小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:1475
「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(57)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(273)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第六章「死闘」:第13話「掃討作戦。そして再び迷宮へ」

前の話 目次 次の話

第6章.第13話「掃討作戦。そして再び迷宮へ」



 氷の月、第二週火の曜(二月七日)の朝、雪が完全に止み、冬晴れの空の下、完全装備に身を包んだ掃討部隊七十五名と冒険者二十二名がギルド支部前に集合していた。



 冒険者たちはCランクの者が多く、ざっと見たところ、戦闘能力的には問題ない。

 グンドルフの賞金二百Gに釣られたのかもしれないが、今日、明日の日当も一Gと破格だ。



 五人パーティと六人パーティがそれぞれ二組ずつであるため、パーティごとに別働隊に配し、編成を終える。



「西部を中心に暴れていたグンドルフなる盗賊を狩り出す。賞金二百Gにクロイツタール騎士団からも、二百Gの賞金を上乗せする。守備隊の各員も騎士団からの賞金は受け取れる。いつも以上に気合を入れて励んで欲しい」



 俺がそういうと、ラザファムが大声で「出発!」と号令を掛け、森に向けて進軍を開始した。



 クロイツタールからの賞金については、俺個人の資産から出すものだ。もっと出すことも出来たが、王国から出されている賞金以上に出すことは王国の権威を傷つける可能性があるため、遠慮した。



(一騎士団が王国以上に賞金を出すと、王国がケチっていますよって言っているのと同じだからな)



 俺個人ならもっと出してもいいのかもしれないが、それでも二百Gでも充分大金だから、二日間の作戦にこれ以上出しても混乱するだけだろうと騎士団名で二百Gにした。



 午前中は町の北西側を、午後は南西側を重点的に捜索する。

 明日は町の東側を捜索し町の周囲全域をカバーするつもりだ。



(カバーと言っても町から離れるほど広くなるから、完全にはカバーし切れないし、岩陰や谷なんかがあれば見落としも充分ある)



 まず、本隊を中心にして、両翼に二隊ずつ別働隊を出し、街道から一kmくらいの幅を索敵範囲にする方針としていた。

 それ以上の森の奥ともなると、商人を襲う盗賊たちの隠れ家としては街道から遠すぎるため、範囲を限定した。

 捜索を開始するが、雪が積もる森の中を進むため、なかなかうまく進めない。午前中に何とか北西エリアを索敵したが、痕跡すら見付からなかった。



 午後は同じように南西エリアを索敵していく。

 途中、Cランク昇格試験を行った場所を通過する。



(懐かしいな)



(まだ、二ヶ月経っていないんだな。随分昔のような気がする……あの頃は楽しかったな……)



 そんなことを考えながら、森を進んでいく。

 何度か足跡らしきものを見つけるが、大きさ、形からオークだろうと思われた。



 結局、今日の収穫は無く、午後五時に町に戻り、解散する。



 屋敷に戻ると、アマリーも起き上がれるようになっており、他の重傷者も体調は良くないものの、通常生活に支障が無い程度まで回復していた。

 心配していたノーラの腕も機能障害はなく、普段どおりに動かせている。だが、時折顔を顰めているところをみると、腕を斬り落とされた記憶が蘇って来ているのかもしれない。



 翌日は町の東側、昔、気晴らしで行った池のある森の捜索を行う。

 東側は細い曲がりくねった道しかなく、その道を挟んでおおよそ北側、南側といった区分に分けて捜索を行う。

 池までの三マイル(四・八km)までを捜索範囲とし、道の周辺を中心に捜索を開始した。

 道には新雪が積もっており、足跡らしき物は見当たらない。

 森に入っても、獣の足跡の他には特に見付からず、掃討部隊全体に徒労感が拡がっていく。



(やっぱり見付からないか。しかし本当にどこにいるんだろう? 痕跡くらいは見付かると思ったんだが)



