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作品ID:1428
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第五章「ドライセンブルク」:第13話「宮廷陰謀劇前夜」

前の話 目次 次の話

第5章.第13話「宮廷陰謀劇前夜」



 俺は訓練場の端にいるアマリーとシルヴィアをあまり放っておくわけにはいかないので、二人のところに向かう。

 公爵は大事な証人であるアマリーに護衛を付けたという言葉を思い出し、「その者は何者だ」とシルヴィアの素性を尋ねてくる。

 答えに困っていると、



「閣下。立ち話も何ですので執務室にお戻りになられては」



とノルトハウゼン伯が助け舟を出してくれた。



 総長室に戻り、クロイツタール公、ノルトハウゼン伯、ターボル伯の王国の重鎮三人を前にシルヴィアの説明をさせられる。

 シュバルツェンベルクの屋敷の管理のため、人を探しにノイレンシュタットに行ったこと、普通の家政婦は雇えなかったので、奴隷商に行ったことを話す。



「グロスハイム商会という奴隷商で見つけたのが、このシルヴィアというわけです。まだ、手合わせしておりませんが、弓と剣が使えますし、気配察知なども得意そうです。私の目が離れた時にアマリーを見てもらおうと購入しました」



「なるほど、そなたの奴隷であれば問題なかろう。我がクロイツタール騎士団の制服を貸与する。明日の謁見にも同行させよ」



 後ろで聞いているシルヴィアは、王国の重鎮三人と言うこともあり、かなり緊張していたようだが、その言葉を聞き、ポーカーフェイスが崩れ、一瞬愕然とした表情を見せた。







 シルヴィアはクロイツタール公ら、ドライセン王国の重鎮たちを前にしながらも、まだ自分の目を疑っている。



(私を買った男は本当にどういう男なのだ?)



 自らは冒険者と名乗りながらも、公爵らは部下というより同僚のようにこの男を扱っている。この男も一応は敬っているように見せているが、公爵に何度か軽口を叩いているのを見た。

 その割に私には自分のことを呼び捨てにしていいと言う。本当に判らない。



 更に、確かめもせず、私が弓と剣を使えるという話を公爵に堂々と説明している。



(弓も剣も武器屋で構えただけだ。それだけで実力が判るとは思えない。公爵たちを相手に、はったりを言っているようでもないが、あの自信はどこから来ているのだろう?)



 公爵の“謁見”と“服の貸与”という言葉に更に困惑が深まっていく。



(明日の謁見とはどういうことだ? 騎士団の制服が貸与されるというのもわからない……どちらにしても私はあの男に買われた身。希望を持たずに生きていくと決めたことには変わりがない……)



 シルヴィアはわずか半日で大きく変わった境遇に戸惑うが、自分は所詮奴隷と希望を持つことを諦めている。









 ノルトハウゼン伯は護衛の騎士を退出させ、アマリーとシルヴィアも隣の応接室に一旦下がらせる。



「閣下、お時間を頂けるなら、ここで明日の段取りをお話した方がよろしいのでは?」



 公爵も「うむ。そうだな」と頷いている。



 ノルトハウゼン伯は雰囲気をがらりと変え、少し強めの口調で俺に状況を話し始めた。



「明日の陛下の裁定はウンケルバッハ伯を弾劾するだけでは済まなくなりそうなのだ」



 俺はノルトハウゼン伯が何を言っているのか理解できない。



「あまり言いたくはないのだが、閣下の後を狙う近衛騎士団長が暗躍していそうなのだ。うまく立ち回らないと閣下が私怨でウンケルバッハ伯に無実の罪を着せたと逆に告発される可能性があるのだよ」



(ドロドロの宮廷劇じゃないか。そんなのに巻き込まれたくはないけど、公爵はなんだかんだいい人だしな)



 俺は自分にできることがあれば何でもやるつもりになってきている。



「君は事実のみを話せばよい。そして事実と異なる部分については”判らない”とだけ答えて欲しい」



 少しきな臭くなってきた気がする。



「想定されるご下問はどのようなものでしょうか?」



 これには公爵が口を挟んできた。



「まずはそなたの素性だろうな、我が騎士団のものであれば、特にそれ以上の詮索はされんが、一冒険者となれば根掘り葉掘り聞かれるだろう」



(確かに冒険者であれば、外国の工作員でないという保証がないから突っ込まれるよな)



「そこでクロイツタール騎士団の団長付、副長代理と答えてくれんか」



「しかし、私は副長代理ではありませんが」



 俺はこれ自体が偽りだと突っ込まれないか、心配になる。



「今任命したから問題ない」



(いいのか、こんないい加減で!)



 公爵は俺の懸念をよそに、すぐに次の話に入っていく。



「次になぜジーレン村にいたのかであろうな。偶然にしては出来すぎだ。ウンケルバッハを嵌めるために仕組んだのではないかと問われる可能性はある」



「しかし、本当に偶然なのですが……」



「まあ、儂に報告に行く途中、天候が崩れて偶然ジーレン村に行ったと答えればよい。ファーレルでは儂のところに近況を”報告”してくれるつもりだったのだろう。嘘はない」



(嘘はないけど、俺にそんな腹芸が出来るかな)



「冒険者の格好をしていたことを聞かれた場合はどう答えたらよいのでしょうか?」



「そこは儂が答えるから、黙っておればよい」



(何て言うんだろう。聞きたいけど聞くのが怖いから止めておこう)



「一番の問題は帝国の”草”の尋問に成功したことだな。グローセンシュタインはともかく、宰相あたりが聞いてくるはずだ」



 俺は宮廷内の人間関係、力関係が判らないので、誰が味方で誰が敵か判っていない。



「閣下、私は宮廷内の事情に疎く、どの方が閣下に仇なす方でどの方がお味方なのか判りません」



「そうであったな。ヴァルデマール(=ノルトハウゼン伯)、説明してやってくれんか」



 公爵はノルトハウゼン伯に説明を一任する。



 ノルトハウゼン伯の説明では、



・現ドライセン国王のレオンハルト八世は内政、外交に手腕を発揮する名君だが、今年六十歳になり、健康面で不安がある。王太子マンフレートは二十七歳、人格的に問題があるという話はないが、現国王に比べやや小粒との評価が一般的

・ドライセン王国には公爵家が三家あり、三公家と呼ばれている

・三公家はクロイツタール家、マールバッハ家、ヴィース家で、代々クロイツタール家が武を、マールバッハ家とヴィース家が文を取りまとめている

・三公家は特に対立していないが、前宰相のマールバッハ公が現国王とともに国内改革を成功させたため、現宰相のヴィース公がそれ以上の成果を上げようとかなり無理をしている

・ウンケルバッハ家はマールバッハ家に連なる名門。但し、現マールバッハ公はアウグスト・ウンケルバッハ伯を嫌っている

・近衛騎士団長のレバークーゼン侯爵は三公家に次ぐ名門の当主だが、非常に野心が強い。騎士団総長を経て宰相になろうと考えている節がある。当面の目標である騎士団総長になるため、クロイツタール公を失脚させようと暗躍している。現国王も非常に警戒しているが、名門であり、かつ有能でもあるため排除できていない

・レバークーゼン侯爵に踊らされそうな貴族は典礼卿のシュテーデ伯爵、近衛騎士団副長のブレダー子爵辺り

・グローセンシュタイン子爵は公正無私なため、どの派閥にも入っていない。王国に仇なす者はどのような高貴な血筋でも弾劾するため、恐れられている

・宮廷書記官長のウンターヴェルシェン伯爵は、現国王と王太子に忠誠を誓っており、野心が強いレバークーゼン侯爵を警戒し対抗しようとしているが、まだ二十代と若く、対抗馬としては力不足

・近衛騎士団以外の騎士団は基本的にはクロイツタール公に好意的。また、王国の武の象徴クロイツタール公爵家は臣民にも人気が高い



 以上がノルトハウゼン伯のレクチャーだが、名前が多すぎて覚え切れない。

 とりあえず、注意すべきはレバークーゼン侯爵とその取り巻きのシュテーデ伯爵、ブレダー子爵と覚えておけばいいだろう。



(意外と面倒そうなのが、グローセンシュタイン子爵だよな)



 グローセンシュタイン子爵対策として、悪魔を呼び出せると嘘をつき、魔法を小細工に使ったら尋問に成功したとだけ話すことにした。



 想定Q&Aは、それほど多くないので、後は宮廷作法のみ。この後特訓が待っているそうだ。





 目立たぬよう応接室で第一騎士団所属の騎士から宮廷作法の特訓を受ける。

 礼の仕方、歩き方、話しかけられた時の対応の仕方などなど。正直、携帯で動画を取りたいと思ってしまった。

 シルヴィアは無表情で見つめ、アマリーは俺が失敗すると少し笑っていたような気がする。



(ふうぅ、しんどい。しかし、アマリーが笑ってくれたのなら、これはこれでよかったと思おう)



 二時間後の午後七時にへとへとになった俺はようやく解放された。



 夕食後、アマリーが湯浴みに行き、ようやくシルヴィアに彼女がいないところで、事情を話せるようになった。

 時間はあまりないので、彼女の事情を簡潔に話していく。

 アマリーの住んでいた村がウンケルバッハ伯爵家のものに皆殺しにされたこと、両親はアマリーを守るため犠牲になったこと、妹が凌辱された上、殺されたことなどを話していく。

