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作品ID:1711
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人魚姫のお伽話

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


「幸せ奏でるお伽話を謳おうよ」

前の話 目次

ほら ここから始まる 二人の幸せなお伽話 ハッピーエンディングが呼んでる……。

幸せバラ色の未来 描いてゆく二人
王子様のキスでお姫様目覚め  お姫様のキスで王子様の魔法は解けたよ

ハッピーストーリー 奏でてる 奏でてゆく二人に
ぼく達は歌おう 祝福(おいわい)の歌
ハッピーソングをね 奏でようよね 二人に
虹色幸せな未来 描いてく二人にね…………

ほら 花嫁の手を取り 花婿踊り出すよ 幸せなお伽話に
バラ色幸せ虹色の未来が見えるよ
夢色のお伽話を奏でる二人に

幸せ虹色バラ色夢色のキスと歌が降り注ぐよ……






 子ども達に取り囲まれた花嫁は、幸せいっぱいの瞳に涙を浮かべて微笑んだ。子ども達の保護者から、気持ちとして余興をさせてほしいと事前に言われていたから、チャペルでの誓いを終え、出て来た庭、披露宴会場でもあるその場所に、ピアノの姿を見つけて、どんな余興が始まるのかしらと心を躍らせていた。

 フラワーシャワーとライスシャワーの中を歩き終えて、ピアノの近くまで足を進めた途端、子ども達が取り囲んだ。
 花嫁の教室の先生が奏でるピアノの音色に合わせて、子ども達がクルクルと軽やかに回りながら、祝福の歌を紡ぐ。

 紡がれた歌は恐らく今日の日の為に用意されたものなのだろう。子ども達が歌いやすいメロディーに、今日の日の祝福と喜びを称えた歌詞を高らかに歌われて、花嫁は涙で微笑んだ。

 涙で微笑む花嫁の目元を優しく拭うのは花婿。花婿の仕草に照れくさそうに恥かしげに微笑んだ花嫁の姿に、子ども達も誰も彼もが優しく笑う。




 ――――と、ここで綺麗に終わらせてはくれないのが、花婿の友人の厄介さというか、性格である。




「子どもらに質問っ!! お前ら、式には入れなかったろ? 歌の中ではちゃんと王子様のキスってのがあるのに、これじゃ歌い損だと思わねぇ?」
 ろくでもない言葉にギョッとしたのは花婿だが、子ども達は瞳を輝かせた。

「見れるの?」
「王子様のキス?」
「ええ? 誓いのキスでしょ?」
「わぁ!! 映画みたいっ!!」
 はしゃぎ始めた子ども達に、花嫁の方もギョっとした。


「…………歌の途中で何か企んでる気がしたら……」
 頭痛を堪える仕草で呟いたのは、花婿のもう一人の友人。



「……あ、あのね、そういうのって見せるものでもないし、みんな、ちいちゃいんだし、大きくなったときの楽しみにおいておこ?」
 引き攣り気味の花嫁の言葉に、子ども達は瞬時に項垂れた。その様子に、花嫁は泣き出しそうな瞳で花婿を恨みがましげに睨む…………。

「え、ちょ、ちょい待ち!! ろくでもない言葉吹き込んだのはあいつであって、なんで僕がそんな視線送られる……」
 慌てて言葉を繋いだ花婿のタキシードの裾を、一人の子どもが引っ掴んだ。



「……小児科の馬鹿男は何回あたしのお姉ちゃんを泣かせてくれてるのよっ!?」

 突然、『小児科の馬鹿男』と呼ばれた花婿は、掴まれた裾と言葉に困惑したが…………。
 一部始終を見ていた、花婿の友人の一人が花婿の服の裾を掴んだ子どもに、何か気付いたように声をあげる。



「あ、うわ。忠告しとくと、その子にはお前、頭上がる立場じゃないからな?」

 友人の言葉に困惑した花婿は、隣で真っ赤になって涙目になっている花嫁に、衣を掴む子どもの正体を囁かれて、思わず呻いた。
 昨年の春にすれ違いを引き起こした花婿と花嫁を見兼ねて、というか、花嫁の衰弱ぶりに、腹を立てて、花婿の病院に怒鳴り込んできた本人であると聞かされて……。


「あたし、お姉ちゃんを幸せに出来る男かどうか、見極めるために来たんだから!! で、何をお姉ちゃん、涙目にさせて、オロオロしてんの!?」


「らーらら?」
 楽しげに発したのはこの状況を運んできた花婿の友人。
「うぁ…………」
 頭を抱えて気の毒そうな視線を送るのは、花婿の友人のもう片割れ。



「……っ!!」
「…………へ? ……え?」

 花婿に腕を思い切り引かれて、思わず体勢を崩して転びかけた花嫁は、花婿の腕の中に閉じ込められた形で、不意に唇を奪われて、花婿の腕の中で耳まで赤く染め上げた。


 ワァッと、子ども達が歓声を上げる中、殆んどヤケクソな花婿の言葉と、花嫁の悲鳴が木霊した。ついでに、花婿の友人と花嫁の親族達の言葉も。


「これで文句無いんだろっ!!」
「…………あ、あるに決まってる……」


「あーらら、アイツ、キレてやがるわ」
「…………お前、寄りによって、今日にキレさすなっ!!」


「あ、あら、あの子に似合いの穏やかな男性連れて来たと思ってたんだけど……」
「…………義理の息子になったわけだし、ちょっと彼とは話し合おうか」


「に、義兄さん、やる……」
「…………て言うより、あれ、先輩、ブチ切れてる感が……」





 ――――晴れの日にブチ切れてしまった花婿に、花嫁から涙目の訴えと抗議が入ったのは、まぁ、当然であったりもする…………。

後書き


作者:未彩
投稿日:2016/01/19 13:11
更新日:2016/01/19 13:11
『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。

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作品ID:1711
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