 俺はグンドルフを倒すことはできないと思っていたが、少なくとも痕跡くらいは見つかると思っていた。

 どの方向にいるかが判れば、俺が張る罠の場所を決めるのが楽になる。



(まあいい。いずれにしろ罠は町の西側、街道から少し入った位置にするつもりだから、今更どうこう言う必要も無いな)



 俺は全員に引き上げ命令を出し、シュバルツェンベルクの町に戻っていった。







 その頃、グンドルフは町の東側、大河が昔遠乗りで行った池の近くに潜んでいた。

 道から池を半周回ったところに半ば木々に埋もれた石造りの家がある。

 百年前、迷宮が見付かるまではこの辺りも人が住んでおり、水辺ということもあり、小さな村があった。

 さすがに百年近く経っているため、原形を留めている建物は少なく、石造りのしっかりしたものだけが、風雪に耐えていた。



 グンドルフの手下たちは、大規模な掃討作戦があるとの噂を聞き、二名の手下を町に残しただけで、三日前にはすべて隠れ家に引上げていた。



 二日前まで振っていた雪のおかげで足跡などの痕跡も消え、この隠れ家を見つけることが出来なかったようだ。



 手下の一人が池を挟んだ反対側にある道に大勢の兵士がいることを発見、グンドルフに報告した。



「お頭、池の向こうに兵隊がうじゃうじゃいますぜ。どうすりゃいいんで?」



「ばれないように見張っていろ! こっちに来るようならすぐに知らせろ」



 グンドルフは隠れ家の中で酒を飲みながら考えていた。



(くっくっ、奴も焦り始めたようだな。何日こんな捜索が出来ると思ってるんだ? 明日も続けられたら褒めてやるぜ。あと二日、そうしたら思いっきり苦しめてやる……)



 グンドルフの周りにいた手下たちは、彼から漏れ出てくる思念を感じたのか、遠巻きに見ているだけだった。



 元々少なかった彼らの食糧は、すでに底を尽き掛けており、三日以内には何らかの行動を起こす必要があった。

 だが、手下たちは、愉悦の表情を浮かべる頭目に近づき、その事実を告げる役を皆で押し付けあっていた。

 結局、一番新参の若い手下が無理やり押し付けられ、グンドルフに食糧事情を報告した。

 グンドルフは機嫌を悪くすることも無く、



「兵隊の動きを見て、明日の夜、町に潜入するぞ。いつもの通り、奪うもんを奪ったら、すぐに撤退する。追ってくる奴は待ち伏せしてぶっ殺してやれ!」



 グンドルフの手下には十名の弓使いがいる。また、エルフ、狼人など夜目の利くものも数人いる。

 グンドルフは、森に引き摺り込めば、騎士など何人いようと始末できると思っていた。

 実際、ドライセン西部でもプルゼニでもこの方法で守備隊の追撃をかわしている。



 手下たちも食糧と酒が手に入るのなら、下手に逆らう気はない。

 大河という騎士を殺しさえすれば、ドライセンのこんな田舎にいる必要は無いのだから、お頭ももっと割りのいい狩場に行ってくれるだろう、もう少しの我慢だと手下たちは考えていた。







 二日間の掃討作戦を終え、俺は冒険者たちがいる前で、成果が無いことを嘆く芝居をしている。



「くそっ! 何で痕跡すら見付からないんだ! ラザファム殿、明日も作戦を続けるぞ。ギルドにもう一日分の依頼を頼む」



 ラザファムは打合せ通り、



「副長代理、守備隊から今日一杯と連絡が来ております。我が騎士団と冒険者だけでは作戦の続行は無理かと」



「なぜだ! 奴らは近くにいるはずなんだ! もう少しで見つけられる。頼む、頼むよ……」



 俺がラザファムに懇願している様を、冒険者たちは遠巻きに見ている。



「守備隊からは、既に奴らはこのシュバルツェンベルクから離れていると思っているようです。元々二日間という話でしたから、明日からは町の中の警備を強化すると伺っております」



