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作品ID:1337
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第三章「街道」:第6話「ドライセン王国中央地域へ」

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第3章.第6話「ドライセン王国中央地域へ」



 グンドルフの手から間一髪逃れたとは気付いていないタイガは、峠の反対側クーフシュタインで足止めを食らっている。

 翌日、クーフシュタインも雨が続き、道には川のように水が流れ、動くに動けなくなった。

 村の古老の予想では、明日はエルム山地の下の方の雨は止むそうなので、今日はゆっくりと体を休めることにし、昨日の雨で濡れた防具の手入れや溜まっている洗濯を済ませてから、宿の食堂の暖炉の近くでのんびりと酒を飲むことにした。



 宿には峠越えができずにいる商人や冒険者が俺と同じように食堂で時間を持て余している。これからオステンシュタットに向かう人にあまり俺の情報を与えるのは良く無いと思ったが、一人孤独に酒を舐めているのに飽きてきていた。



 商人たちは、明日以降の予定が気になるのか、俺にはあまり興味を示さない。

 商人の護衛と思しき、冒険者が話しかけてきたので、ドライセンブルクやノイレンシュタットについて話を聞いてみる。

 その冒険者は話好きとみて、俺のことにはあまり興味を示さず、俺が聞くことを面白おかしく話してくれる。



 まず、ドライセンブルクは王都すなわちこの国の首都だが、人口は二万人とそれほど多くない。元々、二つの川に挟まれた地形を利用した城塞都市だったため、住民をそれ程多く受け入れられない。その分、すぐ近くにノイレンシュタットがあり、こちらは人口十万人、大陸西部域最大規模の商業都市だそうだ。

 ドライセンブルクは行政・軍事の中心、ノイレンシュタットが商業の中心にうまく機能分けされているようだ。

 ノイレンシュタットについては、「金さえ出せば手に入らない物はない」と言われるほど様々なものが流通しており、掘り出し物を手に入れたい時はノイレンシュタットで探すのがいいそうだ。

 但し、軍事物資である武器と防具についてはドライセンブルクに王国最大の鍛冶屋街があるので、ドライセンブルクで購入を検討したほうがいい。

 ドライセンブルクの数ある工房中でもデュオニュースの工房は、大陸中から武器を買い求めに来るほどの工房で、かの龍殺しが使った名剣や騎士団総長の佩剣など国宝級の武器を作っているとのことだ。



(デュオニュースってディルクさんが言ってた鍛冶師だよな。なんかすごい人を紹介してもらったんだ……)



 数日前のディルクとの話を思い出していた。



 もう一ついい情報として、北部にあるシュバルツェンべルクという街に迷宮いわゆるダンジョンがあるという話で、シュバルツェンべルクはオステンシュタットに並び称されるほど冒険者の数が多い。



 木を隠すなら森の中。

 迷宮で経験を積むことで力を付けることができるし、冒険者の数も多いから目立たない。

 シュバルツェンべルクへは、北部の主要都市クロイツタールを経由し、約百八十マイル=約二百九十kmの距離にある。オステンシュタットからは三百八十マイル=約六百十kmの遠距離にあるし、ノイレンシュタットを経由することで王国西部、北部更に隣国であるジャルフ帝国、スヘルデ商国、ヴェルス王国も捜索範囲に含まれることになる。



