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作品ID:1762
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言葉とその力

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


1章 波乱の場に救いの女神? 過去編3

前の話 目次 次の話

 何も知る訳もない幻悟にとっては幼かった故の過(《あやま》ちといえるであろう。
彼の父親は、言葉力の影響で勝手に死への旅に出る行動を起こしてしまう。止めようとする意志よりも早く手近にあったハサミで勢いよく自分の胸に深く突き刺してしまった。その肺が傷ついたであろう傷口からは血がとめどなく溢れている。彼の父親は意味不明な行動をみて放心状態に陥った息子に最後の言葉を伝えるため、抱き寄せる。
「幻悟……、今まで黙っていてすまな…………かった。お……前には、今までの人……生…………で特に無……念を抱いてあの……世に旅だ…………った数……百人、数千・万人以上の人達からと思わ……れる言葉の力が眠ってい……るんだ」

 彼の父親はロクな呼吸もできず血へどを吐いてしまいながらも愛すべき我が子に最後の言葉を残そうとする。彼はただ泣き叫ぶことしかできなかった。
「うわああああーーーーーーーーーーんっ、やだよう。お父さんっ、どうして? ボク一人になっちゃうよ……うぅっ、ひっく……どこにもいかないで!」
彼は父親が苦しんでいる姿を見て顔中を涙や鼻水等で汚してしまう程に心細い思いを感じていた。そんな彼の手をつかんで父親は優しく別れの言葉を口にする。

「でも………………忘れちゃ……いけな……いよ。お前のそ……の力は人を幸……せにも不幸にで………きるんだ。お前は人を幸ーー」
 彼の父親は、最後の言葉を伝えきれずに息を引き取り絶命した。肺が傷ついて呼吸すらおぼつかない状態になっているのだから話を出来たことさえ奇跡的だったし、必然といえるであろう。



 幻悟少年がこの後、行った行為は大人を呼ぶことでも父親を必死に起こそうとすることでもなく、訳の分らぬまま、亡骸を引きずろうとしながら泣きじゃくることだった。そんな彼の泣き声に気付いた近所の住民は、彼の血で汚れた姿に驚きながらも気を取り直して警察に通報する。だが、それ以上のことは何も出来ずにいた。その一報から数分後に警官が数人パトカーで来て現場検証をしようと準備する。そして、すぐ彼を見つけた警官が遺体を動かそうとしている幻悟少年に事情を尋ねた。しかし、非常に困惑している状態の彼はひたすら泣くばかりなのでお手上げになってしまう。

「キミッ、一体その姿は!? どうしたんだい?」
 柔和な顔立ちの警官がゆっくりとやさしく幻悟に聞く。しかし、彼はただただ泣き続けるだけであった。
「これはまいったな。無理に聞いたらその状況のショックを長引かせてしまうかもしれんし」
 柔和な顔だちの警官は自称誠実さがウリの警官の意見を求める。
「そうですね。この少年を一時保護して情報が聞けるようになるまで待つのはどうでしょうか?」
 警官達は相談した結果、一度彼を連れて地域の警察署に戻って行った。この『琴葉一家事件』の捜査は進展もなく難航していた。この事件の事を何も語れずにいる幻悟少年は親殺害の疑いをかけられたりもした。だが、すぐにでもそれはないだろうという運びになった。警察の捜査本部が状況調査で犯人になりえないと断定したからに他ならない。この警察署で彼が知らされたことは、彼の両親のことである。


 母親は「行方不明」・父親は「自殺」として捜査を打ち切られてしまったと伝えられた。一応は幻悟少年の母親を探し出す動きはあるようではある。しかし、彼以外はそれがまったく無駄な行為だと知る由がない。

 警官達は彼の身柄をいつまでも拘束(?)している訳にもいかないので彼の親類達の家に保護を申し出たのだが、どこからも門前払いにあってしまう。
(しかし、この子どもの親戚たちは何故保護を拒否するんだ?)
 自称誠実さがウリの警官は、彼が落ち着くまで自分が面倒を見ることにして、その後は電話帳など調べて彼の親類たちの電話番号を調査する。そしてその人物達を警察の会議室に呼びよせた。そして、幻悟少年の今後について話し合いを実施する。

「改めて問わせて頂きます。この少年をどなたか引き取ってもらえませんか?」
 この誠実さをウリとしている警官の問いかけに対して、彼の親類たちは息をぴったり合わせて反発してきた。
(どうしたことだ? この人達はいくら何でも面倒臭そうにしすぎてはいないか?)
 警官は彼の親類達をまっすぐ見据える。そのまま彼らを見渡すと、全員が迷惑そうな表情で見つめ返してきた。それでも諦めずにこの警官は彼の親類達に食いさがる。
「そこを何とかしてもらえませんか? この子はまだ幼いのですよ!」

後書き


作者:ニューナイト
投稿日:2016/07/10 01:57
更新日:2016/07/10 01:57
『言葉とその力』の著作権は、すべて作者 ニューナイト様に属します。

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