作品ID:16
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ローバス戦記
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中
前書き・紹介
第一話 イッソス砦
前の話 | 目次 | 次の話 |
ローバス王国東部、イッソス砦。
王国最東部であるイッソス方面の哨戒、周囲一帯の治安維持の拠点である小さな砦である。もっとも、最近は夜盗や、山賊もあらかた狩り尽くし、平穏な日々であった。
「ヒマだな?」
イッソス砦守備隊長ホルス=レグナール百騎長は、ボーっと空を見上げて、昼寝をしていた。
「隊長、今日も平穏ですな」
ホルスの隣でそう言ったのは、ホルスの右腕、イッソス砦守備軍副隊長セルゲイ=グバルド十騎長だ。
二十四歳のホルスに対して、セルゲイは三十八歳である。年齢はホルスより上だが、ホルスにとっては最古参の部下である。まだ三十八歳の働き盛りの年齢だが、神経質な性格の為か、ホルスがまったく手をつけない部隊運用を担っているためか、色々な気苦労がある為か、実際の年齢よりかなり老け込んで見える。しかし、その腕と剣技は年齢と同じく逞しく、まったく“見た目の年齢”を感じさせない。
「まあ、平穏で何より、何より」
ホルスは起き上がってう?んと背伸びをした。
黒髪黒目、中肉中背。見た目は普通の青年だ。だが、灰色のローバス軍の塗装とは異質な、真紅に塗装した鎧を身に付けている。これは、人並み外れた実力を持ち、常に返り血を全身に浴びる彼に対して、とある知人が「真紅の鎧に染めたらどうか?」と、言われたのに従い、自分で真紅に染めたのである。
「そうですそうです。平穏がやっぱ一番ですよ?」
伸びやかな声でホルスを呼んだのは、まだ子供の面影を残した青年、イッソス砦守備軍突撃隊長クリス=ジュエールだ。まだ二十歳になったばかりの青年だが、才能があるのか、部隊でホルスに継ぐ実力者である。
ホルス、セルゲイ、クリスの三名がここに派遣される三ヶ月前、ここに居た兵は弛んでおり、若い指揮官であるホルスに反抗的であった。年齢だけでなく、ホルス達が平民出身である事も原因の一つだ。ここにいる兵は貴族出身で、三年辺境で守備任務を終えると、昇進して王都で正規軍に編入されるのだ。黙って三年過ごせば昇進を約束されるのだ。気が緩み、規律が乱れるのも当然であった。
ホルスが行った処置は、この砦にいる五百騎の徹底的な再訓練と、規律の見直しであった。反抗する者に対してホルスは実力で従わせた。規律違反で処刑した事も何度かあるぐらいだ。
ホルスの訓練は半端ではなかった。通常勤務が恋しくなるほど、地獄とも言える訓練内容だった。だが、その甲斐もあったのか、兵は自信と誇りを持ち、イッソス周辺で暴れていた山賊三千を一夜で殲滅してしまった。
辺境の守備軍としては、精強すぎる騎兵隊となったイッソス砦守備軍の強さは瞬く間に周囲にも伝わり、イッソスだけでなく、請われて他の地方にも遠征するほどになってしまった。
「敵でもくればいいのにな?」
ホルスが何気なく言った時だった。
「ホルス隊長に伝令! 緊急事態です!」
兵の一人が血相を変えてホルスに言った。
「何だ? 簡潔に報告しろ」
「はっ! シール軍、王弟デルドを総司令官に八万の軍勢で侵攻! イッソス平原に向かっています!」
『…………』
三人は沈黙すると、一斉に互いの顔を見た。
「セルゲイ! ビブロスの東部守備軍総司令へ伝令! 周辺の砦にも伝達! 援軍を請え!」
「はっ」
「クリス! お前は休んでいる全ての兵に緊急招集をかけろ!」
「了解です!」
セルゲイ、クリス、そして伝令兵はホルスに一礼すると、すぐに行動を開始した。
