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作品ID:1611
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人魚姫のお伽話

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


にんぎょひめ  ――――番外「泡沫に融けた歌」

前の話 目次 次の話

届かない Love song  歌っている   
届かない Love song  歌っていた 
 
届かぬ声で 歌う 人魚姫   
船の上から 身を投げて  海に還る その刹那  
光が包み 優しく響いたのは  誰の声?

生まれ変わっておいで 人魚姫  
キミの届かなかった恋を 僕は知っている  

泣いてるキミの心を  僕が受け止める   
空を切った その歌を  拾ってあげるよ

だから 生まれ変わっておいで 人魚姫   
今度こそ 幸せになるために…………

……誰の声?  わたしに 気付いてくれた声  
……誰の歌?  わたしに 気付いてくれる歌

もう一度 もう一度  生まれて来るから  
貴い未来を 胸に抱いて  今は眠らせて  

もう一度 もう一度  生まれて来るわ  
優しい声の 王子様  約束守ってね

目覚めのときは 遠くないと  信じているまま  
悠に続く幸せな夢を抱いて  眠らせて  

そのときがきたなら…………貴らかな悠の声音でそっと目覚めさせてね……







 切なさから始まったメロディーラインは、段々と曲調を変えて。穏やかで、温かさを感じさせるものになっていく……。高らかに響き渡る、澄んだソプラノは、透明で優しい。


 ピアノの音が終わりを告げ、柔らかな歌声の余韻の中。舞台上で弾き語りを披露した演奏者が立ち上がり、深く一礼する。会場内は、ドッと拍手と歓声の渦に包まれた。舞台の上、グランドピアノの隣で、はにかむように微笑む演奏者。
 淡いオレンジのロングスカート丈のドレスは、所々に白のフリルとレースが施され、ウエストで結ばれた大人びたワインレッドのリボンとの兼ね合いで、上品に、けれど可愛らしい作りになっている。

 両サイドだけ結われた長い黒髪は、ウエストのリボンと合わせた色のリボンで結ばれ飾られていて。演奏者の魅力をきちんと引き立てている。
 客席から、小さな子ども達が、舞台の上の演奏者に、揃いの花を差し出した。各々の手に持たれた綺麗にラッピングされた可愛らしいブーケ。演奏者は驚いたように。でも直ぐに笑顔になって。子ども達から花を受け取る。

 手渡された両手いっぱいの小さな花束たちと、未だに鳴り止まぬ大きな拍手に。もう一度深く一礼して。会場内に向けられた笑顔が。確かに強張った。



 ――――ま、気持ちは解るか。  
 

 会場に入るときに渡された、演奏会の案内リーフレット。演奏者と曲目が紹介されている頁には、それぞれに与えられた曲の課題と演奏者が手掛けた歌詞、それに寄せられた想いなどが綴られている。

 時間の関係でぎりぎりに飛び込んだので、演奏を聴きながら目を落とすことになったのだけれど……。うん。貴重な時間になったと言えそうだ。
 

 ――――で、そろそろ引き攣り笑いをなんとかしないと、子ども達が不思議そうな表情になってるよ?




「……っ!?  なんで、ここにいらっしゃるんですか!?  教室の身内だけの演奏会ですよっ!!? というより、お仕事どうされたんですっ! お仕事っ~!!」

 殆ど泣きべそで噛みつかれても……。


「あ、ご両親の代わり?  妹さんに誘われて……。『家族は都合つかないので、入場券もったいないし差し上げます』って。
 仕事はねぇ、丁度、都合つけられちゃう勤務時間だったんだよね。順番ぎりぎりだったけど……」

 ひょっとしなくても、こんな彼女は珍しいんだろうな。演奏会が終わり、人影まばらな会場の出口付近。子ども達が興味津々で見守っている。

 衆目集めてるよって言ってあげた方がいいかな? はてさて……?






 会場内に姿を見つけたとき。顔が強張るのと笑顔が引き攣ったことには気付いたけれど……。誰がどうして責められる? いるはずのない人影がいきなりいて、にこにこ笑われてたら仕方ないでしょうっ!?

 問い詰めたら、脱力しそうな答えが返ってくるし……。それこそ子どもじゃあるまいし、両親や家族が必ず必要なわけなんかなくって……。

 ――――あ、あの子!!  面白がったでしょうっ~!!



 両親宛てに郵送で送った今日のリーフレットと入場券には、演奏曲目とその構想に寄せたコメント、それから演奏者それぞれが手掛けた歌詞。その全てが印刷されていたはず。

 それをあの子が見たとしたなら。使われた文字に目敏く気付いたのなら……。今日、ここに彼を呼び寄せるなんて、完全に確信犯でしかも愉快犯でしょうっ!