 ラザファムにそう言われ、落胆の表情を隠さずに、



「判った。俺一人でもやってやる! もういい!」



 自暴自棄になった姿を晒した後、一人屋敷に向かっていく。



(これでグンドルフの手下にも話が伝わるだろう)





 翌日の氷の月、第二週水の曜(二月九日)、朝一番に保存食を詰めた皮袋を持ち、迷宮に向かう。

 迷宮の入口でクロイツタール騎士団の騎士に囲まれ、揉めている芝居をする。



「副長代理、屋敷に戻ってください。一人では危険です!」



「構わん。迷宮で奴らに勝てる力を付けてやる。何日掛かろうが絶対に負けない力を!」



「隊長から連れて帰るように命令されているんです。お願いします」



「うるさい! 今は俺が指揮官だ! 命令だ、屋敷に戻って警備を強化するようフォーベック隊長に伝えろ!」



 騎士たちはしぶしぶ屋敷に引上げていく。



(意外と芝居が出来るな。特にイェンスは使える)





 一人になった俺は一月半振りに迷宮に入る。

 入口のギルド職員に声をかけ、四十五階に転送され、階段を降り、四十六階に向かう。

 灰色の石造りの通路に出るとゾワリとする感覚を思い出す。



(この雰囲気、死者に会える冥界への道って感じだな。もし、本当に冥界への道なら喜んで進みそうだ)



 エルナとミルコのことを思い出し、そんなことを考えていると、首筋がゾワッとした。

 すると、すぐに一体のゴーストが現れた。



 ゴーストはいつものように神経を痛めつけるような耳障りな奇声を上げながらゆっくり進んでくる。



(タイロンガのデビュー戦か。ダグマルのミスリルコーティングの剣でも一発だったからあまり意味は無いか)



 ゴーストの精神攻撃レンジに入り、あの「ギィーキュー」という嫌な音とともに魔力(MP)が削られていく。

 それを我慢し、タイロンガで斬り付けると予想通り一撃でゴーストは消えていく。

 MPの減少は二%程度。ダンクマールのヘルメットの効果が出ている。



(予想通りとは言え、この兜があれば、ゴースト戦はかなり楽だな。休憩をうまく挟めば今日中に五十階を突破できるかも)



 その後、四十六、四十七階突破で十七体のゴーストと戦闘。MPが三分の二くらいになったので、四十八階に降りる階段で一時間ほど休憩を取ることにした。



 階段室には一組のパーティがいたが、俺のことを知っているようで、なぜここにいるのかと小声で話しているのが聞こえる。

 俺は思いつめたような顔をし、話しかけられないよう端の方で横になっていた。



 休憩していたパーティも俺の重苦しいオーラを感じたのか、特に声をかけることなく、四十八階に進んで行った。



 魔力回復ポーションと一時間の休憩でかなりMPを回復したので、俺も四十八階に進んでいく。



 四十八階では三体のゴーストが襲ってくるが、精神攻撃によるダメージ量が増えるだけで、手間はほとんど変わっていない。

 一時間ほどで6回の戦闘をこなし、四十九階行きの階段にたどり着く。



(さすがにきつい。今日は四十九階で終わりだな。五十階は明日にするべきだ)



 階段室で二時間休憩し、午後二時過ぎに四十九階へ足を踏み入れる。



(四十九階は初だな。気合を入れ直して行かないと、グンドルフを殺す前に自分が殺されてしまう)



 四十九階では四体のゴーストが現れる。通路を横一線に白いもやの様のゴーストが並んでいると霧が迫ってくるようにも見える。



(数が増えようとやることは同じ。時間を掛けない、ミスをしない)



 俺は呪文のようにそう唱え、ゴーストの群れの中に飛び込んでいく。

 複撃で倒すが、一回の戦闘で十%近くMPを持って行かれる。エンカウント数が多いとこの階でもやばいかもしれない。



 結局四十九階では五回の戦闘、二十体のゴーストを倒した。

 MPが五割を切ったところで階段に辿り付いた。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/25 22:09
更新日:2013/01/25 22:09
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:1475
「ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS