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作品ID:1771
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言葉とその力

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 連載中

前書き・紹介


成人君達と研究員のやりとり 1

前の話 目次 次の話

 幻悟が言葉力によって徐徐に消滅が始まってきた時、成人はすでになすすべがなくなっていた。そこへどこからともなく幻悟の保護者代理でもある研究所の三田主任と真田社員が現れる。
「この状態は!! 雪さん、例の道具で幻悟の存在消滅を防がなくては」
「はいっ! 三田主任。急いでっ、いつかこんな日が来るかもと予想していたわ。この脳神経をマヒさせる対策道具は使いたくなかったけど……」

 成人のすぐそばで白衣着用の二人の研究者が彼を見たこともない道具で運ぼうとしていた。成人は唐突すぎる出来事の連続で思考が停止状態になりかけている。それでも何とか声を絞り出す。
「あなた達は? 幻悟君をどうする気ですか?」
 彼の問いかけに研究員の真田社員は素性を明かし、説明を始めた。
「私はこの子の母親代わりをしている者よ。これからは雪さんって呼ぶといいわ。私はこの大切な子を助けたいだけよ。君も見たでしょう? この子の特殊な力の発動を止めるためには仮死状態にするしか手段はなかったの」

「じゃあさっき幻悟君の姿が消えかけていたのって―――!?」
「そう、きっとあなたの考えは正しいわ。幻悟の特殊な力は使用者本人にも効果を発動させられるの。これを止めるにはこの子の意識を失わせるしかなかった。あなた、小海成人君でしょ? この子ったらとても嬉しそうに、君と遊んだことばかり話してくれたからね」

 真田社員はすぐに<<言葉の力>>対策グッズを彼に託そうと決める。
「あなたには幻悟のことを忘れてほしくない。だからあなたに君の妹の分も合わせて二つお守りを渡すわ。それは絶対になくさないで! 肌身離さず持っていて。そうしないと幻悟のことを忘れてしまうからね」

 彼女は三田主任の要請で彼に幻悟の<<言葉力>>の恐ろしさを伝えた。成人はその話を聞いた上で真田社員からお守りを受け取る。それからこの真田社員に最後の話を聞いたのである。
「君には実感がないだろうけど幻悟の特殊な力はすでに発動し終えたみたい。この機械でわかるの。

 あなたの妹も早くしないと手遅れになるわ。これはまぎれもない事実なのよ。嘘だと思うなら自分の両親とか広長君に聞いてごらんなさい」
「信じたくなくても信じざるを得ないのが今の状況だと思います」


 成人の確信を得た意見に真田社員は内心驚き、そして彼に何年か後の幻悟を任せようと考えた。
「そうだ、成人君だけに教えておくわ。これから幻悟に長期間の休息を与えるの。出来るだけ早く学校に戻せるように努力するわ。それで、幻悟がまた学校に戻ってきた時は仲良くしてほしいのよ。頼んだわ」
「はいっ、もちろんです」
 成人はこのやりとりの後で 彼女にも自分の妹の病室まで来てもらい、二人で話し合いをする。

 やはり成人の妹も幻悟という存在を忘れかけていた。それを確認するために彼は妹に幻悟の写真を見せてみる。
「奈美、この人に見覚えは?」
「見たこと……ある気も……思い出せないわ」

 成人は早速、真田社員から受け取ったお守りを用意した。そしてそれを妹の手に握らすと幻悟のことを思い出す。
「あれ? お兄ちゃん、幻悟さんは?」
「実はな、奈美。幻悟君のことは今やほんの一部の人しか覚えていないんだ」
「?? えっ、つまりはどういうことなの?」
 彼が自分の妹に自分なりの解釈でわかる範囲を断片的に説明すると、彼女はすごくびっくりした。兄の表情を見て何かに気づく。
「お兄ちゃん、今の話って……冗談じゃないみたいね。幻悟さんのことを忘れないようにしないと」
「そうなんだ。ここにいる幻悟君の保護者代理の人とボク達くらいみたいだ。どうにかしたいな」

 成人が、妹と話していると、彼らの両親が必死の形相で病室にやってくる。当然ながら病院なので看護士などから注意を受けていたが今の、彼らの両親にとっては雑音でしかなかったようだ。聞き逃していたのはそれだけ自分達の子ども達を心配していたとも汲み取れる。
「成人っ、奈美も無事なのね?」
 小海兄妹は母親が職場から直行してきたことがすぐわかった。

 何故なら制服姿のままで現れたからだ。彼らの母親が今の格好に疑問を感じていないのも大切な我が子の安否を心配してきた裏付けともいえる。
「う、うん。お医者さんも軽傷だって……」
「それならよかったわ」
 彼らの母親は成人の答えに心のつかえが取れたおかげか、安堵の表情になっていった。そこへ小海兄妹の父親がスーツ姿でやってくる。 

後書き


作者:ニューナイト
投稿日:2016/08/13 01:52
更新日:2016/08/13 01:52
『言葉とその力』の著作権は、すべて作者 ニューナイト様に属します。

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