「……八万か、少々多すぎるな。王都の連中がすぐに動くかどうか……」
ホルスは遠く、空を見上げた。
伝令を飛ばして四日後、ローバス王国東部の拠点であるビブロスからの返答は、ホルスが予想していた通りの回答だった。
「……けっ」
砦の広間、篝火を炊いて真夜中に戦の準備をする兵士達を励ましていたホルスは、書状を受け取って一通り読むと、書状をクシャクシャにして丸め、それをセルゲイに向かって投げた。
「拝見します」
セルゲイは丸めた書状を元に戻して内容を読んだ。だが、あらかた予想できていた事なのか、溜息一つ吐いてまたクシャクシャにして丸めた。
「『王都からの援軍を待て』だと。伝令兵がどんなに急いでも、準備に三日、ビブロスまでの行軍に七日、そこからここに行軍するまでさらに六日かかる。それまで待てというのか!? 奴らは次々と掠奪を繰り返しながら行軍しているんだぞ! このままでは東部には何も残らない」
ホルスがそう言うと、セルゲイも同意見なのか、ゆっくりと頷いた。
「しかし、迎撃しようにも兵力が足りません」
「分かってる。集まっても五千騎が限界だ。民を非難させ、護衛する兵力がいるからな」
ホルスは冷静さを失っていない事をセルゲイが確認した時だった。待ちに待った援軍が到着した。
「援軍に参りました」
「よ! 来てやったぞ」
セト=ワルファス百騎長、ウェイン=ノーマン百騎長の二人である。
セトは二十六歳。無表情の巨漢だが、常に冷静沈着。戦斧の使い手だ。
ウェインは二十三歳。軽い性格の男だが、弓矢を得意とし、彼に撃ち落とせないものは無い。
「セト、ウェイン、二人共良く来てくれた」
ホルスは僚友を肩を叩いて迎えた。
「早速だがホルス、五千で撤退戦をするのか?」
セトが言うと、ホルスは少し考える仕草をした。
確かに、五千騎もあれば、民が避難するまでの時間稼ぎぐらいはできるだろう。
「まあ、そのつもりなんだが……。ちょっと待ってくれ。今、報告を待っているんだ」
「報告? 隊長、何ですかそれは? 」
セルゲイが尋ねると、ホルスは右手を軽く上げた。「待て」という意味なのだろう。
「隊長、民の代表という老人が尋ねてきています」
伝令兵が伝えると、ホルスはゆっくりと頷いた。伝令兵は老人の肩を支えながらホルスに一礼した。
「ホルス様、どうか、ワシらの畑を守ってくださらんか。家は建てればええ。じゃが、畑は今耕さないと種まきに間に合わなくなる」
「……すまないが、確約はできない。だが、善処しよう。俺達を信じてくれ」
「頼みます。ホルス様ならワシらは信頼できる」
老人は深く一礼し、伝令兵に支えられながらその場を後にした。
ホルスは何かを決意したように頷くと、振り向いてセルゲイ、セト、ウェインの三人を見つめた。
「……セルゲイ、五千騎全軍に出撃準備をしてくれ。伝令の内容次第では……討って出る」
「討って出る!?」
セルゲイ、ウェインの二人は驚愕の声を上げた。
「……敵は平原で迎え撃つ。ならば、王都から援軍来るまで掠奪を続けるだろう。兵を分散している今が機会か……」
セトは納得したようにホルスに言った。
「敵がどれだけ分散しているか、デルドの居場所が分かれば……」
「しかし、無謀としか言いようがありません」
セルゲイが言うと、ホルスはセルゲイを睨み付けた。
「……分かっている」
「五千騎ことごとく戦死する可能性が大です」
「……それも分かっている」
「ならば、お供しましょう」
セルゲイはホルスが覚悟を決めた事を悟ったのだろう。こうなればホルスの意思に従うまでだ。
「ホルス隊長! 」
クリスは馬から降りると、すぐにホルスに一礼した。
「敵の本隊は二万! デルドはイッソス平原での中央で陣を敷いています!」
「……決まったな」
セトは戦斧を担ぎ、馬へと向かった。
「しゃーねー。やるしかねーか!」
ウェインは奮起するように自分で顔を平手打ちした。
「セルゲイ、全軍に通達。砦の外へ整列しろ」
「了解です、隊長!」
セルゲイは一礼し、行動を起こした。
「……ニ万の騎馬軍団対五千騎の馬鹿か。いい戦になりそうだ」
ホルスは笑みを浮かべ、舌で下唇を舐めると、砦の外へ向かった……。
イッソス砦の正門前、五千騎のローバス騎士は騒然の整列していた。
ホルスはちょうど真ん中にある大きな岩の上に立ち、五千の騎士を睨み付けた。無数の篝火が赤く戦士達を灯していた。
「ローバスの勇士に告ぐ。これより、シール軍本隊二万騎を殲滅し、王弟デルドを討ち取る為に出撃する」
一時騒然となったが、ホルスが剣を岩に突き刺した音で一瞬にして静まり返った。
「ここは俺達が命懸けで守る土地だ。ここは俺達は見守る土地だ。ここは俺達の誇りとさまざまな思い出が詰ったの土地だ。今、東北より、シール王国から八万の騎兵がここに来て、掠奪を続けている。許せるか? 笑ってそれを見届ける事ができるか? 俺は短気だからな、……それができん!」
ホルスは剣を引き抜いて、夜空の月を突き刺す勢いで高く掲げた。
「今! 敵はイッソス平原で二万を残している! そこには総大将にして、王弟! 猛将と呼び声高いデルドがいる! 今よりこの五千騎で強襲! デルドを討つ! 逃げたい奴は逃げろ、俺は強制しない。だが、ローバスの騎士である誇りを持つ者は俺に続け!」
ホルスは岩を飛び降りて馬に跨ると、先頭に立ってイッソス平原へ向かった。
「ローバスの騎士の誇りを見せる時だ!」
騎士の一人が叫ぶと、それは歓喜となった。
「ホルス百騎長に続け!」
ローバス軍五千騎はホルスを先頭にイッソス平原へ疾走を開始した。ローバス史に残るイッソス平原の戦いが始まろうとしていた。
王国最東部であるイッソス方面の哨戒、周囲一帯の治安維持の拠点である小さな砦である。もっとも、最近は夜盗や、山賊もあらかた狩り尽くし、平穏な日々であった。
「ヒマだな?」
イッソス砦守備隊長ホルス=レグナール百騎長は、ボーっと空を見上げて、昼寝をしていた。
「隊長、今日も平穏ですな」
ホルスの隣でそう言ったのは、ホルスの右腕、イッソス砦守備軍副隊長セルゲイ=グバルド十騎長だ。
二十四歳のホルスに対して、セルゲイは三十八歳である。年齢はホルスより上だが、ホルスにとっては最古参の部下である。まだ三十八歳の働き盛りの年齢だが、神経質な性格の為か、ホルスがまったく手をつけない部隊運用を担っているためか、色々な気苦労がある為か、実際の年齢よりかなり老け込んで見える。しかし、その腕と剣技は年齢と同じく逞しく、まったく“見た目の年齢”を感じさせない。
「まあ、平穏で何より、何より」
ホルスは起き上がってう?んと背伸びをした。
黒髪黒目、中肉中背。見た目は普通の青年だ。だが、灰色のローバス軍の塗装とは異質な、真紅に塗装した鎧を身に付けている。これは、人並み外れた実力を持ち、常に返り血を全身に浴びる彼に対して、とある知人が「真紅の鎧に染めたらどうか?」と、言われたのに従い、自分で真紅に染めたのである。
「そうですそうです。平穏がやっぱ一番ですよ?」
伸びやかな声でホルスを呼んだのは、まだ子供の面影を残した青年、イッソス砦守備軍突撃隊長クリス=ジュエールだ。まだ二十歳になったばかりの青年だが、才能があるのか、部隊でホルスに継ぐ実力者である。
ホルス、セルゲイ、クリスの三名がここに派遣される三ヶ月前、ここに居た兵は弛んでおり、若い指揮官であるホルスに反抗的であった。年齢だけでなく、ホルス達が平民出身である事も原因の一つだ。ここにいる兵は貴族出身で、三年辺境で守備任務を終えると、昇進して王都で正規軍に編入されるのだ。黙って三年過ごせば昇進を約束されるのだ。気が緩み、規律が乱れるのも当然であった。
