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作品ID:1344
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第三章「街道」:第10話「北へ」

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第3章.第10話「北へ」



 オルトヴィーンの店で魔導書を手に入れたのでギルドに戻り、クロイツタール行きの護衛クエストを探す。

 クロイツタールは北部の主要都市であり、友好的ではない隣国=ジャルフ帝国からの防衛拠点にもなっている。



 北部では鉄鉱石や銅鉱石などの鉱山資源が多く産出されるが、食料自給率がやや低いため、ノイレンシュタットとクロイツタールの間のクロイツタール街道は大街道(シュトラーセ)並に往来が多い。

 そういうわけで、クロイツタール行きの護衛クエストはすぐに見つかると思っていたが、俺がDランクと護衛クエストを受けるにはかなり低いランクであるため、なかなか見つからない。

 ギルドの掲示板では埒が明かないので受付嬢に聞いてみるが、やはりDランクでソロの冒険者のニーズは少ないとのこと。大規模な隊商は専門の護衛を雇っているし、小規模な隊商は腕利きを少人数雇う方がコスト的に有利なのでCランク以上で依頼を出す。

 更に一時間ほど掲示板を見ていたが、どうしても見つからないので、そろそろ諦めようかと思っていたとき先ほど相談に行った受付嬢が声を掛けてきた。



「明日の護衛クエストでCランクの冒険者の方が急病になったとのことでキャンセルが入ったとの連絡がありました。護衛チームのリーダーの方にお会いになりますか?」



「諦めかけていたんだ。会ってみるよ。どこにいるんだい?」と聞くと、窓際のテーブルを指差し、



「あちらのテーブルの男性です。まだ、タイガ様の話はしていませんので、ご自身で交渉してください」と言って、受付カウンターに戻っていく。俺は彼女に礼を言ったから、目的のテーブルに向かった。



 テーブルについている男は三十前の人間の男でハーフプレートかブレストアーマーといった金属製の上半身用の鎧を着けて太めの片手剣を腰に差している。

 鑑定で見てみると、年齢は二十五歳でレベルも二十五。スキルは片手剣二十に小盾十五となかなかの腕前だ。

 俺はテーブルの前に行き、



「すいません。護衛クエストでキャンセルが出たから穴埋めを探していると、受付の女性に聞いたんですが」と声を掛ける。



 彼はこちらを一瞥すると、すぐに、



「ああ、明日の朝一番に出発する隊商なんだが、依頼主から荷馬車6台に対して護衛6人以上との指示があったね。うちのパーティは五人だから一人を臨時で雇うことにしていたんだが、今朝から調子が悪くて、どうしてもダメそうだと連絡を受けたんだよ。それで穴埋めを探していたんだが、さすがに馬付きではこの時間からは厳しくってね」



 苦笑気味にそう言ってきたので、俺はすぐに馬を持っていることをアピールした。



「あの、俺、タイガって言います。馬は持っています。ランクはDランクですが、戦闘経験はあります」



「俺はマクシミリアン、マックスと呼んでくれ」



 彼は俺を値踏みするように見たが、納得したのか、すぐにフランクな感じで名乗ってくれた。



 歳も近く冒険者同士で敬語は不要といわれ、報酬や警備方法などの実務に関する話に入る。



「報酬と条件だが、クロイツタールまでの護衛で七日間で無事に到着できれば、金貨一枚。基本的には夜営はしない。理由の如何に係わらず一日遅れる毎に銀貨十枚分報酬が減る。移動中の宿泊費・食費・入市税等の税金は依頼主持ち、当然馬の分も含んでいる。宿でも依頼主と荷物の見張りを交替で行うから、護衛中はすべての時間、拘束されていると考えてくれ。何か質問は?」



「移動中の護衛のやり方は?」



「荷馬車六台に対して、先頭に二人、三台目と四台目の間に二人、最後尾に二人のペアでの護衛を考えている。タイガは俺と真ん中についてもらいたい」



 護衛のやり方について知識はないが、問題はないと思える。俺を監視する意味でもリーダーのマックスが俺と組むのは理解できるので、その他の細かい条件を確認することにした。



「了解。宿泊先のレベルは? 大部屋だけみたいなところならお断りだが」



「宿泊先は依頼主と同じ宿になるし、荷馬車の管理もあるからそんなに酷い宿になることはない。部屋は個室か2人部屋で相部屋の場合はうちのパーティのだれかといっしょになる」



「了解。その条件で問題ない」



 マックスと握手をして、契約成立。受付カウンターでクエスト受付手続きを行う。



 明日の朝、六時半にギルド前に集合してから依頼主の商会に向かうとのことだ。

 念のため、宿泊先を伝えておき、マックスとはここで別れる。



 さっきの受付嬢にもう一度礼を言いたかったが、他の冒険者の受付をしているため、軽く会釈だけして外に出る。明日からの移動に向けて、非常食や蒸留酒などを買っておく。



 翌朝、朝五時に起床し朝食をとる。

 朝食の時、今日の天気を聞くと一日曇りだが、風もなく暑くなるだろうとのこと。水分補給用の水筒に水を詰め、六時にチェックアウトし、集合場所に向かった。



 大分早いが、先輩たちを待たせるのは嫌だったので、六時一〇分くらいからギルド前で待つことにした。



 六時二〇分、マックスたちがやってきた。

 マックスの他は重装備の前衛二人と弓を装備した後衛二人の男たちだ。



 マックスが、「おはよう。早いな。準備は大丈夫か」と声を掛けてきた。



「おはよう。準備は大丈夫だ。少し早いから他のメンバーの紹介をしてもらえないか。俺の名はタイガ。見ての通り両手剣を使う。スローイングナイフは練習中で今のところ飾りなので期待しないでくれ」



