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作品ID:1452
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第五章「ドライセンブルク」:第22話「タカヤマ准男爵誕生」

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第5章.第22話「タカヤマ准男爵誕生」



 雪の月、第五週日の曜(一月二十一日)になった。

 俺の准男爵への授爵式が行われる日だ。

 式は午後二時頃から始まり、十分ほどで終わる。その後は公爵邸に戻り、午後四時頃からパーティに移ることになる。

 公爵が言っていた通り、パーティには騎士団関係者がほとんどで、伯爵以上はクロイツタール公を除けば、第一騎士団長のノルトハウゼン伯、第二騎士団長のターボル伯のみ。他の貴族も騎士団に所属している隊長クラスであり、あまり肩肘を張る必要はないようだ。



 幸か不幸か、着るものはクロイツタール騎士団の礼装であり、新たな衣装を作ることなく済んでいる。

 午前中は緊張しまくっていたが、授爵式の直前にようやく落ち着きを取り戻してきた。



(これも精神耐性のおかげなのかな)



 午後二時過ぎ、前の行事が押していたのか、少し遅れて俺の授爵式が開始される。



 典礼卿のシュテーデ伯爵のやや高い声で式の開始が宣言され、俺はゆっくりと国王の前に進んでいく。

 国王より、王国への忠誠を尽くせとか、義務についてどうとかいう話が五分ほど続く。

 その間、俺は片膝をつき頭を垂れているだけなので何もすることがない。



 国王の訓話?の後に准男爵位の授爵宣言が行われる。

 厳かな言葉の後に



「タイガ・タカヤマに准男爵位を授ける」



という国王の言葉が続き、ようやく俺のセリフの出番だ。



「謹んで拝命いたします」



 少しの間が空いた後、国王よりタカヤマ准男爵家の紋章が授けられる。



 僅か三日で作った割にはきちんとした図柄で、黒い背景に、後ろ足で立ち、前足に剣を持つ銀色の竜が描かれている。

 後で聞いたところによると、紋章はある程度ストックされており、そのうちの一つが授けられたとのことだ。

 なお、ドライセン王国では二十年位前の黒竜の災厄と呼ばれる事件があり、竜の紋章は非常に人気がないとのことだ。レバークーゼン派閥のシュテーデ伯爵辺りの嫌がらせの一環かもしれないが、俺に拘りはないし、格好いい図柄なので結構気に入っている。



 授爵式も無事終わり、すぐに公爵邸に戻る。

 会場に近い控え室に入ると、誰もおらず一人きりになった。

 バタバタとしているはずの一日なのに、突然一人になれるエアポケットのような時間が訪れた。

 俺は礼装の軍服の首下を緩め、これまでのことを思い返していた。



(この世界に来て八ヶ月。なんだかんだで貴族様になっちまったよ。一年ちょっと前はようやく内定がもらえて喜んでいたっていうのに……)



(一年前には想像も出来なかった世界)



(一年後、俺はどうなっているんだろう?)



(無事にグンドルフとの決着を付けているんだろうか?)



(エルナ、ノーラ、アンジェリーク、カティア、クリスティーネ、レーネ、アマリー、シルヴィア。彼女たちとどう過ごしているんだろう?)



(騎士たちと一緒に、戦争に駆り出されることもあるだろう)



(一年後、俺はどこにいるんだろう?)



 ほんの数分だが、そんなことを考えていた。



 そんなエアポケットのような時間が過ぎると怒涛のような慌しさに飲まれていく。



 会場の準備が終わると午後三時半頃に公爵も到着。



 続々と招待客たちが会場に入ってくる。

 俺は会場入口で笑顔を貼り付けた人形のように招待客たちにお辞儀をしている。



 さすがに騎士団関係者が多いこともあって軍服姿が多く、同伴している女性も華美になり過ぎないドレスに身を包んだ淑女たちが多い。きっと騎士の妻たちなのだろう。



 午後四時には全員が会場入りし、公爵の挨拶でパーティが始まる。

 俺は公爵と公爵の長女リュディア姫と共にひな壇に座っている。



 第一騎士団長のノルトハウゼン伯より祝辞があり、次は俺の挨拶になる。

 挨拶文は屋敷の執事に丸投げして作ってもらっており、丸暗記で対応しようとしていた。



(カンペを作っていないけど大丈夫かな)