 盗賊の残党が追ってくるとしても、情報収集手段が限られるこの世界で、これだけの距離と選択肢が増えれば、少なくとも数ヶ月は時間が稼げるだろう。



 ノイレンシュタットからはシュバルツェンべルクを目指す方向で、これからも情報を仕入れていくつもりだ。



 二時間ほど話好きの冒険者と話し、早めの夕食をとる。

 今日でゴスラーを出発して十日。盗賊しか知らない抜け道があるなどの特殊な事情が無ければ、理論上は今日明日に追手が来る心配はない。



 久しぶりにのんびりとした時間を過ごすことでき、身も心もリフレッシュできた。



 翌朝もクーフシュタインは割りと強い雨が降っている。

 宿の主人に聞いてみると、十マイル先にある次の街のハルフィングでは雨は止んでいるだろうとのことだ。

 ここからの山道はアーヘンタール峠ほどきつくないので、この程度の雨なら出発しても問題ない。

 ハルフィングには、クーフシュタインから五時間くらいで行ける。

 途中に小さな村もあるそうなので、雨が強くなるなど最悪の場合は、その村で宿泊すれば昨日のような遭難の危険もない。



 午前九時にクーフシュタインを出発。

 三時間ほどで中継地点のカルム村に到着。昼食を取り、午後1時頃に出発すると、徐々に雨が弱くなってきた。

 クーフシュタインの宿の主人の言った通り、標高が下がるほど天気は回復してきている。



 午後三時にエルム山地の麓(ふもと)の町ハルフィングに到着できた。

 ハルフィングとクーフシュタインは標高差二千フィート=六百mほどあり、ハルフィングの町からはクーフシュタイン辺りは雲に隠れて見ることが出来ない。



 今回は下りだったから一気に移動できたが、登りの場合はカルム村で一泊する必要がありそうだ。



 ハルフィングは人口二千人ほどの小さな町だが、大街道の最大の難所の入り口にある重要な町であるため、宿や店が多く、かなり栄えている感じがする。

 町のすぐ横にはドライセン王国の中央部から西部にかけて流れるエーベ河がある。

 ここから先はエーベ河の右岸に沿って大街道が進むことになる。

 ハルフィングからドライセンブルクへは、ヴェッサーブルク、ザールヒューゲル、シェーネックなどを経由する。

 王国中央部は治安もよく、道の整備状況もいいため、一日の距離を稼ぐことができる。



 翌日、ハルフィングを出発し、王国中央部を順調に進んでいく。

 東部に比べ、王国中央部は標高が低く、火の月=八月の暑さが厳しい。体力の消耗を考えて、一日当たりの移動距離は少し抑えたため、ハルフィング出発から五日後、オステンシュタットから十日後にドライセンブルクに到着した。



 王国中央部の緩やかな丘陵地帯を目にしながら、ドライセンの王都ドライセンブルクの門をくぐった。







 大河がクーフシュタインを出発した二日後、オステンシュタット近郊に戻ったグンドルフは、オステンシュタットで情報収集に当たっていた手下から大河の調査に関する報告を受けている。

 手下からの報告では、

「ギルドの受付で野郎について聞いてみたんですが、受付の女(アマ)が、知りたい理由はなんだ、カードを見せろだ、とうるさかったんで、ギルドで聞くのは諦めやした。その辺の冒険者に聞きやしたが、だれも野郎のことは知りやせんでした」



 その報告を聞くや、「馬鹿野郎! ギルドでそんなこと聞く奴があるか! ギルドじゃ冒険者の情報を出さねぇのは常識だろうが!」と怒りだした。



 ギルドでは、冒険者同士のトラブルや賞金首の身内などの報復から冒険者を守るため、冒険者の登録状況や宿泊場所、受けているクエストなどの情報を漏らさないようにしている。

 田舎のギルドであれば、冒険者が少ないため、噂ですぐにわかってしまうので、そこまで厳しい措置は取られていないが、オステンシュタットのような高額所得者である高ランク冒険者がいるギルドでは、情報管理はかなり厳しい。



 手下は怒り狂っている頭の機嫌を取るため、平伏しそうな勢いで謝っている。



「すいやせん。田舎のギルドしか知らなくって……他の情報なんですが、宿は旅人の止まり木亭ってところに二泊したようで、火の月(八月)の第二週の水の曜(九日)に出て行ったそうです。宿で行き先とか聞いてみたんですが、なかなか聞き出せなくて……」



「クソ!役に立たねぇ。他にはねぇのか!」



「すんません。これ以上は……」



「四日も居てこの程度の話しか拾ってこれねぇのか。このクソが!」



 グンドルフは、オステンシュタットで情報収集に当たった手下を蹴り飛ばし、オステンシュタットの東西の門で見張っていた手下たちに大河らしき人物が通らなかったか、確認したが、それらしき人物が通ることは無かったと報告があった。



「オステンシュタットの情報屋を使って、あの野郎の足取りをもう一回調べなおせ。持って行きやがった財宝(おたから)を金に換えているはずだ。宝石商や大店(おおだな)の商会を中心に宝石を大量に仕入れたところがねぇか調べろ。俺はローゼンハイムに行く。五日後、またここに集まる。判ったな」



 グンドルフは、手下3人にオステンシュタットでの情報収集を命じ、自らは手下1人とともにローゼンハイム領内に向かうことにする。



(ローゼンハイムか。騎士団がそこら中に居て、監視の目が厳しいからな。できれば行きたくねぇんだが、こいつらを行かせても捕まるのが落ちだろうし。こうなったら、腹を据えて探し出してやる)



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/17 21:57
更新日:2012/12/17 21:57
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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作品ID:1337
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