作品ID:1709
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「悪ふざけが止まらない」
前の話 | 目次 | 次の話 |
――――お伽話には様々な王子様と姫君方がいらっしゃいまして、全ての姫君がなんら障害無く王子様と結ばれるわけには参りません。
かの有名な「いばら姫」は、姫の王子をお迎えするまでに百年の眠りを要としましたし、こちらも同じく有名な「白雪姫」……。
この姫君は城を追われ、命を狙われ、息を引き取らんといったとき、姫の王子様がお出でになりました。いずれの姫君曰く、困難を乗り越えて結ばれられた。
なれど、どれほど困難に見舞われど、決して結ばれる定めではない王子を愛した姫君がいらっしゃいます。皆さま、ご周知、「人魚姫」……。
ああ、かの姫君の嘆きはいかばかりかと、胸が張り裂けそうになります。愛した王子に声は届かず、代償に失ったものはあまりに大きい。
ですが、皆さま、ご安心あれ。かの姫君を愛する王子は、姫君が最初に恋に落ちられた王子ではなかったと、ただ、それだけだったのです。
王子が催されました花嫁披露の舞踏会。儚く佇む、かの姫君に心奪われた王子がお一人、嘆きの中に海に飛び込む人魚姫、王子は姫の定めを知って……。
届かぬ姫君の声に代わって、自分の歌声で包まれた。私が貴女を待っている、と……。待っているから、どうぞ生まれ変わってお出でください。
貴女の砕けた恋を知っています。ですが、私は貴女に心を奪われました。どうぞ、私の歌を、声を聴いて、私の元へとお出でください。
貴女が私のシンデレラ。貴女が私のプリンセス。ガラスの靴を用意致しましょう。貴女が二度と足を傷めないための特別な魔法の靴を。
舞踏会を開きましょう。貴女が主役、貴女を祝う舞踏会を。民達みなに送りましょう。心優しい私の姫君をお披露目するための舞踏会。招待状を全ての民に。
かの哀しい定めの「人魚姫」は、優しい歌に包まれて、かの姫君の真実の王子様と出逢います。これがほんとの姫君の定め。
春の名を持つ王子様は、哀しい定めに命を投げ出した、ご自分が心奪われた優しい心の姫君に、二度とは同じ定めを背負わせませんでしょう。
今日は優しい心の姫君と春の名前持つ王子様の結婚式。お二方、幸せに笑っています。子ども達よ、皆々様よ、どうか二人に祝福を…………。
「て、こんなでどうよ?」
「……おっまえは…………。いきなり現われやがったと思ったら、人の職場で何してくれてんだ!?」
「…………あの招待状、送ってきた時点で諦めろ?……」
「……流石に無理です。…………なんで、わざざわざご丁寧に、物語り仕立てに製本してあるものがあるんですか?」
「ツテのツテ? やー、折角の親友の晴れ舞台!! パンフレットにして配ってやろうと……」
「頼んでないことすんなっ!! …………しかも病棟に寄贈とか、紙芝居にして読み上げてみるとか、ふざけてんのかっ!?」
「……や、せんせ、諦めろ? もう、子ども達、夢中になってるから」
「ご友人仲がよろしいのはもう解りましたから、お願いですから遊ばないで…………」
小児病棟、遊戯室の傍、式の準備で訪れていた花嫁と、仕事の終わりに着替えて廊下を歩いていた花婿が、遊戯室から聞えてきた、ここにいるはずのない声と覇気のない声二つに、打って変わって愉しそうではしゃいだ子ども達の声。
三つの有様の声に疑問を覚えて、遊戯室を二人して覗けば、今日は非番であるはずの花婿の友人と、この病院勤務ではない花婿の友人が、トンデモ行動を起してくれてたから、二人してギョッとした。
芝居がかった口調で紙芝居をめくるのは、この病院勤務ではない花婿の友人。子ども達の手には、何故か、色鮮やかにプリントされた簡素な絵本。
紙芝居を演じる友人の隣で非番の友人が、きちんと製本されたハードカバーの絵本を紙芝居の進行に合わせて、次へとページをめくる。
その光景と物語の内容に、ギョッとしたのは優卵と貴悠である。非番の友人の手にある絵本は、『区立反南病院 寄贈 村蕗丹実』などと記されていて……。
製本された絵本のタイトルは、『春の名前持つ真実の王子と人魚姫の本当の王子様』である。はっきり言って、二人して卒倒するかと思った。
「やー、そこまで喜んでくれるた、思わなかったわ。安心しろよ、式の最中は大人しくしててやるから、後はサプライズ、楽しみにしとけ?」
「おまえ、呼んだのが間違いだったよ!! いいから、ずっと大人しくしてろ!!」
「諦めろって。式の最中は流石に見張っといてやるから……」
「おまえもいい加減にしやがれ!! コイツの行動、止めろよ、おまえが!!」
「…………貴悠さん、子ども達、外の騒ぎに気付き出しましたから、退散するのが一番かと……。今、あの子達に捕まったら、確実に困るの私達ですよね?」
「…………」
かの有名な「いばら姫」は、姫の王子をお迎えするまでに百年の眠りを要としましたし、こちらも同じく有名な「白雪姫」……。
この姫君は城を追われ、命を狙われ、息を引き取らんといったとき、姫の王子様がお出でになりました。いずれの姫君曰く、困難を乗り越えて結ばれられた。
なれど、どれほど困難に見舞われど、決して結ばれる定めではない王子を愛した姫君がいらっしゃいます。皆さま、ご周知、「人魚姫」……。
ああ、かの姫君の嘆きはいかばかりかと、胸が張り裂けそうになります。愛した王子に声は届かず、代償に失ったものはあまりに大きい。
ですが、皆さま、ご安心あれ。かの姫君を愛する王子は、姫君が最初に恋に落ちられた王子ではなかったと、ただ、それだけだったのです。
王子が催されました花嫁披露の舞踏会。儚く佇む、かの姫君に心奪われた王子がお一人、嘆きの中に海に飛び込む人魚姫、王子は姫の定めを知って……。
届かぬ姫君の声に代わって、自分の歌声で包まれた。私が貴女を待っている、と……。待っているから、どうぞ生まれ変わってお出でください。
貴女の砕けた恋を知っています。ですが、私は貴女に心を奪われました。どうぞ、私の歌を、声を聴いて、私の元へとお出でください。
貴女が私のシンデレラ。貴女が私のプリンセス。ガラスの靴を用意致しましょう。貴女が二度と足を傷めないための特別な魔法の靴を。
舞踏会を開きましょう。貴女が主役、貴女を祝う舞踏会を。民達みなに送りましょう。心優しい私の姫君をお披露目するための舞踏会。招待状を全ての民に。
かの哀しい定めの「人魚姫」は、優しい歌に包まれて、かの姫君の真実の王子様と出逢います。これがほんとの姫君の定め。
春の名を持つ王子様は、哀しい定めに命を投げ出した、ご自分が心奪われた優しい心の姫君に、二度とは同じ定めを背負わせませんでしょう。
今日は優しい心の姫君と春の名前持つ王子様の結婚式。お二方、幸せに笑っています。子ども達よ、皆々様よ、どうか二人に祝福を…………。
「て、こんなでどうよ?」
「……おっまえは…………。いきなり現われやがったと思ったら、人の職場で何してくれてんだ!?」
「…………あの招待状、送ってきた時点で諦めろ?……」
「……流石に無理です。…………なんで、わざざわざご丁寧に、物語り仕立てに製本してあるものがあるんですか?」
「ツテのツテ? やー、折角の親友の晴れ舞台!! パンフレットにして配ってやろうと……」
「頼んでないことすんなっ!! …………しかも病棟に寄贈とか、紙芝居にして読み上げてみるとか、ふざけてんのかっ!?」
「……や、せんせ、諦めろ? もう、子ども達、夢中になってるから」
「ご友人仲がよろしいのはもう解りましたから、お願いですから遊ばないで…………」
小児病棟、遊戯室の傍、式の準備で訪れていた花嫁と、仕事の終わりに着替えて廊下を歩いていた花婿が、遊戯室から聞えてきた、ここにいるはずのない声と覇気のない声二つに、打って変わって愉しそうではしゃいだ子ども達の声。
三つの有様の声に疑問を覚えて、遊戯室を二人して覗けば、今日は非番であるはずの花婿の友人と、この病院勤務ではない花婿の友人が、トンデモ行動を起してくれてたから、二人してギョッとした。
芝居がかった口調で紙芝居をめくるのは、この病院勤務ではない花婿の友人。子ども達の手には、何故か、色鮮やかにプリントされた簡素な絵本。
紙芝居を演じる友人の隣で非番の友人が、きちんと製本されたハードカバーの絵本を紙芝居の進行に合わせて、次へとページをめくる。
その光景と物語の内容に、ギョッとしたのは優卵と貴悠である。非番の友人の手にある絵本は、『区立反南病院 寄贈 村蕗丹実』などと記されていて……。
製本された絵本のタイトルは、『春の名前持つ真実の王子と人魚姫の本当の王子様』である。はっきり言って、二人して卒倒するかと思った。
「やー、そこまで喜んでくれるた、思わなかったわ。安心しろよ、式の最中は大人しくしててやるから、後はサプライズ、楽しみにしとけ?」
「おまえ、呼んだのが間違いだったよ!! いいから、ずっと大人しくしてろ!!」
「諦めろって。式の最中は流石に見張っといてやるから……」
「おまえもいい加減にしやがれ!! コイツの行動、止めろよ、おまえが!!」
「…………貴悠さん、子ども達、外の騒ぎに気付き出しましたから、退散するのが一番かと……。今、あの子達に捕まったら、確実に困るの私達ですよね?」
「…………」
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 13:09 更新日:2016/01/19 13:09 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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