ホルスが行った処置は、この砦にいる五百騎の徹底的な再訓練と、規律の見直しであった。反抗する者に対してホルスは実力で従わせた。規律違反で処刑した事も何度かあるぐらいだ。
ホルスの訓練は半端ではなかった。通常勤務が恋しくなるほど、地獄とも言える訓練内容だった。だが、その甲斐もあったのか、兵は自信と誇りを持ち、イッソス周辺で暴れていた山賊三千を一夜で殲滅してしまった。
辺境の守備軍としては、精強すぎる騎兵隊となったイッソス砦守備軍の強さは瞬く間に周囲にも伝わり、イッソスだけでなく、請われて他の地方にも遠征するほどになってしまった。
「敵でもくればいいのにな?」
ホルスが何気なく言った時だった。
「ホルス隊長に伝令! 緊急事態です!」
兵の一人が血相を変えてホルスに言った。
「何だ? 簡潔に報告しろ」
「はっ! シール軍、王弟デルドを総司令官に八万の軍勢で侵攻! イッソス平原に向かっています!」
『…………』
三人は沈黙すると、一斉に互いの顔を見た。
「セルゲイ! ビブロスの東部守備軍総司令へ伝令! 周辺の砦にも伝達! 援軍を請え!」
「はっ」
「クリス! お前は休んでいる全ての兵に緊急招集をかけろ!」
「了解です!」
セルゲイ、クリス、そして伝令兵はホルスに一礼すると、すぐに行動を開始した。
「……八万か、少々多すぎるな。王都の連中がすぐに動くかどうか……」
ホルスは遠く、空を見上げた。
伝令を飛ばして四日後、ローバス王国東部の拠点であるビブロスからの返答は、ホルスが予想していた通りの回答だった。
「……けっ」
砦の広間、篝火を炊いて真夜中に戦の準備をする兵士達を励ましていたホルスは、書状を受け取って一通り読むと、書状をクシャクシャにして丸め、それをセルゲイに向かって投げた。
「拝見します」
セルゲイは丸めた書状を元に戻して内容を読んだ。だが、あらかた予想できていた事なのか、溜息一つ吐いてまたクシャクシャにして丸めた。
「『王都からの援軍を待て』だと。伝令兵がどんなに急いでも、準備に三日、ビブロスまでの行軍に七日、そこからここに行軍するまでさらに六日かかる。それまで待てというのか!? 奴らは次々と掠奪を繰り返しながら行軍しているんだぞ! このままでは東部には何も残らない」
ホルスがそう言うと、セルゲイも同意見なのか、ゆっくりと頷いた。
「しかし、迎撃しようにも兵力が足りません」
「分かってる。集まっても五千騎が限界だ。民を非難させ、護衛する兵力がいるからな」
ホルスは冷静さを失っていない事をセルゲイが確認した時だった。待ちに待った援軍が到着した。
「援軍に参りました」
「よ! 来てやったぞ」
セト=ワルファス百騎長、ウェイン=ノーマン百騎長の二人である。
セトは二十六歳。無表情の巨漢だが、常に冷静沈着。戦斧の使い手だ。
ウェインは二十三歳。軽い性格の男だが、弓矢を得意とし、彼に撃ち落とせないものは無い。
「セト、ウェイン、二人共良く来てくれた」
ホルスは僚友を肩を叩いて迎えた。
「早速だがホルス、五千で撤退戦をするのか?」
セトが言うと、ホルスは少し考える仕草をした。
確かに、五千騎もあれば、民が避難するまでの時間稼ぎぐらいはできるだろう。
「まあ、そのつもりなんだが……。ちょっと待ってくれ。今、報告を待っているんだ」
「報告? 隊長、何ですかそれは? 」
セルゲイが尋ねると、ホルスは右手を軽く上げた。「待て」という意味なのだろう。
「隊長、民の代表という老人が尋ねてきています」