 そして、帝国の工作員や公爵の政敵に暗殺される可能性があることを伝え、俺がいないときに守ってやってほしいと頭を下げる。



 シルヴィアは終始無表情のまま話を聞いていたが、湯浴みから戻ったアマリーを見る目が少し変わったような気がする。



 同情なのか憐憫なのかは判らないが、少なくとも名前を呼ぶようになっただけでも前進だろう。





 その後、就寝前にシルヴィアを寝室に呼ぶ。



「ベッドは入れてもらっているから、ここで寝てくれればいい」



 シルヴィアは護衛として、リビングで寝ようとしていたようだ。



「ああ、この体では夜伽もいらんだろうし、ここで寝させてもらおう」



「シルヴィア、服を脱いでこのベッドに横になってくれ。アマリー少し手伝って」



「何をするつもりだ?」



 シルヴィアは少しだけ困惑の表情を見せ、理由を問いかけてきた。



「その傷跡を消す。一度では難しいだろうから毎日寝る前に治癒魔法を掛ける。最終的には耳も再生させるつもりだ」



 シルヴィアは、俺が治癒魔法を使えると聞き、少し驚いた表情を見せるが、すぐに首を横に振り、



「別にそんなことをしてもらわなくてもいい。それとも綺麗に直してから抱くつもりか?」



 俺に触られるのを拒絶するようにまっすぐ俺を見つめてくる。



(野生動物の治療と同じだな。面倒だし命令の形で進めよう)



「うーん、そこまでは考えていなかったな。まあいい、命令だ。早く服を脱いで横になれ。アマリー、治癒の魔法の時にシルヴィアの手を握ってやってくれないか。そんなに苦しくはないはずなんだが、体に負担が掛かるから」



 アマリーは良く判っていないようだが、言われたとおりシルヴィアの前に立つ。



 シルヴィアも諦めたようで、服を脱ぎ、うつ伏せになってベッドに横になる。



 何も聞いていなかったアマリーがシルヴィアの背中の傷の酷さに「うっ」と呻いている。



(皮膚の損傷度二=機能低下はないが永久に残る傷か。一度にどの程度再生できるのだろうか)



 俺は第四階位の治癒魔法”再生”を発動させる。

 再生では軽度の部位欠損も再生できるので、背中の傷も消せるはずだ。範囲が広いからどの程度魔力を使うか見当も付かない。



 治癒魔法を発動させると、俺の手からシルヴィアの背中に魔力が流れていく。

 シルヴィアは時折ビクッと体を反応させるが、声は一切上げない。但し、顔には玉のような汗が浮かんでおり、かなりきついようだ。

 アマリーはシルヴィアの手を握りながら、時々「頑張って」と囁いている。

 治癒魔法発動後、一分ほどで右肩から肩甲骨辺りの傷がゆっくり消えていく。

 どういう原理なんだろうと思うが、今は魔法に集中しなければいけないと自分に言い聞かせ、魔力切れギリギリまで魔法を掛ける。



 右肩から肩甲骨付近、全体の四分の一ほどの再生が終わる。



(ふぅぅ。きついな。このペースなら背中の傷だけであと四日。耳も出来そうだから明日にでも再生魔法を掛けてみよう)



 俺は動かないシルヴィアが心配になり、「シルヴィア、大丈夫か。水でも飲むか」と声を掛ける。

 シルヴィアは気だるそうに



「ああ、大丈夫だ。少し疲れただけだ。アマリーありがとう」



 シルヴィアにどんな感じか聞いてみると、手を当てられているところに体中の力が集中していくようで息苦しいそうだ。



(よく判らないな。普通の治癒魔法とどう違うんだろう? 細胞の活性化が促されるのかな?)



 何となく、アマリーとシルヴィアの関係も良くなったよくなった気がするので、それだけでもやった甲斐はある。



 今日もアマリーは俺のベッドに入ってくる。

 手を握ってやるが、暗くなると家族のことを思い出すのか、小さく嗚咽を漏らしている。

 三十分ほどでアマリーは寝付くが、十代半ばの少女と同衾していると思うとなかなか寝付けない。

 襲い掛かることも出来ず、抜け出すことも出来ない”生殺し”の状態。悶々としながら起きていたが、日付が変わる頃には知らない間に寝入っていた。







 シルヴィアはアマリーが大河の寝台に入っていったことに気付いていた。



(そういう関係なのか? 私を同室させるのはどういうことだ? 露出趣味でもあるのか?)



 大河がシルヴィアのために寝台を入れさせたこととアマリーが大河の寝台に入ったことがどうも理解できない。



(まあ、“ご主人様”の趣味だ。好きにすればいい)



 そう思いながら、寝ようとするが、一向にことが始まらない。それどころかアマリーの小さく嗚咽を漏らしている声が聞こえてくる。



(彼女を慰めているのか? 話を聞く限り、あの男に負い目はないはずだが……)



 考え出すとなかなか眠れず、背中の治療のことを考え始めた。



 シルヴィアは、奴隷商で「この傷は相当高位の治癒師でないと消せない」と聞いていた。自分の背中は見えないが、触った感じではほとんど消えている。



(高位の治癒魔法を使う凄腕の魔法剣士。王国の高官たちと対等に話すが、心に傷を負った少女に対しては不器用な対応しかできない。私に対してもそうだ。奴隷である私になぜあれほど気を使う。本当に判らない男だ……)



 シルヴィアは大河のことを考えながら、静かに眠りに落ちていった。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/10 22:33
更新日:2013/01/10 22:33
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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