勘違いし、見張り以外すべて倒せるかもしれない。

 予想通り、二十分くらいで毒酒の壷を持っていく。



 更に都合がいいことに一人が全員の器に酒を注いで回っている。気の効く奴いてくれて助かった。

 これでほとんどタイムラグなしに酒に手を出すはずだ。



 後はトリカブトの毒がどの程度効くのか、飲んだ奴が変な味に気付いてしまうかが問題だが、ダメなら場所を守備隊に伝えるだけでも十分なので気にしないでおくことにした。



 俺は建物の影から様子を窺い続けていたが、しばらくすると毒の症状が出始め、呼吸困難に陥り始めている。



 俺は「よし、成功だ」と小さくガッツポーズをする。



 何人かが異常に気付いたが、既に飲んでいたようで十四人全員に呼吸困難の症状が出ている。見張りが異常に気付き駆け寄ってくるが、今更どうしようもない。



 その見張りは水を取りに来ようと俺の方に向かってきた。俺は静かに剣を構え、建物の陰に隠れて見張りが来るのを待つ。

 見張りは、かなり焦っているらしく、全く警戒していない。俺は一旦やり過ごし、背中から心臓の辺りを一突きする。



 見張りは、何が起こったのかもわからず倒れこむが、心臓を貫けていないようで、まだ息がある。とりあえずこのまま放置しておき、広場の方を見てみると半数以上が行動不能に陥っているが、まだ動ける盗賊もいる。



 一人一人止めを刺しに行ってもいいが、高レベルの盗賊に対して接近したくない気持ちがあり、俺は改良型のファイアストームで窒息攻撃を掛けることにした。

 ファイアストームを発動し、窒息攻撃を掛けるとすでに呼吸困難に陥っている敵に直ぐに効果が表れる。



 十四人全員が死ぬか行動不能に陥っているので、息のある盗賊の止めを刺そうと近づいて行く。

 ここで、こいつらの情報を入手することを思いつき、まともにしゃべれそうな奴がいないか見てみたが、広場には盗賊は既にしゃべることもできない。仕方がないので、息のある盗賊はすべて剣で止めを刺していった。



 俺は見張りのことを思い出し、建物の裏に回った。運がいいことにまだ死んでいない。

 武器を取り上げ、後ろ手に縛った上で、治癒魔法を掛けてやる。

 頬を叩き、目を覚まさせ、尋問を開始する。

 彼は怯えながらも、俺の質問に答えていく。

 その結果、この盗賊団は主にドライセン王国の西部で稼いでいた盗賊団で、派手に稼ぎすぎたため、王国の南にあるグロッセート王国に高跳びしようとしている。

 隠れ家にちょうどいいこの場所を見付けたので、五日前から潜伏していた。盗賊団は全部で二十五人、そのうち十五人が隠れ家に潜み、頭目のグンドルフを含む十人がアトス山脈を抜ける道を探しに行っている。