 ノルトハウゼン伯の短いが、心の篭った祝辞が終わり、遂に俺の番になった。



(こんなスピーチ初めてだよ! さっさと終わらせよう)



 俺は用意された挨拶文を思い出しながら、上擦った声でスピーチを始める。



「今宵は私(わたくし)、タイガ・タカヤマのためにお集まり頂き……」



 緊張はしたが、何とかスピーチを終えると、会場は拍手に包まれている。



(とりあえず第一関門突破、次はダンスか)



 二十分ほど歓談が続くが、公爵のよく通る声で楽士たちが演奏を始めると、それぞれパートナーを携え、会場の中心に集まってくる。

 俺の最初のパートナーは、公爵の長女リュディア姫になる。リュディア姫は今年二十一歳で領地にいる奥方に代わり、このパーティの女主人(ホステス)役を務めている。



 俺はリュディア嬢に手を差し出し、「リュディア様、お相手をよろしくお願いします」と優雅とはいえないお辞儀と共にパートナーへの挨拶を行う。



「タイガ卿、よろしくお願いしますね。あれだけ父と渡り合えるのです。ダンスなど簡単なものですよ」



 リュディア姫は公爵と同じ濃い金色の髪を綺麗に結い上げ、胸元の大きく開いた青いドレス、首元には銀色のチェーン、大粒のダイヤモンド?のイヤリングを身に着け、黒い軍服が多い会場の中で艶やかな花のようだ。

 身長は俺とほぼ同じくらいで、正面に立つと深い青色の瞳が目の前にあり、つい目を逸らしてしまう。



「女性の目を見ないのはマナー違反ですよ。私以外の女性と踊る時はお気を付けになって」



 彼女は微笑みながら、そう話してくる。



(あの脳筋公爵様のお嬢様だけど、さすがに深窓のご令嬢といった感じだな)



 俺がそんなことを思っていると、音楽の調子が変わり、踊りがスタートする。



 俺はリュディア姫にエスコートされるように踊り、何とか一曲目を無難にこなす。

 彼女にお辞儀をしてから、次の相手を待つ。



(ふぅぅ。疲れる。あと一曲あるんだよな)



 次の相手は誰になるか判らない。

 基本的には独身者同士になるので、どこかの令嬢になるのだろうが、今日の招待客に独身女性がどのくらいいるのか聞いていない。



 俺が次は誰だろうと考えていると、



「タイガ卿、一曲お願いできませんこと?」



と後ろから、きれいなソプラノの声が掛かる。



 俺が後ろを振り向くと、公爵の三女シャルロッテ姫が立っていた。



 シャルロッテ姫は現在十六歳。貴族の令嬢にしては短めの髪で、少し挑発的な表情で俺の前に立っている。

 背は俺より少し低い感じだが、豪華な金髪で白を基調としたドレスを纏っているとすらりとした肢体が戦女神(ワルキューレ)を思わせ、リュディア姫より存在感があるように感じる。



(クロイツタールのお転婆姫か。今日は来ないと思ったのに……)



 シャルロッテ姫は父を尊敬するあまり武術に傾倒し、ドレスではなく騎士服を着用し常にロングソードを佩いているというご令嬢だ。

 俺も直接会うのは初めてだが、屋敷に入ってからいろいろ噂を聞いている。



(ドレスを着るのは年に数回と聞いたんだが、珍しいこともあるもんだ)



 彼女は俺に不敵な笑みを向け、



「父上が執心するタイガ卿と、一度お手合わせをお願いしたいのですが、いかがですか?」



 俺はその申し出に目を丸くする。



(お転婆だとは聞いていたけど、いきなり手合わせって。教育の仕方を間違ってるよ。閣下!)



