作品ID:1706
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「贈り物」
前の話 | 目次 | 次の話 |
「……この度は、長谷川様の大切なお嬢様である優卵様と、息子の貴悠との縁談を御承諾くださいまして、ありがとうございます」
重々しい雰囲気の中始まった挨拶と儀式は粛々と進行してゆく。貴悠は母子家庭で、仲人不在の結納なので、進行は貴悠の母親である。
「幾久しゅうお納めください」
「幾久しゅうお受け致します」
「今後とも幾久しくお願い申し上げます」
「こちらこそ幾久しくよろしくお願い申し上げます」
つつがなく進行した儀式に、ホッと一安心したのは、誰だったのだろう。一通りの口上と儀式、全てが終わって、和やかな雰囲気が場を支配した……。
「…………ああ、なんか肩凝ったし緊張した……」
「あ、それ、貴悠さんが言う? こっちなんて、慣れない振り袖なのに!!」
貴悠の言葉に、優卵は膨れっ面を隠さない。
「や、確かに僕、スーツは慣れてるけど、流石に結納は初めてだし…………」
「……二回も三回も経験有るって言う方がおかしいでしょう」
尤もな言葉に、貴悠は苦笑い。
「まぁ、言われればそうだけど。ん、優卵の振り袖見れたし、良しとしようかな」
「…………」
両家の顔合わせの食事会も終えて、今は貴悠のマンションで式の準備を進めているところ。優卵は既に振り袖から着替えているし、貴悠の方も上着とネクタイは脱いでいる
「で、招待状だっけ?」
「そう。子ども達への招待状も兼ねてるから、童話モチーフの招待状なんか喜ばれるんじゃないかって、提案してもらったの」
優卵が広げた招待状のカタログに、貴悠はざっと目を通す。
「勿論、正式な招待状として使えるものだからって仰ってたけど、貴悠さん側の都合が悪ければ、考え直すけど……」
「んんー? 特に異存は無いよ? 寧ろ、僕の方で式に呼ぶって言ったら、僕の職業知ってる人間ばかりだし、逆に納得するんじゃ?」
貴悠の言葉に、優卵は何故か苦笑した。
「そういう問題でもないと思うけど…………。貴悠さんが構わないって言うなら、このカタログからデザイン探しちゃうけど、いい?」
「『お伽話な招待状デザインカタログ』ね、いいんじゃないかな。子ども達、この方が喜ぶだろうし」
優卵はますます苦笑している。
「ねぇ、それ、職業病出してる? 貴悠さんの方が、既に子ども達目線での結婚式の考え? それもちょっと複雑……」
「へ? あ、そういうつもりじゃなかったんだけど…………。勿論、僕達の式だし、主役はあくまで優卵だって思ってるつもりだけど?」
貴悠の言葉に何故か優卵は笑い出した。笑いながら、貴悠の台詞に異論を唱えて反撃してくる。
「え、主役、私なの? 私達じゃなくて? 忙しいんだし、『式のことは任せて』って言えば、『僕達二人の式でしょう?』って返したの、誰?」
「……なーんか、今日の優卵、やけに噛み付いてこない?」
普段らしくない優卵の言動に、貴悠が首を傾げると、優卵が舌を出した。
「当然じゃ有りません? 結納で緊張してたの、私だって同じなのに。しかも、結納の経験は流石にないとか言い出すんだもの。経験されてちゃ堪んない!!」
「ああ、そこ? ごめん、確かに経験有る方が問題だった」
素直に貴悠が謝ると、優卵の方は少しだけフイッと顔を背けた。
「……いいですけど。お見合いの経験なら有りますもんね?」
「…………うわ、思いっきり、根に持たれてる? ……あれは、ごめんって…………」
優卵の機嫌の悪さのほんとのところを知ってしまえば、貴悠としては失言した心当たりがある以上、苦笑いで謝るしかない……。
「いい、こんな日にそんなで揉めたくない。それより、招待状のデザイン、これが素敵だと思うんだけど、貴悠さんの意見は?」
優卵が指差すデザインを見て、貴悠は少しキョトンとした。
「…………隣のやつじゃなくて?」
優卵が指差しているのは、シンデレラのモチーフ。王家からの舞踏会への招待状を模したデザインのものだけれど……。
貴悠が目を向けたのは、その隣。人魚姫モチーフのデザイン。貴悠の言葉の意図に気付いたらしい。優卵が困ったような表情を見せた。
「……確かに可愛いデザインだけど、結婚式に『人魚姫』は無いでしょう。第一、私はとっくに人魚姫じゃなくなったんだと、そう思ってたけど?」
「…………ん、そっか」
――――生まれ変わった人魚姫が贈るのは、幸せを運ぶ舞踏会への招待状。