 それよりなにより、目の前で愉しそうに笑ってる人のクスクス笑いが……もう既に気付いてしまってるって物語ってる……。あぁ、なんだか目の前が真っ暗になって来たような……。

 死んだふりもしくは気絶したい。現実逃避の思考に陥りたくたって、目の前のこの人の仕事を考えれば、余計にドツボに嵌ることになることなんて、容易に想像出来てしまうからイヤになる。




「せんせ?」

 掛けられた幼い子どもの声に。振り向いたのは、奇しくも二人同時だった。


「はぁい?」
「ん? どうした?」

 二人で返された声に、子どもはキョトンとしている。あ、自分の職場じゃなかったっけ。ということは、これは彼女に対する呼びかけだろう。


「……なんでお兄ちゃんまでお返事するの?」

 子どもの言葉に。彼女は子ども向けの微笑みを作る。


「ピアノの先生じゃないんだけど、お兄ちゃんも、『せんせ』って呼ばれるお仕事してらっしゃるから間違えちゃったの。お花、ありがとうね。どうしたの?」

 彼女の言葉に子どもは顔いっぱいに笑顔を浮かべた。


「うん。みんなで決めてたんだよ。大きいお花にしたら一人しか渡せないから、小さいお花をみんなで渡そうって。せんせ、このお兄ちゃんだれ? せんせ、いじめられてるの?」
「……えっ?」

 子どもの言葉に、彼女は詰まってしまった。あ、そう見えてたのか。それは流石に心外かなぁ……。何と答えたものか迷っているらしい彼女の代わりに。


「う~ん、お兄ちゃん、せんせをいじめたりしてるわけじゃないよ? そう見えちゃった? お兄ちゃん、怖そう?」
「ううん。怖くなさそう」

 その即答はちょっと思うところあるけど……。


「いじめてないの? じゃぁ、なんでせんせ泣きそうな顔してるの?」
「……え~っとね、そう言えば、ボクのお名前は?」

 どう説明しようか……? まぁ、これ、一つしか答えようないような気もするし……。


「心(こころ)。心だよ、ボク」
「心君って言うんだ? そっか。あのね、心君のせんせは、ちょっと恥ずかしいな~ってどうしたらいいかわかんなくなっちゃったんだと思う」


「……って!! うちの教室の子どもに変なこと吹き込まないで下さいっ!!」

 心との会話を聞いていた彼女が、焦ったように割り込む。この分じゃ、そんな様子が珍しがられてるって気付いてないな~。心が不思議そうに首を傾げた。


「……結局、お兄ちゃんだれなの?」

 その疑問には。にっこり笑って答えておく。


「心君のせんせを目覚めさせる予定の、『王子様』……かな?」
「とんでもないこと吹き込まないで下さいっ~!!」





 ――――『課題曲  にんぎょひめ 』  曲の構想に寄せて。

 私はこの「人魚姫」というお話を、ずっと哀しい想いで読んできました。陸上の王子さまに憧れ、恋した海のお姫さま。王子さまに見つけられることだけを、王子さまの傍に行きたいと、その想いだけで「人間の足」を手に入れた人魚姫。
 けれど、結末は哀しい。王子さまは声を失くしてしまった人魚姫の想いに気付かず、他のお姫さまと結ばれます。子どもの頃から、とてもとても哀しかった。

 ですから、この課題で曲を作り始めたとき、私の曲は哀しいだけの音色をしたものだったと思います。けれど、人魚姫は哀しいと訴えた私に、とある人が新しい見方を教えてくれました。

 「人魚姫の訳には諸説あるけれども、そのうちの一つを知っている?」
 
 それは、幸せな『未来の人魚姫』を教えてくれる言葉でした。人魚姫は海の泡になるのではなく、空気となって哀しい想いを味わい続けるのではなく。生まれ変わって『人間』に。『人間』として、今度こそ、幸せ掴む為に生まれ変わって来る未来を与えられているのだ、と。

 哀しいだけだった私の「人魚姫」に、『優しさ』を。そして、『未来』を与えてくれた言葉に。そして、その人への心をこめて。私なりの「人魚姫」の歌を皆さんに贈ります。皆さんが出逢う「人魚姫」にも、優しい未来が訪れますように……。

『曲名  : にんぎょひめ ――泡沫に融けた恋(ウタカタニトケタウタ)』

後書き


作者:未彩
投稿日:2015/12/22 19:32
更新日:2015/12/22 19:32
『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。

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