 シャルロッテ姫を鑑定で確認すると、十六歳でレベル十八、片手剣二十(連撃一)であり、貴族のお嬢様にしてはちゃんと鍛えられている。



(しかし、少なくともグリュンタールに勝った俺に、挑戦してくるレベルじゃないけどなぁ)



 俺は疑問に思ったが、「閣下のお許しがあればいつでもお相手を勤めさせていただきます」とだけ、答えておく。



 最初の曲より少しだけアップテンポな曲が始まり、周囲にあわせて踊り始める。

 シャルロッテ姫もダンスは好きなのか、見事なリードで俺をフォローしてくれた。

 二曲目も無事に終わり、シャルロッテ姫に礼を言ってから、義務を果たしたと席に戻っていく。



 公爵が俺に近づいてきて、



「シャルロッテが踊りに誘うとは思わなんだぞ」



「シャルロッテ様に手合わせをお願いされました。閣下のお許しがあればお相手いたしますと答えましたが、よろしかったでしょうか」



 公爵はやはりかという顔をしてから、苦い笑いを浮かべている。



「シャルロッテは昔から剣術に傾倒しておってな。騎士たちと共に訓練に参加し、魔物の討伐などにも潜り込んできておる。皆、儂の娘ということでちやほやしたようでの、少し増長しておるのよ」



(なるほどね。お姫様相手に真剣に試合は出来ないよな。それで自分は強いと勘違いしているのか。まあ、閣下が許さなければ別段支障はないし問題ないな)



 俺はその時軽く考えていたが、公爵の顔には渋い表情が広がっている。



「閣下がお許しにならねば、何も問題はないのでは?」



「シャルロッテは意外と策士での。なにやら画策して来るやも知れん」



 俺はもう一言言おうとしたが、すぐに招待客が俺のところに押し寄せ、公爵と話をする機会を失ってしまう。



 その後、騎士たちと話をしながら酒を飲み、ようやく人心地つくことが出来た。

 何人かの騎士と話しをすることができたが、この国では実力主義が浸透しているのか、冒険者上がりの俺に対しても、特にわだかまりなく接してくれる。



 国王と王太子が騎士服姿で来場した時には会場が沸きあがったが、特に混乱もなく進んでいく。

 国王は公爵に話しかけている姿を横目で見ていると、王太子マンフレートが俺に話しかけてきた。



「そなたがタカヤマか。フォルトゥナート(宮廷書記官長ウンターヴェルシェン伯爵)より聞いたが、あのグリュンタールに勝ったそうだな」



 俺はどう答えたらいいのか判らず「はい」とだけ答える。



「そなたはその歳で魔法を、それも属性魔法も治癒魔法も極めていると聞く。北方もきな臭くなってきている。公爵の下での活躍、期待しているぞ」



 王太子は笑いながら、そう言うと騎士たちの輪に入っていく。



(意外と気さくな王子様じゃないか。人心掌握もうまそうだし、陛下の後を継いでも大丈夫なんじゃないか?)



 以前のノルトハウゼン伯爵のレクチャーでは、現国王に比べ小粒との話だったが、中興の祖と言われそうな現国王と比較すること自体が理不尽なような気がする。



(分を弁えて現国王の路線を継承すれば、名君って言われる可能性を感じるんだが、偉大な先代の後を継ぐと周りがうるさそうだし、側近の力量次第って気がするね)



 そこまで考えた時、次代の側近は、文の宮廷書記官長のウンターヴェルシェン伯爵と武のフェリックス・クロイツタール次期公爵だと気付く。



(このまま公爵の言うとおりフェリックス様の側近をやらされると国政にも関わる必要が出てくるかもしれないということ? マジで?)



 国王と公爵がどのような話をしているのかは判らないが、王太子を連れてきたことから、俺を見定めにきた可能性は否定できない。



(どちらにしてもグンドルフのことを解決しない限り、何も進まないよな。頭が痛くなるから考えるのはよそう)



 俺は遠い将来の話より、近い将来のことを考えることにし、それ以上深く考えるのは止めることにした。



 パーティが始まってから三時間、午後七時頃になると騎士たちも徐々に帰り始める。

 国王と王太子は公爵と共に屋敷に入っていき、会場もようやくまばらになってきた。



(ふぅ、ようやく終わった。これでゆっくりできる)



 そう思っていたら、例のお転婆姫がやってきた。



(厄介ごとは嫌なんだけどな。一応主家筋の姫様だし無視するわけにはいかないよな)



 シャルロッテ姫は挑発的な目で俺を見ながら、



「父上のお許しが出ましたわ。いつ手合わせをしていただけますの?」



 俺はビックリして公爵を探すが、さっき国王と屋敷に入って行ったことを思い出す。



(うまく逃げられた? こういう展開って変なフラグが立つから嫌なんだけど……)



 俺は諦め顔で「明日の朝にでもお相手いたしましょう」とだけ答えておき、リュディア姫を探す振りをして、そそくさとその場を後にする。



 部屋に戻ると、アマリーとシルヴィアが待っていた。

 二人は会場の奥から見ていたようで、アマリーは「ご立派でしたよ」と褒めてくれた。



 明後日にはクロイツタールに向けて出発するので、明日は最後の買い物をする機会になる。

 アマリーとシルヴィアに明日は買い物に行くことを伝え、長かった一日の疲れを取ろうとベッドに向かった。

 少し憂いを含んだ表情をしたアマリーが背中に何か隠し持ちながら、話しかけてきた。



「貴族様になられたんですね。これからは”タイガ様”と呼ばないといけませんか?」



「今まで通りでいいよ。というか、今まで通りの方がいい」



「よかった。タイガさんが貴族様になったから、もう一緒にいられないかもって……」



「そんなことはないよ。一緒にいて欲しい……」



 俺も貴族になったことで変わることが多くあるだろうと思っている。

 うまく言えないが、変わって欲しくないものもあるし、俺が俺自身でいるために変えてはいけないものもあるような気がする。

 アマリーとシルヴィアとの関係は変えてはいけないものだと感じている。

 そのことがうまく伝えられず、アマリーを抱きしめようとした時、



「これは私からのプレゼントです」



 そう言って、背中に隠していた物を差し出してきた。

 それは黒いマフラーだった。



(手作りのマフラーだ。初めて女の人から手作りのものを貰った!)



 俺は感激して言葉にならない。アマリーは俺が何も言わないことに不安を感じたのか、



「黒がお好きだと思ったんですが……駄目ですか?」



 消え入りそうな声でそう聞いてくる。



「感激しすぎて言葉が出なかった。ありがとう」



 俺は慌てて、そう言い、アマリーを引き寄せ、抱きしめた。







 翌朝、朝食をとっているとシャルロッテ姫が俺の部屋に訪れた。



「朝食をおとりになったら、早速お相手していただきますから」



 彼女はすぐに庭で待つと言って、部屋を出て行く。



 アマリーとシルヴィアは立ち上がる暇もなく、「何のこと?」と聞いてくる。



「閣下のご息女シャルロッテ様と手合わせすることになってね。すぐに終わるから部屋で準備をしていて」



 俺は二人にそう伝えると、朝食もそこそこに部屋を出て行く。



(親子だね。初めてクロイツタール城で手合わせしたときを思い出すよ)



 俺は公爵を思い出し、苦笑しながら庭に向かう。



 シャルロッテ姫は既に待ちくたびれたようで、防具も着けていない俺にすぐに準備するよう言ってくるが、



「このままで結構です。すぐに始めましょう」



「私を侮っておいでですの! 怪我をしても知りませんから!」



 彼女は俺が防具を着けないことに、自分が侮られていると腹を立てているようだ。



 俺はさっさと終わらせたいので、隠れているであろう公爵に向かい、「閣下! 審判をお願いします」と叫ぶと、公爵はばつが悪そうに建物の影から姿を現す。



「何故判った? 魔法か?」



(そんなのバレバレだよ。親馬鹿の親父が娘を心配してこそこそ見ているのなんか)