 頭目たちは少なくともあと五日は戻ってこないそうで、副頭目のザムエルが頭目の命令を無視して商人を襲ったそうだ。

 財宝は嵩張らない宝石・貨幣類に交換してあり、建物の中の頭目の部屋にあるが、詳しい場所は知らないとのことだ。



 見張りの盗賊をどうするか悩んだが、俺の顔を見られていることと生かしておいて逆襲されることを恐れ、その場で殺すことにした。



 見張りの若者は情けない声で「助けてくれ! 頼む。俺は使いぱしりなんだ……」と必死に命乞いをしてくる。

 確かに一人で見張りをさせられ、酒も飲ましてもらっていない。彼の言うとおりただの使い走りなのだろう。

 一瞬、助けてやろうかと考えたが、盗賊に殺された商人たちのことを思い出す。彼らも必死に命乞いをしていた。だが、罪のない彼らは情け容赦なく殺されていった。

 せめてもの情けと楽に死なせてやろうと、背後に回って頚動脈を断ち切る。

 彼は最後まで命乞いをしていたが、首から血を吹き上げると静かに倒れていった。



 まだ夜明けには十分時間がある。俺は建物の中を調べることにした。



 頭目の部屋には鍵が掛かっていたが、特に罠もなさそうなので、扉を蹴破り中に入る。

 木箱の中に皮袋に入った財宝があり、それを回収する。他にも盗賊たちの装備類があったので集めておいた。

 その後、荷馬車に戻り、馬に飼葉と水を与え、その間に財宝類、装備類を荷馬車に積み込んでいく。



 盗賊たちの死体についてどうすべきか悩んだが、これだけ高レベルな盗賊なので当然懸賞金が掛かっているだろうと思い、首だけにしてゴスラーに運ぶことにする。

 ちょうど副頭目のザムエルが使っていた大型の両刃斧があったので、それで一人ずつ首を刎ねていく。

 かなりえぐいなと思いながら、三十分くらいかけて十五人すべての首を刎ね、皮袋に入れ、これも荷馬車に積みこむ。

 前にも思ったことだが、精神耐性を選択しておいて良かった。なければ、このまま死体は置き去りにするか、吐きながら首を刎ねるかのどちらかだったと思う。



 夜明けまで、まだ5時間くらいある。

 さすがに疲れがたまっており、少し仮眠を取ることにした。夜明けと共に出発できるよう腕時計のアラームをセットする。



 午前4時に起床し、建物の中にあった食料で朝食を取る。

 食べ終わると、うっすらと夜が明け始めてきた。

 荷馬車に乗り込み出発しようとと思ったが、下に降りる山道を見るとほとんど獣道になっている。仕方なく、馬車馬に手綱を着け、引いて降りていくことにした。

 盗賊たちの馬もこのままでは魔物の餌食になるだけなので荷馬車の後ろにつなぎ、連れていくことにした。

 道は昨日の轍があるので、それに沿って進めば迷うことはないだろう。

 後は魔物が襲ってくる心配だけだが、そこは運を天に任せるしかないと腹を括って進んでいった。



 三時間掛けて昨日の襲撃現場に到着する。まだ死体は魔物たちに荒らされておらず、商人たちの遺体は荷馬車に積んで運ぶことにした。

 護衛の傭兵・冒険者たちには悪いが、これ以上、荷馬車に積むことができないし、馬に乗せるのも時間が掛かるので、守備隊が来るまでこのまま放置させてもらった。

 少し探すとギルドカードが残っていたので、それだけは回収しておく。



 街道に出て、ゴスラーに向かう。

 三時間くらいの距離なので昼過ぎには到着できるだろう。



 荷馬車を進めていきながら、盗賊の財宝について考えていた。

 盗賊を討伐した場合、討伐者がその財宝の所有権を有する。

 そのシステムについては特に言うことはないのだが、今回は金額が多過ぎる。

 俺のような低レベルの冒険者がいきなりこんな大金を持ったら、色々な悪人たちに狙われるのではないか。

 特に宝石・金貨類で数千G分くらいあったので、日本で宝くじに当ったようなものだろう。

 宝くじに当った人は、いろんな人から集(たか)られると聞いた。

 ここは全部を申告せずにどこかに隠しておいて後から回収したほうがいいのではないかと思い始めていた。



 俺はゴスラー近辺の草原に詳しいし、どこに隠せばいいか大体の見当はつく。

 ゴスラーに入る前に草原のどこかに宝石類だけでも隠しておくことにした。

 俺は隠すのにちょうどいい場所を思いつき、ゴスラーの町に入る一時間くらい手前で荷馬車を草原に向けて進めた。

 いい具合に窪地になっているところがあり、街道からは荷馬車も馬も見えない。

 俺は財宝類を馬車の中にあった壷に入れ、俺だけがわかる場所に埋め、荷馬車に戻り、街道に戻るタイミングを計る。

 人通りが多いといっても昼時なので外に出る人も戻ってくる人も少ない。誰にも見られずに街道に戻ることに成功した。



 財宝は採取のクエストを受けて回収するつもりだが、できるだけ早く回収するつもりだ。

 ゴスラーの町に入り、ギルドに向かう。

 とりあえず、ギルド長に青鈴蘭草の球根二十個を渡して完了報告を行う。その後、盗賊を討伐してきたことも合わせて報告するとすぐに守備隊詰め所に行くように言われた。



 言われるまま、詰所に行き、守備隊の責任者に顛末を説明し、刎ねてきた首を渡す。



 大物の盗賊なので、慎重に確認するとのことで明日まで結果は出ない。首と盗賊の装備を守備隊に預け、殺された商人と荷馬車についてどうしたらいいか聞いてみた。

 荷馬車を持っていけば、商会から謝礼をもらえるだろうし、遺体を持っていけば遺族から感謝されるだろうとのことだった。



 荷馬車に商人の名前と所属する商会が記載した書類があったので、その商会のゴスラー支部に向かう。

 商会では、昨日のうちに到着するはずが、心配していたとのことだった。

 千G相当の商品と商人の遺体を回収してくれたので、二百Gを謝礼としてくれた。

 二百Gと言えば、日本円で二千万円相当。そんな大金を持ち歩く習慣はないので、すぐにギルドに預けに行った。



 再びギルドに戻ると、ギルド内は俺の話題でもちきりになっていた。

 お金を預ける雰囲気ではなかったので、気付かれないようギルドを出て、宿に向かう。



 夕食時も皆こちらを見ているようで居心地が悪い。

 いつもより早く食事を終わらせ、部屋に戻り、これからのことを考えることにした。



 商会から貰った二百Gに加え、盗賊の懸賞金、装備の買取りだけでも数百G手に入れたことになる。

 これに数千G分の財宝がある。

 この町では顔を知られているので、すぐに大金のことは知れ渡るだろう。



 それよりも問題なのは、残りの盗賊についてだ。

 根城を襲われ、財宝を奪われれば、当然報復に来る。レベル35の副頭目を倒せたのは油断していたからで、普通に戦えばあっという間に殺されていたはずだ。

 頭目は更に強いはずだから、見つかれば命はない。

 守備隊に討伐をお願いするが、積極的に動くか不安だし、田舎の守備隊が高レベルの盗賊を倒せるのかという不安もある。



 俺がこの街に居続けなくてはいけない理由はない。この町を出てもっと人口の多い都会に紛れ込むのがいいかもしれない。

 明日、守備隊から報奨金を受け、明後日には最も近い都会であるオステンシュタットに向けて出発するのが一番いいような気がする。

 とりあえず方針が決まったので、疲れた体はあっという間に眠りに落ちていった。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/14 17:16
更新日:2012/12/14 17:16
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1327
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