伝令兵が伝えると、ホルスはゆっくりと頷いた。伝令兵は老人の肩を支えながらホルスに一礼した。
「ホルス様、どうか、ワシらの畑を守ってくださらんか。家は建てればええ。じゃが、畑は今耕さないと種まきに間に合わなくなる」
「……すまないが、確約はできない。だが、善処しよう。俺達を信じてくれ」
「頼みます。ホルス様ならワシらは信頼できる」
老人は深く一礼し、伝令兵に支えられながらその場を後にした。
ホルスは何かを決意したように頷くと、振り向いてセルゲイ、セト、ウェインの三人を見つめた。
「……セルゲイ、五千騎全軍に出撃準備をしてくれ。伝令の内容次第では……討って出る」
「討って出る!?」
セルゲイ、ウェインの二人は驚愕の声を上げた。
「……敵は平原で迎え撃つ。ならば、王都から援軍来るまで掠奪を続けるだろう。兵を分散している今が機会か……」
セトは納得したようにホルスに言った。
「敵がどれだけ分散しているか、デルドの居場所が分かれば……」
「しかし、無謀としか言いようがありません」
セルゲイが言うと、ホルスはセルゲイを睨み付けた。
「……分かっている」
「五千騎ことごとく戦死する可能性が大です」
「……それも分かっている」
「ならば、お供しましょう」
セルゲイはホルスが覚悟を決めた事を悟ったのだろう。こうなればホルスの意思に従うまでだ。
「ホルス隊長! 」
クリスは馬から降りると、すぐにホルスに一礼した。
「敵の本隊は二万! デルドはイッソス平原での中央で陣を敷いています!」
「……決まったな」
セトは戦斧を担ぎ、馬へと向かった。
「しゃーねー。やるしかねーか!」
ウェインは奮起するように自分で顔を平手打ちした。
「セルゲイ、全軍に通達。砦の外へ整列しろ」
「了解です、隊長!」
セルゲイは一礼し、行動を起こした。
「……ニ万の騎馬軍団対五千騎の馬鹿か。いい戦になりそうだ」
ホルスは笑みを浮かべ、舌で下唇を舐めると、砦の外へ向かった……。
イッソス砦の正門前、五千騎のローバス騎士は騒然の整列していた。
ホルスはちょうど真ん中にある大きな岩の上に立ち、五千の騎士を睨み付けた。無数の篝火が赤く戦士達を灯していた。
「ローバスの勇士に告ぐ。これより、シール軍本隊二万騎を殲滅し、王弟デルドを討ち取る為に出撃する」
一時騒然となったが、ホルスが剣を岩に突き刺した音で一瞬にして静まり返った。
「ここは俺達が命懸けで守る土地だ。ここは俺達は見守る土地だ。ここは俺達の誇りとさまざまな思い出が詰ったの土地だ。今、東北より、シール王国から八万の騎兵がここに来て、掠奪を続けている。許せるか? 笑ってそれを見届ける事ができるか? 俺は短気だからな、……それができん!」
ホルスは剣を引き抜いて、夜空の月を突き刺す勢いで高く掲げた。
「今! 敵はイッソス平原で二万を残している! そこには総大将にして、王弟! 猛将と呼び声高いデルドがいる! 今よりこの五千騎で強襲! デルドを討つ! 逃げたい奴は逃げろ、俺は強制しない。だが、ローバスの騎士である誇りを持つ者は俺に続け!」
ホルスは岩を飛び降りて馬に跨ると、先頭に立ってイッソス平原へ向かった。
「ローバスの騎士の誇りを見せる時だ!」
騎士の一人が叫ぶと、それは歓喜となった。
「ホルス百騎長に続け!」
ローバス軍五千騎はホルスを先頭にイッソス平原へ疾走を開始した。ローバス史に残るイッソス平原の戦いが始まろうとしていた。
後書き
作者:そえ |
投稿日:2009/12/06 20:43 更新日:2009/12/12 20:52 『ローバス戦記』の著作権は、すべて作者 そえ様に属します。 |
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