「魔法を使わなくても判ります。時間がもったいないのですぐに始めましょう。シャルロッテ様、手加減はしませんので、そのおつもりで」



 公爵の合図で模擬戦が始まる。



 シャルロッテ姫は声を上げながら突っ込んでくる。

 気合は十分だが隙だらけの突きをかわし、ロングソードの根元目掛けて強撃を繰り出す。

 カーンという硬い音と共に彼女の剣は折れ、俺の足元に突き刺さっている。

 彼女は呆然と立ち尽くし、折れた剣を眺めている。

 なかなか出ない判定に焦れた俺は、「閣下、判定は?」と公爵を促すと、「勝者、タイガ」と小さな声で判定を告げる。



 俺は二人に礼をして立ち去ろうとするが、



「待ちなさい。今のは剣が悪かったの。もう一回勝負しなさい」



(負けず嫌いのお姫様だことだ)



「五本ばかり用意してもいいですよ。何回も用意させるのは面倒ですから」



 そういうとシャルロッテ姫は頭から火を噴きそうな感じで怒りを露にしている。



 新たな剣が準備され、再度手合わせをするが、今度は剣こそ折れなかったものの、彼女の手が伝わってくる衝撃に負け、剣を手放してしまう。



「もういいでしょう。何度やっても同じです」



 シャルロッテ姫は泣きそうな顔をしているが、歯を食いしばって、



「もう一本勝負しなさい! 今度は本気で行きますから!」



(変なフラグが立たないようにしないと、ツンデレフラグっぽいから面倒ごとに巻き込まれそうで嫌なんだけどなぁ)



 俺は地面に直径五十cmくらいの円を書き、



「この範囲から足が少しでも出たら私の負けでいいです。その代わり、これで最後にしてください」



 三本目の合図と共にシャルロッテ姫は接近してくるが、今度は慎重に近づいてくる。

 二mくらいの距離まで近づいたとき、鋭い連続攻撃を繰り出してきた。



(ほう、なかなか鋭い連撃じゃないか。ノーラやアンジェリークより一歳年下なのに腕は段違いだな。さすがに閣下のご息女と言ったところか)



 鋭いとは言ってもグリュンタールや公爵の攻撃に比べれば全く問題にならない。五回ほど攻撃させた上で剣を弾き飛ばすと、彼女は膝をついて嗚咽を漏らしている。



「シャルロッテ様。そのお年でそこまでの攻撃ができればかなりの腕前です。ですが、防御がなっていません」



「どうして。うっ、今まではこんなことなかったのに……」



「閣下のご息女と言うことで騎士たちも遠慮していたのでしょう。模擬戦はともかく魔物相手に戦うのは、もう少し強くなってからの方がいいと思いますよ」



 泣いているシャルロッテ姫を残し、公爵の下に向かう。



「なぜお許しになったのですか? まさか私にこれをさせるためではないでしょうね?」



「済まぬな。シャルロッテは増長しておったからな。この辺りで一度痛い目にあっておいた方がよいと思っての……」



「しかし、誤ってお怪我を負ったらどうするおつもりだったのですか! 若い女性なのですよ!」



「いや、そなたなら少々の怪我ならきれいに直してくれるからの。これほどの実力差があれば怪我をさせることもなかろうと……」



 公爵もシルヴィアの耳に気付いていたのか、しれっとそんなことを言ってくる。



「まさかと思いますが、最初に嗾けられたのも閣下ではありませんか?」



 どうやら図星だったようで公爵はバツが悪そうに頬を掻いている。



(またやられた! 閣下に対しては脇が甘くなるのかな?)



 シャルロッテ姫に「どなたかきちんとした師を見つけて下さい」と言った後、公爵には目で「次はありませんから」と訴え、その場を後にした。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/16 21:30
更新日:2013/01/16 21:30
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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