重々しい雰囲気の中始まった挨拶と儀式は粛々と進行してゆく。貴悠は母子家庭で、仲人不在の結納なので、進行は貴悠の母親である。
「幾久しゅうお納めください」
「幾久しゅうお受け致します」
「今後とも幾久しくお願い申し上げます」
「こちらこそ幾久しくよろしくお願い申し上げます」
つつがなく進行した儀式に、ホッと一安心したのは、誰だったのだろう。一通りの口上と儀式、全てが終わって、和やかな雰囲気が場を支配した……。
「…………ああ、なんか肩凝ったし緊張した……」
「あ、それ、貴悠さんが言う? こっちなんて、慣れない振り袖なのに!!」
貴悠の言葉に、優卵は膨れっ面を隠さない。
「や、確かに僕、スーツは慣れてるけど、流石に結納は初めてだし…………」
「……二回も三回も経験有るって言う方がおかしいでしょう」
尤もな言葉に、貴悠は苦笑い。
「まぁ、言われればそうだけど。ん、優卵の振り袖見れたし、良しとしようかな」
「…………」
両家の顔合わせの食事会も終えて、今は貴悠のマンションで式の準備を進めているところ。優卵は既に振り袖から着替えているし、貴悠の方も上着とネクタイは脱いでいる
「で、招待状だっけ?」
「そう。子ども達への招待状も兼ねてるから、童話モチーフの招待状なんか喜ばれるんじゃないかって、提案してもらったの」
優卵が広げた招待状のカタログに、貴悠はざっと目を通す。
「勿論、正式な招待状として使えるものだからって仰ってたけど、貴悠さん側の都合が悪ければ、考え直すけど……」
「んんー? 特に異存は無いよ? 寧ろ、僕の方で式に呼ぶって言ったら、僕の職業知ってる人間ばかりだし、逆に納得するんじゃ?」
貴悠の言葉に、優卵は何故か苦笑した。
「そういう問題でもないと思うけど…………。貴悠さんが構わないって言うなら、このカタログからデザイン探しちゃうけど、いい?」
「『お伽話な招待状デザインカタログ』ね、いいんじゃないかな。子ども達、この方が喜ぶだろうし」
優卵はますます苦笑している。
「ねぇ、それ、職業病出してる? 貴悠さんの方が、既に子ども達目線での結婚式の考え? それもちょっと複雑……」
「へ? あ、そういうつもりじゃなかったんだけど…………。勿論、僕達の式だし、主役はあくまで優卵だって思ってるつもりだけど?」
貴悠の言葉に何故か優卵は笑い出した。笑いながら、貴悠の台詞に異論を唱えて反撃してくる。
「え、主役、私なの? 私達じゃなくて? 忙しいんだし、『式のことは任せて』って言えば、『僕達二人の式でしょう?』って返したの、誰?」
「……なーんか、今日の優卵、やけに噛み付いてこない?」
普段らしくない優卵の言動に、貴悠が首を傾げると、優卵が舌を出した。
「当然じゃ有りません? 結納で緊張してたの、私だって同じなのに。しかも、結納の経験は流石にないとか言い出すんだもの。経験されてちゃ堪んない!!」
「ああ、そこ? ごめん、確かに経験有る方が問題だった」
素直に貴悠が謝ると、優卵の方は少しだけフイッと顔を背けた。
「……いいですけど。お見合いの経験なら有りますもんね?」
「…………うわ、思いっきり、根に持たれてる? ……あれは、ごめんって…………」
優卵の機嫌の悪さのほんとのところを知ってしまえば、貴悠としては失言した心当たりがある以上、苦笑いで謝るしかない……。
「いい、こんな日にそんなで揉めたくない。それより、招待状のデザイン、これが素敵だと思うんだけど、貴悠さんの意見は?」
優卵が指差すデザインを見て、貴悠は少しキョトンとした。
「…………隣のやつじゃなくて?」
優卵が指差しているのは、シンデレラのモチーフ。王家からの舞踏会への招待状を模したデザインのものだけれど……。
貴悠が目を向けたのは、その隣。人魚姫モチーフのデザイン。貴悠の言葉の意図に気付いたらしい。優卵が困ったような表情を見せた。
「……確かに可愛いデザインだけど、結婚式に『人魚姫』は無いでしょう。第一、私はとっくに人魚姫じゃなくなったんだと、そう思ってたけど?」
「…………ん、そっか」
――――生まれ変わった人魚姫が贈るのは、幸せを運ぶ舞踏会への招待状。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 13:05 更新日:2016/01/19 13:05 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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