 ハーフプレートを着け、ハルバードを装備した二m近い男が手を差し出し、



「俺はゲルトだ。Dランクだそうだが、期待している」



 同じく身長百九十cmくらいでハーフプレートに両手剣のクレイモアを背負った男が、



「ゼップルだ。同じ両手剣使いだ。よろしく頼む」



 続いてロングボウを持ったひょっろとした男が笑顔で、



「ニコラスだ。ニックと呼んでくれ。クロイツタールまで楽しく行こう!」



 最後にショートボウとショートスピアを持った目付きの鋭い狼系の獣人の男が、



「シリルだ。スカウトをやっている。よろしく」



と全員と握手をして、顔合わせを終了し、依頼主の商会に向かう。



 依頼主のところに向かう途中、マックスから依頼主についての説明があった。



「依頼主は、ケヴィッツ商会のエンリコさんだ。ケヴィッツ商会は穀物、酒、海産物なんかを扱う中堅より少し小さい規模の食料系の商会だ。今回もいつも通り、ノイレンシュタットの穀物、酒類をクロイツタールで売り、帰りに北部の海産物仕入れてノイレンシュタットで売るそうだ。今回の荷は、荷馬車四台分の穀物と二台分の酒になる。御者はすべて商会の人間でエンリコさんの息子も同行するから商会側は八人だ」



 六時五〇分にケヴィッツ商会に到着。

 中堅より少し小さい規模と言っていたが、商会は思ったより大きな建物で、既に建物の前に荷馬車が並んでいる。

 エンリコらしき四十代半ばの太った商人と十代後半の若者が俺たちを待っていた。



「おはよう、マックス。今回も頼むぞ」



「おはようございます。任せてください。こいつが追加の護衛のタイガです」といって俺を紹介する。



「タイガです。よろしくお願いします」とできるだけ誠実そうに見えるように挨拶をする。



「ケヴィッツ商会のエンリコだ。今回は公爵様への献上品もあるから、気を抜かないでくれよ」と俺を含めた護衛たちに気さくに声を掛けていく。



 大店(おおだな)の商人は護衛の冒険者や傭兵を無視し、声も掛けないことが多いという話を聞いたことがある。

 その点、エンリコは護衛にも声をかける気さくな性格のようだ。

 十代後半の若者はエンリコの息子ヴィムで、クロイツタール公爵への献上する商品の管理を行うとのこと。どうやら公爵への目通りが適うので貴族に顔を売っておこうとの算段のようだ。



 午前七時に商会の前を出発する。今日はノイレンシュタットからエーベ河を渡り、二十マイル先のパルヒムの町を目指す。







 ローゼンハイムに向かったグンドルフはローゼンハイム街道沿いの村で情報収集をしながら、ローゼンハイム市の手前までやってきた。

 やはり、目的の大河はローゼンハイムに入っていないと感じ始めている。

 念のためローゼンハイム市に潜入し、一日掛けて調べたが、やはり足取りはまったく掴めない。

 急ぎオステンシュタットに戻り、手下たちの報告を受けることにした。



 オステンシュタットに潜入した手下から、



「宝石商でヴェルス宝飾店っていうところで働いている店のもんの情報なんですが、最近、変な格好をした二十くらいの若造が宝石を売りに来たそうです。名前までは確認できなかったんですが、東方の出身の商人と名乗り、黒い髪で背格好もゴスラーで聞いた話とほとんど同じでした」



 グンドルフは身を乗り出すように「財宝(おたから)はどうなった」と聞くと、



「宝石は、すべてその店が買い取ったそうで、商業ギルドに入っていたようで商業ギルドで金を支払ったそうです」



「他には何かねぇか」



「帰り際に東方に帰る急用ができたから、助かったとか何とか言っていたと……」



 もう一人の手下が、



「宿で働いている女に聞いたんですがね、どうも奴はプルゼニ行きの配達クエストを受けたみてぇなんですわ。飯食ってるときも、しきりにプルゼニの情報を漁っていたって言ってましたぜ」



「判った。東に行ったとはどうしても思えねぇが、これだけ証拠が集まると東に行くしかねぇ。とりあえず、プルゼニの国境の町ホイナを目指す」



 グンドルフは自らの勘より得られた情報を信じ、オステンシュタットから東へ、隣国プルゼニ王国へ向かう。



 大河の欺瞞情報作戦はとりあえず成功した。

 普通の旅人が街道をそのまま進めば五日ほどで国境を抜けられるが、お尋ね者のグンドルフは国境の関所を迂回する必要があり、十日以上掛けて山中を踏破し、金の月(九月)の初めにようやく国境の町ホイナに到着した。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2012/12/18 22:07
更新日:2012/12/18 22:07
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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